転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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番外編122話 if 日本国召喚編 第05話

 戦力が消滅したエストシラントの中を、俺は量産型Wやメギロート、イルメヤ、バッタを引き連れて進む。

 レモンを始めとして他の者達もいたのだが、その者達は現在エストシラントを見て回っており、生き残っている戦力がいないかどうかを確認していた。

 そうして進む俺達だったが、戦力は既に殆どが消滅している以上、止めようとする相手はいない。

 エストシラントの住人達はまだかなり生き残っているが、それはあくまでも一般人だ。

 自分達の首都を、敵である俺が戦力を引き連れて堂々と歩いていても、攻撃するような真似はしない。

 幸いにも俺が進んでいるのは大通りなので、バッタはともかく、メギロートやイルメヤが移動しても建物を壊すといったような事はなかった。

 パーパルディアの住人にしてみれば、少し前まで自分達は選ばれた存在だと思っていたのだが、この短時間で一気に落ちぶれてしまったのだ。

 一体何が起きたのかを理解出来ている者は少ないだろうし、選民思想によって毒されている者が我に返っても、こうしてあからさまに戦力を引き連れている俺達を前にして、何かが出来る筈もない。

 それこそ、もしこの状況で俺に向かって攻撃をしてこようものなら、自分達に何が起きるのか……それは、エストシラントが現在どのような状況になっているのかを考えれば、明らかだろう。

 そうして俺達がやって来たのは、エストシラントの中央に存在する、城。

 パーパルディアの皇帝が住んでいる場所だ。

 そんな城の前では、軍人達の多くが倒れている。

 いや、そうやって死体となっているのは、まだ幸運な方だろう。

 死体の多くが、肉片となってその辺に散らばっているのだから。

 

「へぇ」

 

 そんな中、それでもまだ何人かが負傷しつつも、俺達の前に立ち塞がろうとしている軍人の姿を見て、そんな声を漏らす。

 とはいえ、その声は感心と驚き……そして呆れの混ざった声だったが。

 片腕がない奴や、脇腹から大量に出血しており、明らかに先が長くないような、そんな兵士達が多数いるのだ。

 そんな状況で、この戦力をどうにか出来る訳がない。

 

「貴様ら、ここをどこだと思……」

 

 最後まで言うことなく、バッタから放たれた1発の小型ミサイルが命中し、軍人が死ぬ。

 小型ミサイルとはいえ、それは命中すれば間違いなく相手を殺すだけの威力を持っている。

 まさか、台詞を最後まで言わせて貰えないとは思わなかったのか、兵士達の動きが止まり……そこにイルメヤのガトリングフォトンが連射され、数秒と掛からずに死んでしまう。

 

「よし、じゃあ量産型Wは俺についてこい。無人機はここで警戒。攻撃してくる奴がいたら、排除しろ」

 

 そう命令し、城の中に入っていく。

 城の中で捜すべき人物は2人いる。

 1人は、ルディアス。

 このパーパルディアの皇帝で、殲滅戦の宣言をした奴だ。

 パーパルディアが敗戦国になったということを示す為にも、ルディアスは是非必要だ。

 そしてもう1人は、レミール。

 この女は皇族の1人で、何よりもフェンで日本人を公開処刑した張本人だ。

 当然だが、この女の生け捕りを俺達に依頼したのは、企業の会長を始めとしたフェンでの被害者一同となる。

 日本政府が人権がどうのこうのと言ってきたが、中途半端にシャドウミラーの実力を理解出来る分だけ、日本には何も出来ない。

 これでもっと長期間日本と接してきていれば、もう少しシャドウミラーの事を理解して自分達の言い分を理解させるといったような真似も出来たのだろうが……生憎、日本とはまだ接触したばかりだ。

 そんな訳で、日本もこちらがどのような事を考えているのかどうか分からず、結果としてシャドウミラーの好きなようにさせるしかなかったのだろう。

 城の中を進む。

 幸いにして、俺が目指しているのは謁見の間だ。

 パーパルディアの皇帝だけあって、ルディアスにしろ、レミールにしろ、プライドが高い。

 これで実力に見合ったプライドなら……いや、シャドウミラーや日本と接触するまでは、パーパルディアがこの辺り一帯の王であるのは間違いなかったのだから、それはしょうがない。

 ルディアスやレミールの失敗は、日本やシャドウミラーがどのような存在なのかを認める事が出来なかった点だ。

 それも、フェンとの一件でパーパルディア軍が負けても、自分達の常識だけを信じてそれを倒した相手の事を理解しようとはしなかった。

 国を率いる身として、そのようなミスは致命的なのは間違いない。

 そんな事を考えている間に、謁見の間と思しき場所に到着する。

 大きな扉を開こうとするが、鍵でも掛かっているのか、それとも向こう側に何か物を置いて開かないようにしているのか、扉が動く事はない。

 はぁ。

 そんな溜息を吐いてから、白炎を放って扉を爆破する。

 周囲に激しい爆音が鳴り響き、扉の破片が散らばる。

 そうして扉がなくなった場所を入っていくと……

 

「うおおおおおっ!」

 

 恐怖を押し殺すかのような雄叫びを上げながら、中年の男が長剣を構えてこちらに向かってくる。

 

「やれ」

 

 その一言と共に、俺の近くにいた量産型Wがガンドを放ち、その一発で頭部を破壊され、中年の男は床に倒れ込む

 

 

「アルデ様!」

 

 謁見の間と思しき場所……いや、思しき場所じゃないな。玉座があり、そこにルディアスと思しき人物が座っているのを見れば、ここが謁見の間なのは確実か。

 ただ、レミールの姿はない。

 ルディアスの顔は前もって確認出来なかったが、レミールの姿は公開処刑の映像から企業の方で日本政府に手を回して入手している。

 しかし、そんなレミールの姿は謁見の間にない。

 

「それで? そこにいるのがルディアスとやらでいいのか?」

「無礼者! 貴様、誰に口を利いている!」

 

 あるいはルディアスの影武者か何かではないのか? と思って尋ねるが、謁見の間にいた者の1人が俺に向かってそう叫ぶ。

 

「やれ」

 

 短い一言だったが、その一言で俺に向かって叫んだ男の運命は終わった。

 量産型Wの放ったガンドによって、アルデとやらと同じく頭部を粉砕される。

 本来なら、量産型Wの使うガンドは凛程の威力はない。

 だが、この量産型W達は魔術方面の能力を伸ばした試作型だったのだが……ガンドの威力は十分だな。

 

「さて、今のでこの状況のルールは分かったな? お前達に出来るのは、素直に俺の言葉に従うだけだ。……お前がルディアスで間違いないな?」

「うむ。余が皇帝たるルディアスで間違いない。しかし、蛮族が余に……」

「やれ」

「ぐぎゃぁっ!」

「陛下!」

 

 俺の問い以外に答えようとしたルディアスは、量産型Wのガンドによって吹き飛ばされる。

 量産型Wも威力を加減していたのか、ルディアスは先程叫んだ男のように死んだりといったような事にはなっていない。

 しかし、それでも胴体に強力な一撃を食らったのは間違いなく、その場で胃の中のもの吐き出す。

 皇帝としては、決して人前でやってはいけない行為。

 とはいえ、だからこそ俺はそういう真似をさせたのだが。

 

「げほっ、ごほっ、貴様……」

 

 胃の中のものを全て吐き出し、睨み付けてくるルディアス。

 へぇ、この状況でもまだプライドが残っているらしい。

 

「これでお互いの立場が分かっただろう? それはそれとして、俺の今回の目的はルディアスとレミールだったんだが、こっちには1匹しかいないな。もう1匹はどこにいった?」

「っ!?」

 

 1人ではなく、1匹と呼ばれたことが信じられないといった様子を見せるルディアス。

 だが、俺にしてみれば、既にルディアスの使い道など殆どない。

 向こうにお互いの立場を分からせる意味でも、ここでしっかりと上下関係を植え付けておいた方がいいだろう。

 

「どうした? 俺の話を聞いていなかったのか? レミールはどうした? てっきりここにいるのかとばかり思っていたんだが……」

「お待ち下さい!」

 

 と、不意にそんな声が聞こえてくる。

 それがルディアスの側にいる者達からであれば、特に驚くような事はなかっただろう。

 だが、その声が聞こえてきたのが背後となれば、また話が違ってくる。

 声のした方に視線を向けると、そこには何人かの兵士を従えた男が1人いる。

 50代くらいか?

 その人物が俺に声を掛けてきたのは、間違いない。

 そして何よりも驚く事は、兵士が捕まえている女だ。

 その顔には見覚えがある。

 前もって企業から知らされていた、レミールの顔。

 猿轡をされているせいか、レミールは何も言う事は出来ない。

 ただ、自分を捕まえている兵士や、俺に声を掛けてきた男に鋭い視線を向けているだけだ。

 だが、その視線がルディアスの方に……自分の胃の中から吐き出したもので高価そうな服が汚れているルディアスを見ると、大きく目を見開く。

 そして、猿轡を嵌められているにも関わらず、何かを叫ぼうとしていた。

 それはともかくとして……

 

「お前は?」

「私はカイオスと申します。アクセル王、お目通りに掛かれて幸いです」

「へぇ」

 

 俺の名前を知り、更には王であるという立場である事も知っている。

 パーパルディアの人間にしては、高い情報収集能力を持ってるな。

 俺について知っているのは、日本の者達だけ。

 つまり、このカイオスは日本と繋がっているのか。

 その事を知り、日本を少し見直す。

 とはいえ、日本は現場に優秀な人物が揃っているのは、以前から知っていた事だ。

 問題なのは、現場ではなく上に無能や事なかれ主義が揃っている事なんだよな。

 だからこそ、このカイオスと接触するというのも、上ではなく現場……あるいは、上が関わっていても本当の意味の上ではなく、有能な人物がいる程度の上といったところだと思う。

 勿論、俺も日本の上層部を全員完璧に知っている訳ではない。

 中には、本当に有能な人物がいるといった可能性も否定は出来ないのだが。

 

「それで? カイオスが何の用件だ?」

「降伏を検討して貰えばと」

「カイオス、貴様ぁ!」

「やれ」

「ぎゃっ!」

 

 カイオスの言葉にルディアスが怒りの声を上げようとしたが、再度量産型Wのガンドによって打ちのめされる。

 そんなルディアスの様子に、カイオスは何か口を開こうとして……だが、結局何も言わない。

 

「降伏か。だが、このままパーパルディアの連中を皆殺しにして、この土地を入手した方がいいと思うが?」

「降伏を認めていただければ、我々はシャドウミラーの従属国として働きます。どうでしょう? また、聞いた話によれば、アクセル王は……いえ、シャドウミラーはワイバーン関係の技術に強い興味を持っているとか」

 

 ふむ、なるほど。

 その辺についてまで知っているとなると、カイオスと繋がっているのは日本の中でもそれなりに事情に詳しい連中か。

 だとすれば、俺の脅しを本気で信じるといったような真似をしなくてもおかしくはない。

 とはいえ、このまま素直に降伏を認めるのも……ふむ、そうだな。

 

「そうだな。降伏を認めた場合、パーパルディア……正確にはパーパルディア皇国か。その名前をパーパルディア劣等国としてもらう。それなら降伏を認めてもいいが、どうだ?」

「な……」

 

 唖然とした声を発すのは、ルディアス。

 いや、他の者達……カイオスも含めて、驚愕の視線をこちらに向けている。

 まさか、このような事を言われるとは思ってもいなかったのだろう。

 

「また、ワイバーン関係の技術についての詳細を全て貰う。生き残っているのも貰うぞ」

「そちらに関しては構いません。ですが、名前の方はどうにかなりませんか?」

「ならないな。パーパルディアには、その愚劣さを後世まで残す為にその名前は絶対だ」

「ん! んんんんんんんー!」

 

 猿轡を嵌められたレミールは、必死に何かを言おうしているが、何を言ってるのかは全く分からない。分からないが、それでも何を言いたいのかというのは話の流れから十分に理解出来た。

 

「それと……これからルディアスとレミールは首輪をして貰って全裸の状態でエストシラントから出る。構わないな?」

 

 そんな俺の言葉に、再度レミールが何かを叫ぼうとする。

 まぁ、レミールは女だし、顔立ちも整っており、身体も女らしい曲線を描いている。

 当然だが、レミールも自分が男にどのような目で見られるのかは理解しており、それだけに絶対に許容出来ないと、そう理解しているのだろう。

 ルディアスや、その周囲にいる者達は不満そうな様子を見せてはいるが、口を開かない。

 ここで何かを言えば、また量産型Wによって攻撃されると理解しているのだろう。

 実際、俺もそう命令するつもりだったから、その反応は正しい。

 

「やれ」

 

 そんな俺の言葉に、量産型Wが動き出す。

 それでも何人かがルディアスに近付こうとするのを防ごうとするが、呆気なく量産型Wに倒される。

 そして、身動きが出来なくなった状態で、量産型Wが最初にルディアスを捕まえた。

 何とか量産型Wの手を振りほどこうとするルディアスだったが、量産型Wに殴られ、蹴られ、抵抗出来ない状態にされてから服を破り捨て、下着も剥ぎ取り犬用の首輪を嵌める。

 

「貴様!」

 

 ルディアスが怒りに任せて叫ぶものの、量産型Wは気にした様子も見せずに首輪から繋がっている紐を引っ張って床に這いつくばらせる。

 そして、他の量産型Wがレミールに向かうのだった。


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