周囲が光に包まれ、それが消えた瞬間、俺の姿はホワイトスターの転移区画にあった。
当然だが、俺の周囲には耀哉やあまね、そして柱の面々が揃っている。
どうやら転移の事故といったような事はなかったらしい。
そもそも転移による事故なんてのは基本的にない。
いやまぁ、それでも今回は色々と特殊だったからな。
俺がダンバイン世界に転移し、そのダンバイン世界からシーラの力で鬼滅世界に転移して、その鬼滅世界でゲートを設置したというのを考えれば、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、何らかの事故が起こるといったような可能性は否定出来なかった。
「これは……一体……?」
と、そんな中で不意に耀哉の戸惑ったような声が聞こえてくる。
「お館様、どうしました?」
耀哉に対してしのぶがそう尋ねる。
この中で医療技術を持っているのは、しのぶだけだ。
いやまぁ、他の柱も戦闘中の応急手当だったり、あまねは耀哉の妻だけあってそれなりに対処の仕方を理解はしているのだろうが、それでも本職の医者――医師免許を持ってるのかどうかは分からないが――のしのぶに劣るのは間違いない。
とはいえ、呪いによって耀哉の身体が弱いのだとすれば、医者が呪いにどう対処出来るのかは、分からないが。
ともあれ、しのぶが耀哉にどこか調子が悪いのかといった風に尋ねる。
異世界に来たのだから、その転移によって呪いを受けている耀哉に悪影響がある可能性も否定は出来ないのだろう。
そう思いつつ、レモンか木乃香を呼ぼうかと思ったのだが……
「いや、大丈夫だよしのぶ。大丈夫どころか、今までにないくらい身体の調子がいいんだ」
「……え……?」
耀哉の言葉に、しのぶは戸惑った様子を見せる。
当然だろう。てっきり転移によって何らかの悪影響が耀哉に出たのかと思えば、その逆で身体の調子がいいというのだから。
「その、お館様。本当でしょうか?」
「ああ。勿論、飛び跳ねたりといったような真似は出来ないけど、本当に身体の調子がいい。ここ数年……いや、もしかしたら産まれてから初めてと言ってもいいくらいにね」
耀哉は自分の言葉を証明するかのように身体を動かし、そしてその場で軽く跳んでみせる。
その跳躍力はそこまで高くはないものの、鬼滅世界にいる時の耀哉では絶対に無理だろうというのは納得出来た。
というか、飛び跳ねたり出来ないとか言いながら、普通にジャンプしてるんだが。
「そんな、何で……? アクセルさん、この場所には何かあるのですか?」
何故急に耀哉の身体の調子がよくなったのかが分からなかったのだろう。
しのぶは心の底から不思議そうに尋ねてくる。
だが、別にホワイトスターやこの転移区画に何らかの回復効果があるというのは聞いた覚えがない。
俺が具体的にダンバイン世界と鬼滅世界にいたのがどのくらいの期間なのかは、俺には分からない。
もしかしたら俺がホワイトスターにいなかった間に何らかの新技術が開発されて、それをこの転移区画に使ったと言われても、俺は不思議に思わない。
普通ならそのような真似はそう簡単に出来る訳ではないのだが、シャドウミラーの技術班ならそういう真似をしてもおかしくはないんだが。
だとすれば、考えられる可能性としては……
「耀哉に呪いが掛かっていたとなると、その呪いの効果はもしかしたら鬼滅世界の中でしか効果がないのかもしれない」
「それは……」
「言っておくが、これはあくまでも俺の予想だぞ? 耀哉に掛かっている呪いが一体どういうものなのかは分からないんだから。ただ。鬼滅世界を出た瞬間にこうして調子がよくなったんだから、それを思えば俺の予想もそう間違ってないと思うんだが」
しのぶは俺の言葉に納得した様子を見せる。
とはいえ、それでも完全に納得した訳ではないようだったが。
「アクセル代表、どうしたんですか?」
と、そんな俺達に向かって1人の男が量産型Wとコバッタを連れて近付いて来る。
先程ゲートを通して俺と会話をした技術班の1人だ。
「転移して世界を越えた影響で色々とあってな。それでエザリア達はどうしてる?」
「何人か他の世界に行ってる方もいますけど、エザリアさんやレモン様は準備出来ています」
相変わらず、レモン様なんだな。
いやまぁ、こいつの所属は技術班だし無理もないのかもしれないが
「そうか。なら、量産型Wを貸してくれ。バスを使ってこの連中を案内する。それと、木乃香にもこっちに合流するように伝言を頼む」
「量産型Wを? いえ、それは構いませんけど、影のゲートで転移はしないんですか?」
「この連中は初めてホワイトスターに来たんだ。そうである以上、ホワイトスターがどういう場所なのかを見せておきたい」
それに大正時代しか知らない耀哉達だ。今のうちから、少しでもこのホワイトスターがどういう場所なのかを見せておいた方がいい。
そんな俺の様子に何かを察したのか、男はすぐに頷く。
まぁ、何かを察したというか、日輪刀を持っているのを見れば、何となく昔の世界からやって来たのだろうと、予想は出来るだろうが。
「量産型W? アクセル殿、その変なのを被っているのがアクセル殿の言っていた奴なのか!?」
杏寿郎が初めて量産型Wを見て、驚きの声を上げる。
それ以外の柱の面々も、量産型Wに興味深そうな視線を向けている者が多い。
盲目の耀哉と行冥の2人は、その姿を見る事は出来なかったが。
そして蝶屋敷の手伝いに量産型Wを貸し出すといったような話をしていた時にいなかったしのぶもまた、何故そこまで皆が量産型Wの姿に驚いているのかが分からない。
もっとも、その辺りの事情を知らずとも、量産型Wの外見だけで大きな衝撃を与えるようなことは出来たが。
「ああ。とはいえ、まずは移動だな。……このままだと目立ってるし」
当然ながら、転移区画にいるのは俺達だけではない。
他の世界から転移してきた者達もこの転移区画に姿を現すし、そうなれば俺達の姿を見る事になる。
そして他の世界から来た者達にしてみれば、日輪刀を持っている柱が多数おり、それだけではなく色々な意味で特徴的なこの集団に目を奪われない訳がない。
ネギま世界から来た者の中には神鳴流について知っている者も多く、だからこそそこまで気にした様子を見せない者も多少なりともいたが。
けど、神鳴流か。ネギま世界で麻帆良を通して京都に接触して神鳴流の剣士を借りるか雇うか出来れば……いや、東と西の関係を思えば、麻帆良と親しい俺達が神鳴流の剣士を雇うのは難しいか。
とはいえ、神鳴流は妖怪を倒すのに特化している存在だ。
鬼滅世界で鬼を倒すのに向いているのは、間違いのない事実だった。
……刀をどう隠すか、という問題があるが。
何しろ日輪刀は普通の日本刀だが、神鳴流で使われるのは斬馬刀とまではいかないものの、かなり巨大な刀だ。
それだけに、日本刀を大っぴらに持ち歩けない大正時代では目立つ。
平成の時代なら何らかの道具に偽装するといったような真似も出来るが、大正だとそれも難しいしな。
「うおっ! 何だあれは! ド派手だな!」
神鳴流について考えていると、不意に天元の声が周囲に響く。
一体何だ? 天元が見ている方を見ると、そこにはこちらに向かって近付いてくるバスの姿があった。
ホワイトスターで使われているのは、バスに限らず車もいわゆるエアカーという種類の物だ。
地上から少しの高さを浮かんでいるその姿は、天元にしてみれば驚きの光景だったのだろう。
いやまぁ、天元以外の他の面々もバスに向かって驚きの視線を向けていたが。
目の見えない耀哉や行冥も、あまねの説明を聞いて信じられないといった様子を見せていた。
「鬼滅世界にも車はあるだろ? あれが進化したものだと思えばいい」
「車? でも、浮かんでるよ、あれ」
基本的に耀哉や鬼以外の事には無関係な無一郎だったが、そんな無一郎ですらエアカーというのは興味を抱くのに十分な存在だったのだろう。
まだ子供だし、好奇心旺盛なのはおかしな話でもないのだろうけど。
「ああ、浮かんでるな、鬼滅世界の車も技術が進化すればいずれはああいう風に浮かんだりすると思うぞ」
「……本当に?」
「本当に」
もっとも、具体的にどのくらいの時間が経過したらエアカーになるのかは分からないけど。
「ふぅん。……そっか」
取りあえず俺の言葉に納得した様子を見せる中、蜜璃が小芭内に向かって何かを話し掛けているのに気が付く。
「どうした? 何かあったのか?」
「……アクセル、これから行く前に、どこかで何か食べられないか?」
小芭内のその言葉に、なるほどと納得する。
多分だけど、腹が減ったというのは小芭内ではなく蜜璃なのだろう。
実際、蜜璃がどことなく恥ずかしそうにしており、顔が薄らを赤く染まっている。
だが……そうだな。話をするとなると、それなりに時間は掛かる。
特に今回は最初の交渉になるだけに、お互いについての事情を説明したり、それぞれに何を希望したりといったような事もする必要があるだろう。
そうなれば当初予想していたよりも時間が掛かる可能性が高い以上、腹ごしらえをしておく必要もあるか。
「そうだな。なら、超包子にでも寄っていくか。おい、悪いけど30分くらい遅れるってエザリアやレモン達に連絡を入れておいてくれ」
「分かりました」
「いいのかい? 私達の為にそのようなことをして……」
耀哉が少し心配そうに言ってくるものの、俺は大丈夫だと頷く。
「腹が減っては戦は出来ぬって言うだろ? それにこれから行く超包子って店はホワイトスターの中でも最高峰の店の1つだ。俺も久しぶりにホワイトスターに戻ったんだから、出来れば超包子の料理を食べたいんだよ」
「そうなのかい? アクセルがそこまで言うのなら、美味しい店なんだろうね。楽しみにしておくよ。ここに来て、私も空腹になったし」
聞いた話では、呪いの影響で耀哉は決して食欲旺盛といった訳ではないらしい。
それでも今はまだそれなりに食べているものの、このまま呪いが進行した場合は食欲も次第に落ちていく可能性が高いとか。
そういう意味では、ホワイトスターにやってきた影響で呪いの効果がなくなった、もしくは弱くなり、食欲も増したらしい。
うーん、そうなるとやっぱり耀哉は鬼滅世界に戻らないで、ホワイトスターにいた方がいいと思うんだが。
とはいえ、耀哉の性格を考えればホワイトスターに滞在するといったような真似はしないと思うが。
耀哉は基本的に人当たりが柔らかいものの、意思は強固だ。
鬼殺隊としての行動を人に任せて、自分だけホワイトスターで療養するといった真似は許容出来ないだろう。
耀哉に深い忠誠心を持っている柱の面々や妻のあまねは、ホワイトスターにいた方がいいと言うかもしれないが。
「耀哉もこれから呪いをどうにかするのなら、体力はつけておいた方がいいだろ。ほら、さっさとバス……その空を飛ぶ車に乗れ。超包子に向かって腹ごしらえをするから」
そんな俺の言葉に従い、皆がエアカーのバスに乗り込む。
とはいえ、タイヤもなく空中に浮かんでいるバスだけに、柱達の多くは警戒した様子を見せていたが。
無一郎は、少し興味深そうにしていたけど。
そんな訳で全員が乗り込んだところで、運転手をしている量産型Wに超包子に向かうように言う。
バスが動けば当然ながら、柱やあまねは窓から見える景色を見てそれぞれ騒いでいた。
耀哉と行冥の2人は、盲目だから見ることが出来ないので少し残念そうな様子だな。
レモン辺りに頼んで、義眼を用意して貰った方がいいかもしれないな。
義眼といっても、当然のように技術班が作る義眼だけに、外見だけの義眼ではない。
視神経と繋げて、しっかりと視力を取り戻せる義眼だ。
……行冥の場合は、鬼との戦いでも使えるようにレーザーか何かを内蔵させるというのもありかもしれないな。
ああ、けど耀哉は義眼を使わない方がいいのか?
呪いの影響が眼球にも及んでいるとなると、義眼をいれた場合にどう反応するのかは分からない。
それこそ、呪いの強さによっては義眼にも何らかの影響が出て来そうだし。
耀哉の様子を見たところ、呪いはあくまでも鬼滅世界にいる時だけしか効果がないらしいから、ホワイトスターにいる間だけでも義眼を使って、鬼滅世界に戻る時に義眼を外すといったような真似が出来れば一番いいんだろうけど、それもまた難しいしな。
「耀哉、行冥。お前達は義眼について興味はあるか?」
一応、そう尋ねる。
世の中には目にコンタクトを入れるのすら、忌避感を抱く者がいる。
大正時代にコンタクトの類はないだろうが、それでも眼球を取って義眼を入れるというのに拒否感を覚える者がいてもおかしくはない。
そう思って尋ねたのだが……
「義眼か。呪いにどう影響するのか分からないから何とも言えないけど、私は興味があるね」
「鬼との戦いが終わった後であれば」
そう、2人は告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730