「ふぅ、これで7匹目、と」
ゲイ・ボルクによって頭部を切断されたガッターを見ながら、呟く。
今日の恐獣狩りで、俺が倒したガッターは全部で4匹。
つまり、残り3匹はマーベルがゲドで倒したのだ。
1匹目を倒した時点であそこまで疲れ切っていたにも関わらず、そこから更に2匹。
この辺りのマーベルの精神力の強さは、素直に凄いと思う。
初めて本格的に命を奪ったというのに、それでもこれだけの戦果を挙げたんだから。
「アクセル、これからどうするの? まだガッターを探す?」
「いや、そろそろ帰った方がいいな。ガッターを見つけるのは難しくはないけど、マーベルの疲労も結構あるだろ?」
「そうかしら? ……いえ、今は緊張したり興奮しているから、そんな風に認識出来ないだけなのかもしれないわね」
「それが分かるだけでも十分だよ。ああちなみに今回倒したガッターのうち、ショット達に渡すのは……そうだな、4匹だけにしておくか」
「え? いいの?」
マーベルが驚く。
まぁ、普通は全部渡すと思うだろうしな。
「ああ。別に獲ったガッターの全てを渡すとは約束してないし、ガッターはオーラバトラーの素材にもなる。だとすれば、俺がこの世界から自分の世界に戻った時のお土産として用意しておくのは、そうおかしな話ではないだろ?」
「それは……そうなのかしら?」
「俺はそう思っているから、そうしてるだけだけどな。マーベルがどう思ってるのかってのは、俺にもちょっと分からないし」
「今はアクセルの言う通りにしておくわ。私が信じているのは、ドレイクじゃなくてアクセルだもの」
そう言うマーベルに、俺は笑みを浮かべて感謝の言葉を継げる。
「悪いな、助かる」
「全く」
と、何故かそんな俺に呆れた様子を見せるマーベル。
何だ? 何かあったのか?
そんな疑問を抱くも、マーベルの様子を見る限りでは特に何か悪い事でもないのだろうと判断して、話を続ける。
「ともあれ、そんな訳でそろそろ戻ろうと思う」
「私は構わないわよ。そう言えば、あのニー・ギブンという人のことはどうするの?」
「どうすると言われてもな。取りあえず接触したって話をドレイクにしておけばいいだろ」
これで、ドレイクが信用出来ない奴なら、それこそこの機会にギブン家に行くといった手段もあったかもしれない。
だが、少なくてもドレイクは信頼は出来ないが信用は出来る。
今のところは、だが。
ドレイクの方でも俺を信頼はしていないだろうが、信用はしているだろう。
信頼と信用。
この2つの違いは何気に大きい。
相手を信じて頼る事が出来るのが、信頼。
相手を信じて用いる事が出来るのが、信用。
言ってみれば、信頼は信用の上位互換といったところか。
実際の言葉の意味としてそんな風なのかどうかは分からないが、俺はそんな風に認識している。
だからこそ、俺という存在がドレイクにとってメリットがある以上、俺は別にドレイクを見限るといった真似はしない。
それに、ドレイクは領民に慕われているというのも、このままドレイクに協力してもいいと思っている理由の1つだろう。
「見た感じでは、いい人そうに見えたけど。アクセルはどう思った?」
「いい人そうってのは俺も賛成だな。とはいえ、いい人だからって貴族として正しい判断が出来るとも思えないが」
ギブン家の当主はニーでなく、ロムンとかいう人物らしいので、それを思えばニーがああいう性格であってもおかしくはない。
とはいえ、だからこそドレイクとまともにやり合うような真似は出来ないだろう。
ドレイクの場合、清濁併せ呑む……いや、若干濁の方が多いような気もするが、ともあれそういう感じだ。
領主としては、自分の領地をきちんと治めるのが最優先だと理解しているのだろう。
「そうかもしれないわね。アメリカの政治家でも、ドレイクみたいな人はいるもの」
「そこでアメリカの政治家と比べるのはどうなんだ? いやまぁ、その気持ちは分からないでもないけど」
マーベルにとって、貴族というのは政治家という一面も持っているといったイメージなのだろう。
そして実際にそれは間違っていない。
「ともあれ、ここでこうして話していても仕方がない。帰るぞ」
そう告げ、俺はマーベルと共に帰る準備を始めるのだった。
「ほう、ニー・ギブンと会ったか」
機械の館にガッターを置いた後、俺とマーベルはドレイクに会いに来ていた。
当然その理由は、ニーの一件だ。
「ああ。ドレイクと会った帰りだって話だったけど」
「まぁ、それは間違いではない。ただ、そうまでして会いに行ったということは、もしかしたら……」
「どうした?」
何かを考え込んでいる様子のドレイクに、疑問を抱く。
ちなみにそんなドレイクの様子が気になったのは俺だけではなく、マーベルも同様だ。
俺と同様、疑問の視線をドレイクに向けている。
「いや、何でもない。少し気になったことがあったのだが、ギブン家がそんな事をするとも思えん。恐らく儂の気のせいだろう」
「そう言われると、余計に気になるんだが。いいから言ってみてくれ。別にその情報が絶対だとは思わない。そういう意見の1つもあるんだと、そう理解するだけだ」
改めてドレイクにそう言うと、やがてドレイクは渋々とだが口を開く。
「これは、あくまでも儂の予想であり、何も証拠がない……仮定に仮定を重ねただけの話だと、そう思って欲しい」
そう前置きをし、俺とマーベルはドレイクの言葉に頷きを返す。
「分かった、それで構わない」
「ええ、アクセルの言う通りよ。何故ニー・ギブンがわざわざ私達に会いにきたのか。それは凄く気になるもの」
俺とマーベル、それぞれの言葉を聞き、ドレイクは口を開く。
「現在、儂とギブン領の関係がとてもではないが友好的と呼ぶ事が出来ないのは知っておるか?」
「ああ、その辺は街中とかで色々と情報を集めた時に聞いた。ドレイクがオーラバトラーを開発したのを危険視してるんだろ?」
「正確には、オーラボムのドロからだな。ピグシーというのも開発しているが、その時は問題なかったが。ともあれ、それによってギブン家はこちらを危険視し始めた。勿論、その理由は分かる。儂も隣接している領地の貴族が……それも、自分よりも広い領地を持つ格上の存在がそのような真似をすれば、それに対して警戒心を持つだろうし」
ドレイクも、どうやらギブン領が自分を危険視しているというのは納得しているのだろう。
それでも当然、面白くないとは思っている様子だったが。
「そして儂がオーラボムやオーラバトラーを開発出来たのは、ショットとゼットという地上人がいてこそだ。つまり、ギブン家が現状から盛り返すにはそれ以上の何かが必要だ。そしてその何かというのは、地上人によってもたらされる」
そこまで言われれば、俺もドレイクが何を言いたいのかは理解出来た。
マーベルも同様なのだろう。緊張した表情を浮かべており、やがて口を開く。
「つまり、私をバイストン・ウェルに召喚したのはギブン家だと?」
「あくまでも仮定に仮定を重ねた予想……いや、妄想と言ってもいい。何らかの証拠がある訳でもないしな」
そうドレイクは告げるが、ドレイクの様子を見ている限り、本人はギブン家がマーベルを召喚した事を半ば確信しているように思えた。
「本来ならギブン家の領地に召喚される予定だったが、召喚中に俺の転移と重なって、その結果エルフ城の側に出た、か」
「エルフ城?」
エルフ城という言葉に、ドレイクはこちらに視線を向けてくる。
そうか。そう言えば俺とマーベルが最初にエルフ城の近くに出て、そこで服を売った結果、その服に目を付けたフラオンに狙われる事になった……というのは説明してなかったか。
「そうだ。バイストン・ウェルに召喚された俺とマーベルはエルフ城の近くに姿を現したんだよ。そこでオーラバトラーの事を知ったり、地上の服を売った事でフラオンに目を付けられたりして、ここに来たんだが」
「面倒な真似をしてくれる」
「面倒ではあるが、それと比肩するだけのメリットは与えてると思うが?」
そう言うと、ドレイクはその件については何も言わなくなる。
ドレイクにしてみれば、実際に俺とマーベルという存在の意味をしっかりと理解しているのだろう。
にしても、俺達を召喚か。
今にして思えば、俺とマーベルがぶつかった時に聞こえてきた悲鳴。
あれは今までマーベルのものだと思っていたんだが、もしかしたら俺達を召喚したエ・フェラリオのものかもしれないな。
「そう言えば、シルキー・マウに会う事は出来るか?」
自分達を召喚したエ・フェラリオの流れから、このラース・ワウに捕らえられているというエ・フェラリオの事を思い出して、そう尋ねる。
だが、それが失敗だったというのは、強張ったドレイクの顔を見れば明らかだった。
「誰から聞いた?」
「いや、誰からと言われてもな。別にシルキー・マウの事は特に隠している訳でもないんだろ? なら、情報を集めるのは難しい話じゃない」
取りあえず、今のドレイクの様子から考えると、誰から聞いたといった話をした場合、その相手が不利益を被るだろうと予想出来た為だ。
それに実際、シルキー・マウの件はその辺の兵士でも知っている事だ。
そうである以上、もし俺がその気になれば、それこそ誰からでも話を聞くことは出来る。
「ぬぅ」
そんな俺の言葉に、悔しげにドレイクが呻く。
まさか、本気でシルキー・マウの事を隠そうと思っていたのか?
「それで? 会えるのか?」
「……会ってどうするつもりだ?」
数秒の沈黙の後、そう聞いてくる。
ドレイクにしてみれば、シルキー・マウは絶対に手放せない相手なのだろう。
だからこそ、もし俺がシルキー・マウに接触して、場合によっては解放してしまう事を考えている。
「どうだろうな。その辺は実際に会ってみないと分からない。シルキー・マウがどんな風に思ってるのかも分からないし」
もし虐待をしているのであれば、助け出すといった方法も考えられるだろう。
だが、そうではなく……シルキー・マウが自分から望んでドレイクの下にいるのなら、俺も無理に連れ出すような真似は出来ない。
その辺は、結局のところその時になってみないと分からないのだ。
「……マーベル、お前はどう思っている?」
取りあえずドレイクは俺の言葉には満足したのか、次にマーベルに視線を向け、尋ねる。
マーベルは正義感が強い一面もあるし、何よりシルキー・マウという名前からして女だ。
同性として、何か思うところがあってもおかしくはない。
「そうね。取りあえずアクセルの考えに任せるわ。ただ、アクセルも言ったけどそのシルキー・マウを虐待しているような事があったら……」
「分かった。なら、会わせよう」
最後までマーベルに言わせず、ドレイクはそう告げる。
この様子だと、シルキー・マウの待遇に自信があるのか?
まぁ、俺としてはマーベルを地上に戻す方法があるのかどうかだけでも、聞かせてもらいたいだけだ。
この様子だと、ドレイクがシルキー・マウを虐待しているといったような事はないらしいしな。
そんな訳で、俺とマーベルはドレイクと共に部屋から出て、シルキー・マウのいる場所に向かうのだった。
「ここだ」
ドレイクの城の中にある一画。
そこでドレイクが足を止めたのだが、あそこに張られているのは……呪符か? いや、呪符というにはちょっと違う気もするが……まぁ、取りあえず呪符という認識でいいだろう。
バイストン・ウェルにも、呪符とかそういうのがあるのか。
というか、呪符があるとなると、やっぱり魔法使いとかが普通に存在したりするのか?
そんな疑問を抱いていると、ドレイクが扉の近くにいる兵士達にどくように言い、その呪符を剥がす。
瞬間、周囲に眩い光が放たれる。
「きゃっ!」
いきなりだった為だろう。マーベルが驚きの声を上げるのが聞こえてきた。
これで腕に抱きつくとかしてくれればいいんだが……いや、今はそんな事を考えていられる場合じゃないか。
ともあれ、呪符を剥ぐとドレイクは扉を開き……そして、俺とマーベルを呼び寄せた。
「こちらに来るといい。彼女がエ・フェラリオのシルキー・マウだ」
その言葉に部屋の中に視線を向けると……そこは、かなり吹き抜けになっているような、そんな部屋だった。
そして二階部分に扉があり、下を見るとそこには水が溜められていた。
水の中には海藻……いや、水草か? そういうのがあったりして、そこには1人の女がいる。
「言っておくが、エ・フェラリオは水の中でも問題なく生きられる。いや、そちらの方が快適なくらいだ」
後ろでドレイクが言うが、本当か?
ただまぁ……実際に水中からこちらを見ているシルキー・マウは、溺死したり、溺れたりといったような事もないようなので、ドレイクの言葉は必ずしも嘘じゃないんだろうが。
そんな水中の中から、シルキー・マウは俺とマーベルを見ているのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1400
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1648