転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0264話

「では、この問題を……綾瀬夕映さん」

 

 黒板に書かれているのは数学の問題。そして当てられたのは、俺の比較的近くの席にいる綾瀬夕映という少女だ。黒髪の小柄な体型をしているが、この麻帆良学園に転入してから20日程も経つと接点は殆どないクラスメイトの性格も大体分かってくる。特にこの綾瀬は見かけは大人しめな文学少女そのものといった風に見えるのだが、その実体は図書館島の地下部分を探検するという正直意味の良く分からない部活である図書館探検部に所属しているとか何とか。もっとも文学少女に見えないアグレッシブさとは言っても本自体は好きらしく、よく同室で同じく図書館探検部の仲間でもある宮崎のどかや早乙女ハルナ達と話しているのを見る。

 ちなみに宮崎のどかとは転入して以来殆ど喋った事が無かったりする。どうやら男性恐怖症の気があるらしく、子供の姿の俺でも苦手らしい。こちらは綾瀬とは違って正真正銘の文学少女で、あだ名もそのものズバリ『本屋』だったりする。あるいは俺の本来の年齢が20代であるというのをその男性恐怖症特有の第六感とかで感じ取っているのかもしれないが。

 早乙女ハルナに関しては……うん。まぁ、いわゆる腐女子という奴。これで大体理解出来るだろう。その触覚をみょんみょんと動かし、ラブ臭なるものを感じ取れるとか何とか。

 この3人とは宮崎との関係もあってそれ程親しく無いのだが、それでも分かってる事がある。それは……

 

「すいません、分かりませんです」

 

 そう言って席に座る綾瀬。

 そう、この綾瀬。読書好きの文学少女というカテゴリに入るにも関わらず、何故かクラスの馬鹿5人衆、通称バカレンジャーの一員だったりするのだ。

 

 

 

 

 

「おや、アクセル坊主。今日は弁当じゃないのカ?」

 

 昼休み。昨日の夜は夏美が寝静まった後であやかと千鶴の2人と一緒に魔法の練習を夜遅くまでやっていた為に、今日は何と千鶴が寝坊という珍しい事態になって朝食はコンビニで適当に。昼食は学食でとなった。

 その為、昼休みになったので学食へと向かおうとした俺に後ろから声が掛けられる。

 声を掛けて来たのは超鈴音。この麻帆良の最高頭脳と噂されている少女だ。あやかに聞いた話では、テストは毎回オール100点。……正直、俺より頭がいいのは間違い無い。一応、士官学校主席で卒業してるんだがなぁ。

 それでもさすがに全てを完璧に覚えている訳でもないので、小テストとかが行われると微妙にケアレスミスがあったりする。それでもまぁ、一応このクラスでもトップクラスの点数は取っているのだが……

 

「千鶴が寝坊したから、今日の昼は学食にな」

 

 その言葉を聞いた超が持っていた袋をこちらへと渡してくる。

 

「これ、ちょっと食べてみないカ? 超包子で出す予定の新製品ね。感想を聞かせてくれるのなら特別に5個100円で構わないヨ」

 

 渡された袋の中を見ると、確かに中華まんが5個入っている。

 これだけあれば、取りあえず午後の授業が終わるまでは保つ……か?

 取りあえず財布から100円を出して超へと渡す。

 ちなみに、俺の小遣いに関しては奨学金的な扱いで近右衛門に渡されている。一応俺の面倒を見るとは言っても中学生であるあやかから小遣いを貰うというのはさすがに遠慮したいので、高畑を通して近右衛門と交渉したのだ。

 

「どうネ?」

 

 超から向けられる期待の眼差しに後押しされるようにして中華まんへと噛ぶりつく。

 まず口の中に広がったのはカレーの風味。次に挽肉とタケノコがメインのカレー味の餡が口の中に広がって行く。

 

「カレーまんか?」

「惜しい。正確にはキーマカレーまんだネ」

「あぁ、だから挽肉か。……取りあえず美味いな」

 

 そう言って2口目を食べようとして……ふと超の観察するような視線に気が付く。

 その視線は、鋭く深いものだ。少なくても自分の店で出す試作料理の味を気にしているようなものではない。どちらかと言うと、戦場で相対した敵を観察するソレ。

 高畑からは特に何も聞いてはいないが、やはりこいつも魔法の関係者なんだろうな。

 チラリとステータス表示をすると、そのスキル覧には『呪紋回路』の文字がある。どういうスキルなのかは分からないが、呪紋とあるからには魔法関係なのは間違い無いだろう。

 

「そんなにじっと見られていると気になって食べにくいんだが」

「っと、悪いネ」

 

 その言葉でようやく視線が普通のものへと戻る。

 結局、それ以降はあの探るような視線を向けられる事は無かった。

 

 

 

 

 

 昼休みも終わり、午後の授業。校舎の近くにある体育館でバスケットボールが行われていた。くじ引きでチーム分けがされ、俺のチームの試合は現在行われている試合の後なので大人しく見学をしている。

 

「いやぁ、それにしても見事に色物チームになったっすね」

 

 そう言ってきたのは茶髪のショートカットをした少女の春日美空だ。陸上部にも所属しているらしく、運動が得意らしい。ただ、スキル覧に魔法(風)と書かれているので魔法生徒の1人なんだろう。

 

「フフ、それは私の事を言っているのかな?」

 

 春日へとそう返したのは褐色の肌と黒いロングヘアーを持つ少女、龍宮真名だった。……少女?

 

「アクセル君、今何か余計な事を考えなかったかな?」

 

 チャキッとばかりにどこからか出したモデルガンの銃口を俺へと突きつける龍宮。

 その様子に苦笑をしながら首を振る。

 にしても褐色の肌で、銃を持ってて、スキル覧には半魔族とあるし、あやかに聞いた話では龍宮神社という場所で巫女もやってるらしい。色々と要素が多すぎな気がするのは俺の気のせいだろうか。

 

「いや、自分が色物チームに入っているというのを不思議に思っただけだよ」

「そうは言っても、アクセル君がこの2-Aの中だと一番の色物だと思うんですが」

 

 龍宮の隣でそう言ったのは、黒髪を三つ編みにして白衣を羽織った少女の葉加瀬聡美だった。超に負けず劣らずの天才であだ名もそのものズバリ『ハカセ』らしいのだが、超と違って身体能力は普通らしい。超共々茶々丸の生みの親の1人だと聞いている。

 

「刹那、お前はどう思う?」

 

 1人、離れた所に立っていた少女へと龍宮が声を掛ける。

 そこにいたのは黒髪をサイドポニーテールといった風にしている桜咲刹那だった。体育の時間だというのに何故か竹刀袋をその手に持ち、現在コートで試合をしている近衛へと穴が開く程強烈な視線を送っている。

 ただ、それは悪い意味での視線では無くどちらかと言えば見守るような視線だ。……もっとも、その視線の強さから言うと『見守る』では無く『見守るぅっっっっ!』といった感じだが。

 だが、そんな桜咲も龍宮の台詞で我に返り、こちらへと向き直る。

 こいつもスキル覧には神鳴流やら半烏族やら表示されているので魔法関係の人物なのだろう。そう考えてみると、俺のチームは全員が魔法と何らかの関係を持っている事になるのか。葉加瀬ですら茶々丸を通してエヴァと繋がりがあるだろうし。

 

「真名、何か言ったか?」

「全く、お前は近衛の事になると集中しすぎだ。このチームが色物チームだと春日が言い出してな」

「ちょ、龍宮さん。それじゃあ私だけが悪いみたいじゃないっすか」

 

 龍宮の言葉に焦る春日だが、桜咲は特に気にする様子も無く再び試合の方へと視線を向ける。

 そこでは近衛がパスしたボールを大河内がキャッチし、そのまま飛び上がり……

 

「ダンク!?」

 

 ボールをそのままゴールリングへと叩き付けてた。いわゆるダンクシュートだ。

 まさか、一般の女子生徒がダンクをするとは正直驚いた。

 

「あぁ、お嬢様……ナイスパスです」

 

 そして桜咲はどこか陶然とした様子で近衛の方を見ている。

 

「……ああいうキャラだったか?」

 

 桜咲と会話する機会は麻帆良学園に転入してから何度かあったが、俺のイメージ的にはいつでも冷静な感じに見えていたんだが。

 

「さて、人間誰しも人の知らない一面を持ってるものだろう」

 

 龍宮が微かに笑みを浮かべながら桜咲を眺めてそう言う。

 そう言えばこの2人は同室だったか。

 

「私はこのシュートをアクセル君に捧げます!」

 

 ちなみに、試合では釘宮からパスを受け取ったあやかが綺麗にスリーポイントシュートを決めていた。

 さすがに文武両道の完全お嬢様なだけはある。あれで性癖がまともならまさに完璧なんだがな。……いや。だがまぁ、あやかがショタコンであるからこそ俺を引き取ったのだと考えれば、文句を言う理由は無いんだけどな。

 

 

 

 

 

 放課後、今日は珍しく俺1人で帰宅途中だった。あやかは馬術部に、千鶴は天文部にそれぞれ用事があった為だ。夏美は当然の如く演劇部で練習中だ。

 色々と部活の誘いはあったが、全て断り帰宅部で通しているので放課後は完全に自由時間となっている。……にしても、柿崎、釘宮、椎名。俺をチアリーディング部に誘うというのはどういうつもりなんだ? 見学に行くのなら華やかな演技とかで見応えはあるだろうが、入部を勧めるってのはどうよ? と言うか、柿崎。逆光源氏計画とか大声で叫ぶな。

 

「ん? アルマー?」

 

 そういう風に思っていると、ふと名前が呼ばれる。声のした方へと振り向くと、そこにはメガネを掛けた茶髪の少女の姿があった。俺の斜め前に座っている長谷川千雨だ。

 特殊技能持ちの多い2-Aの生徒だが、長谷川は完全無欠の一般人だった。少なくても、スキル覧には魔法やら魔族やらといったものは無い。

 

「長谷川か。そう言えばお前も帰宅部だったな」

 

 俺のその言葉に小さく頷き、そのまま早足で女子寮の方へと向かっていった。

 一瞬追いかけて一緒に帰るのもいいかと思ったんだが。

 

「ったく、なんなんだよあの非常識は。あの言葉遣いでどこが10歳だっていうんだ。と言うか、そもそも日本に飛び級制度とかあったか? あれって外国だけじゃなかったか? 私の常識を悉く滅茶苦茶にしやがって。くそっ、こうなったらこの理不尽な気持ちをチャットでぶつけてやる」

 

 と、誰にも聞こえないような小声で呟いていたので取りあえず追い掛けるのはやめにした。

 小声でも人外の感覚を持っている俺には丸聞こえだったのだが。

 にしても、地味系で大人しい性格かと思っていたんだが、あの独り言を聞く限りでは猫を10枚程被っていたらしい。

 

 

 

 

 

 女子寮への帰り道、小腹が空いたので通り道にあるコンビニに寄る事にした。

 やはり超から買った中華まん5個じゃ足りなかったらしい。大人の時なら訓練やら何やらでそれなりの量を食っていたが、子供になって胃も物理的に小さくなってる筈なんだがな。体育で身体を動かしたのも影響しているのか?

 このコンビニは千鶴の朝寝坊によって今朝も寄った店だ。学校の近くにあるという位置関係もあり、総菜パンなんかが充実している。

 その店へ入ろうとして、入り口の近くにふと見覚えのある姿を発見する。

 褐色の肌に、白髪に近い銀髪。そして何よりも特徴的なのが顔のペイントだ。この少女の名前はザジ・レイニーデイ。クラスで聞いた話によると、曲芸手品部とかいうサーカス団みたいな場所に所属している関係らしい。……らしいが。

 その周囲にいる黒マントに仮面を被ってる奴等はどう考えても人間じゃないだろう。実際、レイニーデイのスキル覧には魔族の文字が燦然と輝いている。

 そう考えると、あの周囲にいるのはレイニーデイの眷属とかそういうのだろうか?

 

「……」

 

 何故か無言でこちらに近づき、持っていたおにぎりを手渡してくる。具はツナマヨ。

 

「貰ってもいいのか?」

 

 おにぎりを受け取りながら尋ねると、コクンと頷くレイニーデイ。

 どういう理由かは知らないが、くれるというなら貰っておこう。

 

「そうか。腹が減っていたから丁度いい。ありがたくもらっておく」

 

 そう礼を言うと、ペコリと頭を下げて眷属らしき者達を引き連れ女子寮……では無く、学校の方へと戻っていった。

 

「……妙な奴」

 

 そう言えば転校してきて20日程経つが、未だにレイニーデイの声を聞いた事が無いな。

 そんな風に思いつつ、早速もらったおにぎりを食べるのだった。

 

 

 

 

 

 これは、俺の麻帆良学園での平和な日常の一コマ。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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