転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2923話

 ヨルムンガンドへの引っ越しは、予想外にあっさりと終わった。

 元々ヨルムンガンドが来るという話は聞いていたのだから、キブツがしっかりと引っ越しの準備をするように部下達に言っておいたのが大きい。

 また、ナムワンを使うようになってから、まだそんなに時間が経っていないというのも大きかった。

 とはいえ、それでもある程度の期間はこうしてナムワンに乗っていたのだから、名残惜しいと思っている者もいるだろうが。

 ……ただ、俺達はこれからナの国に向かわなければならない以上、いつまでも感傷に浸っている暇はない。

 ヨルムンガンドにはキッス家の面々だけでは人が足りないので、ドレイク軍からもそれなりに派遣されている。

 幸いな事に……というかドレイクが配慮したのか、派遣されてきた者の多くは以前俺のナムワンを運用していた連中であり、ある程度はキッス家の面々とも付き合いがあった。

 そういう意味では、今回の件はスムーズに進んだのは間違いない。

 そうして一通りヨルムンガンドの状況を見て、ある程度動かせるようになると、俺達はすぐにナの国に向かう為にレンの海に出る。

 本来なら、ドレイクやビショットとしてももう少しこっちに時間を与えたかったのだろうが、ここで無駄に時間を使えば、ラウの国にナの国の援軍が到着しかねない。

 ナの国が幾ら大国であるとはいえ、それでもオーラマシンを開発した国としては、ドレイクも負けるつもりはないし、そんなドレイクに次ぐオーラマシンの技術を持っているクの国のビショットも同様だろう。

 だが、それでも出来ればナの国と戦いたくない……戦わないのであれば、そちらの方がいいと判断したとしても、おかしくはない。

 もし戦ってしまえば、今後ナの国との関係が色々と不味くなるだろうし。

 そんな訳で、ドレイクやビショットにしてみれば、少しでも早く俺をナの国に送り出したかったのだろう。

 あるいは、タータラ城の方で何か動きがあり、頻繁に戦いが行われているのなら、また話は別だっただろう。

 だが、フォイゾンはタータラ城に籠もっており、一行に出て来る気配もない。

 フラオン軍やピネガン軍もタータラ城にいるのか、それとも他の場所にいるのか……こちらもまた、攻撃を仕掛けて来る様子はない。

 そんな訳で、睨み合いとなっている現状では、俺がここにいる必要はない。

 ……いや、転移魔法の類を使えば、タータラ城を相手にしても対処出来ない事はないのだが。

 それでも、ドレイクやビショットとしては、俺にはナの国に向かって欲しかったらしい。

 結局、派手な見送りもなしで――フォイゾン達に気取られないようにするには当然だが――レンの海に出た訳だ。

 

「多島海を通っていく事になるんだよな?」

 

 レンの海に入ってから少しして、キブツにそう尋ねる。

 ブリッジの中にも、キッス家以外にドレイク軍の兵士が何人かおり、キブツも含めてまだそれに慣れていなさそうな様子を見せていたものの、その辺は時間が経てば慣れる……と、そう思いたい。

 ヨルムンガンドは自動化が進んではいるのだが、それでもオーラバトルシップだ。

 ナムワンやブルベガーとは比べものにならない程の大きさを持っている。

 ましてや、機械の館も搭載されていることを考えると、どうしても結構な人数が必要となる。

 ふと、ミの国を攻略する際に反乱軍をナムワンに乗せた時の事を思い出す。

 あの時は騒動が結構頻発したんだよな。

 ナムワンでは、俺が脅したという事もあって最初はともかく、その後は殆ど騒動がなくなったが、他のオーラシップではかなり騒動が起きたらしい。

 それに比べれば、今回は仮にもお互いにアの国の者同士という事で、騒動は起きないと思う。……思いたい。

 何しろ、ドレイク軍の兵士と、今は俺の部下になったとはいえ、元はギブン家に仕えていたキッス家の兵士だ。

 相性という点では、どうしても悪い。

 それでも、双方共に俺がどういう存在なのかは知っているので、無意味に騒動になるような真似はしないと、そう思いたいのは事実だ。

 

「はい。まだヨルムンガンドの運用に慣れていない以上、何かあった時に着地出来る場所が必要ですから。……もう数日時間があれば、ヨルムンガンドの操縦にも全く問題がない状態に出来たとは思うのですが」

 

 残念そうに言うキブツ。

 まぁ、キブツにしてみれば、今回の一件は色々と思うところがあってもおかしくはない。

 だが、ナの国には出来るだけ急いで行く必要がある。

 最悪、俺が転移なり直接飛んで行くなりで移動するといった方法もない訳ではない。

 しかし、ヨルムンガンドに乗って移動しているからこそ、相手にこちらは侮っていい相手ではないと示す事が出来るのだ。

 まぁ、本当にいざとなったら、ヨルムンガンドを空間倉庫に入れて、他の人員は影のゲートを使った転移で移動し、ナの国の領土に入ってから改めて空間倉庫からヨルムンガンドを出して……といった方法も、ない訳ではない。

 だが、そうなった場合、ヨルムンガンドの操縦訓練的な意味では失敗になる。

 何だかんだと、こうして実際にこのような状況で操縦訓練をするのが一番緊張をもたらし……実戦に近い状況になるのは、間違いないのだから。

 長い目で見た場合、今回の一件は決して悪い事ではないと思う。

 それは逆に短い目で見た場合、悪い事になる可能性も否定は出来ないのだが。

 

「多島海の近くを移動するとなると、ヨルムンガンドの運用には安心かもしれないが、襲撃に関しては警戒する必要があるだろうな。その辺、しっかりと頼むぞ」

「分かりました」

 

 俺の言葉に、ブリッジの面々が返事をする。

 ヨルムンガンドは、オーラバトルシップである以上、当然ながら索敵能力もナムワンとは比べものにならない程に高い。

 だが、それだけにナムワンでの運用に慣れている者にしてみれば、その性能を使いこなすには苦労する事になる。

 とはいえ、恐らくは大丈夫だろうと思っているが。

 何だかんだと、キッス家の面々は腕利きが多いし、ドレイクから派遣されてきた面々に関しても腕は間違いない。

 後は、やっぱり襲撃を警戒する必要があるといった感じか。

 ラウの国にしてみれば、俺達がナの国に行くと言うのは、絶対に阻止したい事の筈だし。

 俺達がナの国に行った結果として、援軍を送るのが中止されるといった可能性は十分にある。

 勿論、それが絶対に成功するといった訳ではない。

 場合によっては、ナの国と俺との間で交渉が決裂し、アの国やクの国に対するナの国の印象が悪くなり、援軍の数を増やすといった可能性も、否定は出来ない事実なのだ。

 そうなれば、ラウの国……それ以外にフラオンやピネガンにしても、十分に喜ぶべき事だろう。

 だが、今の状況でも援軍を派遣してくる可能性は高く、そう考えればやはり俺達が動いてどうなるのか分からないというのは、防ぎたい筈だ。

 ……けど、こうして色々と考え、その上で行動に出ておいてなんだが、ここまでしておいて実はラウの国がナの国に援軍を要請していませんでしたなんて事になったら、少し洒落にならないよな。

 とはいえ、今の状況を考えればそれが一番可能性が高いというのも、また事実なのだが。

 実際、現在のラウの国の状況で乾坤一擲を狙って打って出るでもなく、タータラ城で籠城しているのを見れば、どこからか援軍を待っているといった可能性が一番高い。

 そうでなければ、籠城をする意味はないだろうし。

 ……他に考えられるとすれば、こっちが食糧不足になって撤退するといった可能性か。

 ただし、今の状況においてはバーン率いる補給隊には護衛もしっかりとついているし、その辺を心配する必要はないと思う。

 

「アクセル、見て……海よ」

 

 俺が今回の一件やラウの国について色々と考えていると、そんな声で我に返る。

 声の聞こえてきた方に視線を向けると、そこにはブリッジの映像モニタに表示されている海の姿があった。

 レンの海……アの国がある場所とナの国との間を隔てている海だ。

 いやまぁ、海を通らなくてもラウの国からナの国までの間は地上からでも移動出来るんだが。

 ただ、その場合はラウの国もナの国もまだ国として取り入れていない場所を通る必要がある。

 そのような場所は、当然だがそういう理由があるからこそ放っておかれている訳だ。

 あるいはこのまま時間が経てば、いずれはラウの国やナの国の国土となるか……もしくは、本当に可能性は少ないものの、新しい国が出来るかもしれない。

 だが、今はその辺については特に考える必要もなく……俺達が行うのは、少しでも早くこのレンの海を抜けて、ナの国に到着する事だけだ。

 

「へぇ、バイストン・ウェルの海だというから、もっと予想外の光景が広がってるのかと思ったけど、普通の海だな」

「そうなのですか? では、地上の海もレンの海のような?」

 

 キブツが興味深そうに尋ねてくる。

 バイストン・ウェルの人間にすれば、地上人というのは例外なく高いオーラ力を持った聖戦士だ。

 実際には、地上にいる中でも高いオーラ力を持った者を選んで召喚しているというのが、正しいのだが。

 

「ああ。地上の海も大体こういう感じだな。まぁ、遠くから見ているから似たように見えるけど、近くから見ると色々と違う可能性はあるけどな」

 

 海にも恐獣の類がいるというのは、聞いた覚えがある。

 とはいえ、海の恐獣はオーラバトラーの素材としては使われていないらしいが。

 理由としては幾つかあるが、ルフト領が海に面していなかったというのが大きい。

 勿論、恐獣の素材の多くはリの国から購入しているのだが、そのリの国でも売っている恐獣の素材はそのほぼ全てが地上、もしくは空を飛ぶ恐獣の物となる。

 考えてみれば当然の話なのだが、海に棲息する恐獣を獲る為には、海に潜る……もしくは船を出す必要がある。

 そして恐獣は凶暴であり、人間は海の中ではろくに動き回るといったような事が出来ない。

 そう考えると、地上で恐獣と戦うよりも圧倒的に人間に不利なのが分かるだろう。

 だからこそ、どうしても海にいる恐獣は厄介な相手なのだ。

 あるいは、もっとオーラバトラーが進化して、水中用MSならぬ、水中用オーラバトラーでも出来れば、また話は別なのかもしれないが。

 一応、オーラバトラーでも水中は潜れるらしいが、それでもやはりそれは潜れるだけであって、水中で万全の状態で動ける訳ではないのだから。

 

「地上の海……どのような場所なのか、興味がありますね」

「さっきも言ったが、遠くから見る分にはこの景色とそう違いはないぞ」

「それでも、見てみたいと思うのはおかしいでしょうか?」

「いや、そこまでおかしくはないと思うけどな。好奇心が旺盛なのは、問題ないと思うし」

 

 俺が色々な世界に行くのも、未知の技術を得る為というのがあるが、未知の世界を自分の目で見てみたいという思いがあるのも否定出来ない。

 同時に、生身の単独で別の世界に行っても一番生き残れる可能性が高いのが俺だから、というのもあるのだが。

 

「そう言って貰えると、助かります」

 

 キブツは俺がおかしいといったような言い方をしなかった為か、安堵した様子を見せる。

 今までキブツは家の存続を最重要に考えているというのは知っていたが、こうして見ると好奇心も強いらしい。

 とはいえ、バイストン・ウェルの人間なら地上に興味を持つというのは、そんなに珍しい話ではないかもしれないが。

 

「ガラリアが行ったように、地上に出られたらキブツも海を見られるかもしれないな。もっとも、その場合はまたバイストン・ウェルに戻ってくるのが大変になりそうな気もするけど」

「そうですね。キッス家を残す為には、地上に出る訳にはいきません」

 

 地上でキッス家を残せばいいのでは? とふと思ったが、それはそれで難しいだろう。

 キブツにしても、キッス家はあくまでバイストン・ウェルにある家という認識なのだろうし。

 

「そうなると、残念ながら地上に行くといった真似は出来ないな」

「……そうですね。残念ながら。跡継ぎでもいれば、また話は別だったでしょうが」

 

 あー……跡継ぎか。

 本来なら、キッス家にはキーンという女がいた。

 女である以上、キッス家の当主ではなく、婿養子を取るといった感じになるのもしれないが、ともあれそのキーンはニー・ギブンに惚れているらしく、ゼラーナ隊で一緒に働いている。

 そうなると、キッス家を守るというのはどうなるんだろうな。

 キブツが新たに子供を作るのか、もしくは親戚や従兄弟から養子に貰うのか。

 その辺りについてキブツがどう考えているのかは、俺には分からない。

 だが、キッス家を守る為にこうして俺に降伏してきた以上、その辺について考えているのは間違いない。

 キーン以外にも子供がいれば、その辺を心配する事はなかったんだけどな。

 だが、こうした風に跡継ぎがいないと言う以上、キーン以外に子供はいないのだろう。

 ともあれ、そんな状況で俺が出来るのは、キッス家を何とか存続させるように注意するだけだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1680

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