当然の話だが、バーンの部隊の一件は大きな問題になった。
反乱軍の上層部がピネガンを説得しようとしていて、その説得も上手くいきそうになっていたのだが……ピネガンにしてみれば、そんな中で王都の略奪だ。
ふざけるなと、そんな風に思ってもおかしくはないだろう。
不幸中の幸いだったのは、既にピネガンには戦力……この場合はオーラバトラーのダーナ・オシーだが、それが殆ど残っていなかった事か。
ギブン家とフラオンと協力してドレイクを倒そうとした時に大敗して大きな被害を受け、俺とマーベルがミの国に侵入して正規軍のダーナ・オシーや機械の館を破壊したり……そしてフラオンと内乱を起こしてそこでも揉めて、更には反乱軍の存在もある。
その辺りの事情を考えると、ミの国のような小国でよくもここまでダーナ・オシーを量産する事が出来たと、寧ろ褒めてもいいくらいだ。
それでも、限界はある。
王都を戦場にしない為に、敢えて行われた夜戦。
フラオン軍と共に挟撃し、それを囮にして上空からダーナ・オシーがドレイクの首を狙い、こちらもまた囮で、下から向こうが持つ最大戦力のショウがドレイクの首を狙う。
そんな戦力の限界を込めたかのような攻撃をして、それも失敗し……更には、その攻撃が失敗するとフラオン軍はとっとと撤退してしまい、残るドレイク軍全てをピネガンが引き受ける事になったのだ。
そんな戦いの連続があれば、ピネガンの戦力が限界を迎えるのも当然だろう。
そうして戦力が少ないからこそ、今のピネガンは暴発するといったような真似も出来なくなっている。
ある意味で、これは運がよかったと言ってもいいのかもしれないな。
だが、暴発をしなくなったのは間違いなかったが、だからといって王都をバーンの部隊が略奪した事で、態度が完全に硬化してしまったのは間違いない。
そうなると、今のこの状況で打てる手段は多くない。
「で、それを俺に聞くのか？」
ブル・ベガーにある、ドレイクの執務室。
そこで俺は、若干の呆れを込めてドレイクに向かってそう告げる。
当然だろう。
まさか、ここで俺に向かってそんな事を聞いてくるというのは、完全に予想外だったのだから。
「うむ。アクセル王も王としての経験があるのであろう？ であれば、このような時はどうするかと思ってな。知恵を借りたい」
そう言ってくるドレイクだったが……俺の場合、そういう経験はなかったりする。
何しろ、シャドウミラーの主力はメギロートやバッタのような無人機で、こっちから命令しない限り意味のない破壊をしたりはしない。
量産型Wは生きているが、自我の存在しない人造人間である以上、こちらも無人機と同じく命令しない限りは自分の欲望に従って……といったような事はない。
そうなると、残るのは実働班の面々か。
だが、実働班の面々は一兵士ではないので、規律も相応に高い。
少なくても、何の理由もなく自分の欲望の為に略奪をするなどといったことはない。
……ムラタ辺りなら、相手が強者なら戦いを求めて攻撃をするといった可能性は否定出来ないかも？
とはいえ、シャドウミラーはそういう意味では非常に特殊な国だ。
無人機と量産型Wが主戦力だからこそ、そういう略奪の類は起きていない。
しかし、普通の軍隊はそうはいかない。
それこそ教育がしっかりとしている現代の軍隊であっても、略奪や暴行は普通にある。
ライダイハンの類を見れば、それは明らかだろう。
「そうだな。この場合問題なのは、ピネガンの面子を潰したという点が大きいんだよな？」
「うむ。そうなる。何しろ、降伏するように説得してる時に、王都で略奪だからな」
そうなんだよな。
それによって、ピネガンは思い切り面子を潰された。
ピネガンにしてみれば、面子以外にもこうして略奪をするような連中を相手に、降伏出来るかといった思いを抱いたのは間違いないだろう。
それでどうするかと考え……ふと、食堂でトッドやマーベルと話していた事を思い浮かべる。
あるいはこれは、そのチャンスでもあるのか？
「そうだな、思いつく方法はある」
「ほう？ それを聞かせて貰えるかな？」
「ああ。別にそんなに難しい話じゃないしな。まず王都を襲撃した兵士達を捕らえる」
「それはもうやっている」
ドレイクもその辺は迅速に対応しているか。
まぁ、ドレイクの性格を考えると、その辺は当然か。
「なら、その連中はピネガンと……そして王都の住人の前で公開処刑するといい」
「……ほう？」
俺の口から出た言葉が予想外だったのか、意外そうな声を発するドレイク。
そんなドレイクに対し、俺は言葉を続ける。
「それとバーンだ。今回の略奪がバーンの命令だったのかどうかは、俺には分からない。だが、バーンの部隊の者がやったという事は、バーンが部下を掌握出来ていない事を意味する。その為、罰として階級を下げるといったような真似は必要になるだろうな」
「それについては理解している。元々、バーンはここのところ失態続きだった。それを思えば、今回の一件を大目に見るようなことは出来ん」
ドレイクも最近のバーンの行動には不満を持っていたのだろう。
この様子から考えると、筆頭騎士といった地位からは間違いなく解任される事になるだろう。
さすがに部下の不祥事だからといって、バーンをも公開処刑とする訳ではないだろうが。
「バーンを解任して、実行犯を公開処刑する。こうする事によって、ドレイクは兵士に略奪を許さないと内外に示せる」
「うむ。それ以外に手はあるか？」
こちらを窺うような視線を向け、尋ねてくるドレイク。
なるほど。この様子からすると、一応俺に聞きはしたが、実際には既にどうするのかはきちんと決めてあるのだろう。
その上で、俺に何かいい意見はないかと、そんな風に尋ねてきているといったところか。
「後は……ピネガンが降伏したら、ミの国は消滅してアの国の領土という事になるだろう？」
「うん？ ああ、その通りだ」
「なら、このミの国をトッドに領土として与えるといい」
「……何だと？」
トッドに領土としてミの国を丸々渡すというのは、ドレイクにとっても予想外の事だったのか、驚きの表情を浮かべる。
まぁ、ドレイクにしてみれば、トッドは聖戦士という特別な存在ではあっても外様の人間という思いがあったのだろう。
「現在のトッドは、ドレイクの部下の中でも特別な存在だ。それは理解出来るな？」
その言葉にドレイクは頷く。
ドレイクにとっても、トッドが自分の部下の中でも特別な存在であるというのは、否定出来ない事実なのだろう。
バイストン・ウェルに伝わる、伝説の聖戦士。
その聖戦士の中でも、ドレイクの部下の5人の聖戦士の中でも最強の存在。
曲がりなりにも1対1である程度ショウと戦えるだけの実力を持ち、実績という点でも反乱軍を率いるといった事で十分だ。
「そんなトッドだけに、ミの国という一国を領地として与えてもいいと思わないか？ ……勿論、トッドは地上で育ってきたのだから、バイストン・ウェルで領地を運営するような事は出来ない以上、実際に領地を運営するのはドレイクが送り込んだ連中になるだろうが」
その言葉を聞き、ドレイクは安堵した様子を見せる。
ドレイクにしてみれば、ここで本当の意味でミの国をトッドに与えるといったような事になった場合、色々と不味いと判断したのだろう。
俺としては、それならそれで別に構わないという思いもあったのだが
「つまり、聖戦士の中でも一番腕の立つ者にミの国を領土として与えれば、問題はないと？」
「聖戦士はそれだけの存在なんだろ。特にトッドは、反乱軍と一緒に活動した事もあって信望が厚い」
「……ふむ。分かった。すぐに決める事は出来んが、考えてみよう」
「そうしてくれ。ただ、公開処刑とバーンの更迭は出来るだけ早くやった方がいいと思うぞ。そうなれば、ピネガンも妙な行動を起こしたり出来ないだろうし」
トッドに領地を与えるのかどうかはともかく、略奪をした連中を処分するのは、早ければ早い程にいい。
ここで無駄に時間を使った場合、略奪の件が情報としてそれだけ広がってしまう。
その話が広がりきるよりも前に公開処刑をして、ドレイク軍は規律ある軍だとミの国の住人……特に王都の住人に知らせる必要がある。
そういう意味では、ネットとかそういうのがないこのバイストン・ウェルはかなりやりやすいのは間違いなかった。
「うむ。トッドの件はともかく、そちらの件はすぐに行おう」
そうドレイクが言い……そして……
「これより、お館様からの命令に逆らって略奪をした者の処刑を始める！」
ドレイクが公開処刑をすぐに行うと口にしてから、30分程。
気が付けば、既に公開処刑の準備は出て来ていた。
正直な話、まさかこんなに素早く公開処刑を行うとは思わなかった。
こうまで早く準備をしていたという事は、俺と話した時には既に準備が終わっていて、いつでも公開処刑が出来たといったところか。
「ま、待ってくれ！ 違う！ 違うんだ！」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい！ もうやりませんから、許して下さい！」
公開処刑される者達の何人かは、杭に縛られて動けなくなった状態で、必死に懇願する。
だが、当然ながらそんな風に言ったところで、公開処刑が中止される訳もない。
実際に広場に集まってきている王都の住人達は、騒いでいる者達に憎悪に近い視線を向けていた。
それでいて、ドレイクには感謝の視線を送っている。
……なるほど。こうして一緒に公開処刑を行う事で、一種の連帯感を王都の住人とドレイク軍の皆に抱かせるのか。
その辺も計算のうちだったとすれば、ドレイクはもしかして最初からこれを狙っていたのかもしれないな。
その為に、これから公開処刑になる連中は犠牲になった……とか？
とはいえ、それはあくまでも俺の予想でしかない。
実際にどうだったのかは、それこそドレイクしか分からない事だろう。
にしても、公開処刑ってどうやるんだ？
これが地上なら、銃とかを使うんだろうが。
バイストン・ウェルにも銃はあるが、その精度は決して高くはない。
となると……ああ、槍か。
死刑の執行人となる兵士が槍を手にして姿を現したのを見て、納得する。
まぁ、槍は処刑道具として使われることも珍しくない。
ロンギヌスの槍とか、元々は処刑用の槍だって話を何かで聞いたことがあるしな。
「殺せ！ 殺せ！ 殺せぇっ！」
広場に集まってきた者達が、そんな風に叫ぶ。
公開処刑は、一種の見世物的な役割もあると考えれば、おかしくはないか。
後は、実際にこの兵士達に略奪された者達もいるだろうし。
略奪と言っても、金目の物を奪われた訳ではなく、娘や妻、姉、妹といった者達が乱暴されたとか、そういうのもあるだろうし。
そういう連中にしてみれば、ここで殺せ殺せと大合唱をするのも当然だろう。
ちなみに、ドレイクが本当に略奪する相手を処刑するのかといった事を確認する為か、ピネガンの姿もあった。
……そう言えば、ピネガン本人は初めて見たけどああいう人物だったんだな。
見た感じは精悍そうな様子の男だ。
こういう事態を招くというのは、本人にとっても予想外だったんだろうな。
とはいえ、それに対して俺がどうこう言うつもりはない。
そして……時間はやってくる。
「処刑せよ！」
ドレイクの命令に従い、槍を持った兵士達が木の杭に縛り付けられている兵士達に向かって進んでいく。
当然ながら、木の杭に縛られている方は止めてくれと必死に叫ぶが、それでも動きが止まる様子はない。
こういう場合は目隠しをしたりするのが一般的だと思うが、目隠しの類もしていない。
だからこそ、処刑される兵士達は無言のまま自分達に向かって近付いてくる、槍を持っている兵士達の姿を目にしてしまう。
それが余計に恐怖を煽るのだろう。
だが……それでも兵士達は表情を動かす事なく進み続け……やがて、複数の槍が兵士の身体に突き刺さる。
「ぎゃあああああああああああっ！」
何人もがそんな悲鳴を上げるものの、兵士は相変わらず動きを止めるような真似はしない。
結果として、槍の刺さった部分が致命的だった者はすぐに死んでしまう。
しかし、そのような者は寧ろ幸運だったのだろう。
下手に内臓を避けて胴体を貫かれたような者は、それこそひたすらに痛みで苦しむ事になる。
そうした者達を哀れに思ったのか、ドレイクはバーンに苦しんでいる者の命を絶つように命じる。
自分の部下の不始末である以上、自分で片付けろと、つまりはそういう事なのだろう。
そのような命令を出されたバーンは、表情を変えずに長剣を抜いて兵士達の方に近付いていく。
バーンにしてみれば、この兵士達は自分の部下ではあるが、同時に自分が地位を失う切っ掛けを作った者でもある。
そうである以上、ここで自分が手を下すということになっても、特に後悔する様子もなく……あっさりと、苦しんでいる兵士の首を切断するのだった。
アクセル・アルマー
LV：43
PP：1560
格闘：305
射撃：325
技量：315
防御：315
回避：345
命中：365
SP：1987
エースボーナス：SPブースト（SPを消費してスライムの性能をアップする）
成長タイプ：万能・特殊
空：S
陸：S
海：S
宇：S
精神：加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル：EXPアップ
SPブースト（SPアップLv.9&SP回復&集中力）
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法（炎）
魔法（影）
魔法（召喚）
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数：1680