ダンバインの襲撃が失敗に終わった後は、既にもう一方的だった。
フラオンやピネガンにしてみれば、挟撃という行動でドレイク軍の戦力を分散させ、その上で上空から奇襲を仕掛けるといった行動を更に囮とし、そうしてブル・ベガーを守る戦力が手薄になったところで、最後にショウのダンバインが下から襲撃する。
ドレイク軍を率いるドレイクをその襲撃で殺すという、まさに乾坤一擲の作戦。
だが、そんな作戦が失敗した以上、向こうにはこれ以上打つ手がない。
ショウの攻撃によって勝つという作戦が崩れたので、それ以上は戦っても勝ち目がないと判断したのか、士気が落ちた敵も多かったらしい。
勿論、この襲撃の件については兵士達は知らされておらず、知っていたのは部隊長だったり、ナムワンの艦長だったりと、そういう連中だったのだろうが。
そのような者達が、自分達の勝利する可能性を失ってしまった以上、部下の指揮に影響が出て来るのも当然ではあった。
「アクセル、後方で被害が大きくなってるみたいよ」
ドレイクの襲撃というのを防いだ事もあり、一度ナムワンに戻ってきた俺とマーベルは、ブリッジに戻ってきていた。
そうして後方の様子を見ていたマーベルのその言葉に、少しだけ意外な気持ちを抱きながら、ピネガンの正規軍とドレイク軍が映し出されている映像モニタから、後方のフラオン軍との戦いが表示されているモニタに視線を向ける。
そこでは、マーベルの言う通りの光景が広がっている。
後方でゼラーナ隊と戦っていたドレイク軍の被害が、加速度的に増しているのだ。
誰がそれをやったのかと言えば、考えられる可能性は1つしかない。
「ショウか」
俺と戦いになりそうになった瞬間には勝ち目がないと判断して即座に逃げたとはいえ、俺が戦場に到着する短時間で多数のドラムロを倒し、そしてマーベルとの戦いでも押していたのだ。
勿論、あの時のショウは俺が戻ってくるまでの間に何とかマーベルを倒して、ドレイクを倒すという自分の目的を果たすという目的があったので、最初から全力を出しての戦いだったのは間違いない。
だが、それを考えた上でもあの時のショウはかなりの実力を発揮していた。
だからこそ、フラオン軍とドレイク軍の戦いの場に参戦した場合は、一般の兵士にショウのダンバインを止めることは非常に難しい。
トッドを始めとした聖戦士の類が後方にいれば、まだ何とかショウを押さえる事も出来たのだろうが……生憎と、聖戦士やバーンといった腕利き達は前線でピネガンの正規軍と戦っている。
「ドレイクに連絡をしてくれ。後方の援軍に俺達が出向かなくてもいいのかと」
「は!」
通信を担当している兵士が、素早くブル・ベガーに通信を送る。
「いいの? 元々私達は今回の戦いでは積極的に参加するつもりはなかったんでしょ?」
「まぁ、それはそうだが。それでもこの状況だとな」
ドレイク軍は強大ではあるが、それでも戦力が少なくなるのはこれからの事を考えると面白くない。
特にドレイクはミの国の後でラウの国を攻めるつもりでいるし、余計にそう思うだろう。
まぁ、俺にしてみれば、ここで無理にラウの国を攻める必要はないと思うんだが。
しかし、どういう訳かドレイクはもうラウの国を攻略すると決めている。
そうである以上、俺がここで何を言ったところで、意味はない。
それどころか、ここで更に何かを言えば、余計にラウの国を攻めるという行為に固執する可能性があった。
その辺の事情を考えると、やはり戦力は出来るだけ損耗しない方がいい。
……もっとも、ラウの国が強国だというのは知られているが、実際にどんな具合なのかというのは、まだ不明だが。
少なくても、ドレイクはラウの国と何度か取引をしたらしいから、オーラマシンについてはそれなりに用意されているだろうけど。
にしても、改めて思うと疑問だが、ラウの国とどうやって取引したんだろうな。
地図によれば、アの国の上にミの国があり、その上にラウの国がある。
つまり、ラウの国がアの国にいるドレイクと取引をする場合、ミの国を通る必要があるのだ。
しかし、ラウの国とミの国は国交断絶状態。
そうなると、アの国とラウの国の間で取引をするのは難しい。
考えられるのは、特別な許可証の類が発行されていて、それを持っている場合はミの国からラウの国の中に入れるとか?
もしくは……地図によると、ラウの国の隣はまだどこの勢力も用意していない……いわば、自由地帯とでも呼ぶべき場所がある。
これは、別にそこまで珍しい話ではない。
バイストン・ウェルにおいては、恐獣がいる場所は迂闊に自分の勢力とする事は出来ないからだ。
いやまぁ、普通ならそのような場所は自国の勢力圏ですといったように言っても、おかしくはない。
だが、恐獣のいるこの世界においては、もしそんな真似をしてその場所で何か問題が起きた時は、自分の国なのだから自分達で何とかしろと、そのように言われる事も珍しくはなかった。
だからこそ、そういうのを避ける為に国ではなく自由地帯としている場所もあるのだろう。
あるいは、ラウの国王がフラオンであれば、特に何を考えるまでもなくそんな真似をする可能性もあったが、現在のラウの国の国王たるフォイゾンは家族関係に関してはともかく、国王としては優秀でそのような真似はしない。
話が若干それたものの、ともあれラウの国の隣にはそのような自由地帯があり、その自由地帯の下にはクの国がある。
アの国――正確にはドレイク――と友好関係にあるクの国であれば、そのドレイクとオーラマシンについての取引を行うとなれば、国を通すという可能性は十分にあった。
勿論、そのような場合は見張りとかをつけて、勝手な真似をしないようにするといったことはしただろうが。
ともあれ、そういう手段を使えばドレイクとラウの国が取引をするのは可能だ。
そしてラウの国は強国と言われる国だけあって、当然ながら技術力も高い。
ドレイクの場合は、ショットとゼットとい地上人の存在があって、オーラマシンの開発に成功した。
しかし、ラウの国は強国で国王が優秀である以上、独自のオーラバトラーを開発していてもおかしくはない。
幸か不幸か、もしクの国を経由してドレイクと取引をしていたという場合、もしかしたらクの国が独自開発したアルダムを見ている……といった可能性もない訳ではないし。
「アクセル王、お館様です」
その言葉と共に、ブリッジのモニタにドレイクの顔が映し出される。
ドレイクは少し困った表情を浮かべていた。
もっとも、それが本当にそのように思っての事なのか、それとも俺にそう見せたいだけなのか……その辺りの理由は、俺にも分からなかったが。
ともあれ、今のドレイクとしてはそういう表情を浮かべておきたいと、そう思ったのだろう。
『アクセル王、協力して貰えるという話だが……申し訳ないが、その必要はない』
「へぇ。……けど、いいのか? 後方の部隊は結構な被害が出ているようだぞ?」
こうして俺とドレイクが話している間にも、後方ではフラオン軍とドレイク軍の激しい戦いが続いていた。
特に大きな被害を受けているのは、やはりドレイク軍だ。
ショウのような聖戦士を相手にして、一般の兵士ではどうしようもないのだろう。
それに、ショウは何だかんだと俺やマーベル、それにドレイク軍の聖戦士達との戦いの経験が多い。
それで結局ショウを倒す事が出来なかった以上、結局ショウは戦いの経験を十分に積んだという事を意味していた。
結果として、今のショウはマーベルと互角に戦えるだけの実力を身につけている。
いや、マーベル以外に精鋭とまでは言えないが、ドラムロがそれなりにいたのに、そのドラムロが撃破されているのを考えると、マーベルと互角以上という方が正しいのか?
まぁ、ブル・ベガーの下で行われた戦いは、ショウが奇襲を仕掛けた事によるものだったので、その結果が完全に実力次第という事にはならないと思うが。
ともあれ、曲がりなりにもマーベルと互角に戦えるショウが相手にいるのに、今の状況でドレイク軍がどうにか出来るとは思えない。
まぁ、それでもショウも人間なんだし、物量で攻撃すればいずれ体力やオーラ力が限界になってどうしようもなくなるだろうが……ドレイクにしてみれば、そんな真似を出来る筈もない。
それこそ、このミの国との戦いで戦力を消耗しすぎれば、結果としてラウの国を攻撃するなんて真似は到底出来なくなるのだから。
だというのに、ここで俺とマーベルを使わないという選択肢をドレイクが選ぶというのは、疑問でしかない。
『心配はいらんよ。聖戦士には聖戦士。幸い、前線ではこちらが有利だ。そうである以上、後方に聖戦士を回すのは難しい話ではない』
ある意味、予想通りの言葉ではある。
実際に聖戦士のショウを相手にする場合、こちらも聖戦士を使うというのは予想されてしかるべき内容だからだ。しかし……
「いいのか? 今のショウは強い。それこそ、お前のところでもトッドくらいしかまともにやり合える奴はいないぞ?」
アレン達も、以前と比べれば実力は増しているのは間違いない。
だが、それはあくまでも以前までと比べればの話であって、ショウとやり合える程の実力かと言われれば……正直、微妙だろう。
しかし、トッドがショウに勝てるかと言われれば、それは難しい。
確かにある程度やり合えるだけの実力はあるが、だからといって勝てる程の実力がある訳でもないのだから。
それに、ドレイクにしてみればドットはまさにエースといった存在だ。
現在のドレイク軍の中でオーラバトラーの操縦技術では、トッド、ガラリア、バーン、アレン達3人、トカマクといった順番だし。
そしてガラリアは現在怪我の治療中でここにはいない。
だとすれば、ここでトッドが負ける……ならまだしも、撃墜されて殺されるなんて事になったら、それは洒落にならないだろう。
だからこそ、俺はドレイクにいいのか? と尋ねたのだが、映像モニタの向こう側でドレイクは頷く。
『うむ。それは分かっている。そうである以上、こちらも相応の対処を考えている。トッド・ギネスだけで勝てないのであれば、他の聖戦士もそちらに向ければいいだけだ』
「いやまぁ、それはそうだけど……いいのか?」
腕の立つ多人数でショウと戦うというのは、以前やった事がある。
それこそ、ギブン家が逃げ出そうとしている時に行われた、アレン達の初陣だ。
その時は結局トッドはおらず、トカマクが参加していたが……それでも、結局ショウの方が有利に戦いを進めていた。
そこにトッドが入れば、どうなるか。
何とかなりそうな気がしないでもないが、下手をすると何人か死んでもおかしくはないんだよな。
『ショウ・ザマはここで倒しておく必要がある。これからの事を考えれば、余計にな』
そう告げるドレイクが何を考えているのかは、俺にも何となく理解出来た。
ドレイクにしてみれば、既にミの国の件については考えておらず、ラウの国との戦いについて考えているのだろう。
ミの国と違って強国で、更には独自のオーラマシンの技術を持っている可能性も高い国。
それだけに、そんなラウの国にフラオンが向かうのはともかく、そのフラオン軍にショウという存在がいるのは許容出来ないといったところか。
まぁ、元々ショウはドレイクが召喚した相手だしな。
だというのに、今はドレイクを裏切ってギブン家に味方をしている。……いや、ギブン家ではなくフラオンか。
その辺りの事情を考えると、ドレイクとしてはここでショウは倒しておきたいのだろう。
「聖戦士を当てるのは分かった。けど、ピネガン王の方は大丈夫なのか?」
『……そちらはバーンに任せる』
そう言ったドレイクだったが、俺が聞いてから実際に口を出すまでは少しの時間があった。
これは……ドレイクはバーンを頼りにしてないのか?
いや、その気持ちは分からないでもない。
俺が知ってる限りでも、バーンはここ最近色々と失敗を重ねているし。
特にちょっと前にあった、俺が捕らえたショウを奪還されたというのは、バーンにとって大きな失態だろう。
もしあそこでバーンがショウを逃がしていなければ、ギブン家にここまで苦戦するような事はなかったんだろうし。
それ以外にも細々としたところでミスをしているのがバーンだ。
このままだと、それこそガラリアの怪我が治ったら筆頭騎士といった地位を追われてもおかしくはない。
何しろガラリアは地上に行って戻ってきたという実績もある。
唯一の難点としては、自分が手柄を立てることに固執しやすいといったところか。
バーンの代わりになるということは、部下に手柄を立てさせるといったことをする立場になるという事だ。
そうである以上、ガラリアには向いてないのかもしれないな。
そんな風に思いつつ、俺はドレイクの提案に頷いて、トッド達にショウを任せるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680