オーラコンバータの実験は終了し、現在は燃えてしまった部品の後片付けが行われていた。
とはいえ、それは燃えてしまった部品を捨てるといったような真似をするのではなく、その部品は機械の館に運び込まれている。
どんな状況でそのような事になったのか、確認するのだろう。
「大丈夫だった?」
ショットやゼットが指示しているのを眺めていると、そんな風に声を掛けられる。
声を掛けてきたのは、当然のようにマーベル。
……というか、騎士達の俺を見る目には畏怖が混ざっているように思える。
最初は不審とかそんな感じだったんだが……やっぱり炎に包まれても平然としており、それであっさりと炎を消し、そして俺には火傷の1つもなかったというのが、予想外だったのだろう。
まぁ、騎士達の場合は俺がドレイクを騙そうとしているのなら、それこそ始末するといったような事も考えていたのだろうから、それを考えれば俺の異常っぷりをその目で見る事になってしまってショックを受けたといったところだろう。
「ああ、特に何も怪我らしい怪我はないな。ゲドの時もそうだっただろ?」
「それはそうだけど……でも、あんな光景を見せられれば、心配するのは当然でしょ?」
「そう言って貰えると、俺も嬉しいよ。ともあれ、見ての通り問題ない」
「……ねぇ、少し疑問なんだけど……」
俺の様子を見ていたマーベルが、心の底から不思議そうにそう言ってくる。
何だ? 何かあったのか?
「どうした?」
「アクセルが無事なのは、分かるのよ。こうして二回も目の前で見せられたし。それはいいんだけど、何で服の方も燃えてないの?」
そう言って俺の方を見てくるマーベル。
俺が着ているのは、バイストン・ウェルに来て買った服で、転移前に着ていたのとは違う服だ。
とはいえ……別に俺が前に着ていた服も特に何か特殊な服という訳ではなく、ごく普通の服だ。
マーベルの様子を見ると、何か特殊な服だと思っているのかもしれないが。
そして結局言えるのは……
「魔力というのがそういうものだから、としか言えないな」
正確には魔力云々ではなく、俺が混沌精霊だからというのが関係しているんだと思うんだが。
そんな俺の魔力だからこそ、服も炎から守ったといたところか。
「そういうものなの? ……複雑なのね」
「複雑か? まぁ、取りあえずそう感じたと覚えておいて貰えば、それで構わないけど」
「……そうね。分かったわ。取りあえずそういう事にしておくわ」
完全に納得した様子ではなかったが、それでもこれ以上追求するといったような真似をする様子はなく、マーベルが頷く。
「アクセル王、少しよろしいか?」
俺とマーベルが話していると、ドレイクが近付いてきてそう尋ねてくる。
その目には強い興味の色が浮かんでいた。
ドレイクにしても、今の光景は興味深かったのだろう。
「ああ、構わない。……結局、オーラコンバータを1つ破壊してしまったな」
「いやいや、それは構わんよ。それでアクセル王の魔力を解明出来るのなら、安いものだ」
ドレイクのこの言葉は、本心からのものだろう。
ドレイクにしてみれば、今までこの世界にはオーラ力しか存在していなかった。
だが、そこに魔力を持つ俺が姿を現したのだから、それを非常に珍しく思い……欲するのは領主としておかしな話ではない。
それこそ、オーラコンバータの1基や2基失っても利益の方が多いと判断するだろう。
「そうだな。俺も魔力が解明されて、オーラバトラーに乗れるようになりたいところだ。……ああ、そうだ。その件でショットやゼットに話しておきたい事があったんだ。悪いけど、ちょっと機械の館に行ってくる」
「うむ。儂もこれから色々とやるべき事があるので、失礼するよ」
そう言い、ドレイクが去っていく。
それを見送り、マーベルに視線を向ける。
「どうする? 俺は今も言ったように、ちょっとショットやゼットと話があるけど」
「一応聞くわ。私にも関係してくるかもしれないし」
そう言うマーベルだったが、魔力がマーベルに関係するのか? と思わないでもない。
いやまぁ、それでもマーベルが俺を心配してくれるのなら、それは嬉しい事だったが。
そんな訳でマーベルと2人で機械の館に向かう。
当然ながら、機械の館の中では現在多くの者達がそれぞれに動いており、強い活気が満ちている。
働いている者達の中には、俺とマーベル……いや、正確には俺を見て驚きの表情を浮かべている者も多い。
バイストン・ウェルの人間であっても、身体を炎に包まれたというのに火傷の1つもしないというのは、非常に珍しいのだろう。
「ショットとゼットはどこにいる?」
「む……向こうでオーラコンバータを調べています」
通りすがりの男にそう尋ねると、恐る恐るといった様子でそう返事をしてきた。
いや、別に誰彼構わずちょっかいを出したりとかはしないんだけどな。
……この辺はいずれ慣れていくしかないか。
オーラバトラーという未知の技術を欲している以上、出来れば機械の館の面々とは友好的な関係を築いておきたいし。
「そうか、分かった。ならそっちに顔を出させて貰うよ」
「え? あ、はい」
まさか俺があっさりと納得するとは思わなかったのか、男は意表を突かれた様子を見せる。
今はこの状況が精々といったところか。
そうしてショット達のいる場所を聞き、俺とマーベルは揃ってそっちに向かう。
「あそこじゃない?」
「らしいな。……随分と白熱しているみたいだけど」
俺の視線の先では、ショットとゼットが……それ以外にも数人の男が、壊れたコックピットを前にしてああだこうだといったように言葉を交わしていた。
「だから、普通のオーラ力ならオーラコンバータがここまで損傷する事はないだろ!? なら、オーラコンバータじゃなくて、ショット様が以前言っていたマジックコンバータを作る方向に……」
「馬鹿が。そんな時間がどこにある? ただでさえ今は新型オーラバトラーの開発で忙しいんだぞ?」
「なら、どうするってんだよ! アクセル王が使えるオーラバトラーを作れってのは、ドレイク様直々の命令だ! それを無視するってのか?」
「誰も、そんな事は言ってないだろ。けど、何事にも優先順位ってものがある!」
「……ショット、魔力の性質をもう1度説明してくれ。勿論、今判明している分だけでいい」
「ああ。オーラコンバータの損傷具合から考えて、エネルギーその物の密度は魔力の方がオーラ力よりも濃いらしい」
「やはりそうか。……そうなると、一応手段があるな」
「ほう、それはどのような?」
「単純なことだ。オーラ力よりも魔力の方が濃いのであれば、オーラコンバータに流す魔力を少なくすればいい。そうすれば、オーラコンバータが損傷するといった事はない。……もっとも、そのような真似をするとなると……」
「ふむ。間違いなく通常よりも大きなオーラ力……いや、魔力を消耗するだろう」
「そうなる。だとすれば、10の魔力を使ってオーラ力は1の効果しか発揮しない。そのような事になる可能性はある」
「その辺は調整次第か。もっとも、今の状況を思えば魔力をかなり無駄にするような事になると思うが」
そうして話している内容を聞く限り、ゼットは魔力の件に対する対応をすぐに取れるらしい。
ゼットもショットも、双方才能のある技術者であるのは間違いないが、ショットは技術者以外にもドレイクと政治的な話をしたりしているのに対し、ゼットの方はより技術者として特化しているといった感じか。
以前にもそんな印象を覚えたが、どうやらその印象はそこまで的外れなものではなかったらしい。
ともあれ、今の様子から魔力に対処出来るのだと判断し、そんなショットやゼット達に声を掛ける。
「なら、その線で試してみてくれ」
「アクセル王!?」
議論に夢中になっており、俺が近付いてきているというのは分からなかったのだろう。
ショットが驚きの口調でそう告げる。
……それでいながら、俺の事を普段のようにアクセルと呼ぶのではなく、アクセル王と呼んでいる辺り、その辺の判断はしっかりとしてるんだな。
「オーラコンバータの件がどうなったかと思って、ちょっと様子を見に来たんだが……まさか、こうも早く解決策が示されるとは思わなかった」
「いえ、ですがそれは……もしそのような真似をした場合、魔力の運用効率が……」
「そうだな。その話は俺も聞いていた。だが……正直なところ、さっきの実験で使った魔力は俺の持つ魔力の中でもかなり少ない。魔力を10使用してオーラ力が1くらい……だったか? なら、魔力を100使用すればオーラ力は10、魔力を1000使用すれば、オーラ力は100となる。違うか?」
「いえ、理屈ではその通りですが……」
「なら、問題はない。それに魔力の運用効率に関しては、この先オーラコンバータを改修していけば、それによってある程度はまともになっていくんだろ?」
「……それは否定しませんが、本当にいいのですか?」
そう告げるショットに、問題ないと頷く。
実際、俺が魔力を100や1000使用するというのは、実験の時の事を思えば決して大袈裟なものでもない。
現在の俺の魔力を考えれば、その程度は容易に出来る。
いや、それこそ1万、10万……といった魔力すら可能だろう。
それでも無理なら、それこそ現在のPPはかなりの余裕があるのだから、それをSPに注ぎ込めばいいだけだ。
寧ろ、それくらいで魔力の件がどうにかなるのなら、こちらとしては願ったり叶ったりといったところだ。
「ああ、それで構わない。こちらとしては、その方向で進めて欲しいと思っている。それで、具体的にはいつくらいに出来る?」
この意見を出したのがゼットだったので、そのゼットにそう尋ねる。
「結局のところオーラコンバータに流れ込む魔力でしたか? それを限定すればいいだけなので、やるだけなら3日といったころかと。とはいえ、これはあくまで動かせるってだけなので、実際に動かすとなればもっと色々と調整が必要になりますが」
「そうか。なら、任せてもいいか?」
「俺が? いえ、アクセル王が構わないなら、いいんですが」
そう言い、ショットの方に視線を向けるゼット。
ゼットにしてみれば、俺とショットは友好的な関係に思えたのだろう。
それだけに、ここで何故自分に手柄を与えるような事を言うのかと、そんな疑問を抱いてもおかしくはない。
とはいえ、これは別にゼットを贔屓したとか、ショットとの関係が悪化したからとか、そういう理由からではない。
ただ純粋に、ゼットが意見を出した以上はゼットに任せた方がいいと、そう思った為だ。
「ショットは新型のオーラバトラーの開発もある。ゼットも勿論そうだろうが、この意見を最初に出したのがゼットである以上、ゼットに頼んだ方がいいと思っただけだが?」
「……分かりました。この件は可能な限り早く解決するように上から言われてますので、俺が引き受けましょう」
ドレイクが、前もってそんな風に指示をしていたのだろう。
俺にとっては助かる内容だったが……これはドレイクも自分にとって利益になると、そう判断したのだろう。
ドレイクにしてみれば、今までバイストン・ウェルには存在していなかった……もしくはあったかもしれないが誰も発見していなかった魔力というエネルギーについて深く調べる事が出来て、それが将来的にはオーラバトラーの強化に使われるといったような事になる可能性も十分以上にあった
その辺の利益を考えれば、現在はゲドよりも性能の高い新型のオーラバトラーの開発が少し遅れても問題はないと……それどころか、最終的に見ればプラスになると、そう考えての事なのだろう。
「頼む。折角バイストン・ウェルに来たのに、オーラバトラーに乗れないってのは残念だしな」
オーラバトラー以外にもオーラボムのドロとかあるんだが……こっちは珍しいのは事実だけど、素の状態で空を飛ぶ事が出来る俺としてはあまり魅力を感じないんだよな。
基本的にドロは自由に空を飛んで地上に攻撃するといった手段で戦うが、それだと俺は生身で普通に出来るし。……ああ、ドレイクが魔力を欲しているのは、その辺もあるのか?
一瞬そう思ったが、ドロがある以上はそこまでする必要があるのか? と考えてしまう。
いや、勿論魔力を使う……魔法使いの類がいれば、ドレイクにとって非常に有利なのは間違いない。
だが、そこまでして入手したいのかと言われれば、微妙なところだろう。
これがシャドウミラーなら、未知の技術ということで絶対に欲しいと思うのだが。
そんな風に思いつつ、俺は取りあえずゼットの質問に答えながら魔力についての説明をし……そしてショットや他の者達は自分の仕事に戻っていく。
さて、実際にはいつくらいに俺が乗れるオーラバトラーが出来るのやら。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637