転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0288話

「……遅いな」

 

 学園長室の話し合いが終わり、教室へ戻ってきてから既に10分程。5分前には既に朝のHRの時間は過ぎているのだが、ネギの姿は未だに教室内には存在しない。

 と言うか、神楽坂と近衛の姿も無い。

 

「くくっ、余程昨日の件が堪えたと見えるな」

 

 そう隣で声を掛けて来たのはどこか得意気な顔をしたエヴァだった。

 その様子をジト目で見ながら口を開く。

 

「エヴァ。昨日、あやかや俺に関して魔法関係者だと匂わせたのはわざとだな?」

「さて、どうかな? 久しぶりの満月でハイになっていたからな。それよりも……」

 

 惚けた表情でそう言い、席を立つエヴァ。そのまま教室のドアへと向かう。

 

「どうした?」

「何、私がここにいてはぼーやも昨夜の事を思い出して萎縮するだろうからな。大人しく姿を消させて貰うよ」

「……つまりサボりか?」

「そうとも言う」

 

 俺の問いにエヴァは後ろ手に軽く手を振り、教室を出て行った。

 ……1人で。

 

「ん? 1人?」

 

 エヴァの前の席へと視線を向けると、そこには大人しく座っている茶々丸の姿が。

 

「いいのか?」

「はい。一応ネギ先生にマスターが授業を欠席すると伝えなければなりませんので」

 

 マスター思いな事で。

 その後は周囲の連中と話していると、突然教室のドアが開かれる。

 

「ゴメンね、みんな。ネギの奴がズル休みしようとして引っ張ってくるのに手間取っちゃって」

「あーーーん、アスナさーん!」

 

 強制的に神楽坂に引っ張られてきたネギだったが、こちらの方――正確にはエヴァの席――に視線を向けて安堵の溜息を吐いていた。昨日怖い目に遭わされたエヴァがいないので安心したのだろう。そんなネギに茶々丸が近付いていくのを見ながら、英語の教科書を出すのだった。

 

 

 

 

 

 エヴァが教室内にいないという事で、ネギも何とか気を取り直し1限目の英語の授業が始まった。現在は和泉が英文を読んでいるのだが……

 

「……」

 

 ネギは溜息を吐きながら、何故か俺の方へと視線を向けている。

 その目にはどこか逡巡するような色があった。

 

「セ、センセー、読み終わりましたけど」

「え? あ、ありがとうございます。えっと、その……ちょっと聞きたいんですけど、もし和泉さんがパートナーを作るとして、年下の10歳の男の子なんてイヤですよね?」

 

 唐突に出されたその問いに、和泉はあわあわする事しか出来無かった。

 その様子に自分に脈は無いと判断したのか、ネギは質問の対象を和泉の隣に座っている宮崎へと向ける。

 

「パートナー……ねぇ」

 

 何だってこんな時に急にそんな事を言い出したのやら。まさかちょっと早い思春期って訳でも無いだろうに。

 いや、もしかして人生の伴侶的な意味の他にも魔法使いの隠語か何かがあったりするんだろうか。

 

「……ん?」

 

 ネギを中心にして巻き起こるその騒ぎに、ふと違和感を覚える。

 いつもなら真っ先に騒ぎの中心部に突入するべき朝倉が特に動きを見せていないからだ。朝倉の席の方へと視線を向けると、そこにはどこか難しい顔をしてネギを見つめる朝倉の姿があった。

 なるほど。これからの自分に関して考えていてパートナー云々所ではない、か。

 結局、それから数分して授業終了のチャイムが鳴り響き英語の授業はそこで終了となる。

 よろよろと教室を出て行くネギとその後を追おうとする神楽坂だが、あやかがその肩へと手を置いて小声で話し掛けている。

 

「ちょっと、アスナさん。ネギ先生が元気無いのは、もしかして昨日の件で?」

「え? うん。その……え? あれ? そう言えば昨日っていいんちょや朝倉も……」

「呆れましたわね。その辺を忘れていたんですの? ……まぁ、ネギ先生の件でそれ所じゃなかったんでしょうけど。その話をしたいと思っていたんですが……放課後、時間頂けますわね?」

「あ、うん。ネギには言っておくけど……あれ? 委員長も昨日のネギについて……」

「それも、今日の放課後にお話しますわよ」

「う、うん。分かった。取りあえず、行かせて貰うわね」

 

 それだけ言うと、神楽坂はそのままネギの後を追って教室を飛び出ていった。

 その後ろ姿を見送っていたあやかへと近づくと、向こうもすぐに俺へと気が付く。

 

「アクセル君、その……」

「あぁ。話は聞いてた。今日の放課後だな?」

「……一応、周囲には聞こえないように小声で話していたのですが」

「何、元々俺の身体能力や五感に関して言えば常人とは比べものにならないからな。俺以外に聞いていた奴はいないだろうから、安心していい」

「分かりました。その、千鶴さんにも話を通しておいた方がいいでしょうか?」

 

 小首を傾げてそう尋ねてくるあやか。

 可愛いというよりもどちらかと言えば美人系であるあやかだったが、その仕草は年相応のものに感じられた。

 

 

 

 

 

 放課後、俺とあやかの姿は3-Aの教室から少し離れた所にある空き教室にあった。

 

「で、ネギと神楽坂は?」

「少し遅れるかもしれないけど、来ると言ってましたわ」

「じゃあ2人が来るまでゆっくりと待つか。……そう言えば、千鶴は良かったのか?」

 

 この教室にいるのは、俺とあやかのみ。もう1人の関係者である千鶴の姿は無い。

 

「ええ。一応誘ってはみたのですが、夏美さんと用事があるとかで」

 

 夏美と用事か。そうなるとボランティアか、あるいは演劇部関係といった所か。

 そんな風に考えていると、教室のドアがガラリと開けられる。

 

「アクセル、委員長、いる?」

 

 そこにいたのは当然と言うべきか、神楽坂とネギだった。ネギはどこか神楽坂の背中に隠れるようにしてこちらを見ている。……エヴァを警戒しているのか?

 

「ネギ先生、良く来てくれましたわね。……ついでにアスナさんも」

「ちょっと、呼んだのはあんたでしょうに」

「えっと、その……昨日の件で話があるって聞いたんだけど」

 

 おずおずといった様子でネギが尋ねてくる。その様子は、どこか小動物を連想させるものだった。

 放課後の教室に日が差し込んでくる中、俺とあやか。そしてネギと神楽坂は向かい合う。

 

「そうだな、まずはこれを見て貰おうか」

 

 ネギにそう言い、あやかの方に視線を向けるとあやかが懐から取り出した練習用の魔法の杖を俺へと渡してくる。

 これについては前もって打ち合わせした通りだ。俺本来の魔法発動体は右腕に付けている腕輪なのだが、魔法学校を卒業したばかりのネギには杖を使った方が分かりやすいだろうと判断した。

 

「え? それ……」

「ネギ?」

 

 玩具のようなその杖が、どのような意味を持っているのかを知るネギが驚き、それを見た神楽坂が不思議そうにそんなネギを見る。

 

『プラクテ、ビギ・ナル……火よ灯れ!』

 

 SPの消費を最小限に押さえた事もあり、以前とは違って普通に火が灯る。

 ……まぁ、それでも拳大の炎だったりするのは俺の転生特典である魔法の才能故なんだろうが。

 

「……え? あれ? なんで?」

 

 言葉も出ないネギと、唐突に俺が魔法を使ったことにより混乱する神楽坂。

 その様子を見ながら、杖をあやかへと返す。

 

「アクセル君程上手くはありませんが」

 

 小さく咳払いをしてから、あやかもまた杖を持ち呪文を唱える。

 

『プラクテ、ビギ・ナル……火よ灯れ!』

 

 あやかのその呪文で出現したのは、俺の炎よりも随分と小さいが間違い無く火だった。……いや、呪文の効果を考えればこれが普通なのか。

 俺が魔法を使ったのを見て混乱していた神楽坂だったが、あやかが魔法を使ったのを見てその混乱は頂点に達する。

 混乱した勢いのまま、あやかへと掴み掛かった。

 

「ちょっと、何で委員長が魔法を使えるのよ!」

「ちょ、ちょっと、アスナさん。あ、あぶ、危ないですわよ!」

 

 杖を右手に持ったまま、掴みかかってきた神楽坂を得意の柔術の応用でいなすあやか。

 

「わっ! っと、ちょっと委員長! どういう事なのかしっかり答えて貰うわよ!」

 

 一度はいなされた神楽坂だったが、持ち前の運動神経を駆使してすぐに態勢を立て直す。

 

「分かりましたから。元々その件に関して話す為にここに呼ばせて貰ったんです。だから少し落ち着きなさい」

 

 あやかのその言葉で、こちらがきちんと自分の疑問に答えると判断したのだろう。神楽坂も多少の落ち着きを取り戻す。

 

「……アクセル君と委員長さんも魔法使いだったの?」

 

 次に口を開いたのはネギ。その視線はあやかの持っている玩具のような杖へと向いている。

 そのネギの質問に、俺は頷く。

 

「ああ。俺も魔法使い……と言ってもいいだろう。ただし俺はまだまだそれ程魔法に関して熟達している訳ではないし、あやかと……そしてここにはいないが、千鶴はようやく火よ灯れの魔法が発動するようになったという所だがな」

「え? 那波さんもあんた達の仲間なの!? ……じゃあ、もしかして夏美ちゃんも?」

「いえ、夏美さんは魔法に関しては一切知りません。アクセル君と私。そして千鶴さんだけですわね」

 

 さすがに自分の知らないうちにクラスに複数の魔法使いがいたというのに驚いた様子のネギ。……実は魔族や半烏族等の人外が存在したり、春日という俺以外の魔法生徒がいたりするのを知ったらどうなるのだろうか。

 

「じゃあ、昨日のエヴァンジェリンさんが言ってたのは……」

「ええ、こういう事ですわ」

「良かったじゃない、ネギ。これであんたオコジョにならなくても……オコジョ、に……って、委員長はともかく、朝倉を放っておいたら駄目じゃない! あっという間にネギが魔法使いだって麻帆良中に広がるわよ!?」

「ええーーーーーっ!?」

 

 今更ながらに自分の危険な立ち位置に気が付いたのか、ネギの悲鳴にも似た声が教室内へ響き渡る。

 

「あー、安心しろ。朝倉に関してはこちらで手を打っておいた」

「え? アクセル君が?」

「と言うか学園長が、だがな」

「……ちょっと、それって学園長がネギとエヴァちゃんの戦いを知ってるって事じゃないの?」

 

 恐る恐るといった様子で尋ねて来る神楽坂だったが、あやかが苦笑を浮かべながらそれに答える。

 

「アスナさん、認識阻害の魔法も使わずにあんなに派手な空中戦を繰り広げたんですのよ? 麻帆良全体に張られている薄い認識阻害があるから大多数の住人は気にならなかったようですが、近くでそれを直接見た私や朝倉さんは話が別です」

「認識阻害?」

 

 ん? 認識阻害の単語に神楽坂が不思議そうな顔をしているな。もしかしてその辺の事情を聞いてないのか?

 

「ネギ、認識阻害については?」

「あ、その……ごめんなさい」

 

 話してなかった、か。まぁ、それ所じゃなかったというのもあるんだろうが。

 

「あ、でも良かったじゃないネギ。これでパートナー問題も解決よね」

「え?」

「ほら、この際アクセルにパートナーになって貰えばいいじゃない」

「ええーーーーーっ!」

 

 神楽坂のその言葉に驚きの声を上げるネギ。

 

「おおっと、姐さん。それはちょっと待って欲しいんだがな」

 

 どこからともなく周囲に声が響いたのはその時だった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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