その日、朝食のテーブルの席でマーベルは浮かない顔をしていた。
無理もない。今日はドレイクが以前言っていた日……シルキー・マウの力によって、地上から聖戦士候補を呼び出す日なのだから。
正直な話、シルキー・マウの使う召喚魔法――と言ってもいいのかどうかは分からないが――がどういう感じなのか、見てみたいという思いはある。
というか、この世界の原作の主人公って誰なんだろうな。
普通に考えれば、やっぱりマーベルなのか?
もしくは、今日やってくる地上人の誰かなのか。
だとすれば、そろそろ原作が始まる時間という事になる。
「アクセル、今夜ね」
「ああ。一体どういう奴が来るのかは分からないが……もしかしたら、マーベルの知り合いが来るかもしれないぞ?」
「まさか」
俺の言葉に、マーベルはそう断言する。
とはいえ、その言葉には納得出来るのだが
シルキー・マウがどうやって召喚する相手を決めているのかは分からない。
だが、地上にいる人類の中でマーベルの知り合いとなると、それが一体どれだけ低い確率なのかは、考えるまでもなく明らかだろう。
ただし、この世界は原作の存在する世界だ。
つまり、普通にマーベルの知り合いとかがシルキー・マウによって召喚される可能性はある。
「ちなみに、マーベルの幼馴染みの男とかいたりするか?」
この手の原作の主人公は、基本的に男が多い。
中には女が主人公の原作もあるが、やっぱり全体的な数としては男の方が多い筈だ。
もっとも、その原作の分類云々というのは俺がネギま世界とかで見た漫画とかについてだが。
ペルソナ世界の件で、俺の前世での原作知識とかは完全に消えてしまったしな。
その為、基準となるのは俺がアクセルになってからのものしかない。
「え? ううん。女の幼馴染みはいたけど、男はいなかったわね。ああ、でも別に幼馴染みじゃなくて普通に友達という事なら、男友達もいるわよ」
「となると、もしかしたらその男友達が来る可能性も否定は出来ないな」
「ないでしょ」
あっさりとそう告げてくるマーベル。
そうであって欲しいと思っているというよりは、本気でそんな事はまずないと思っているような形だ。
「どうだろうな。取りあえず、それは今夜になれば分かるだろ。今日は恐獣狩りとかもないし、基本的にはゆっくりとしている事が出来るから、夜を楽しみに待ってればいいだろ」
「そうね。あ、でもガラリアから聞いたけど、騎士団には恐獣を捕らえるようにと命令が出てるらしいわ」
「……恐獣を? 捕らえるってことは、素材として使うんじゃなくて、生かしたままって事か?」
「そうみたいね。ドレイクが何を考えてそんな命令を出したのかは分からないけど」
「普通に考えるとすれば、召喚した地上人達にバイストン・ウェルがどんな世界なのかを教える為とかかもしれないな」
文字通りの意味で、百聞は一見にしかずを行おうとしているといったところか。
転移してきた者達にしてみれば、いきなりの事で自分達が一体どのような状況にあるのかは分からない。
だからこそ、恐獣というこの世界の脅威の一つを見せつけるといった真似をしてもおかしくはない。
それと同時に、オーラバトラー辺りも見せるのかもしれないが。
「恐獣の捕獲、無事に出来ると思う?」
「以前までと違ってドラムロがあるし、その辺は心配いらないんじゃないか?」
ドラムロが実用化されるまでは、ドロや……場合によってはユニコンに乗って、もしくは歩兵として恐獣と戦う必要があったが、今は違う。
ドラムロのおかげで、恐獣と戦うのもそこまで大変ではないのだ。
ましてや、ここ暫くの訓練でガラリアの技量はかなり上がっている。
バーンは未だに俺と模擬戦をやりたがったりしないので、技量的には多分ガラリアとバーンは同じくらいなんじゃないだろうか。
「ガラリアもそうは言ってたけど……」
数少ない女友達だけあってか、マーベルとガラリアの仲はかなり友好的だ。
それと同時に俺から魔法を習っているというのも関係してか、今は俺とガラリアの関係も友好的とは言わないが、敵対的といった訳でもなくなっている。
……その辺でゼットに微妙に疑われてる節があるのが困りものだが。
ただし、魔法の訓練をするのは俺とガラリア以外にマーベルがいる。
それを思えば、ゼットが俺を怪しむような真似をする必要はないと思うんだが。
とはいえ、恋に目が眩んでいるゼットにとっては疑ってしまうんだろうな。
「取りあえず、何かあればドレイクから援軍の要請が来るだろ。その時にすぐ行動すればいい」
そう言うと、マーベルも一応納得した様子を見せる。
何だかんだと、ガラリアもオーラバトラーの操縦技術は上がってるんだから、その辺についてはそこまで心配する必要はないと思うんだが。
「そう、ね。……ガラリアには頑張って欲しいけど」
そう言いながら、マーベルは不安そうな様子を見せるのだった。
「アクセル王、少しいいですか?」
やるべき事がないので、機械の館に向かっていたところで不意にそう声を掛けられる。
声を掛けてきたのは、青い髪をショートカットにしている女だ。
確か、以前何かで見たな。
リムルの家庭教師をしているミュージィだったか。
ただし、家庭教師という事になってはいるが、実はリムルの護衛も兼ねているのかそれなりに鍛えているのが身体の動かし方で分かる。
「ミュージィだったな。どうかしたのか?」
「はい。リムル様がアクセル王にお会いしたいと」
「俺とか? 冗談でも何でもなく?」
そう言ったのは、リムルが俺に対して敵意を抱いているのを知っている為だ。
俺は悪しきオーラ力の持ち主というのが、リムルの認識らしいしな。
それを考えれば、ドレイクの命令でリムルに俺をもてなせとか、そういう風に言うのであれば分かるのだが、リムルが自分から俺を誘ってくるといったような真似をするとは思えない。
つまり、何かの罠か?
そう思ったが、断るにしても何か理由を考える必要がある。
そうなれば、色々と面倒な事になりそうだし。
リムルという人物をしっかりと見てみてもいいか。
「はい。是非お願い出来ませんか?」
「分かった。とはいえ、リムルの家庭教師なら知ってると思うが、俺はリムルに嫌われている。そんな俺に会いたいとなると、少し問題が起きる可能性もある。そんな訳で、俺だけじゃなくてマーベルも一緒にリムルと会いたいと思うんだが、それは構わないか?」
「それは……分かりました。リムル様に、アクセル王がそのように言っていたと、そう聞いてみます」
「そうしてくれ。ドレイクも、俺が一人でリムルと会っているというのを知れば、思うところもあるだろうし」
とはいえ、ドレイクは領主としても有能だ。
娘のリムルを可愛がっているのは間違いないが、ドレイクの場合はそれ以前に領主であるというのを前提としている。
その辺の事情を考えると、ルフト領の為に有効に使えるのなら、リムルと俺を結婚させるといったような真似をしないとも限らない。
それでも娘可愛さというのは変わらない以上、俺に本当にその価値があればの話だが。
そして、もしドレイクがシャドウミラーの存在を認識した場合、間違いなくこちらと縁を繋ぎたいと思うだろう。
それだけ、シャドウミラーという存在はドレイクにとって価値ある存在なのだから。
しかし、だからといって俺がリムルを受け入れるかどうかは別問題だ。
正直なところ、ドレイクによって可愛がられて育てられたリムルは色々と問題がある。
少なくても、俺はあまり気が進まない。
それに、噂によるとドレイクはリムルとバーンを結婚させるつもりであるという話もあるし。
その噂が真実なのかどうかは、俺には分からない。
分からないが、それでも気をつけるに越した事はないだろう。
そうしてミュージィが立ち去ると、俺もマーベルを捜しにいく。
いつもであれば、マーベルはそれこそダンバインの操縦訓練をしていたりするのだが、今日は機械の館に行けばすぐに見つかった。
何故なら、そこでダンバインの調整についての話を技術者としていたのだから。
ちなみに調整しているダンバインは、マーベルのものではなく今夜召喚予定の地上人の物だ。
まだ召喚していない以上、どのような調整をするのかといったことは詳細には分からない。
しかし、それなりにダンバインを操縦しているマーベルの場合は、どこをどんな風に調整すればいいのかといった話を知っている。
だからこそ、機械の館でダンバインの担当をしている技術者達は、マーベルからその辺についての話を聞いているのだろう。
前もって準備出来る事は準備しておくといった事は、技術者にとって当然だった。
何より、ようやくドレイクにとっても念願の地上人……いや、地上人という意味ならショットとゼットがいるから、聖戦士を手に入れられるのだ。
そう考えれば、技術者達が少しでも力を抜くといったような真似が出来ないのは間違いない。
「あら、アクセル。どうしたの?」
予想通り機械の館にいたマーベルは、技術者との話がちょうど一段落したところだったのか、俺を見つけるとすぐに声を掛けてくる。
「ちょっとリムルから会いたいって言われてな。俺1人で会うと色々と問題があるから、マーベルも一緒にと思って」
「私も? ……まぁ、いいけど」
予想していたよりも、あっさりと答えるマーベル。
マーベルにしてみれば、リムルに対してはそこまで悪感情を抱いていないのだろう。
そんな中、ちょうどそこにゼットが通り掛かって足を止めた。
「リムル? じゃあ、ミュージィって女がいただろ?」
「立ち聞きってのはどうかと思うぞ」
「別に聞かれて困る話じゃないだろ? 結構普通に話していたし。で、ミュージィはいたか?」
何だ? 随分としつこくミュージィについて聞いてくるな。
「ガラリアから乗り換えるのか?」
「ばっ!? いきなり何を言ってるんだよ!」
思い切り動揺した様子のゼット。
その様子からは、とてもではないがそのつもりがあるようには思えない。
いやまぁ、ゼットがガラリアに惚れ込んでいるのは間違いないから、冗談のつもりだったんだが。
「なら、何でそんなにミュージィについて聞くんだ?」
「実は、ショットが最近ミュージィと話しているのを何度か見てな。まさか、あのショットが女を口説くとは思えなかったから驚いたけど」
「あー……なるほど」
ショットは天才肌というか、ある意味自分だけで完結しているといったような感じだ。
それだけに、他人を見下したような態度になる事もある。
とはいえ、そんなショットでも男なんだから女を口説いたりしたくなる事はあるだろうに。
もしくは、人肌が恋しい……いや、そういう時はそれこそ娼館にでも行けばいいか。
「ちょっと意外だろ?」
「それは否定しない。というか、リムルの家庭教師をやってるって事は、ミュージィって実はそれなりの家の出だったりするんじゃないか?」
ドレイクが可愛がっている娘の家庭教師だ。
普通に考えれば、その辺の相手を適当に採用するなんて事はしないだろう。
そういう意味では、ガラリアの家もニャムヒー家という家ではあるんだが、ガラリアの父親の問題で貴族としての格はちょっと低い。
それでもガラリアの活躍のおかげで大分復活してきてはいるらしいが。
「ああ、ポー家とかいう、それなりに名家らしい。ただ、ショットなら何とかするだろ」
そう断言するゼットだったが、その言葉には不思議な説得力がある。
ゼットは政治とか根回しとかそういうのが苦手そうだが、ショットの場合はそれが普通に出来そうなんだよな。
「まぁ、ショットなら」
「だろ? 取りあえず、その辺の話はいいとして少しアクセルとマーベルに聞きたいんだが、ダンバインの後継機とするにはどういう性能が欲しい?」
「突然だな。ドレイク軍なら、ドラムロのように重装甲のオーラバトラーを開発していくんじゃないのか?」
「そのつもりだったんだがな。上からの命令で、採用するかどうかはともかくとして、一応高機動型のオーラバトラーも開発しろって事になった」
「それは、また……まぁ、ドレイクの立場としてはクの国に高機動型のオーラバトラーという一面であっても差をつけられる訳にはいかないか」
オーラバトラーは自分が開発したという思いが、ドレイクにもあるのだろう。
それ以外にも、技術的な蓄積は大事だと判断してるのか。
「で、高機動型だったな。サーバインはともかく、性能的にはダンバインくらいあれば十分一線級だと思うけどな。後の問題は、ドラムロのように低いオーラ力でも操縦出来るように……そう言えば、オーラ増幅器の方はどうなったんだ? あれが完成すれば、低いオーラ力でもある程度オーラ力が必要とされるようなオーラバトラーも操縦出来るんじゃないか?」
「ああ、そっちの開発も進んでいるし、もう少しで完成する。そうなれば、場合によってはバイストン・ウェルの人間でもダンバインとかに乗れるかもしれないけどな」
そう告げるゼットの言葉に、俺とマーベルはそれぞれ頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650