「うお……これはまた……」
目の前にあるダンバインは、頭部と右手、左足を失った状態だった。
胴体にも結構な傷が多数あり、よくこれで怪我もない状態で戻ってこられたなと、しみじみとそう思う。
エルフ城を占領した翌日、俺とマーベルはミの国に行く前にギブン領の様子がどうなっているのか気になり、いつものように影のゲートを使ってやって来たのだが……ドレイク軍の本陣となっている場所で最初に見たのが、大破という言葉が相応しいトカマクのダンバインだった。
昨日、ショウのダンバインと戦いになり、結果としてここまでやられたらしい。
トッドが助けに入ったので、コックピットのような場所に致命的なダメージはなかったんだが。
「よく無事だったわよね」
俺の横で、マーベルもしみじみとした様子で呟く。
マーベルの場合は、トカマクと同じくダンバインに乗っているので、余計にそのように思うのだろう。
そんなダンバイン――の残骸――を見ている俺とマーベルの後ろに、覚えのある気配を感じる。
「出撃する度に機体を破壊して戻ってくるけど、それでも死ぬ事はない。……ある意味、不死身のようにも思えるな。不死身のトカマクとでも呼んでやろうか?」
「止めてくれ」
俺の言葉に、背後にいた気配の主……トカマクが、うんざりとした様子でそう返してきた。
「そうか? 不死身。格好いいと思うけどな、不死身。なぁ、不死身のトカマク」
「おい、それを定着させようとするなよ」
「そう言われても、実際、これだけダメージを受けながらも何だかんだと生き残ってるってのは、素直に凄いと思うぞ?」
これはお世辞でもからかいでも何でもなく、純粋に俺がそう思えた事だ。
生存能力という点では、間違いなくトカマクは突出している。
「マーベルだって始まりの聖戦士という異名持ちなんだから、不死身のトカマクってのも、そんなに悪くないと思うし」
「撃墜されまくって、それで不死身とか言われてもな。……ちなみに、アクセルはどんな異名を持ってるんだ?」
「俺か? 俺はこの世界だと特にないか……俺がこの世界に来る前に接触したUC世界では、月の大魔王とか言われていたな」
「それは……また……一体、何がどうなってそんな異名を?」
月の大魔王というのは、トカマクにとっても、そしてマーベルにとっても驚くような内容だったのだろう。
唖然とした様子で尋ねてくるトカマクに、特に気にした様子もなく説明する。
「UC世界では、ちょっとした事情から月に新国家を作る事になってな。その時、月にいた他の勢力と戦いになって、俺が1機で敵を殲滅した結果として、月の大魔王という異名持ちになった」
「……お前、一体何をやってるんだ?」
唖然とした様子のトカマク。
マーベルも言葉に出したりはしなかったが、驚きの視線をこちらに向けていたのは間違いない。
「何って、だから建国だな。その結果として、月の大魔王という異名持ちになった訳だ」
エンデュミオンの鷹も、実は一応俺の異名だったんだよな。
正確には、ムウの振りをしてそう名乗ったのだが。
「あー……うん。取りあえずアクセルがどんな事をしたのかについては、これ以上聞かない方がいいな。今度はどんな内容が出て来るか、分かったものじゃないし」
「不死身のトカマクがそう言うのなら、俺はそれでもいいけど」
「だから、それは……はぁ」
諦めたように、トカマクの口からは溜息が吐かれる。
「どうかしたのか? 勿論異名以外の理由で」
「ああ。実は、俺が今日から乗るのはドラムロになったんだよ」
「まぁ、ダンバインがこの有様だとな。修理するにしても時間が掛かるだろうし」
ギブン家の屋敷を襲撃した時の戦いでも、トカマクはダンバインを損傷して凱旋パレードではドラムロに乗っていた。
それを思えば、そこまで珍しい話ではないと思っていたんだが……
「いや、違う。俺はもうダンバインには乗せて貰えないらしい。これからはずっとドラムロだ。いやまぁ、新型機が開発されればそっちに乗るかもしれないけど」
「あー……うん。なるほど。その理由は何となく理解出来た」
実際、トカマクは聖戦士であるにも関わらず、その実力は決して高くはない。
いや、高くはないどころか、出撃する度にダンバインを壊しているといったような印象すらある。
元々ダンバインは聖戦士用に開発されたオーラバトラーで、部品として使われている恐獣の素材も希少で高価な物が多い。……まぁ、サーバインはそんなダンバイン以上に高価な部品を使われているんだが。
そんな高価な部品を使っているダンバインを、出撃する度に中破や大破して戻ってくるというのは、ドレイク軍としても許容出来ないのだろう。
ダンバインの予備部品も、マーベルやトッドのように上手く使っている者達の分がなくなってしまいかねないし。
そういう意味だと、ギブン家に亡命したショウはその辺どうしてるんだ?
ショットの部下でダンバインの開発にも関わっていた技術者が亡命したって話だし、そっちの方はそれでどうにかなるのか?
「まぁ、実際問題ドラムロは決して悪い機体じゃないぞ」
これは間違いなく事実だ。
フレイボムと重装甲があり、素人でも使いやすい性能をしている。
「ダンバインの方はオーラコンバータの性能で大きく変化するから、そういう意味では特別な機体なのは間違いない。けど、トカマクの操縦技術が低いとなると……なぁ?」
「ぐ……分かってるよ、そんな事は」
俺の言葉に図星を突かれたといった様子を見せるトカマク。
実際、トカマクは聖戦士として高いオーラ力は持っているのかもしれないが、操縦技術という点ではどうしてもショウやトッドよりも劣ってしまう。
いや、ガラリアより劣っているのは間違いないだろう。
「その辺の事情を考えても、トカマクが向いてるのは前線で敵の攻撃を回避しながら戦うような機体じゃなくて、後方からの射撃をするような機体なんだろうな。……今はそういう機体がないけど」
ドラムロのフレイボムは強力だが、射程そのものは決して長い訳ではない。
純粋な射程という点で考えれば、フレイボムよりもサーバインやダンバインが使ってるようなオーラショットや、ダーナ・オシーのミサイルとかが便利だろう。
ショットやゼットにそういう機体を開発して貰ってもいいのかもしれないな。
PTでいえば、シュッツバルトだったり、MSではガンタンク……いや、ガンキャノンだな。
とはいえ、ショットもゼットも現在新しいオーラバトラーを開発中だしな。
そこで更に新しいオーラバトラーを開発して欲しいと要望するのも難しい。
けど、援護射撃用のオーラバトラーというのは、決して悪い選択ではない筈だ。
少なくても、俺が見た限りではUC世界において大きく活躍していた。
まぁ、UC世界で活躍したからといって、バイストン・ウェルでも活躍出来るかと言われれば、その答えは否なのだが。
そもそも、長距離から援護射撃をするとなると、それこそ今のドレイク軍ではそこまでの射程を有する射撃武器を作るのは難しいだろうし。
まぁ、バイストン・ウェルの火薬は植物から作る火薬という変わり種である以上、ショットやゼットといった技術者でもそう簡単に改良は出来ないといったところか。
「そういうオーラバトラー、あるのか?」
「あるかどうかと言われると、ない。だから、どうしてもそういうのが欲しいのなら専用機を開発して貰う必要があるな。……ショットやゼットにそんな余裕があるかは微妙だが」
あるいは、ショットやゼットが無理ならクの国辺りという選択肢もある。
クの国はアルダムを開発しただけに、技術力的には十分だ。
とはいえ、アルダムは高機動型のオーラバトラーである以上、後方からの援護射撃を主としたオーラバトラーとなると、また別の話だが。
「おう、面白そうな話をしてるな。新型のオーラバトラーを開発するのなら、俺の意見も聞いてくれよ」
そう言いながら姿を現したのは、トッド。
だが、そんなトッドに対し、トカマクは不満そうな様子を見せる。
「トッドはダンバインがあるだろ? なら、別に関係ないと思うけどな」
「そうか? 何かあった時のことを考えると、新型のオーラバトラーってのは、気になるもんだぜ?」
トッドのその言葉は、冗談でも何でもなく本気の言葉だろう。
ただし、それをトカマクが受けいれられるかどうかというのは、また別の話だったが。
「ふん」
トカマクにしてみれば、最初……それこそ初陣の時は自分の方が評価が高かったのだ。
ショウには負けていたが、そのショウもドレイクを裏切ってギブン領に向かった。
そうである以上、地上人の中でも最高の聖戦士は自分だという思いがあったのだろう。
だが、現実は無情だ。
現在のドレイク軍において、評価が高いのはトッドになっている。
当然だろう。初陣はともかく、その後の戦闘もトカマクは出撃する度に機体を壊している印象だ。
それでいて、敵を倒しているのかと言えば決してそんな事もない。
それに比べると、トッドは初陣では戦闘そのものを殆どしなかったが、その後の戦いではそれなりに敵を倒して評価を上げていった。
結果として、トッドとトカマクの評価が入れ替わるのは仕方のないことなのだろう。
だが、トカマクはそれを受け入れられない。
ある意味強いライバル心を持っているというのは、そう悪い話じゃないんだろうけど。
「まぁ、新型のオーラバトラーを開発するにしても、すぐには出来ないだろうから、今の時点でそこまで気にする必要はないだろ」
そう告げるが、アルダムの件や現在ショットやゼットが開発しているオーラバトラーの事を思えば、実はオーラバトラーの開発そのものはそこまで時間が掛からないのでは? という思いがあるのも事実だ。
それをこの場で言うつもりはないが。
「それより、ギブン家との戦いはどんな感じなの? 現在のところ、こうして占領している場所は増えているみたいだけど」
マーベルが話題を変える為に、そう告げる。
ちなみに、この本陣のある場所は、ルフト領ではなくギブン領の中に少し進んだ場所だったりするんだよな。
昨日の戦いで占領した場所に本陣を敷いたといったところか。
とはいえ、ギブン領の中である以上は、いつどこからギブン家が攻撃をしてきてもおかしくはないのだが。
あるいは、俺が知らないだけで昨夜は夜襲があったという可能性も否定は出来ない。
「今のところ、こっちが有利だな。被害もそこまで多くはない。元々ダーナ・オシーはドラムロよりも性能が低いしな。これでギブン家の戦力がもっと多ければ、数機で1機を攻撃するといったような真似も出来るんだろうが」
ドレイク軍にしてみれば、ギブン家の軍が少ないというのは運がよかったのだろう。
幾らドラムロの方がダーナ・オシーよりも性能が高いとはいえ、それでも複数の敵を相手にどうにか出来る程の圧倒的な性能差ではない。
もしダーナ・オシーの数が十分なら、ドレイク軍もかなりの被害を受けた可能性はある。
「一番厄介なのは、やっぱりショウか?」
「ああ。あのジャップはどうにかしないとな。……アクセルとマーベルが戦いに参加してくれれば、どうにかなるんだけど?」
そう言い、意味ありげにこちらに視線を向けてくるトッド。
トッドが何を言いたいのかは、俺にも理解出来た。
だが同時に、その言葉にすぐに頷くことが出来ないのも事実。
「トッドが何を期待してるのかは分かるが、バーンの許可がないと俺はこの戦いに介入出来ないぞ」
ギブン家の討伐を任されているのは、ドレイクの腹心たるバーンだ。
そのバーンは、個人としての実力では既にガラリアに完全に逆転されてしまっている。
バーンの技量も決して低い訳ではないのだが、それでもガラリアはそんなバーン以上にオーラバトラーの操縦技術が高くなっていた。
それだけに、バーンとしてはギブン家の討伐という任務で俺の力を借りたいとは到底思わないだろう。
もし俺が力を貸した結果としてギブン家の討伐が成功すれば、それはバーンだけの功績とはならない。
ドレイクの同盟者である俺が協力したからこそ、ギブン家の討伐に成功したと、そんな風に周囲には認識されてしまうだろう。
あるいは、ギブン家の抵抗がもっと強固でドレイク軍の受けている被害が多ければ、バーンとしてもこのままギブン家の討伐が失敗するよりは、俺に協力して貰った方がいいと思うかもしれない。
だが、今は多少なりとも被害は出ているものの、全体的に見ればドレイク軍が有利なのは間違いのない事実。
であれば、バーンにとってはわざわざ俺に手柄を分けるといったような真似をする必要はないだろう。
「けどまぁ……そうだな。トッドがバーンを説得して、俺が出てもいいというのなら、協力してもいいけど?」
多分駄目だけど。
そういう気持ちで、俺はトッドに言うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1525
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1673