兵士からリムルを誘拐したショウを追うように依頼された――正確にはドレイクからの依頼を伝えられたというのが正しいが――俺は、サーバインに乗ってラース・ワウの上空を飛ぶ。
『アクセル、私は向こうに行くわね』
「ああ、気をつけろよ。……まぁ、ギブン家の戦力を考えれば、マーベルを相手にどうにか出来るとは思えないが」
『そうね。でも、向こうもこんな真似をした以上は捨て身で襲い掛かって来ている筈よ。そうなると、一体どういう行動を取るのか分からないわ。そっちも気をつけてね。相手はショウなんだから』
そう言うと通信は切れ、マーベルのダンバインは少し離れた場所で行われている戦い……ゼラーナとダーナ・オシーが3機に、ドラムロが10機近い戦場に向かう。
普通に考えれば、オーラバトラーが10機近いドレイク軍の方が有利だ。
しかし、ギブン家の方はゼラーナというオーラシップを出している。
それを使って、上手い具合に防御しているといったところか。
向こうにはマーベルも向かったし、その戦法も長くは使えないだろう。
さて、そうなると問題は……
「ショウ達はどこだ?」
呟き、周辺の様子を見る。
ショウがリムルを誘拐した以上、迂闊にショウのダンバインを撃破するといったような真似は出来ない。
下手に撃墜すると、リムルが死ぬ可能性も決して否定出来ないし。
そうなると、まだ実戦経験のないトッドやトカマクでは少し荷が重いだろう。
ただでさえ、ショウは召喚された地上人3人の中では最もオーラバトラーの操縦技術に長けているのだから。
とはいえ、リムルを連れ去ったというのは、ショウのダンバインを撃破することは出来ないという事であると同時に、ショウの方もリムルに配慮してダンバインを操縦しないといけないという事を意味している。
リムルはドレイクによって甘やかされて育った。
いやまぁ、実際には甘やかされて育ったというよりは、姫として育てられたといった方が正しいのか。
そういう訳で、姫としての教養とか礼儀作法とかならともかく、戦う者としては全く訓練していない。
それがなくても、オーラバトラーは本当に最近完成したばかりの兵器である以上、兵士や騎士の中にも、まだ訓練をした事がない者の方が多いだろう。
つまり、リムルを連れた状況でダンバインは本気で戦闘が出来ない。
それ以外にも、リムルがどうやってダンバインに乗っているのかというのがある。
ダンバインに限らず、オーラバトラーのコックピットは決して広くはない。
MSでもコックピットに自分以外の人間がいればかなり邪魔なのに、オーラバトラーはMSの半分以下の大きさだ。
当然、そのコックピットはMSよりも小さい。
リムルは小柄だから、多分無理をすれば何とかコックピットに乗せる事が出来るが、ショウは戦いのドサクサに紛れてリムルを誘拐したと、兵士が言っていた。
だとすれば、リムルをコックピットに乗せているような時間はあったか?
場合によっては、掌に乗せたまま移動しているという可能性すらある。
その辺の事情を考えれば、トッド達も迂闊に攻撃をするといったような真似は出来ないだろう。
さて、そうなると……運が悪ければ、ショウとトッド、トカマクとの戦いに巻き込まれてリムルが死ぬという可能性は十分にあるな。
出来ればそうなる前にリムルを確保したい。
個人的に人を悪しきオーラ力だ云々と言うリムルは、とてもではないが好意を抱けない。
それでもドレイクの娘である以上、取り戻したいのは事実だった。
「問題なのは、どこにいるかだな。どこで戦闘をしているのか分からない以上、何とかして……いや、予想するのは難しくはないか」
ギブン家の襲撃と共に、ショウは行動を起こした。
つまり、ショウはギブン家と手を組む事にした訳だ。
あるいは亡命かもしれないが。
ともあれ、そんな状況でリムルを誘拐したショウが向かうとすれば、当然だがギブン領だろう。
そちらに向かえば、ショウ達に追いつく可能性は十分にあった。
真っ直ぐギブン領に向かわず、どこかでゼラーナと合流しようとしている可能性も否定は出来ないが、それでも何の手掛かりもない以上、ギブン領に向かった方がいいだろう。
そう判断し、ギブン領に向かって進む。
サーバインの機動力は非常に高く、それこそダンバインの能力よりも上だ。
上手くいけば、戦っているところに追いつけるだろう。
リムルを連れている以上、ショウも本気で戦うといった真似はまず出来ないだろうし。
問題なのは、ショウがリムルを誘拐してからどれくらいの時間が経ったかという事だろう。
その辺は一体どうなるか、だろうな。
そうして飛んでいたところで、やがて視線の先に複数のオーラバトラーを発見した。
ダンバイン3機がいるのは、予定通り。
だが……予想外だったのは、その戦場にはダンバイン3機以外に、ダーナ・オシーが3機存在していた事だ。
何でここにダーナ・オシー3機が?
ゼラーナと一緒にラース・ワウを攻撃していた以外にも、これだけの戦力をギブン家が用意していたという事か。
恐らく、ギブン家としては本来ならマーベルを地上から召喚して自分達の戦力として使う予定だったのだろう。
だが、俺の転移によってその計画は崩れ去った。
それどころか、結果として自分達が召喚したマーベルは俺の仲間としてドレイクに協力するようにすらなっている。
その辺を思えば、地上人を召喚するのは自分達にとって自殺行為であると認識してもおかしくはない。
その上で、ショットやゼットの部下がギブン家に亡命し、ダンバインやドラムロの設計図からバイストン・ウェルの人間でも操縦出来るダーナ・オシーを開発した。
そうなれば、無理に地上人を召喚するといったような真似をする必要もなく、ギブン領にいる兵士……もしくは兵士ではなくても、オーラ力の強い領民をオーラバトラーのパイロットとして採用すればいい。
元々、ギブン領はルフト領と並んで評判のいい領地だっただけに、住人はかなり多かった筈だし、そんな無茶も通そうと思えば通せるのだろう。
当然、そのような無茶をすれば、後で何らかの問題が起きるのだろうが……ともあれ、今はトッドやトカマク達を助けるのが最優先だ。
元々トカマクは聖戦士の中では一番弱い――それでも戦意旺盛なので、ドレイク達の評価だとトッドよりも上だが――ので、ダーナ・オシー3機を相手にかなり苦戦している。
苦戦しているというか、左腕の肘から先が切断されていて、オーラショットとショットクローは使えなくなっている。
残っている武器は、右手に持っていたオーラソードと右手のショットクローだけか。
それでいながら、ダーナ・オシーの方は特に被害らしい被害を受けていない。
恐らく、3機が連携してトカマクのダンバインと戦っており、優位に戦いを行っているのだろう。
そっちはともかくとして、問題はショウとトッドの方だ。
近付いたところで理解出来たが、やはりショウのダンバインは左手にリムルを掴んでいる。
コックピットに乗せれば、もっと楽だったろうし、リムルの安全も確認出来ただろうに。
ともあれ、リムルを左手で持っている為に、ショウは本気で戦う事は出来ない。
どういう偶然からか、トカマクのダンバインと同じく左手を使えないようになった状態で戦っているのだ。
もっとも、そうして左手が使えず、機体制御に関しても本気を出せない状況でもトッドと互角に戦っている辺り、さすがこの世界の原作の主人公と言うべきなんだろうが。
ただ、このままだと危ないな。
具体的にはショウが……いや、リムルが。
トッドも最初はショウとの戦いでリムルを気に掛けてはいたのだろうが、片腕しか使えず、それでいて機体も十分に動かせないというのに、ショウを倒す事が出来ない。
それがトッドの苛立ちに輪を掛けているのか、今となってはショウのダンバインに対する攻撃は全く遠慮がない。
これはやばいな。
ショウを撃墜するだけならまだしも、このままだとリムルまで死んでしまいかねない。
「トッド! そのまま攻撃すれば、リムルを殺すぞ!」
幸い、サーバインの移動速度によって大分戦場に近付いたので、通信を送る。
そして、俺の言葉で現在の自分の攻撃がかなり我を忘れた……ムキになって攻撃していたのを自覚したのか、一瞬攻撃を止める。
だが、そんなトッドの様子にショウは勝機を見つけたのか、蹴りを放つ。
勿論、それはオーラバトラーの……それも蹴りで相手の装甲を引き裂くといった事を考えて設計されている、ダンバインの蹴りだ。
足の爪がトッドのダンバインの装甲を斬り裂こうとし……だがそこでトッドは咄嗟にオーラソードを盾代わりに前に出す。
この反応は、俺と模擬戦をやったからこその行動というのは、俺の考えすぎか?
ともあれ、その一撃は間違いなくトッドのダンバインを致命的な一撃から救った。
だが、救ったと同時に、トッドのダンバインは大きく吹き飛ばされた。
これが地上での戦いであれば、地面に足の爪を食い込ませてその場で耐えるといったようなことも出来ただろうし、空中で吹き飛ばされたとしても、オーラバトラーの戦闘に慣れていた場合は、オーラコンバータを使ってスラスターを噴射させてその場で待機するといった真似も出来ただろう。
特にトッドは空軍のパイロット候補生だった事を考えれば、空中での戦闘行動はショウよりも一日の長があってもおかしくはない。
それでもこうしてトッドが吹き飛ばされたのは、素直にショウの方がトッドよりもオーラバトラーのパイロットとして……いや、聖戦士としての才能があったといったところか。
そしてショウがパイロットとして非凡なところは、こうしてトッドを吹き飛ばしたところで追撃の一撃を放つのではなく、素早くその場から離脱を選択したといったところだろう。
負けん気が強いショウの性格から考えれば、追撃を選んでもおかしくはない……というか、寧ろそれを選ぶほうが確実だっただろうに。
そんな真似をしなかったというのは、やはりショウが聖戦士としての高い才能を持っている事を意味していた。
まだ、3機のダーナ・オシーも、そんなショウの行動を見ると手にしたミサイルランチャーを一斉に発射し、トッドとトカマクのダンバインに放つ。
次々と放たれるミサイルは、しかしトカマクのダンバインはもう結構なダメージを受けていて反撃が出来ないし、トッドも何とかショウの一撃から体勢を立て直したところだった為に、自分の身を守るので精一杯だった。
俺の操縦するサーバインが戦場に到着したのは、まさにそんなタイミングだった。
「させるかよ!」
オーラショットを放ってミサイルを迎撃し、同時にショットクローを放ってから振り回して盾にしてミサイルを防ぐ。
それと時間差で襲ってきたミサイルはオーラソードで斬り裂き……そして3機のダーナ・オシーから放たれたミサイルは、その全てを迎撃することに成功する。
ただし、ダーナ・オシー側も、自分達の放ったミサイルでこちらを撃破出来るとは思っていなかったのだろう。
可能なら撃破したい……といったような気分か。
トカマクとの戦いでミサイルを使っていなかったのも、脱出の時に一度に全機が発射するのを狙っていた為か。
ミサイルとかそういうのは、つい最近までバイストン・ウェルにはなかった筈なんだが。
そうなると、このような使い方はショットやゼットから教えて貰った技術者達が亡命したギブン家に伝えたといったところか。
ともあれ、俺は今にも地上に降下……いや、落下しそうだったトカマクのダンバインを持ち上げ、トッドのダンバインの様子を確認する。
「トッド、そっちは無事か?」
『ああ、無事だよ! くそっ! ジャップめ!』
そう言い、戦場から逃げ去ったショウ達を追おうとするトッド。
「待て!」
そんなトッドに対し、制止する為の声を掛ける。
『何でだよ! このままだと逃がしてしまうぞ!』
頭に血が上ったトッドは、半ば反射的にそう言い返してくる。
トッドにしてみれば、ショウによって蹴り飛ばされてリムルを連れ去られたというのは自分の失態である以上、それを取り返したかったのだろう。
ただでさえ、トッドはドレイクからの評価はそこまで高くない。
いや、もっと正確に言えば低い。
それだけに、ここでリムルを誘拐したショウを逃がすといった事は許容出来なかったのだろう。
「それでもだ。トカマクの機体の状況をしっかりと認識してるか?」
『それは……』
そこでようやくトッドもトカマクの機体の状況を理解したのか、やがて渋々とだが語気を収める。
この辺の切り替えの早さはさすがと言ってもいいだろうな。
もしこの状況で自分だけがショウ達を追っていったら、どうなるかというのはすぐに分かったのだろう。
リムルを連れたショウと戦って、ほぼ互角だったのだ。
いや、互角というのは少し言いすぎか。倒しきれなかったり蹴りで吹き飛ばされたのを考えれば、ショウの方が勝っていた筈だ。
そんな状況で追撃をした場合、ショウ以外に3機のダーナ・オシーまで相手にする事になるのだ。
とてもではないが、勝つことは出来なかっただろう。
俺が追撃に協力すればよかったのかもしれないが、その時はトカマクを見捨てる事になっていただろう。
「取りあえずラース・ワウに戻るぞ」
そう告げた俺の言葉に、トッドは非常に渋々ながら頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650