ドラムロに見つかってから、30分程が経過し……サーバインの右手に乗っているキブツが示したのは、山の近くにある森だった。
山の近くにある森となると、それこそ恐獣の類がいてもおかしくはない。
戦力がそこまでない状態で、大丈夫なのか? 恐獣に殺されてるんじゃないか?
そんな思いでいたのだが、ダーナ・オシーを数機持ってきているので、大丈夫らしかった。
それを証明するかのように、森の中にサーバインが降下していくと、ダーナ・オシーが姿を現したのだから。
それでも武器を手にしていなかったのは、サーバインの右手にキブツが……キッス家の当主が乗っていたからだろう。
特に自由を奪われているといった様子もなく、自由に行動をしてしているのを見ればキブツが囚われているといった訳ではなく、交渉が成功した……もしくは現在交渉中であるといったように思えてもおかしくはない。
ダーナ・オシーという戦力があるから、恐獣に襲われるような事もなく、こうして山の近くにある森という、いかにも恐獣が出て来そうな場所であっても問題なくいられたのだろう。
……普通に移動しているのではなく、オーラバトラーを引き連れて移動するとなると、どうしても目立つと思うんだが。
一体、どうやってアの国の中に入って、更にはその中をここまで移動してきたんだろうな?
そんな疑問を抱きつつ、俺は森の中にサーバインを着地させる、
サーバインをしゃがませ、右手に乗っていたキブツとガロウ・ランの男を地面に下ろす。
それを確認してから、俺もサーバインのコックピットから出て……キブツ家の面々から様々な種類の視線を向けられつつ、地面に着地した。
「アクセル・アルマー王だ。皆、失礼のないように」
キブツの言葉に、俺に視線を向けていた者達の視線の中から負の感情を持った視線が消える。
まぁ、キブツ家の面々にしてみれば、本来なら俺は不倶戴天の敵といったような感じなんだろうし、そんな相手に降伏するのだから、色々と思うところがあってもおかしくはない。
それでもキブツの言葉でこうして負の視線が消えるというのは、それだけキブツが下の者に信頼されているということなのだろう。
羨ましい限りだ。
「キブツ様、アクセル王と一緒に来たという事は……降伏の件は成功したのですか?」
「うむ。まだ完全にではないものの、受け入れて貰った。私はまずボゾンをアクセル王に渡してから、ドレイク城に向かう」
「ドレイク城に!?」
ざわり、と。
周囲にいる者達がキブツの言葉にわざめく。
キッス家の面々にしてみれば、自分達を率いるキブツがドレイク城に……ドレイクの本拠地に向かうというのは、そう簡単に容認出来る事ではないのだろう。
「うむ。そこで私はアクセル王に降伏するということをドレイク王に示す」
キッスのその言葉に色々と思うところがある者も多いのだろう。
多くの者が複雑そうな表情を浮かべていた。
現在のキッス家の状況を思えば、それが最善の道であるというのは他の面々も理解しているのだろう。
でなければ、キッス家の当主たるキブツが護衛もなしにガロウ・ラン1人だけを連れて、俺に会いに来るといったような真似は普通しないだろう。
キッス家の面々もそれが分かっているからこそ、キブツの口から出た言葉に不満を抱きつつも、それに対して何かを言えなかった。
本来なら、信じてもいいのかといったような事を言ってもおかしくはない。
「大丈夫だ」
そんな面々に対し、キブツは短くそれだけを告げる。
そして、キブツのその言葉に聞いていた方は完全にではないものの、納得した様子を見せる。
「それと……ボゾンを持ってこい」
「分かりました」
キブツの命令に従い、1人がその場から走り去る。
「アクセル王、ボゾンが来るまで少し掛かるので、皆の前で聞いておきたいのですが……私達の降伏が認められた場合、どうなりますか?」
「どうなる、とは? 具体的にどういう意味だ?」
「私達の扱いになります。アクセル王はシャドウミラーという異世界の国の王であると聞いています」
この辺の情報は、ショウから……いや、リムルもか? そっちから流れたのだろう。
そう言えば、キブツをドレイク城に連れていったら、当然だがリムルについても話題になる筈だ。
ドレイクにしてみれば、家出をしてギブン家に協力しているリムルも、愛娘であるのは変わらないのだから。
とはいえ、ドレイクは現在の自分が国王であるというのをきちんと理解している。
その上で、感情に流されるといった事はないと思うが。
ただ、ドレイクは何だかんだとリムルを可愛がっているんだよな。
その辺がどう対応出来るか。
「そうだな。俺はシャドウミラーという、地上とはまた違う場所に存在する国の王だ。それは間違いない。だが、シャドウミラーという国の庇護を期待しているのなら、その期待は叶えられないぞ。このバイストン・ウェルにおいて、ゲート……俺の世界と行き来出来る為の装置が発動しないからな」
正直なところ、この件を何とかする必要があるのは間違いない。
具体的には、恐らく地上に行けばどうにかなるとは思ってるんだが……それをどうするか、だよな。
ガラリアが行ったように、バストールの新型オーラ増幅器を使った実験でも、結局オーラ増幅器が燃えただけだったし。
そういう意味では、シャドウミラーの方をどうにか出来るというのは不可能でしかない。
そうである以上、キブツが望んでいるキッス家の安泰というのは難しいだろう。
「ただ……」
俺の言葉に落ち込んだ様子を見せるキブツ達だったが、その言葉にまだ何か救いがあるのかといったような視線を向けてくる。
「俺がキッス家を完全に保護するのは不可能だが、俺の下でお前達がしっかりと戦って戦功を挙げれば、ドレイクもキッス家を認める事になるだろうな」
「……そうですか?」
信じられないといった様子でこちらに視線を向けてくるキッス。
ドレイクが国王になる前、ルフト領にいた時から知っているからこそ、その言葉を素直に信じるといったような真似が出来ないのだろう。
とはいえ、当時のキッス家……正確にはそのキッス家が仕えていたギブン家はドレイクを悪しきオーラ力の持ち主と認識して、敵対的な行動をとっていた。
それが今のこの状況になっているのは間違いない。
だからこそ、それが心のどこかに残っており、ドレイクの事を心の底から信じるといったような真似が出来ないのだろう。
そもそも、ドレイクをそこまで信じられるのなら、別にわざわざ俺に降伏をしてくる必要はない。
それが出来ないからこそ、キブツは残っている俺に降伏してきたのだ。
それにしたって、俺がドレイクと友好的な関係にあるというのを考えれば、かなりの賭けではあったが。
「最初は信じられるといった事はない。それこそ、ドレイク軍の者達にしてみれば、キッス家は敵だったんだから、見る目も厳しい筈だ。だが、それでも俺の下で功績を挙げていけば、いずれはドレイクも本当に降伏してきたのだと、認めざるをえなくなる。そうなれば、キッス家も安泰となる可能性は高い」
とはいえ、言うは易く行うは難しといった感じだよな。
まず、手柄を挙げるというのが難しい。
そもそも、俺がキッス家の面々に頼むのは、最初はナムワンを使ってもらい、ヨルムンガンドが完成したらそっちを運用して貰うという方法だ。
オーラシップとオーラバトルシップ。
それでもドレイクのウィル・ウィプスと違い、ヨルムンガンドは基本的には前線に出ないで後方で空母的な役割を期待されているコンセプトのオーラバトルシップだ。
そんな状況でキッス家が手柄を挙げるというのは、正直なところかなり難しいだろう。
それこそ、最悪功に逸ってオーラバトルシップで前線に突っ込むなんて真似もやりかねない。
その辺は俺がどうキッス家を抑えるかに掛かってるか。
とはいえ、キブツの様子を見る限りでは、そこまで無茶をするようには思えない。
そんなキブツに前もって話を通しておけば、その辺は特に心配する必要もない……と、そう思う。
あくまでも俺がそう思うというだけで、本当にそんな感じに出来るかどうかは、まだ分からないが。
「そうだな、この辺は言っておいた方が、後でどうこう言われなくてもいいか。もしキッス家が俺に降伏するというのを認められた場合、キッス家の面々には基本的にオーラバトラーを使って前線に出るといった真似はさせないで、ナムワン……もしくはそれ以外に現在開発している新型の軍艦の運用をして貰うつもりだ」
そんな俺の言葉に、キッス家の面々は微妙な表情を浮かべる。
オーラバトラーに乗って前線で戦わなくてもいいというのは、死ぬ可能性が低くなるのは事実だが、先程俺が言ったように手柄を挙げるのも難しくなるのは間違いない。
キッス家にしてみれば、痛し痒しといったところか。
ちなみにオーラバトルシップという名前を使わなかったのか、一応……万が一にも、実はキッス家がフラオンの命令で動いているかも? といった事を警戒してだ。
とはいえ、キッス家の様子を見る限りその心配はいらなさそうだが。
ギブン家然り、キッス家然り……忠誠心に深い連中が揃ってるってのは、やっぱり原作主人公のショウが味方をする勢力だからとか、そんな可能性もあるのか?
「では、先程アクセル王が仰った手柄というのは、どうなるのですか?」
キブツが念を押すようにそう尋ねてくる。
キブツにしてみれば、俺に降伏するのはあくまでもキッス家存続の為というのが大きい。
その為に、今まで忠誠を誓ってきたギブン家を裏切ってこっちに降伏しようとしてきたのだ。
だというのに、俺の口から出たのが先程のような言葉となれば……今のような反応になるのも、おかしくはない。
「オーラシップに乗っていても手柄は挙げられるだろう? 勿論、強引に前線に突っ込むなんて真似は却下だが」
そう告げると、キブツは悩み始める。
俺の言葉に、どこまで信憑性があるのかと、そんな風に思っているのだろう。
とはいえ、キブツがここで悩んでいたとしても、実際にはもうどうしようもない。
既にこうして行動を起こしてる以上、俺の提案に乗らないという選択肢はないのだ。
もしどうしてもそれが嫌だった場合、俺を殺すといったような真似をすれば、ドレイクの大きな戦力を奪ったという事にして帰れるかもしれないが……それは実際に不可能だし。
そんな風に考えていると、やがて森の奥から1機のオーラバトラーが姿を現す。
「へぇ、これが……」
キブツが何を言わなくても、このオーラバトラーがボゾンであるというのはすぐに分かった。
何しろ、外見がダーナ・オシー系であると、一目で分かる外見をしていたのだから。
それでいて、明らかにダーナ・オシーとは違う……もっと洗練されているという表現が正しいのか?
とはいえ、それでもダーナ・オシーのような異形……あるいは、より生物らしい外見なのは間違いないが。
「はい。これがダーナ・オシーの発展系……ボゾンです」
「見た感じだと、ダーナ・オシーの正統進化形といった感じだな。ドラムロのように重装甲ではなく、運動性を重視した感じで」
元々、オーラバトラーというのは、運動性や機動性を重視するのが正解だろうと、そう俺は思っていた。
これはあくまでも俺の持論であり、実際には違う可能性も十分にある。
しかし、中途半端に重装甲にするようなら、運動性や機動性を重視した方が……というのは、俺が敵の攻撃を回避するといったような戦闘行動をしているから、というのが大きいんだろう。
実際、ドラムロは空間倉庫に収納されているが、それに乗りたいとは思わない。
ただ、それはあくまでも攻撃が命中しても死なない、混沌精霊の俺だからこそ、そう思うんだろう。
ドレイクの部下でドラムロに乗っている者達にしてみれば、その重装甲は安心して身を預けられるという意味で重要な存在なのだろう。
「どういう機体なのか、説明は貰えるか?」
「はい。……頼む」
キブツが俺の言葉に、技術者と思しき男が1歩前に出て口を開く。
「ボゾンで特筆すべきは、その生産性です。ダーナ・オシーも高い生産性を誇りましたが、ボゾンもまたそんなダーナ・オシーに負けないだけの生産性を持ちます。他にも掌にボゾン砲という滑空砲を装備している事や、複数の矢を撃ち出すガッシュという武器もあります。また、当然ながらオーラソードは使用可能です」
なるほど、使用武器という点では結構いい感じなんだな。
後は……実際の性能か。
とはいえ、こればかりは俺が試す訳にはいかない。
俺が普通のオーラコンバータを使うと、魔力に耐えられなくて燃えるし。
あるいは、このボゾンが新型だというのなら、俺が乗っても大丈夫という可能性もない訳ではないが……それでも1機しかない状況では、止めておいた方がいいだろうと、俺はそう判断するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680