「すぅ……すぅ……」
部屋の中にマーベルの寝息が響く。
同じ屋根の下……どころか一緒の部屋に今日会ったばかりの男がいるのに、よくもまぁ、こんなにぐっすりと眠れるものだ。
マーベルが言った通り、そこまで俺を信じているのか……もしくは、俺から聞かされたシャドウミラーについての諸々の話に興味津々だったおかげで、疲れ切ったのか。
いや、後者なら普通は興奮して眠れないとか、そんな感じになる筈だよな。
その辺の事情を考えると、マーベルって実はかなり図太いのかもな。
ともあれ、こうしてマーベルがぐっすりと眠っているのなら、俺としても行動をしやすい。
そのまま床の上から起きると、この世界の服装に着替え……そして空間倉庫の中から技術班が作った仮面を取り出すと、それを被る。
取りあえずこれがあれば、俺の姿を見つけても怪しむだろうが、顔を見られる事はないだろう。
何よりも、この世界がファンタジー世界であるという事は監視カメラの類はない。
つまり気配遮断を使えば、見つかる可能性はまずなかった。
……いや、科学技術がない代わりに魔法がある可能性も否定出来ないから、絶対に安全とは言い切れなかったが。
ともあれ、この世界は俺にとっては決して悪い世界ではない。
特にこれから後ろ暗い行動に移る俺としては。
俺だというのが見ただけで分からないのかを確認してから、影のゲートを使って転移する。
向かうのは、この王都の中心にある……エルフ城。
正確にはエルフ城にいるフラオンを殺すといったような目的ではなく、宝物庫……でもなく、オーラバトラーだ。
いや、宝物庫の方にも興味がないと言えば嘘になるのだが。
この世界の金がない以上、宝物庫を漁っておくのも悪い話じゃない。
とはいえ、一国の宝物庫である以上、そこにあるのは非常に希少な代物なのは間違いない。
であれば、もしそれを売り払うといった真似をした場合、すぐに足がつく可能性がある。
であれば、こちらとしては迂闊なお宝を盗む訳にはいかない。
もし何かを奪うとしても、それはその辺で普通にありふれているような物である必要がある。
ともあれ、今回の最大の目標はオーラバトラーだ。
ファンタジー世界で生み出された人型機動兵器が、一体どういう物なのか。
……盗み出すといったような事をするかどうかは、実際に見てからだな。
それに中には何らかの鍵が必要な機体という可能性もある以上、機体だけを奪っても意味はない可能性はあるしな。
影のゲートでエルフ城の中に姿を現し、即座に気配遮断のスキルを使う。
気配遮断のスキルを使いはしたが、見張りの兵士はそんなに多くないな。
これなら気配遮断を使わなくても、普通に身体能力だけで適当に誤魔化せた気がしないでもない。
勿論、気配遮断の方が確実である以上、それを使わないという手段はないのだが。
ともあれ、まず探すのは格納庫だ。
宝物庫の方は、後回しでいいだろう。
そう判断しながら、俺はエルフ城の中を歩き回る。
……とはいえ、王が住んでいる城だけに当然かなりの広さを持つ。
格納庫の場所も、なかなか見つからない。
いっそこうして直接歩き回るのではなく、影のゲートを使って探した方が早いか?
そう思いつつも、歩き回っていると……やがて、遠くの方から何かの音が聞こえてくる。
結構な大きさの音であり、それも話し声とか怒鳴り声とかそういうのではなく、金属音の類だ。
これは当たりか?
一瞬そう思ったが、金属音となると兵士が戦闘訓練をしているだけという可能性もある。
街中で見たアの国の兵士は、長剣を持っていたし。
当然そのような長剣で戦闘訓練を行うとなれば、このような金属音が聞こえてきてもおかしくはない。
それでもこれ以上何の手掛かりもないよりは……とそう思って移動する。
途中で何人かの兵士と遭遇したが、気配遮断を使っている俺の姿は当然のように認識されない。
まぁ、認識されても仮面を被っている以上は顔を見られる事はないのだが。
そうして進み続け……やがて聞こえてくる音が次第に大きくなっていく。
「おい、そっちの調子はどうだ!?」
「おっかしいな。……これでいい筈なんだが……駄目だ、ちょっと分からねえ!」
「くそっ、厄介だな。……ゲドの筋肉の様子は?」
「そっちは問題ない!」
「くそっ、こんな使える者が少ない役立たずがあっても、意味がねえだろうが! こんなのよりも、ドロの方がよっぽど使いやすいってのに。フラオン王は、何だってこんなのを買ったんだ!?」
「おい、黙れ! 上の連中に聞かれたら、どうなると思ってるんだよ!」
そんな声を聞きながら、俺は声の聞こえてきた場所……格納庫の中に入っていく。
そこはまさに格納庫と呼ぶべき場所であり、俺が目的としていたオーラバトラーの姿もある。
聞こえてきた話から考えると、恐らくこのオーラバトラーの名前がゲドというんだろう。
とはいえ、3機しか存在しないのは……まぁ、オーラバトラーその物がまだ開発されたばかりらしいし、そうなれば当然数も少ないんだろうからしょうがない。
にしても……これがオーラバトラーか。
見た目としては、どこか生物っぽいというか、虫っぽいというか……そんな印象だ。また、全高も8……いや、7mくらいか?
UC世界のMSが平均して18mくらいだった筈だから、それを考えればかなり小さい。
ギアス世界のKMFは5m前後が一般的だから、それよりは大きいんだろうが。
ニーズヘッグの全高が15mなので、大体半分くらいか。
にしても……整備をしているメカニック達の話を聞いてる限りでは、全く使い物にならないような感じだな。
これは、わざわざ奪うまでもないか。
ただ、興味深い機体ではあるんだよな。
少し離れた場所では、何らかの機械を使って筋肉らしきものを動かしている。
筋肉……か。
つまり、このオーラバトラーはロボットという訳ではなく、生体兵器とかなのか?
だとすれば、これは興味深い。
MSを始めとした科学技術の分野ではなく、この世界にいるだろう動物とかの筋肉を使ってる……のか?
レモンとかなら、筋肉を培養してそれを使ったりといった事も出来ると思うが、残念ながらこの世界はファンタジー世界である以上、そんな真似は不可能だろう。
いや、ファンタジー世界だけに錬金術とかそういうのがあって、それで魔法的に筋肉を作るといったような事が出来る可能性も否定は出来ないが。
ともあれ……この連中を見る限りでは整備もろくに出来ないらしいから、奪っても使い道がないのは間違いないな。
にしても、仮にも王の下にいるメカニックがオーラバトラーの整備も出来ないってのは……まぁ、開発されたばかりとなると、その辺はしょうがないのかもしれないが。
ただし、そういうメカニックが整備していて……しかも、この様子を見る限りでは間違いなく整備もまともにされていないゲドは、貰っても意味はない。
……どころか、これを使って戦おうと考えると間違いなく危険だ。
ゲドについて詳しく知りたいとなると、やはりここはオーラバトラーが開発されたルフト領に行って直接接触した方がいいな。
こういう人型機動兵器を開発したとなると、ドレイク・ルフトとかいう人物は間違いなく有能だろう。……まさか、単なる道楽でオーラバトラーを作ったとかはないよな?
その辺も直接確認してみる必要がある。
また、領主という事になれば、当然のようにある程度土地も自由に出来るだろう。
ゲートを設置する土地を借りられれば、言う事なしなんだが。
その辺は実際に話してみないとどうにも出来ないな。
取りあえずオーラバトラーのゲドはこれでいいとして……次はあっちの妙な機体か。
丸いような……いや、亀っぽい感じのような? ともあれそんな本体とも胴体とも思える部分の4ヶ所から触手的な何かが伸びている。そんな機体。
さっきのメカニックの話を聞く限りでは、この機体……ドロだったか? こっちの方がオーラバトラーよりも使えるって話だったが……どういう機体だ?
足の類がないって事は、空中を浮かぶような奴なのか? ……どうやって?
まぁ、ファンタジー世界の事に理屈を求めるのは間違ってるか。
そもそも、それを言うなら俺だって色々と理屈では説明出来ないような存在なんだし。
そんな風に思いながら考えていると、メカニックの何人かの話す声が聞こえてくる。
「おい、悪いけどちょっとドロを寄せてくれ。そこに置かれると、ゲドのオーラソードを運ぶのに邪魔になる」
「え? ああ、悪い。すぐに寄せる」
そう言い、メカニックがドロに乗ると……ドロは空中に浮かぶ。
どうやらやっぱり空中に浮かぶタイプだったか。
あの様子から考えると、速度はそんなに出ないようだが……空を自由に飛べるというだけで、それなりに使い道は多そうだ。
ドロが少し離れた場所に移動すると、やがてそのドロのあった場所に馬車がやって来る。
……馬車?
一瞬疑問に思ったが、よく見ると馬車の荷台には長剣が1本置かれている。
ああ、なるほど。あれがさっき言ってたオーラソードか。
にしても、実体剣とはな。
いや、実体剣そのものはそこまで珍しいものじゃない。
SEED世界でもザフトでは普通に使われていたし。
ただ、この世界とSEED世界では科学力が違いすぎる。
つまり、このオーラソードはかなり稚拙な作りという可能性が高い。
いや、ここがファンタジー世界である以上、エルフとかドワーフとかがいる可能性があるのか?
だとすれば、ドワーフによって作られたあのオーラソードとやらは実はかなりの業物である可能性もあるのか。……俺にはちょっと分からないが。
とにかく、ゲドやドロといったようなのは、今までシャドウミラーでは扱った事がないような兵器だ。
そういう意味では、この世界は当たりだったかもしれないな。
……まぁ、UC世界のMS以上に、まだ世の中に出たばかりの兵器という事で試行錯誤の連続といったところのようだったが。
やっぱりルフト領に行くのが一番なのは間違いないな。
フラオンは税金とかもかなり厳しいらしいし。
それでもやっていけているのは、ここがアの国の王都だからこそ、人が集まってくるからだろう。
つまり、会った訳ではないが……フラオンとやらは典型的な無能といったところか。
いや、そうだな。どうせここまで来たんだし、フラオンがどんな人物なのか見ていくのも一興だな。
とはいえ、何だかんだともう夜は結構遅い。
もしかしたら、もう眠っている可能性もあるけど。
そう思いついたはいいものの……問題なのは、フラオンがどこにいるのか分からないといったところか。
そもそも、この格納庫に来るまでも結構忙しかったんだし。
しょうがないので、誰もいない部屋まで移動すると、スライムを出してフラオンがどこにいるのかを探す。
格納庫を探す時もこれを使えばよかったんだろうが……魔法使いとかに見つかる可能性があったんだよな。
ただ、格納庫を探して見て回った限りでは、それらしい人物はいない。
そんな訳で、スライムを使っても特に問題ないと判断したのだ。
『くそっ、前の王様だったら……』
『おい、その辺にしておけ。フラオン王の耳に入ったらとんでもない事になるぞ?』
これは……兵士か騎士か?
フラオンに不満を持っているらしいな。
『おい、分かってるな。フラオン王には思う存分楽しんで貰え。そうすれば、こちらで色々と処理出来るようになる』
『そうですな。フラオン王には王らしく好きにすごして貰いましょう』
これはこの国の政治家か何かか?
フラオンが無能なのをいいことに、自分の思うように政治をしているといったところか。
そんな風に何人もの声を聞くが、大半はフラオンという人物を無能だと判断しているのが分かった。
何人かは、それでも前王の恩に報いる為に、フラオンに忠誠を誓っているといったような連中もいたが。
ともあれ、そうして何人もの声を聞いていくと……
「きゃー、フラオン王、凄いです」
「ふははは、そうか、そうか」
……いた。
女の嬌声とそれに対して自慢げに返す声。
うん、どうやらこいつで間違いないな。
そう判断すると、影のゲートを使って転移する。
当然の話だが、影のゲートから出るとすぐに気配遮断を使い、声の聞こえてくる部屋に入る。
そんな俺の目に映ったのは、目隠しをして女の手の叩く音を頼りに移動している男の姿。
そうして女の方も、手を叩きながら男……フラオンに捕まるまで意図的に待って、フラオンに抱きしめられると嬌声を上げていた。
これは……うん。いや、今は夜なんだからリラックスするという意味でこういうのをしているのかもしれないが……取りあえず、とても有能そうに見えない人物だというのは、間違いない。
その後も30分程フラオンのやる事を見ていたが、まさに無能や暗君という表現が相応しい人物だというのだけは分かった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637