『善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、柱なんて辞めてしまえ!』
『てめェ……ぶっ殺してやる!』
襖の向こう側から、そんな声が聞こえてくる。
1人は、俺も聞き覚えのある声だった。
十二鬼月と戦った山で遭遇した、竈門炭治郎。
鬼となった妹と一緒にいた鬼殺隊の隊員。
だが、もう1人の声には聞き覚えがない。
柱合会議といった事を考えれば、恐らく柱の1人なんだろうが……随分と鬼に恨みがあるらしい。
しのぶと義勇の2人しか柱を知らなかっただけに、こういう奴もいるのかと納得する。
とはいえ、柱というのは鬼殺隊の中でも最高戦力だ。
そして鬼殺隊の多くは家族や恋人、友人を鬼に殺されたからこそ、その恨みを晴らす為に鬼殺隊に入ったという経緯を持つらしい。
そうである以上、鬼殺隊の最高戦力の柱の中にもそのような理由から鬼殺隊に入った者……鬼に強く恨みを抱いている者がいてもおかしくはない。
そういう者にしてみれば、鬼だからというだけで殺そうとするのは……ある意味当然の事なのだろう。
とはいえ、それでも柱という地位にいる人物だけに、態度には気をつけた方がいいと思うんだが。
大正時代だというのを考えると、この辺は仕方がないのかもしれないが。
「柱にしては、随分と乱暴そうな奴だな」
「ははは。そうだね。けど、鬼殺隊の隊員達は全てが私達の子供達なんだ。多少元気がいいからといって、大目に見てくれると嬉しいね。それに、柱だけあって腕は確かなんだよ」
耀哉のその言葉は、炭治郎と言い合いをしている相手のことを庇っている……というより、単純に耀哉が思っている事を言ってるだけらしい。
「それでも、ともあれ今の状況ではこのままにしておく事も出来ないね。では、行こうか」
耀哉のその言葉を聞くと、あまねが襖を開ける。
「お館様のお成りです」
向こう側の部屋からそんな声が聞こえてくる。
子供の声と考えると、声の主もまた耀哉の子供か?
輝利哉の件もあるが、耀哉は何気に子供が多いよな。
つまり、それだけ耀哉はあまねを抱いてる訳で……うん、リア充め。
いやまぁ、俺がそんな事を言えば、それこそ爆発しろと言われ……いや、実際に爆弾を投げつけられてもおかしくはないか。
「よく来たね、私の可愛い子供達」
その耀哉の言葉が響くと、その場にいた者の多くの視線が耀哉に向けられ……そして耀哉の側にいる俺を見て、驚きの表情を浮かべる。
あまねがいるのなら、耀哉の妻だからという理由で納得は出来るんだろうけど。
しかし、そこに見知らぬ他人の俺がいるのは驚くには十分な様子だったらしい。
とはいえ、耀哉が俺と一緒にいて、特に何も言う様子はないから、俺を誰だといったように言えないのだろう。
とはいえ、しのぶと義勇は俺の事を知ってるので、特に驚いている様子はないが。
……俺の件を他の柱に話してもよかったんじゃないか?
口下手の義勇はともかく、しのぶなら人当たりもいいし、情報を共有してもいいと思うんだが。
あるいは、異世界から来たという俺の事を説明しても信じて貰えないと思ったのか。
「今日はいい天気だね。空は青いのかな? 生憎と今の私にはそれを見ることが出来ないが……しかし、それでも風を感じる事は出来る」
そう言い、笑みを浮かべる耀哉。
寝る前に比べると、随分と身体の調子はよさそうに見える。
そんな耀哉は笑みを浮かべて言葉を続ける。
「顔ぶれを変えずに半年に一度のこの柱合会議を迎えられたのは嬉しいよ。もっとも、今回は色々と話すことがあるから、もし今日が柱合会議の日ではなくても、臨時で柱合会議を開いたのだけれどね」
そうして話している耀哉に、柱達は即座に膝を突き、頭を下げる。
先程まで言い争いをしていた炭治郎も、隣にいたその相手に半ば無理矢理頭を下げられていた。
にしても……言葉遣いから想像していたが、炭治郎と言い争いをしていた奴は顔に複数の傷があり、見るからにチンピラやヤクザといった風体だ。
炭治郎の頭を下げさせた時の動きや、その身のこなしからして、柱と呼ぶに相応しい実力は持っているのだろうが。
そう思ったのだが、炭治郎を抑えている男は耀哉に向かって恭しい口調でご健勝で何より、ますますの御多幸を云々といいったような事を口にする。
外見からは、とてもではないが使いそうにない口調。
それだけではなく、言葉の端々から耀哉を深く尊敬しているというのが伝わってくる。
チンピラ的な外見や言葉遣いではあるが、耀哉に対する忠誠心は本物か。
だからこそ、耀哉の側にいる俺に対して一番胡散臭そうな視線を向けていたのも、この男だったのだが。
そんな風に考えている間に挨拶が終わり……そして男は、耀哉に対して何故ここにただの隊士がいるのかについて説明して欲しいと、そう告げる。
この男が耀哉に抱いている忠誠心が本物であるにも関わらずにそう告げるのは、それだけ鬼を憎んでいるからこそだろう。
「そうだね、炭治郎達の事は驚かせてすまなかった。だが……炭治郎と禰豆子の事は、私が容認していた。そして皆にも認めて欲しいと思っている」
そんな耀哉の言葉は……当然ながら、殆どの柱が即座に却下した。
唯一許容したのは、しのぶと義勇の2人のみ。
年少の男はどちらでもいいと言い、しのぶ以外のもう1人の女……大正時代として考えれば、随分と攻めている服装をしている女が、耀哉がそう言うのならと許容した様子を見せる。
そして炭治郎を抑えている奴が口を開く。
「鬼を殺してこそ鬼殺隊。竈門、冨岡両名の処罰を願います」
結果として、この言葉が鬼殺隊として一番それらしい言葉だったのだろう。
にしても……禰豆子の件はしのぶも一応賛成の立場を示したのに、何故か義勇だけなんだな。
この辺は、人当たりが関係してるのか?
「なるほど。では、手紙を」
そんな耀哉の言葉に、あまねが手紙を渡す。
そこには単純に言えば禰豆子が人を襲ったら、炭治郎、義勇、もう1人の鱗滝という奴は誰なのかは分からないが、とにかくその3人が腹を切ると、そう書かれていた。
切腹って……いやまぁ、大正時代だと考えればそこまでおかしい話ではないのか?
とはいえ、その切腹というのはあまり柱達に響かなかったらしい。
ただ……その話はそこで終わらない。
事実として禰豆子は2年以上人を襲っていないと耀哉が言い、それを否定するのならそれ以上の証拠を出す必要があると言い……そして、爆弾を投下する。
竈門炭治郎は鬼舞辻無惨に遭遇している、と。
これは柱達にとっても重要な事だったのか、それぞれが鬼舞辻無惨について炭治郎に尋ねる。
聞いた話だと、鬼殺隊の中で鬼舞辻無惨に遭遇したことがある者はほぼ皆無だったらしいから、それは仕方のないことかもしれないが。
そんな柱達を沈めたのは、口の前に人差し指を持ってきた耀哉の動作。
それだけで、柱達は静まる。
「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて追っ手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくはない」
耀哉にとって……そして鬼殺隊にとって、それはこれ以上ない説得力だろう。
普通なら、理屈で考えられる者ならそれで納得してもおかしくはない。
しかし、それはあくまでも理屈で考えられる者だ。
感情よりも理性を重視する者、と言い換えてもいいかもしれない。
そして鬼殺隊に所属している多くの者は鬼によって家族や友人、恋人を殺されている。
そのような者にしてみれば、鬼であるというだけで殺すべきだと、そう考えてもおかしくはなく……
「え?」
炭治郎を押さえつけたチンピラ風の男が取った行動が、俺には理解出来なかった。
何故なら、日輪刀で自分の腕を切ったのだから。
「彼は風柱の不死川実弥です。彼は稀血という、特殊な血を持っており、その稀血は鬼にとっては何よりも魅力的なものだそうです」
いきなり自分の腕を切った人物……風柱の不死川実弥という人物の行動に驚いていると、あまねがそんな風に言ってくる。
俺が現状を理解出来ていないと判断してのことだろう。
そうして腕から流れている血を木箱……禰豆子が入っているその木箱に垂らす。
その木箱に何ヶ所か穴が空いてるのに気が付き、眉を顰める。
それが何を意味しているのかが分かったからだ。
鬼は脅威的な再生能力を持っている以上、禰豆子が日輪刀で刺されても死ぬといったことはない。首を切断されれば、話は別だが。
つまり実弥は稀血とやらを使い、禰豆子が人を襲うというのを証明してみせようとしたのだろう。
だが、そんな実弥に対して、顔を包帯か何かで覆っている男が、日陰にいかないと鬼は出て来ないと言う。
「蛇柱の伊黒小芭内です」
あまねが続けて説明するのと同時に、実弥は地面を蹴って建物の中に入る。
ちなみに、本当に今更の話だが、柱達がいたのは庭……という表現が正しいのかどうかは分からないが、とにかく外。
その外と面している部屋に、俺や耀哉、あまねは入ってきた形となっていた。
そうして、実弥は地面を蹴って禰豆子の入っている木箱を持って、建物の中に入る。
実弥は俺から少し離れた場所に移動する。
これは、俺がまだどのような人物か分からないから、というのが大きな理由だろう。
それはいい。それはいいんだが……実弥が次にとった行動は、さすがに許容出来なかった。
炭治郎が禰豆子の名前を呼び、小芭内によって強制的に押さえつけられている先で、実弥は日輪刀を再び木箱に突き刺そうとしたのだ。
それを見た瞬間、さすがに黙っているような真似は出来ず、瞬動を使って瞬時に実弥のすぐ近くまでやってくると、木箱に突き刺そうとした日輪刀の刀身を掴んで止める。
「なっ!?」
実弥は俺の行動を察知出来なかったのか、自分でも気が付かないうちにすぐ側まで近づいていた俺の姿に驚く。
それだけではなく、まさか日輪刀の刀身を掴んで止められるとは思っていなかったのか。
「何しやがる!」
「お前が何をしたいのかは分かる。分かるが、だからといって中に禰豆子が入っているのに突き刺すなんて真似は駄目だろ」
「うるせえっ! 離せ!」
苛立ちを露わに叫ぶ実弥だが、人差し指と親指の2本だけで抑えられた刀身はびくともしない。
実弥が必死に日輪刀を動かそうとするものの、それは全く動かず……
『なっ!?』
不意に誰かが……いや、他の何人もが叫ぶ声が聞こえてくる。
何故急に? と思ったが、その理由は俺が掴んでいる日輪刀を見てはっきりとする。
先程までは緑の刀身だったのが、何故かその刀身の色が緑から赤に変わっていたのだ。
いや、正確には赤は赤でももっと違う赤か?
「おいっ、離せ!」
自分の日輪刀の色が変わったことで実弥が焦ったように叫ぶ。
日輪刀は色変わりの刀と呼ばれており、使い手の呼吸によってその刀身の色が変わる。
実弥の持つ日輪刀の色は緑。
それは確か……風の呼吸の使い手の色か。
いやまぁ、実弥は風柱なので風の呼吸なのは当然の話なのだが。
ざわり、と。
今の一連の行動を見ていた者達がざわめく。
ここにいるのは多くが柱ではあるのだが、そんな柱にとっても今の現象……刀身の色が変わるというのは予想外だったのだろう。
「どうしたんだい? 何かあったようだが……」
そんな中、目が見えないせいで唯一事情を理解出来ない耀哉が訝しげに尋ねる。
そんな耀哉の耳元であまねが事情を説明すると、なるほどといった様子で頷く。
「それは興味深いね。だが、その前に……実弥、禰豆子を試すのはいい。けれど、日輪刀で突き刺すのはやりすぎだよ。それはいけない」
「はっ!」
耀哉の言葉に、実弥は片膝を突いてそう告げる。
ちなみに赤く色の変わった日輪刀の刀身からは手を放しているものの、未だに色が変わったままだ。
これ……もしかして、ずっと元に戻らないとか、そんな事はないよな?
そうなった場合、俺が実弥の日輪刀を弁償したりする必要があるのか?
まぁ、その場合は色が変わったという意味でその日輪刀は俺が貰ってもいいと思うが。
「だが、そうだね。実弥がそこまで禰豆子を信用出来ないのであれば、先程やろうとしていたみたいに血を使ってみるといい。ただし、禰豆子が襲うといったようなことがない場合は、傷をつけるのは駄目だよ」
そんな耀哉の言葉が聞こえたのか、それとも自分で考えたのか……唐突に箱が開き、禰豆子が姿を現す。
何だが箱よりも禰豆子の方が大きいような気がしないでもないが、その辺は取りあえず鬼だからという事でどうにでもなるのだろうと思っておく。
「むー!」
木箱から出て来た禰豆子は、実弥を睨み付ける。
傷はもう殆ど残っていないが、木箱に空いた穴を思えば、その傷はかなり深かった筈だ。
にもかかわらずこの様子という事は……それはつまり、禰豆子はもう傷を再生したのか?
そんな風に思っていると、耀哉が俺の方に視線を向けてくる。
微妙に方向が違ってはいるものの、それでも俺を見ているのは、いざとなったら禰豆子を止めて欲しいと、そのように思っているからだろう。
柱がこれだけいる中で俺にそう示すのは、禰豆子を傷つけたくないという事か。
そんな風に思っていると……実弥が立ち上がり、再度自分の腕を赤く染まった日輪刀で斬るのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730