これはまた……随分と被害を受けたな。
それがラース・ワウに戻ってきた俺の感想だった。
ギブン家も、普通の住民達には被害を出さないようにと考えていたのか、被害を受けたのはあくまでもドレイクの城の周辺だったり、機械の館の周辺だったりが多い。
だが、当然ながら戦いというのは何が起きるのか分からない訳で……何機かのドロが、城下街の家を幾つか潰しているのを見てとることが出来た。
ドレイクにしてみれば、これも気にくわない事だろうな。
とはいえ、ドレイクは当然この件でギブン家を責める筈だ。
ましてや、娘のリムルまで誘拐されているのだから。
いや、本当に誘拐かどうかというのは、正直微妙なところだが。
ショウとリムルが何度か2人で話しているところは、俺もしっかりと見ている。
そうである以上、あれは誘拐ではなく駆け落ちだったという可能性も決して否定は出来ない。
勿論、リムルを可愛がっているドレイクが、それを認める事はまずないと思うが。
「取りあえず機械の館に向かうぞ。俺とトッドの機体はともかく、トカマクの機体は修理して貰う必要がある。俺のサーバインはともかく、ショウと激しく戦ったトッドのダンバインは、整備をして貰う必要があるだろうし」
そう言うと、トッドは不機嫌そうに鼻を鳴らす音が聞こえてきた。
まぁ、トッドにしてみれば今回の一件は大きな手柄を挙げられるところだった筈が、逆に大失態となったのだ。
それを考えれば、トッドが現在の状況に不満を持つのは分からないでもない。
ドレイクがこの件をどう判断するかだな。
とはいえ、リムルを可愛がっているドレイクは駆け落ちといった事を認めはしないだろう。
だとすれば、やはりショウが誘拐したという事になり、トッドとトカマクはそれを防げなかったという事になる。
ただ、気楽に考えている俺だが、俺もまたドレイクからの依頼を果たせなかったというのは間違いない事実なんだが。
とはいえ、あの状況でもし逃げたショウ達を追撃するといったような事になっていた場合、トカマクがどうなったか分からなかっただろうし、トッドも大人しく引き下がったりはしなかっただろう。
トッドにしてみれば、今までショウと戦っていた自分がここで引き下がり、後からやって来た俺がショウ達を追撃するといったら、とてもではないが許容出来なかっただろう。
俺が大人しく撤退を選択したからこそ、トッドもまた素直に退いたのだから。
さて、この一件がどうなるか。
そう思いながら、俺はトカマクの機体を持ったまま機械の館に降下していくのだった。
「アクセル王ともあろう方が、まさか姫様を連れ去ったショウ・ザマを逃がすとは……一体、どういうことですか!」
バーンのその言葉に、謁見の間に集まっていた者達の視線が俺に向けられる。
その中には怒りを抱いている視線もあれば、ざまあみろといった視線もある。
だが、そんな中でも心配そうな視線を向けてくる者がいるのは、今までの行動の結果だろう。
「そう言われてもな。もしあの状況で俺が追撃した場合、トカマクの機体がどうなっていたかは分からないぞ? 当然、そうなればパイロットのトカマクも死んでいた可能性がある。バーンとしては、地上人が……いや、聖戦士は死んだ方がよかったのか?」
そう言うと、次は謁見の間にいた者達の視線がバーンに向けられる。
俺よりは人気があるのは間違いないが、聖戦士という存在に強い希望を抱いている者もいるのか、その聖戦士を見殺しにしてもよかったのかといった質問には、不満そうな色を見せる者も少なくない。
「そんな事は言っていません。ですが、何事にも順序というものがあります」
「それを言うのなら、そもそも何でリムルが誘拐されるのを防げなかったんだ? リムルの護衛の騎士は一体何をしていたのか、教えてくれないか? 騎士団を率いているバーン」
「ぐっ、それは……」
言葉に詰まるバーン。
まぁ、言った俺にしても、これはかなり無茶だろうというのは自分でも納得出来る。
まさか聖戦士候補の地上人が、ドレイクの娘のリムルを誘拐――もしくは駆け落ち――するとは、普通は予想出来ないだろうし。
しかし、リムルがドレイクに不満を持っていたのは事実。
そんなリムルが何か行動をした時、それに対処出来るように準備しておくのはバーンの立場としてはそうおかしな話ではない。
「バーン、その辺にしておけ。アクセル王も」
バーンが何も言えなくなったのを見てか、ドレイクがそう言う。
若干不機嫌そうなのは、やはりリムルの件だからだろう。
もしこれでリムルの件ではなく、他の問題であったのならドレイクもここまで不満そうな様子を見せたりはしなかった筈だ。
「おや、甘いですこと。アクセル王がもう少し頑張れば、リムルを連れ去った相手から取り戻せたというのに」
「ルーザ」
「あら、失礼」
ドレイクがそれ以上言い争うのを止めるようにと言ったところで、何故か――ある意味狙っていたのだろうが――ルーザがそう言ってくる。
これまで見てきた感じからすると、ルーザは決してリムルを可愛がっているようには思えない。
勿論、ルーザが娘に愛情を抱いていないとおかしいとまでは言わない。
正確には、ルーザにしてみればリムルは血を分けた我が子といった感じではなく、愛情を感じない子供といったところか。
ルーザの性格を考えると、それこそ何かあったらあっさりと切り捨てられる相手といった認識だろう。
そういう意味では、リムルに親としての愛情を抱いているのはドレイクだけといったところか。
ドレイクにとって哀れなのは、そんな娘から悪しきオーラ力の持ち主と認識されている事だろう。
「ともあれ、ギブン家の行動は目に余ります」
話を戻すように、バーンがそう言う。
ただ、ギブン家にしてみれば自分の屋敷をバーンに燃やされたんだから、その復讐といった思いもあるのだろう。
もっとも、最初に明確に敵対してきたのはギブン家なのだが。
宣戦布告といったような事もなく、地上人を召喚した日や、そのお披露目の園遊会で襲撃してきたのだから。
そういう意味では、この戦いの切っ掛けを生み出したのは間違いなくギブン家だ。
「フラオンに対して、人をやったらどうだ? このままだと、結局のところ領主同士の争いとなる。それはもう避けられないのなら、こちらが正しいと周囲に知らせる為にも、フラオンから許可を貰った方がいい。……今まで色々と機嫌をとってきたんだ。出来るだろ?」
俺の言葉に、何人かが納得した様子を見せる。
それでいながら、俺がフラオンを……あくまでも名目上とはいえ、ドレイクの上司たるアの国の国王の名前を呼び捨てにしても、特に気にした様子はない。
寧ろそれが当然といった様子すら見せている。
フラオンがそれだけ侮られているという事の証なんだろうな。
とはいえ、当然だが俺はそれを咎めるといったつもりはない。
そもそも俺はバイストン・ウェルの人間ではないし、何よりもフラオンがどのような人物なのかを自分の目で見ている。
そんな経験からすると、フラオンは愚王以外のなにものでもない。
正直な話、最初にクの国に行ってビショットと会うといった事になった時、かなり憂鬱な気分になったのは、やはりフラオンの件があったからだろう。
最初に見たバイストン・ウェルの一国の王がフラオンだったのだから、もしかしてビショットも……と、そう思ってしまうのは、我ながら仕方がないと思う。
しかし、ドレイクはビショットを評価していた。
そして俺の目から見たビショットがどのような人物なのかの話を聞きたいとなれば、当然だがビショットをフラオンと同列に扱うのは無理があるだろう。
「そのような提案をしたからとはいえ、リムルを誘拐された罪を償うなどといった事にはなりませんけどね」
「ルーザ」
とことん俺の言葉を認めたくないらしいルーザだったが、それでもドレイクに言われると、それ以上は何も言わない。
ただ、こうして黙ったのはあくまでも今だけの話で、また少しすれば色々と言うんだろうけど。
「お館様、アクセル王の提案はどうします? 何かあった時の事を考えると……」
バーンのその言葉に、ドレイクは少し考えてから頷く。
「うむ。では、すぐにエルフ城に手紙を出そう。バーン、行ってくれるな?」
「私がですか!?」
ドレイクに提案したバーンだったが、まさか自分がエルフ城に行く事になるとは思っていなかったのか、驚きの表情を浮かべる。
そんなバーンに向かって、ドレイクは当然だといった様子で頷く。
「そうだ。現在この城にはビショット王も滞在している。その辺の事情を考えれば、フラオン王には信用出来る者が報告に行くのがいい。それこそ、儂の筆頭騎士たるお前のようにな」
「は! お館様がそのように仰るのであれば、私はそれに従います」
本心はどうあれ、バーンは渋々といった様子ながらドレイクの言葉に頷いてみせる。
バーンにしてみれば、出来ればフラオンに報告に行くのは他の者にやらせたかったのだろう。
何しろ、俺が指摘したようにドレイクの部下の騎士の中で頂点なのがバーンだ。
あるいは俺が指摘しなければ、その辺を誰も気にしなかった可能性はある。
しかし、よりにもよってドレイクの前で俺はそれを指摘した。
それだけに、バーンとしてはその汚名をどうにか返上したかったのだろう。
だが、ドレイクから直々にバーンにエルフ城まで行くようにと命じられた以上、それを拒否する事は出来なかったといったところか。
「ふむ。では次の話題だ。……いや、それよりも前に、今も少し話題に出たが、ビショット王はどうされている?」
ビショットがいるところで、ルフト領がギブン家の部隊に襲撃され、それとタイミングを合わせてショウがリムルを奪ったのだ。
ドレイクの面子は、これ以上ない程に潰されただろう。
これがビショットが来る前か、帰った後での話なら、もう少し違ったのだろうが。
何にせよ、今回の件でギブン家は多くを手に入れ、逆にルフト家は多くを失った。
ショウ・ザマという、新たに召喚された地上人の中では最も優れたオーラバトラーのパイロット、そしてショウが操る、聖戦士用のダンバイン、ドレイクの娘のリムル。
また、ドレイクからそれだけの物を奪い、実質的に勝利したといった評判も、この場合は大きいだろう。
それに比べ、ギブン家が得た全てはドレイクが失ったものだろう。
ただし、それはあくまでも近視眼的に見た場合での話だ。
宣戦布告の類もなしに奇襲し、ドレイクの娘を誘拐するといったような行為は、どうしてもマイナスのイメージを抱いてしまう。
これでドレイクがフラオンから、ギブン家を攻めてもいいという錦の御旗を手に入れれば、それは大きな意味を持つ事になる。
ギブン家は手を誤ったな。
とはいえ、ドレイクと友好的な関係を築くことが出来ない以上、後手に回る訳にはいかないのは間違いないのだろう。
「で、ギブン家を倒してもいいという保証を貰ったら、ギブン領に攻撃を仕掛ける訳だが、その時俺はどうする?」
「アクセル王には、いざという時の戦力として待機しておいて貰いたい。今回のような事があった時、即座に動ける戦力があるのとないのでは全く違うからな」
「逃がしましたけどね」
「……ルーザ、いい加減にしろ」
再び口を挟んできたルーザを、ドレイクが睨み付ける。
ドレイクにしてみれば、俺への印象は少しでもよくしたいと、そう思っての行動なのだろう。
とはいえ、ルーザがそういう奴だというのは、既に理解している。
そうである以上、ここで特に突っ込むような真似をしても意味がないだろうから、放っておくが。
「失礼しました」
「ともあれ、地上人にはギブン領の攻撃に集中して貰う。このような真似をしてきた以上、こちらとしてもギブン領に甘い態度を取る訳にはいかん」
だろうな。
このバイストン・ウェルはファンタジー世界だ。
一度相手に侮られるといったような事になれば、その相手だけではなく他の連中からも与しやすい相手と思われて、いらないちょっかいを掛けられてしまう。
とはいえ、ドレイクとしてもギブン家からは度々ちょっかいを掛けられてきたり、ショットが育てた技術者が色々とオーラマシンの部品を持って亡命したりとされていた。
それを思えば、ドレイクも近いうちにギブン家に攻撃をしたとは思うんだが。
いやまぁ、ギブン家の屋敷を焼いたという時点で十分攻撃したといったような状況だったとは、思わないでもないが。
「分かった。俺の方から別にどうこうしたいって事はないから、依頼があったら言ってくれ」
出来ればギブン家が運用しているゼラーナを奪いたいところだが、ゼラーナは向こうにとっては旗艦的な存在だけに、そう簡単に奪うといったような真似は出来ない。
それはそれで、正直どうかと思わないでもなかったが。
ともあれ、こうしてギブン領への対策は話し合われるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650