「むぅ……相変わらず魔法が発動しないな」
パーティがあった日の夜、俺の家では今までにも何度か行っているように、ガラリアとマーベルが魔法の訓練をしていた。
当然の話だが、マーベルもガラリアもいつも魔法の勉強をしている訳ではない。
それこそ、日中は仕事をしており、俺の家で魔法の訓練をするのも数日に1度といったくらいだ。
そして訓練も1時間から3時間程度しか出来ない。
そんな状況では、当然ながらそう簡単に魔法を使えるようになったりはしない。
魔法球があれば、そこで短時間でも集中して訓練が出来るんだろうが。
ただし、魔法球を使った場合は年齢の問題がある。
マーベルやガラリアといった面々にしてみれば、もし魔法球があるとしても使うかどうかは分からない。
いや、数回程度だったら使うかもしれないが、継続的に使うかと言われれば難しいだろう。
マーベルは女だけにその辺をかなり気にしそうだし、ガラリアはガラリアで年を取れば騎士として働ける期間が短くなってしまうというのがある。
その辺の事情を考えると、当然ながらマーベルもガラリアも魔法球を使いたいとは思わないだろう。
「魔法を使う時はイメージが重要だ。そういう意味では、実際に何度か魔法を見ているから少しくらいは出来てもいいんだけどな」
ショウなら日本出身だろうし、漫画とか読んでいてもおかしくはない。
であれば、もしかしたら魔法を使ったりといったような事はマーベルやガラリアよりも上手く出来るかもしれないが。
ただ、ショウの性格を考えると魔法とかには興味なさそうだよな。
寧ろもっとオーラバトラーの操縦に集中したいと思ってもおかしくはなかった。
「イメージ……イメージ……」
イメージと呟くガラリアの様子を見かねたのか、マーベルが口を開く。
「アクセル、炎獣をお願い出来る?」
「ああ」
炎獣に関しては、特に意識したりせず出す事も出来る。
俺の右手が一瞬白炎に姿を変え、その白炎が猫や犬、鳥といった炎獣に姿を変えて部屋の中を走り始めた。
「むぅ……」
そんな炎獣を見て、ガラリアが呻き声を上げる。
呻き声は上がっているのだが、その目には優しい色があった。
普段の騎士としてのガラリアしか知らない者であれば、まず見た事がないだろう姿。
ゼット辺りなら、こういうガラリアの姿を知っているのかもしれないが。
もし知らない場合、ゼットから羨ましがられそうだな。
そうなったら、ゼットにも魔法を習得して貰うというのはありかもしれない。
いやまぁ、ショットとゼットはぶっちゃけルフト領の中でもトップクラスの忙しさなんだから、魔法を習得出来るような時間なんかそう作れないと思うが。
ショットやゼットに比べれば、まだ余裕のあるガラリアでさえ、この有様なのだから。
あ、でもゼットなら愛の力で何とかしそうな気がしないでもない。
愛の力があれば、その辺はどうにか出来る可能性は十分にあるし。
「ほら、ガラリア。魔法を使えるようになれば、アクセルみたいに炎獣を出したり出来るのよ。自分で好きな炎獣を作ったりとか、してみたいでしょう? なら、もう少し頑張りましょう」
マーベルの言葉に、若干集中力が切れかけていた――というか、日中の疲れからか――ガラリアは、再び魔法の訓練に集中する。
ガラリアにとって、それだけ炎獣というのは大きな意味を持つのだろう。
初めて見た時から、ガラリアは炎獣に対して強い興味を持っていたからな。
興味というか、愛でたい気持ちといったところか。
だからこそ、自分で炎獣を生み出せるかもしれないと思えば、魔法の訓練に集中するのだろう。
「むむ……」
悩みながらも、魔法を使おうとするガラリア。
そのうち、炎獣に対する執着心で本当に魔法を使えるようになるかもしれないな。
とはいえ、ガラリアが炎獣……もしくは他の属性で同じような魔法を生み出せたとしても、俺と同じような数の炎獣を生み出すといったような真似が出来るかどうかは、微妙なところだが。
「マーベルの方は、訓練はどんな感じだ?」
「難しいわね」
訓練をしているのは、ガラリアだけではなくマーベルもだ。
ガラリアの方が主な訓練をしているのだろうが、マーベルもまたガラリアに負けじと訓練を集中している。
「そもそも、魔力を感じるといったような事が出来ないのよ。魔力って、一体どういうものなの?」
「どういうって言われてもな。説明をするのは難しい。人によって魔力の感覚はかなり違うし」
俺の感じている魔力の感覚と、他の者の魔力の感じ方は大きく違う。
俺の感覚を教えても、それがマーベルやガラリアの訓練に役立つかと言われれば、微妙なところだろう。
ここにエヴァがいれば、その辺の感覚を上手い具合に教えられるんだろうけど。
しかし、残念ながら俺は魔法学校とかでしっかりと魔法を習った訳ではない。
だからこそ、その辺は上手い具合に説明出来ないのだ。
あくまでもマーベルとガラリアに自分の感覚で理解して貰うしかない。
「そうなの? ……残念ね」
マーベルは俺の言葉に納得した様子を見せてから、再び魔法を使おうと訓練に集中していく。
それにしても、20代前後の女が魔法の杖を振るっている光景は色々と目を惹くものがあるな。
しかもその杖は見るからに子供が遊ぶのに使うような、玩具の杖のように見えるし。
「以前にも言ったが、バイストン・ウェルは自然が多い。その結果として、魔力も地上よりは多い筈だ。……まぁ、この世界の地上がどのくらい自然豊かなのかは、ちょっと分からないが」
1980年代の地球というと、地上もかなり発展している頃合いだ。
あくまでも、俺が知ってる限り……他の世界での地球の話だが。
ともあれ、そんな時代だけに当然のように自然破壊とかも行われていてもおかしくはない。
それでもマブラヴ世界の地球よりは、大分マシだろうが。
いや、でもマブラヴ世界の地球も、今はマクロス世界とかからの技術でかなり自然を回復してるって話だったから、場合によってはこの世界の地上よりもマブラヴ世界の方が自然豊かになっているという可能性も否定は出来ないのか。
ともあれ、バイストン・ウェルは自然が豊富である以上、魔力に関しての心配はいらない。
後の問題は、やはり魔法を使えるようになるまでひたすら訓練するしかないという事だな。
この辺は努力だったり才能だったりが問題になってくる。
ガラリアもマーベルも、日中は色々と仕事が忙しい。
夜は夜で色々とやる事があり、魔法の訓練をする時間はそう簡単にはとれない。
そうなると、努力という点では魔法を使えるようになるのは少し時間が掛かるだろう。
例えば、今日ここで若干魔力を感じたりする感覚について理解しても、明日にでもまた訓練が出来るのであればまだしも、明日は仕事で忙しく、数日訓練出来ないとなると、その微かに覚えた感触も次の訓練の時には忘れてしまいかねない。
そうして努力でどうしようもないとなると、重要なのはやはり才能となる。
時間を積み重ねて魔力を感じ取る能力を高めていくのではなく、才能に任せて一気にその感覚を掴み取るといったような。
しかし、生憎とマーベルとガラリアはそこまで高い才能は持っていない。
あるいは、マーベルはともかくガラリアは騎士だからこそ魔法使い系の方に才能がない……といった可能性もあるのかもしれないが。
魔法騎士とか魔法戦士とか聞くから、必ずしも騎士や戦士だからといって魔法の才能がないとは限らない訳だが。
そんな風に思いつつ、マーベルとガラリアの魔法の訓練を見守るのだった。
翌日、俺の姿はドレイクの城にあった。
いつもであれば、オーラバトラーを使ったり、生身だったりで訓練をしている筈なのだが、今日は訓練らしい訓練をしていない。
当然だろう。何故なら今日は、クの国からビショットがやって来る日なのだから。
それも以前俺達がクの国に行った時とは違う、ビショットが直接やって来るのだ。
正直なところ、これはかなり異例な事だ。
ドレイクがアの国の国王であればともかく、あくまでも今のドレイクはアの国に複数いる領主の1人でしかない。
勿論、普通に考えればそんな事は有り得ないのだが……やはりこれは、ドレイクがビショットにオーラバトラーを売っているという点が大きいのだろう。
ドレイクにしてみれば、一種の箔付けに近いのか。
一国の国王が、わざわざ一国の領主に会いに来るのだ。
普通に考えれば、そのような事が起こるとは思わないだろう。
……ただし、若干の不安要素もある。
それが、この国の国王たるフラオンだ。
フラオンは愚王と呼ぶに相応しい人物で、人の上に立つ能力として考えれば、明らかにドレイクの方が上だろう。
今まではドレイクがフラオンに色々と賄賂というか献上品を送ってきたので、何とか誤魔化すといったような事が出来ていたが……ビショットがドレイクだけに会いに来て、フラオンは無視して帰ったとなれば、どうなるか。
フラオンにしてみれば、完全に面子を潰されたといった感じだろう。
少なくても、俺が知ってるフラオン――実際に見たのは一度だけだが――であれば、ビショットがドレイクだけに会って、そのまま国に帰るといったような事になった場合は、間違いなく不満を露わにするだろう。
であれば、この先おかしな事にならなければいいんだが。
そんな風に思いながら城の中を歩いていると、不意に窓から中庭が見える。
いや、中庭が見える事そのものはそこまでおかしな話ではないのだが、問題なのはその中庭の外れの方にリムルとショウの姿が見えた事だろう。
リムルにしてみれば、地上人というのは悪しきオーラ力の持ち主として認識されていると思っていたのだが、ショウは別なのか?
ああ、でも以前リムルが地上人のいる区画から戻ってきたのと遭遇したことがあったな。
その辺の事情を考えれば、実はそんなにおかしな話ではないのか?
というか、ショウ……何気に手が早いな。
あるいはリムルの方が手が早いのか。
せいぜいドレイクに見つからない事だな。
いや、それともドレイクと同盟関係にある俺としては、この件をドレイクに知らせた方がいいのか?
ただ、リムルの性格を考えると、俺がそのような真似をしたと知られれば、間違いなくこっちを恨むだろうし。
ただでさえ、俺はリムルに好かれてはいない。
いや、そこで話を逸らす必要はないだろう。
嫌われて……もしくは憎まれてすらいる。
何故そこまで嫌悪されているのかは分からないが、リムルにしてみれば俺は悪しきオーラ力の持ち主なので、そのように判断してるだろう。
ちなみに、俺やドレイクが悪しきオーラ力の持ち主となると、もしかしてマーベルも悪しきオーラ力の持ち主だったりするのか?
ともあれ、現在地上人で一番有望な人物と思われているのがショウだ。
ドレイクにしてみれば、愛娘のリムルがそのショウと親しくなるというのは、悪い話ではないだろう。
もしくは、実はドレイクからの命令でリムルがショウに近付いたという可能性も……いや、ないな。
ドレイクがリムルを可愛がっているのは事実だが、親の心子知らずと言うべきか、リムルは決してドレイクに対して好意的ではない。
昨日のギブン家に大きなダメージを与えたパーティにおいても、リムルは結局参加しなかったし。
「アクセル王、ここにおられましたか」
と、不意に聞こえてきた声に視線を向けると、そこにはドレイクの兵士の1人が立っていた。
「ちょっと城の中を見て回ってたんだが……こうして迎えに来たって事は、来たのか?」
「は。クの国の国王、ビショット様の乗られているナムワンの姿が見えました。お館様から、アクセル王をお呼びするようにと言われて」
「そうか、悪いな」
ドレイクにしてみれば、ビショットというのは格上の相手だ。
純粋に能力だけを考えた場合は、決してドレイクの方が下とは思えないのだが、それでも国王と領主では地位の差が大きい。
それだけに、ドレイクとしてもその地位の差を埋めるべく、ビショットと会う時には俺を側に置いておきたかったのだろう。
ホワイトスターと連絡を取る事は出来ないが、俺は間違いなくシャドウミラーという一国の王なのだから。
そういう意味では、ビショットと同格だろう。
シャドウミラーの国力を考えた場合、とてもではないがクの国とは比べものにならないくらい格上なのだが。
とはいえ、幾らそんなに格上の国であっても、何らかの理由で行き来出来ないとなると、意味はないんだが。
これで地上に出れば、多分ホワイトスターとの間にゲートが開通する……と、思う。
もしかしたら、この世界そのものが何らかの力によって覆われていて、地上でもゲートを設置しても繋がらないという可能性も否定は出来ないが。
「じゃあ、そろそろドレイクのいる場所に向かうか。案内してくれ」
「は!」
俺はドレイクに会いに行く前にもう一度中庭を見るが、既にそこにはリムルとショウの姿はどこにもなかった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650