「ふんっ!」
不機嫌そうにしながら、ドレイクは本陣の中にある椅子に腰を下ろしている。
フラオンに挨拶して戻ってきてから、ずっとこの調子だ。
だとすれば、恐らくフラオンとの間で色々とあったのだろう。
とはいえ、あのドレイクがここまで不機嫌そうな様子を表情に出すのは珍しいな。
「ドレイク、そろそろ気分を静めたらどうだ? 先陣は武人の誉れとか、そう言うだろ?」
ドレイクの機嫌が悪くなった理由の1つがこれなのは、間違いない。
当初の予定では、フラオンの軍勢を先陣にして肉壁にし、ドレイク軍の被害を少しでも少なくするつもりだった。
実際、フラオンがこの戦場にやって来た目的――自分が目立つ為――を思えば、そのような形になるとばかり思っていたのだ。
だが、実際には何故かドレイクの部隊が最前線で戦う事になってしまっている。
バーンやガラリア、トッド、トカマクといったような、少しでも手柄を立てたい者達にしてみれば、それは寧ろ望むところなのかもしれないが。
「分かっている。だが……折角整えたこの状況で好き勝手されるのは、面白くない」
ここまで怒り……いや、苛立ちを露わにするドレイクというのも珍しいな。
フラオンとのやり取りでは、色々とあった訳か。
「それよりもそろそろ時間じゃないか? ここからだと戦場は見えないが」
普通なら、本陣は戦場を確認出来る場所に用意するべきだろう。
特にここはファンタジー世界なのだから。
だが、ここはファンタジー世界であると同時に、オーラバトラーを始めとしたオーラマシンが動く場所だ。
その上、オーラバトラーは空を飛ぶ。
そんな状況で戦場が見える場所に本陣があるというのは、それこそ自殺行為でしかない。
本陣から戦場を見渡せるという事は、戦場から本陣を見渡せるという事でもあるのだから。
空を飛ぶオーラバトラーやゼラーナといった戦力が敵にいるのなら、そのような場所は真っ先に狙われてもおかしくはない。
一応護衛もいるし、いざという時は俺も迎撃に出る事になるだろうから、防衛戦力という意味では万全なのだが。
ともあれ、そういう訳で本陣と戦場となっている場所は離れている。
その状況でどうやって戦いの状況を知るのか。
それは、オーラマシンを開発することで使えるようになった無線によってだ。
とはいえ、その無線の通じる範囲は短い。
だからこそ、間に中継役のオーラマシンを置く必要がある。
この場合は単純に通信が出来ればいいのだから、わざわざドラムロのような重要な戦力を用意するといったような事はない。
通信機という点では、ドロがあれば十分だろう。
ドロはある程度の戦闘は出来るから、自衛程度は問題ない。
「通信、入りました。ギブン領に侵攻開始。こちらからはドラムロ隊と聖戦士様達のダンバインが先行しているとの事です」
その通信により、いよいよ戦闘が始まったという知らせを聞く。
ドレイクもその報告を聞き、不機嫌そうな様子が多少なりとも収まったのか、小さく頷く。
「うむ。これまでギブン家からは幾度も襲われてきた。その報復の為にも、この戦いは重要だ」
しみじみと呟くドレイク。
本陣にいる者達は、そんなドレイクの言葉に賛同するように自分の仕事をこなしていたのだが……不意に、通信を担当している兵士が戸惑ったような声を出す。
「え? は? 何だそれは……そんな訳がないだろう! ギブン家にそんな戦力はない筈だ!」
「どうした?」
戸惑い、動揺した様子の兵士にドレイクが声を掛ける。
すると兵士は、そんなドレイクに対して慌てたように口を開く。
「その、ギブン家との戦いに入ったのですが、向こうの戦力がこちらが予想していたよりも遙かに大きく、ダーナ・オシーが50機近くおり、ナムワンの姿も数隻確認していると」
「……何?」
ドレイクが戸惑った様子で呟く。
それも当然だろう。ギブン家はアの国の中では大きな領地を持ってはいるが、それでもルフト家よりは小さい。
とてもではないが、ダーナ・オシーを50機も製造するだけの設備はないし、何よりもナムワンはそう簡単に入手できる物ではない。
というか、ナムワンを入手したのならゼラーナに改修してもおかしくはないだろうに。
「その情報は、間違いないのか!?」
ドレイクの部下が、その言葉は間違っているのではないかという思いと共に叫ぶ。
今回の件はそれだけ驚くべき事だったのだろう。
「事実です! 前線から入っている報告では、そのようになっています!」
前線から入っている報告が間違っている可能性は、この際考えなくてもいいだろう。
つまり、これは間違いなく事実だという事か。
しかし……何がどうなってこうなった?
「ドレイク、一応聞くがギブン家にそんな力があったか?」
「いや、ないな。ギブン家はそんな力はない」
「そうなると、向こうが用意した戦力は別の場所から確保した可能性があるな」
「馬鹿な、そのような勢力など……クの国か?」
「それはないと思うけどな。クの国がギブン家に味方をしたとして、得られる利益がない……とは言わないが、それでもドレイクと友好的な関係を崩す方が明らかに大きな損失だ」
それに、用意された戦力はダーナ・オシーだという。
クの国であれば、ダーナ・オシーではなくアルダムか、もしくはドレイクから購入したドラムロといったところだろう。
勿論、秘密裏にビショットがギブン家と手を結んでおり、それでダーナ・オシーを入手し、量産に成功したといった可能性も否定は出来ないが……
それでも、俺の勘はクの国が裏切ったといったのではないと思えた。
「戦いはどうなっている?」
「前線が混乱している模様ですが、何とか戦線は維持出来ているようです」
ドレイクの質問に、通信兵がそう答える。
オーラバトラーの数で考えれば、ギブン家の方が多い。
だが、それでも2倍、3倍といったような圧倒的な差ではないのだから、数の差で圧倒的にやられるといったような事はない。
そしてダーナ・オシーは、純粋な性能でドラムロよりも劣る。
何よりも、ドラムロのパイロットは俺やマーベルが模擬戦で鍛えてきたのだ。
パイロットの実力という点では、ドレイク軍はギブン家よりも明らかに上だろう。
だからこそ、戦線を維持出来ているのだろう。
「そうか。気をつけろ、ギブン家にどこからか援軍が来たとなると、他にもまだギブン家に協力する戦力が……」
いるかもしれない。
そう言おうとしたドレイクだったが、再び通信を受け取っていた兵士が驚きの声を上げる。
それもただの驚きではなく、信じられない事が起こったといったような、そんな驚愕の声だ。
「馬鹿な! 何でそんな事になる!」
「何が起きた!」
ギブン家の戦力が予想していたよりも強力だったと聞いた時には、ドレイクも少し反応が遅れた。
だが、これが2度目ともなれば、話が変わってくる。
兵士の驚きの声に動揺する様子もなく、素早く何が起きたのかを確認する。
そんなドレイクの様子に、兵士は我に返りながら、それでもなお信じられないといった様子で口を開く。
「その、後方に位置するフラオン王の軍からも攻撃を受けていると」
「……何?」
さすがにその報告は、ドレイクにとっても予想外だったのだろう。
いや、それはドレイクだけではない。俺にとっても驚きでしかなかった。
フラオンの軍から攻撃?
考えられる可能性としては、フラオンの軍だからこそ練度も低く、ドレイク軍をギブン家の軍と間違って攻撃しているといったところか?
いや、だがダーナ・オシーとドラムロでは、シルエットが大きく違う。
フラオンの軍であっても、さすがにその外見で間違うといったような真似はしないだろう。……それでも絶対と言えないのは、それもまたやはりフラオンの軍だからだろう。
「フラオン王に連絡せよ! 攻撃する相手を間違っているとな!」
苛立ち混じりに叫ぶドレイクだったが、それですぐ冷静になる辺り、有能な証だろう。
「アクセル王、いざという時は力を貸して欲しい」
「フラオンが裏切ったと?」
「可能性としては、否定出来ん。普通に考えれば、その可能性はないと思う。だが、フラオン王の性格を考えると……」
気紛れで何をしてもおかしくはないか。
「もしフラオンが意図的に攻撃してくるとなれば、ギブン家と繋がっている可能性が高い。そうなると、ギブン家の所有するダーナ・オシーが増えているのは、それが原因だと思うか?」
その問いに、ドレイクは少し考えた後で首を横に振る。
「いや、それはないだろう。フラオン王の性格を考えれば、ゲドよりも高性能で新しいオーラバトラーがあると聞けば、それはギブン家ではなく自分の軍に多く配備させようとする筈だ」
普通に考えれば、ドレイクを攻撃する為の騙し討ちをしようとするのだから、フラオンの軍にギブン家の開発したダーナ・オシーを配属するといった事は考えられない。
だが、その考えられない事を平気で行うのが、フラオンなのだ。
国王たる自分の軍に最新鋭――実際にはドラムロよりも性能は低いのだが――のダーナ・オシーが配備されていないのは許容出来ないと、そう暴れる姿は目に浮かぶ。
とはいえ、今はそんな事を考えるよりも先に色々とやるべき事はある。
「フラオン王との連絡はついたか!?」
「いえ、全く。向こうにもドロやゲドがある以上、通信が出来ないという事はないと思うのですが」
ドレイクの言葉に、通信を担当している兵士が戸惑ったように、そして申し訳なさそうに言う。
この状況で向こうと通信が繋がらないという事は、向こう側で通信を切っていると考えた方がいい。
「マーベル、何かあったらすぐ対処出来るように、機体に乗っておいた方がいい」
「ええ。……でも、まさかこんな事になるなんて……」
驚きつつ、俺とマーベルはダンバインとサーバインの方に向かったのだが、そんな俺達の行動に待ったを掛ける声がドレイクの本陣の警備をしている兵士から出た。
「オーラバトラー……ゲドが接近中です! 気をつけて下さい!」
そんな兵士の声に、ドレイクやその周辺にいた者達の表情が厳しくなる。
当然だろう。ゲドは旧式のオーラバトラーで、ドラムロが量産された今となっては、ドレイク軍では使われていない。
ギブン家でも、ダーナ・オシーが採用された以上はゲドは使われていないだろう。
いやまぁ、ゲドを使っていたのかどうかは分からないが。
そもそも、ゲドはパイロットに大量のオーラ力を必要とするオーラバトラーだ。
地上人であれば、誰でも問題なくゲドを使用出来るだろう。
しかし、バイストン・ウェルの人間でゲドを操縦出来るような者となると、どうしてもその数は希少だ。
そんなゲドを使用しているのは、現在フラオンのみ。
いやまぁ、ドレイクの話によるとゲドも結構他国に売れたらしいし、他国でゲドを採用している軍もないとは言い切れないが。
実際、クの国ではアルダムが完成する間にガラミティがゲドを使っていたし。
それでもこの状況でドレイクの本陣にゲドを向かわせてくるような勢力と考えれば、やはりフラオンしかいないだろう。
そして実際に兵士の視線を追えば、そこにはゲドがいる。
間違いなくこちらの状況を理解している以上、俺はともかくマーベルがダンバインに乗るというのは止めておいた方がいい。
こちらに向かってくるゲドは1機だが、それでも普通の人なら抗いようがないだけの力を持つ。
そしてダンバインを始めとしたオーラバトラーというのは、コックピットに乗り込んだからといってすぐに起動出来る訳ではない。
起動するのに多少なりとも時間が必要なのは間違いなく、今の状況で乗り込んだりすれば、間違いなく敵対行動として認識されるだろう。
ダンバインはオーラバトラーの中でも高性能だが、それはあくまでもパイロットの高いオーラ力があってこそだ。
パイロットが乗り込んでいない状況……もしくは、乗り込んでもまだ起動していない状況では、オーラ力を発揮するのは不可能だ。
「待て、マーベル。もう見つかっている。このままダンバインに乗るのは危険だ。少し様子を見るぞ。幸い、向こうは1機だ。ドレイクを相手に何らかの話をするのは間違いない」
「分かったわ」
この辺り、マーベルの非凡なところだよな。
それなりに実戦を経験しているとはいえ、冷静に現状を判断して最善の行動を取ることが出来る。
当たり前の事ではあるのだが、いざ実際に戦場に出てみれば、その当然の事が出来ない者が多い。
そうしてマーベルの様子に感心していると、やがてゲドはドレイク軍の本陣の前に着地する。
当然そんなゲドの姿にはドレイクも気が付いていたのか、護衛の兵士達と共にゲドの側までやって来ていた。
ゲドは、そんなドレイクに向けてオーラソードの切っ先を向ける。
やっぱりな。
そんなゲドの様子を見て、そう思う。
ゲドのパイロットは、操縦こそ出来るが、それでもオーラ力が足りないのか、それともまだ乗り慣れていないのか。
ともあれ、ゲドの動きは最初にダンバインに乗ったトカマクにも劣るくらい、酷いものだった。
それでも十分人を殺すだけの性能は秘めているのだが。
『ドレイク・ルフト! フラオン陛下に逆らった罪により、処刑する!』
その言葉と共に、ゲドはオーラソードを振り下ろすのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650