「ふむ……まさか、ミの国とはな。ある意味で予想はしていたが」
ドレイクが納得したようにそう呟く。
ゲドのパイロットからの情報収集は、かなり簡単だった。
最初こそフラオンの……アの国の国王の部下という事で、ドレイク達の質問には絶対に答えないといった様子を見せていたのだが、俺が姿を見せただけで呆気なく何でも喋るようになったのだ。
どうやら、あの男にしてみれば俺が生身でゲドと戦ったのが余程意外だったらしい。
それで判明したのが、今回の一件にはアの国内部だけの話ではなくミの国も協力しているという事だった。
「ミの国って、あれだろう? ラウの国の王女が駆け落ち同然で結婚して、その結果として国交が断絶している」
「そうだ。恐らくだが、フラオン王……いや、フラオンがミの国を引き入れたのは、その件に関する事で協力をするといった約束でも取り付けたのだろう」
フラオン王ではなくフラオンと呼び捨てにするドレイク。
ドレイクにしてみれば、自分を攻撃してきた時点で既にフラオンは敵と判断したといったところか。
まぁ、ドレイクは今までフラオンに対して色々な物を献上してきた。
それが全て無意味になったのだから、面白い筈がない。
「ともあれ、フラオンが敵に回ったということならこのままって訳にもいかないだろ? 今この状況でも戦いは続いているんだし。フラオンをこれからどうするか。それにミの国やギブン家に対処するにしても、今はまず少しでも多くの戦力を保有しておく必要がある」
「うむ。そこでだ。アクセル王に頼みがある」
「……言うまでもないが、高いぞ?」
俺がドレイクの部下なら、命令を受けてそのまま行動に移るだろう。
だが、俺はあくまでもドレイクと同格の同盟者だ。
そんな俺に依頼をするのなら、相応に高額になるのは間違いないだろう。
ましてや、今のドレイクはフラオンから反逆者といった扱いにされているのだから。
とはいえ、ゲドのパイロットの様子からすると、フラオンがドレイクを反逆者とした決定的な理由は、俺とマーベルを匿ったからというのが大きい。
その辺を考えると、依頼料は少し安くした方がいいのかもしれないな。
取りあえず、依頼料に関してはこの件が終わった後でもいいだろう。
「構わん。依頼は、戦場にいる部下達の救出。具体的には、フラオンの軍隊を倒して欲しい。勿論、ギブン家やミの国の戦力も、減らせるのなら減らして欲しいが」
「意外だな。てっきり、フラオンを倒せといった要望かと思ってたんだが」
「今この状況で必要なのは、アクセル王が言った通り戦力の確保だ。それに……フラオンのような人物が敵にいるのは、儂にとっては悪い話ではない」
なるほど。無能なリーダーにして、無能な働き者。
そのような人物がいれば、一致団結するといったような真似はまず不可能だろう。
フラオンの愚王ぶりを知っている俺としては、ミの国は一体何を考えてフラオンを信用したのかといった疑問を抱く。
フラオンに味方をして得られる利益なんて、一体どんなものがあるのやら。
「分かった。なら早速出撃する。……マーベル!」
「ええ」
マーベルは俺の声に即座に反応する。
その表情は真剣であり、同時に怒っているのは明らかだった。
マーベルにしてみれば、友人のガラリアや同郷のトッドが戦場にいて、現在そこでは前方をギブン家とミの国に、そして後方をフラオンの軍に攻撃されているのだ。
そのような状況にある以上、少しでも早く助けたいと思うのは当然だろう。
俺とマーベルは本陣のすぐ側にあるサーバインとダンバインに乗り込む。
そして機体を起動させ……いつものように多くの魔力をサーバインに吸収される。
とはいえ、もう何度となくサーバインを動かしてきた身としては、慣れたものだ。
そのままオーラコンバータを使い、空中に浮かぶ。
「マーベル、掴まれ。今は少しでも早く戦場に到着する必要がある」
そう言い、サーバインの手を伸ばす。
いっそ影のゲートで転移してもよかったのかもしれないが、今の状況を考えれば戦場に向かう途中で戦いが行われている可能性もあった。
それを思えば、空中を飛んで移動した方がいいだろう。
そしてサーバインとダンバインでは、どうしても本気で移動するとなれば、サーバインの移動速度の方が速い。
であれば、マーベルのダンバインの手を引っ張っていった方が早いだろう。
ウィングキャリバー辺りを使えば、もう少し違った事になったかもしれないが。
そういう意味では、何気にウィングキャリバーって重要なんだよな。
ショットやゼット辺りにもう少ししっかりと研究して貰った方が……あ、ちょっと待った。
ここでフラオン達がドレイクに攻撃をしたという事は、もうフラオンはルフト領を切り捨てたという事を意味している。
それはつまり、フラオンがラース・ワウに攻撃を仕掛けているといった可能性も否定出来ないのでは?
とはいえ、フラオンの持つ戦力もそこまで大きくはない。
ドレイクもいざという時に備えて、それなりに護衛は置いてきている筈だ。
そう考えると、もしフラオンがラース・ワウを攻めていても、あまり心配はいらないだろう。
それ以前に、フラオンがそこまで頭が回るかどうかというのは、正直微妙なところだが。
ともあれ、まずはギブン家とミの国、フラオンの軍勢を倒す方が先か。
ドレイクの戦力がなくなれば、それこそどうしようもないのだから。
そんな風に考えている間もサーバインは進み続け……やがて、視線の先で爆発光が見えてきた。
どこの陣営の機体が破壊されたのかは、分からない。
それでも今の状況でやるべきなのは、まず敵を倒すことだった。
「マーベル、見えているな」
『ええ。……随分と派手な戦いになっているみたいね』
「そうだな。俺はギブン家とミの国がいるギブン領側に突っ込む。マーベルはフラオンの方を何とかしてくれ」
ギブン家は聖戦士と呼ぶに相応しいショウがいて、何だかんだと実戦を経験しているニーもいる。
ミの国が具体的にどれだけの実力を持っているのかは分からないが、それでもフラオンの軍より強いのは確実だろう。
正直なところ、ミの国の国王に対しては勝手な共感を抱いていたのだが。
理由としては、やっぱり女の為に大国と袂を分かったといったところだろう。
勿論、それは国王として考えれば最悪の出来事なのは間違いない。
しかし、男として考えた場合は共感出来るところがあるのも間違いないのだから。
特にコーネリアとかなんかは、ミの国の国王と状況が被るのは間違いなかった。
それだけに、残念だ。
フラオン如きにいいように操られ、その結果としてこのような事になったのだから。
勝手に共感を抱いていたのは事実だが、だからといってこのような状況で手を抜くなどといったことは有り得ない。
今の状況で俺が出来るのは、それこそ全力で戦う事だけだ。
『分かったわ。言うまでもないけど、アクセルも気をつけて』
マーベルの言葉に頷きを返し、ダンバインから手を離す。
そうしてマーベルと別れると、サーバインの速度は一気に上がる。
ダンバインという重い相手――マーベルには絶対に言えないが――を手放した事により、一気に速度が上がったのだ。
「ドレイク軍に告げる! ドレイクの同盟者、アクセル・アルマーが助太刀する!」
周辺にいる部隊にそう告げ、その叫びに驚いたのか動きの止まったダーナ・オシーに向けてオーラショットを撃つ。
オーラショットの威力そのものはダンバインと変わらない。
だが、PPによって極端に高められた射撃の数値とガンファイトのレベルによって、放たれた一撃はダーナ・オシーを1機貫き、その背後にいた別のダーナ・オシーも撃破する事に成功する。
2機撃破。
さて、この撃破したダーナ・オシーは、ギブン家かミの国か。
ともあれ、周辺にいたダーナ・オシーはいきなり味方が撃破された事に驚き、一瞬動きを止める。
「甘い」
実戦慣れしていない……いや、生身での実戦なら経験があるのだろうが、オーラバトラーでの実戦慣れしていないのだろう。
そんなダーナ・オシーに向け、右手のショットクローを放つ。
真っ直ぐに伸びたショットクローは、相手の身体に絡みつき……次の瞬間、サーバインのみに許されたショットクロー経由の電撃によって、動かなくなる。
パイロットが死んだのか、それは分からない。
しかし、取りあえず現状で無力化された事だけは間違いないだろう。
そうして動かなくなったダーナ・オシーを振り回し、サーバインの姿に逃げようとしていたダーナ・オシーの背中に向けて投擲する。
サーバインの膂力で投げつけられたのだから、弾丸……いや、砲弾と化したダーナ・オシーは、逃げようとしていたダーナ・オシーの身体にぶつかり……次の瞬間、2機のコックピットをサーバインのオーラソードで貫く。
投擲したオーラバトラーに即座に追いつき、2機のコックピットを纏めて貫くといった真似は、サーバインだからこそ出来たのだろう。
ともあれ、これで電撃によって気絶していたのか、もしくは死んでいたのか分からなかったが、確実に死んだのは間違いないだろう。
『な、何だこいつは!?』
瞬く間に仲間を殺された事で動揺したのだろう。
ダーナ・オシーの1機が、驚愕の声を漏らす。
仲間同士の通信で話せばいいものを、何を思ったのか外部スピーカーを使って俺にそんな事を聞いてきたのだ。
とはいえ、こうして本気で聞いてきた以上、それに対応してみるのもいいか。
ここで俺がどういう存在なのかを知れば、向こうは確実に動揺するだろう。
ギブン家の者であろうとミの国の兵士であろうと、俺と敵対したという時点で勝利はなくなったと、そのような思いからの行動。
「俺はアクセル。ドレイクの同盟者だ」
さっきも同じ事を言ったのだが、あの時はドレイク軍用の通信周波数での言葉だった。
それを思えば、ここで改めてギブン家やミの国に俺の存在を印象づけておくのも悪い話ではないだろう。
『貴様がフラオン王に逆らった……』
どうやらその辺で俺の名前は知られているらしい。
まぁ、それならそれで構わないんだが。
「そうだ。俺がお前達の狙っているアクセル・アルマーだ。だが、俺のこの首をそう簡単に獲れると思うなよ? お前達が乗っているダーナ・オシーと、そのパイロットとしての実力で俺に勝てると思うか?」
『貴様……』
相手は俺の言葉に怒りを押し殺した様子を見せる。
向こうにしてみれば、俺の言葉は決して許せるものではないのだろう。
だが同時に、今の一連の動きを見れば自分達で俺に勝てるかどうかというのも、十分に理解出来てしまう。
向こうにしてみれば、俺の言葉に反応した時点で負けだった。
「どうする? このまま尻尾を巻いて逃げるのなら、見逃してもいいが」
それは半ば挑発、半ば本気の言葉。
この戦場にいるのが俺だけなら、ここにいる程度の敵はどうとでも対処出来ただろう。
しかし、現在この戦場にいるのは俺だけではなく、ドレイク軍がいる。
ドレイク軍の中でも、バーンやガラリアといったオーラバトラーの操縦に長けている者や、聖戦士のトッドとトカマクもいるが、それでも自分達よりも圧倒的に多数の敵に前後から挟撃されている状況では、どうしようもない。
フラオン軍はゲドが多少にドロがそれなり、それ以外には普通の騎士といった戦力だが、ドレイク軍もドラムロやドロはそれなりにいるが、それでも数はそこまで多くはない。
ギブン家だけを倒すという意味でなら十分な戦力だったのは間違いない。
だが、敵がギブン家だけではなくフラオンとミの国もいるとなれば、話は違ってくる。
それこそ、このような戦場で役立つのは一騎当千、万夫不当といった強さを持つ者であり、始まりの聖戦士と呼ばれることも珍しくなくなったマーベルでさえ、実力不足だ。
だからこそ、ここで俺の言葉に従って大人しく逃げてくれるようなことがあれば、こちらとしては非常に楽なのは間違いなかった。
とはいえ……ミの国の兵士はともかくとして、ギブン家の者達は自分達の領土を守るといった覚悟でここにいるのだろうから、そう簡単に逃げ出す訳にはいかないだろうが。
敵がどう動くか。
そんな俺の予想とは裏腹に、ミの国の兵士と思われる者達は特に撤退するような真似をしない。
おかしいな。一連の攻撃で、間違いなくこちらは実力を見せつけた。
向こうも、少なくても俺に勝てるとは思ってはいない筈だ。
にも関わらず、まだ逃げない。
これは一体どうなっている?
例えば、フラオンに大きな恩があるのか? ……いや、まさかな。
フラオンの性格を考え、数秒でその考えを否定する。
そうなると、一体何でこの状況でミの国の兵士が撤退しない?
騎士道――そんなものがあればだが――によるものか、もしくはミの国の国王に対する忠義か。
あるとすれば、後者っぽいが……さて、どうしたものだろうな。
そう思いつつ、俺はサーバインにオーラソードを構えさせるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1430
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1654