転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2870話

「これが新型のオーラ増幅器付きのコックピットか」

 

 目の前にあるオーラバトラーのコックピット部分を見て、そう呟く。

 ゼットが俺の為に用意した、バストールのオーラ増幅器。

 正確には、オーラ増幅器付きのコックピットとオーラコンバータの部分だけを抜き出して用意された物だ。

 何故バストールその物を用意しなかったのかとなると、それは考えるまでもなく明らかだろう。

 俺が試すという時点で、オーラ増幅器……というよりは、オーラコンバータの方が壊れる可能性が高い為だ。

 以前の件もある以上、ゼットにしてみれば壊れる可能性が高いのに、わざわざバストールの完品を用意するといった選択肢は存在しないのは当然だった。

 バストールはそこまで希少な恐獣の素材を使っている訳ではないが、それでも相応に高価な素材は使われている。

 それを壊さないようにするというのは、当然の事だろう。

 

「ああ。きちんとデータは取るから、これはもうどうなってもいい。思い切り試してみてくれ」

 

 ゼットが興味津々といった様子で言ってくる。

 ガラリアが地上に行った件では色々と騒いでいたのだが、俺の場合は心配そうな様子を見せていない。

 ゼットにしてみれば、俺はどうなってもいいと思っているのか、それとも俺ならどういう事になっても問題ないと思っているのか。……後者だな。

 実際、以前ゲドを起動させようとした時、コックピットが燃えた一件でも俺は何の問題もなく炎の中から戻ってきた。

 だからこそ、もしここでバストールのコックピットが爆発しても、何の問題もないと判断しているのだろう。

 それは間違っていないのだが、何だか微妙な気分になってしまう。

 まぁ、上手くいけば地上とバイストン・ウェルを自由に行き来出来るようになるかもしれないのだから、期待の視線を向けてくるのも分からないではなかったが。

 失敗しても、俺が怪我をしたりすることがないというのも、この場合は影響しているのだろう。

 

「分かった。どういう結果になるにしろ、データはしっかりと取っておくに越した事はないしな。もしかしたら……本当にもしかしたらだが、場合によっては地上とバイストン・ウェルを自由に行ったり出来るかもしれないし」

「もしかしたらって言うか、俺は寧ろそう出来るようにする為に、この実験をするんだけどな」

 

 そんな会話を交わしてから、俺は地面に置かれたコックピットの中に入る。

 周囲には結構離れているが、かなり多くの者がこの実験がどうなるのかを見守っている。

 それだけガラリアが地上に行ったというのは、多くの者にとって衝撃的だったのだろう。

 ちなみに、ガラリアが地上に行って戻ってきた一件については、特に隠されたりといったような事はしていない。

 この件に関しては、広まった方がドレイクにとっても利益になると、そう判断したのだろう。

 実際、ガラリアは地上に行って戻ってきたという事で、最近は人望が高くなっている。

 俺が知る限り、バイストン・ウェルの人間で地上に行って戻ってきた者はいないという話だし、そういう意味ではガラリアはバイストン・ウェル史上初めて地上に行って戻ってきた人物という事になるんだろう。

 まぁ、それを言うならショウ何かは地上からバイストン・ウェルに召喚されて、その後自力――ガラリアがいたので正確には違うんだろうが――でバイストン・ウェルに戻ってきたという、ある意味でガラリア以上に凄い経験をしているんだが。

 ああ、ゼットとしては、そういう意味でもこの実験を成功して、自由に地上に行けるようにしたいというのもあるか。

 ゼットにしてみれば、ガラリアが妙に持ち上げられるとか、そういうのは決して嬉しくないだろうし。

 

「よし、オーラコンバータを起動するぞ。準備はいいな?」

 

 連絡出来るようにと備え付けられた外部スピーカーで、外にいる面々に声を掛ける。

 ゼットが俺の言葉に大きく手を振り、問題なしといった様子を見せた。

 ……外部と連絡という意味なら、それこそ無線の通信装置を使えるようにすればいいと思うんだが、通信装置の類もかなり豊富に部品はあるが、だからといって無駄にしていいようなものではないのも事実。

 そうなると、破壊される事が半ば確定しているコックピットに通信装置をつけるのはどうかと思ったのだろう。

 その辺については、俺も納得出来るので特に不満を言ったりはしないが。

 ゼットの方で用意が調ったのを確認すると、オーラコンバータを起動する。

 さて、問題なのはオーラ増幅器……それもビランビーに使った一般的な奴ではなく、ゼットが新機軸で開発した、新型。

 そのオーラ増幅器がどんな感じになるのか、楽しみにしながら少しずつ……本当に少しずつだが、魔力を込めていく。

 オーラコンバータに魔力を使うとなると、その魔力の方がオーラ力よりエネルギー的に密度が高いので、俺が普通のオーラコンバータを使えば爆発する。

 だが、ガラリアの話から、ガラリアとショウが戦った時にオーラ力が極端に高まった状態になり、それによってバイストン・ウェルから地上に出る事に成功したらしい。

 つまり、俺の魔力と新型のオーラ増幅器があれば、ガラリアが地上に出た時の再現が出来る可能性は十分にあった。

 あるいは、地上ではなくホワイトスターに転移するという可能性もあるが……

 そんな風に思いつつ、魔力を少しずつ上げていく。

 一度に大量の魔力を込めた場合は、それこそ何がどうなるのかまったく分からない。

 その為に少しずつ魔力を込めていったんだが……

 ギ……ギギギ……

 不意にそんな音がコックピットの中に響く。

 その音は当然のように外にも聞こえているらしいが、ゼットの方に視線を向けると、そのまま続けろといったように合図をしている。

 どうやらこのまま続けてもよさそうだ。

 ゼットの様子からそう判断すると、俺は再び魔力を込めていく。

 ギギギギという音が先程よりも大きくなっていき、限界に達したかと思った瞬間……

 轟っ!

 そんな爆発音と共に、コックピットの中が炎に包まれる。

 これはもう駄目だな。

 冷静にそう判断し、コックピットを破壊して脱出した。

 普通なら、不意に炎に包まれるといったことになれば、動揺するのだろう。

 だが、俺の場合は炎との相性が非常に強い。

 そもそも、混沌精霊という俺の身体は、白炎という白い炎で出来ているのだから。

 そうして炎に包まれながらも、慌てることになく脱出したのだが……もしかしたら、本当にもしかしたら、コックピットの外は地上だったりホワイトスターかもしれないと思っていたのだが、外は当然のように見覚えのある場所だ。

 先程、俺が実験を始める為にコックピットに入ったのと、同じ場所。

 そんな簡単に地上に出られる訳がないよな。

 がっかりしながら、ゼットのいる方に向かう。

 

「どうだった? データは取れたか?」

「ああ、取れた。ただ、このデータを見る限り、オーラコンバータやオーラ増幅器で地上に転移するといったような真似は、難しいな」

「なら、ショウとガラリアは何で出来たんだ?」

「運……そう、こういう表現をするのは技術者としてあまり好ましくはないんだが、それでも運によるとしか言えない」

 

 運か。

 ゼットは運という表現を面白く思っていない様子だったが、俺としては何となく納得出来た。

 実際には、それは運というのもあるのだろうが、ショウがこの世界の主人公だからこそなのではないか。

 もっとも、ショウのオーラ力が原因だったりと、しっかりと探せばそういう理由はあるのだろうが。

 

「今回の一件でデータは取れたが、予想していたのとは随分と違うな。これはもし地上に転移出来るようにするとなると、色々とデータの検証が必要となりそうだ」

「そんなものか。地上に行けるのなら、俺にとっても利益は大きい。ホワイトスター……俺の国の首都とも言うべき場所に転移出来るかもしれないからな」

 

 バイストン・ウェルにおいては、何らかの理由でゲートが起動出来なかった。

 正確には起動は出来るのだが、ホワイトスターと繋がらないのだが。

 その理由がバイストン・ウェルであるからというものであった場合、地上でならゲートを起動出来る可能性は十分にあった。

 とはいえ、それはあくまでも多分そうだろうという予想であって、もしかしたら地上でもゲートが起動しないといった可能性は否定出来ない。

 

「そうだな、そう出来たらいいけどな。じゃあ、俺は取りあえずデータを纏める必要があるから、そっちを優先するよ。アクセルは後は好きなようにしてくれ」

 

 そう言うと、ゼットは他の技術者のいる方に向かう。

 そんなゼットを見送ると、少し離れた場所で心配そうにしているマーベルの方に向かう。

 

「アクセル、大丈夫なのよね?」

「心配するな。以前、ゲドの時も同じような事があっただろ?」

「それでも、ああいう光景を見れば心配するのは当然でしょ?」

 

 軽い口調で言ったのが気にくわなかったのか、マーベルは不満そうな様子を見せる。

 そんなマーベルに、俺は心配いらないと軽く肩を叩く。

 

「俺はちょっとやそっとの事だと死んだりはしないから、心配するな」

「……それは、分かってるんだけどね」

 

 取りあえず、その言葉で機嫌は直ったらしいので安堵する。

 新型のオーラ増幅器で地上に行けるかどうかの実験という事もあり、周囲には大勢の見学者がいる。

 だが、俺の立場は特殊だ。

 ドレイクと対等の同盟関係ということもあり、そう簡単に俺に話し掛けてくるような者はいない。

 

「アクセル、お前本当に大丈夫なのか? 燃えてただろ?」

 

 そう。ある意味では俺と同じような立場の聖戦士達以外には。

 俺に向かってそう声を掛けてきたのは、アレン。

 その隣にはフェイもいるが、いつもこの2人と一緒に行動しているジェリルの姿はない。

 そしてジェリルの子分的な存在のトカマクもいない。

 ただ、ジェリルがいないのはそこまでおかしな事ではなかった。

 ジェリルは同じ女という事で、マーベルに強いライバル心を持っている。

 だが、能力ではあらゆる面で始まりの聖戦士と呼ばれるマーベルの方が勝っており、それがジェリルには余計に気にくわないのだろう。

 ある意味、トッドとアレンのような関係か。

 似て非なるものって感じがしないでもないが。

 ジェリルにしてみれば、マーベルの場合は壁という訳ではなく目の上のこぶといったところか。

 そんな訳で、ジェリルがここにいないのはマーベルと会いたくないという思いが強いからだろう。

 

「ああ、俺は魔法使いでもあるからな。特に炎の属性が得意な。だから、あの程度の炎でどうにかなる程に弱くはないんだよ」

 

 実際には混沌精霊だからこそ、物理現象は意味がない。

 ……あ、でもあの炎は一応オーラ力や魔力が関係しているんだから、ダメージを受けてもよさそうだけどな。

 いや、違うか。あれはオーラコンバータが暴走した結果として操縦系から炎が出て来た訳で、そういう意味では問題ないんだろう。

 

「ふーん。魔法って便利だな」

「便利なのは間違いないな」

 

 実際、ガラリアが地上からオーラロードでバイストン・ウェルに戻ってきた時、大怪我はしたものの、死なないですんだのは魔法の訓練をしていた為だ。

 勿論、魔法発動体の杖を持っていた訳ではないので、本当の意味で魔法が発動したって訳ではないんだろうが。

 あるいは、オーラロードといったような不思議な場所だけに、魔法発動体がなくても魔法が発動したといった可能性は否定出来ないけど。

 何だかんだと、オーラ力という存在に対して、それがどういうものなのかはまだ分かっていないし。

 あくまでも俺の印象だが、オーラ力というのは気に近い感じがする。

 だからこそ、オーラコンバータは俺の魔力と相性が悪いと納得出来るし。

 

「ただし、習得するまではかなり長時間の訓練が必要になるけどな。そう簡単に身につくようなものじゃない」

 

 そういう風に考えれば、オーラ力によってあっさりとオーラバトラーを操縦出来る聖戦士という存在は便利極まりないよな。

 イメージさえあれば、その通りに動いてくれるのだから。

 アレンやフェイが魔法に興味を持ったのは間違いなかったが、修行が必要と言うと、すぐに興味を失った様子だった。

 これでもっと魔法という存在に夢を見ているような者であれば……それこそ、魔法のある世界に行ってみたいと言ってるような者なら、魔法の修行をさせて欲しいと言ってきたのだろうが、残念ながらアレン達は違ったらしい。

 実際問題、まだアレン達はバイストン・ウェルに来てからそう時間が経っていない。

 魔法の修行云々よりも前に、色々とやるべき事があるというのも、また事実だった。

 それを思えば、修行が必要だという魔法に興味を持たないのは仕方のない事なのだろう。

 別に俺も魔法を広めるのが目的という訳ではない以上、無理に魔法を習得させようなんてつもりは一切ないし。

 というか、俺の方も色々と忙しいので、マーベルとガラリアの2人だけで十分間に合っているというのが正直なところなんだよな。 




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1550
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1678

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