新たな地上人が召喚された翌日、メイドが作ってくれた朝食を食べていると兵士が俺とマーベルを呼びに来た。
何だ? と疑問に思ったのだが、今日は特に急いでやらなければならない事もなかったので、朝食後に大人しくドレイクの城に向かう。
俺とマーベルの移動なんだから、それこそ影のゲートを使えば一瞬で移動出来るんだが、兵士は自分の仕事だからという事で俺とマーベルをユニコンに牽かせた馬車で運ぶ。
「アクセル、何で私達が呼ばれたんだと思う?」
「普通に考えれば、昨日召喚された地上人の件で、だろうな。特にバイクに乗っていた奴はかなり血気盛んだったし」
「何も知らない状況でいきなりバイストン・ウェルに召喚されたんだから、無理もないと思うけど」
「それは否定しない。ちょっと頭に血が上りすぎという気がしないでもないけど」
マーベルの言葉は、納得出来るものなのは間違いない。
しかし、聖戦士としてオーラバトラーに乗って貰うということを考えれば、少しくらい短気な方が闘争心があっていいのかもしれないが。
「そんな状況で私達が呼ばれたとなると……何となくその理由は想像出来るわね」
「地上人から見て、バイストン・ウェルがどんな場所なのかを話して欲しいといったところか。でも、それならショット達……いや、ショットもゼットもそれどころではないな」
ドラムロの量産はもう行われているので、そこまでショットやゼットが忙しくなるような事はないのだが、新型のオーラバトラーを開発したり、現状でドラムロの性能を上げる為に無理なく改修したりといったような事を考えている筈だ。
それ以外にも、ショットやゼットにはサーバインのショットクローに電撃を流すといったような事が出来ないかと、そう頼んでいる。
その辺の状況を考えると、バイストン・ウェルについては俺達に説明が回ってきてもおかしくはない。
とはいえ、俺とマーベルは実際にはドレイクの同盟相手であって部下ではないのだが。
それでもこうしてドレイクの要請に従っているのは、同盟相手として色々と配慮して貰っている恩返しといったところか。
クの国に行った時の約束……ドレイクからの要望を2つ聞くというのは、この場合その中に入らないだろうな。
ただまぁ……正直なところ、今回の件はそんなに悪い話ばかりという訳でもない。
「召喚された地上人が3人だったのはちょっと意外だったが、俺達にとってはチャンスでもある」
「チャンス? もしかして、あの3人を引き入れるつもりなの?」
「3人全員とはいかないが、1人くらいは欲しいところだな。俺とドレイクは同盟を結んでいるが、勢力と呼ぶには俺とマーベルの2人だけでどうしても足りない。3人でも大差はないが、数は多い方がいいのも事実だ」
ゲートを使ってホワイトスターと繋がれば、その辺を気にする必要もなかっただろう。
それこそ、国と領主の同盟という形になっていた筈だ。
だが、今は俺とマーベルの2人だけだ。
もっとも、サーバインを操る俺に、最初の聖戦士マーベルと、戦力という点では少数精鋭といった感じだが。
後はナムワンも持ってるので、一応戦力的には十分な実力を持っていると言ってもいい。
だが、それでもやはり少人数であるというのは侮られる原因にもなる。
そうである以上、せっかく3人も地上人がいるんだから1人くらいはこっちに貰っておきたいと思うのは当然だろう。
「アクセルの狙いは分かったけど、ドレイクがそれを許容すると思う?」
「どうだろうな。一応要望してみるけど、そう簡単に頷いたりはしないと思う。ただ、それでも召喚された地上人達にしてみれば、自分がどこに所属するのかといったことを希望するのはおかしな話ではないだろうし」
ドレイクが幾ら自分の部下として活動しろと言っても、所属する方がそれに素直に従うかどうかは、また別の話だ。
ここに俺がいなければ、流されるようにドレイクの部下として活動するだろう。
だが、そこに俺というもう1つの選択肢があれば、そちらに所属するといったような事も十分にある。
とはいえ、ドレイクではなく俺の部下となる事に利益があるかどうかは正直微妙なところなのだが。
一応純粋な戦力という意味では、非常に高い。
それ以外にも空間倉庫の中にはバイストン・ウェルでは入手出来ない地上界の物や料理とかも入っている。
そういう意味では、俺の勢力に入るというのは悪い話ではない。
だが、やはり数が少ない以上は色々な意味で不利になるのは事実だ。
「私としては、こちらに来るのは悪くない選択肢だと思うんだけど」
マーベルにしてみれば、少しでも人数を増やして俺達の勢力を広げたいといったところか。
とはいえ、多分無理だろうという思いもあるのだろうが。
そんな風に会話をしている間に、やがて城に到着する。
馬車から降りた俺とマーベルは、すぐに兵士によってとある部屋に案内された。
その場所にいたのは、昨日召喚された地上人の3人。
それとガラリア。
……バーンの姿がないな?
「アクセル王、お待ちしていました」
部屋の中に入ってきた俺を見て、ガラリアがそう声を掛けてくる。
ガラリアの口から出た『アクセル王』という言葉に不思議そうな様子を見せている。
まぁ、ドレイクが領主であるというのは聞かされていたのだろうから、そんな場所にいきなり王と呼ばれる存在が出てくれば、驚くのは当然か。
「ああ、どんな具合だ?」
「大体の事は説明しました。ですが……そうだな、まずは全員アクセル王に自己紹介をして貰おう」
「ちょっとその前にいいかい?」
ガラリアの言葉にそう言ったのは、トッドだ。
俺を見て驚いていたという事は、昨日のマーベルの説明では俺の詳しい内容は聞かされていなかったんだろうな。
ガラリアがこちらに視線を向けられたので、頷く。
「構わないそうだ。何だ?」
「その、王となるとその人はこのアの国の王なのかい?」
トッドの言葉に、他の2人も俺に興味深そうな視線を向ける。
そんな視線を受けつつ、首を横に振る。
「いや、違う。そもそも俺はこの世界の者ではない。異世界の存在だ」
「……あんたも地上界から?」
そう聞いて来たのは、昨日はずっと気絶していたアジア人のように見える男。
いや、こうして改めて起きているところを見ると、アジア人っぽい感じはするけど、実は違うのか?
「お前は?」
「トカマク・ロブスキー。ソ連出身だ」
なるほど。ソ連と言えばいかにも西洋人っぽい金髪や赤毛を思い浮かべるが、その国土は広大だ。
それを思えば、アジア人の血を引いてると思われるトカマクがソ連人でもおかしくはないか。
「それで? 俺は質問に答えたんだから、あんたにも答えて貰えると嬉しいんだけどな」
「貴様っ!」
トカマクの言葉に、ガラリアは不愉快そうに叫ぶ。
ガラリアにしてみれば、個人的に俺の事をどう思っているのかどうかは別として、俺の立場はドレイクと対等な同盟者だ。
つまり、ガラリアは俺に対して失礼な態度を取る相手を見逃すという事は出来ないのだろう。
だからこそ、バーンもその本心はともかく、表向き俺に対しては丁寧な態度を崩さない。
突然ガラリアに怒鳴れたトカマクは驚きを露わにしながらも、何とか口を開き掛け……
「異世界と地上界は違う。いやまぁ、バイストン・ウェルの者にしてみれば、異世界も地上界も同じように思ってしまうのかもしれないが、俺は正真正銘異世界……平行世界やパラレルワールドって言った方がいいか? そういう場所から来ている」
「マジかよ」
トカマクが信じられないといったように声を上げ、トッドや日本人と思しき男も同様の視線をこちらに向けていた。
「その辺については、また後で詳しく説明してやるよ。それで、そっちの自己紹介はまだ終わってないよな?」
そう言うと、何故か最初に口を開いたのはトッドだった。
「俺はトッド・ギネス。アメリカ空軍のパイロット候補生だった。まぁ、その辺は昨日話したから分かってると思うけど」
「昨日?」
ガラリアが訝しげな視線をこちらに向けてくる。
いつ話したのかといったような疑問を抱いているのだろう。
トッド達は昨日……正確には昨夜召喚されたばかりである以上、俺が話す機会などなかったと、そう思っているのだろう。
実際には、バーンやガラリアがあの日本人と話している時のように、時間はあったのだが。
「で、最後の1人は? 昨日、バーンと派手にやり合ってた奴」
その言葉に、日本人は昨夜バーンに手も足も出せずに負けた事を思い出したのだろう。
嫌そうな表情を浮かべつつも、口を開く。
「座間祥。いや、えっとこのバイストン・ウェル風だと。ショウ・ザマか?」
ショウ・ザマ、か。
日本人だろうと思ってはいたが、やっぱりそれは間違っていなかったか。
「俺の自己紹介はガラリアがしたからいいな? ……この場合はマーベルも自己紹介をしておくか?」
「そうね。もっとも、アクセルが私の名前を呼んだんだから、自己紹介の必要はないのかもしれないけど。……マーベル・フローズンよ。バイストン・ウェルに来る前は、アメリカで大学生をしていたわ」
そんなマーベルの自己紹介に、トッドは口笛を吹く。
自分と同じアメリカ人がいたことに驚いたのか、それとも昨日聞いていた話をまた聞いた事に対するアピールか。
そんなトッドとは裏腹に、ショウとトカマクの2人はマーベルに視線を向けている。
どちらもその大小はあれども、マーベルの美貌に見惚れているのは間違いないだろう。
……まぁ、ソ連人のトカマクはともかく、日本人のショウにとっては自分と年が近いにも関わらず、女として成熟しているのを見れば、目を奪われるのも分かるが。
アメリカ人と日本人だと、やっぱりその辺りは違うんだろうな。
もっとも、その辺は世界によって違う可能性も十分にあるが。
何しろ、ネギま世界とかペルソナ世界の日本人を見れば、決してマーベルに負けてはいないのだから。
特に千鶴なんかが代表的な例だろう。
何しろ14歳の時点で今のマーベルよりも大きかったしな。
「さて、これで自己紹介は終わったな。で、話を戻すが……俺は異世界や平行世界からやって来た。証拠はこれだな」
パチンと指を鳴らすと、手が白炎に変わり、その白炎から何匹かのリスや子犬、子猫、鳥といった炎獣が生み出される。
『おおおおお』
そんな炎獣を見て、トッド達はそろって 驚愕の声を上げた。
トッド達にしてみれば、魔法をこんな間近で見るというのは初めてだったのだろう。
もっとも、正確にはこれを魔法と呼んでもいいのかどうかは微妙なところなのだが。
影のゲートや影槍は普通に魔法として存在しているが、この炎獣に関しては俺の持つ特殊能力とかスキルとか、そんな感じなんだよな。
「可愛いな」
小さく呟かれる声。
他の者達は炎獣に集中していた為か全く気が付いた様子がなかったが、俺の耳にはしっかりと聞こえた。
もしトッド達がその声を誰か発したのかを知っていれば、間違いなく驚いただろう。
何しろ、声の主はガラリアだったのだから。
俺はクの国に行った時にその辺を知ってるので、特に驚いたりはしなかったが。
「アクセルの国って、魔法使いが普通にいるのか?」
「普通にいるな。もっとも、俺の国は色々と特殊だが」
炎獣を見ながら尋ねてきたトッドの言葉にそう返す。
魔法を見た事もないような者にしてみれば、魔法使いが実在したというだけで驚くべき事ではあるよな。
「特殊? 魔法使いがいるってのがか?」
「それもあるが、俺がこの世界に来ているのを見れば分かるみたいに、俺達の世界は世界と世界の狭間的な異空間に存在していて、それを利用して色々な世界と接触しては、未知の技術を集めている。この世界にも、そのつもりで来たんだが……」
「一応聞くけど、アクセル王って言われてたって事は、アクセルは王様なんだよな? なのに、何でそんなアクセルがバイストン・ウェルに1人でいるんだ?」
「俺の国で生存能力が一番高いのは俺だからな。まず未知の世界に向かう時は、俺が向かう事になってる」
「……王なのに?」
「王なのに」
普通ならその辺を気にするのは当然だよな。
王という立場にある人物が、真っ先に未知の世界に飛び込んでるんだから。
実際には王じゃなくて代表って感じなんだが。
そうなると、微妙に未知の世界に飛び込むような真似をしてもおかしくはないかも?
「まぁ、王って言っても俺は元々特殊部隊の出身だからな。それを考えればそんなにおかしくはないだろ」
「いや、おかしいって」
何かの映画で、元空軍パイロットの大統領が戦闘機に乗って宇宙人と戦うってのがあったし、そんなに珍しい訳でもないと思う。
「世の中には常識外の存在が幾らでもあるって事だろ。……このバイストン・ウェルだって、昨日の昼にはあるなんて思ったか?」
そう言われたトッドは、実際に自分で経験しているだけに反論する事が出来なかった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650