「取りあえず、何とかなったか」
「そうね」
服を売った店から出ると、マーベルは複雑そうな表情で俺に向かってそう言ってくる。
自分の服を売るということで、色々と思うところがあるのだろう。
……ちなみに、予想通り服は結構な値段で売れた。
その値段で適当な……具体的にはこの辺を歩いていても特におかしくは思われないような服を購入し、マーベルはそれに合わせて下着も購入している。
服飾技術の差によるものか、マーベルが満足するような下着の類はなかったみたいだが。
「とはいえ、この金額でも数日くらいの猶予しかないらしいし、出来ればもっと金を稼ぎたいところだな。……ファンタジー世界なら、冒険者ギルドとかそういうのはないのか?」
「さぁ? でも、見た感じだと武器を持ってる人は兵士だけみたいよ?」
そう言われると、確かにそうだ。
とはいえ……やっぱりファンタジー世界の兵士らしく、着ているのは軍服とかそういうのではなく、何かの革とかで作ったような鎧の類だ。
ぶっちゃけ、あんまりセンスはよくないと思う。
いやまぁ、俺がセンス云々といったところで説得力の類はないんだろうが。
「冒険者の類がないとすると、金を稼ぐ方法を本格的に考える必要があるな」
いっそ、ゲートを設置してホワイトスターに戻るか?
そうも思ったが、林で目覚めた時もそうだったが、ゲートは迂闊な所に設置は出来ない。
そうなると、取り合えず家を借りるとか、そのくらいの事は出来るようになる必要があるんだが……どれくらい掛かるのやら。
ぶっちゃけ、俺が本気になれば城に盗みに入ってお宝とかを……いや、そうだな。やっぱりオーラバトラーとかいうのはある程度確保しておきたい。
とはいえ、オーラバトラーについて何も知識がない状態で盗み出すのもな。
出来ればオーラバトラーに詳しい奴から情報を得てから行動に出たい。
「そうね。でも、さすがに今日は疲れたから、休まない?」
マーベルにしてみれば、いきなり地球からこの世界に転移してきたのだ。
その上、ユニコーンみたいな動物とか、武器を手にした兵士やら、自分の常識が通じない存在を目にしている。
それだけではなく、自分の着ている服を……それも家の中じゃなくて外で脱ぐといったような真似をしているので、精神的な疲れは相当なものだろう。
「分かった。俺も宿でゆっくりとしたいしな」
「……それ以外にも、アクセルの事を聞かせて貰うわよ」
念を押すように告げてくるマーベル。
マーベルにしてみれば、空間倉庫を見た以上は俺の秘密を知りたいと思うのは当然だろう。
「話すって約束している以上、騙すような真似はしないから安心しろ。……問題なのは、どこの宿にするか、か」
宿と一口に言っても、ここがアの国の王都である以上、その数はかなりある筈だった。
そして宿の種類も安宿から高額な宿まで、多種多様にあるのは間違いない。
そうである以上、どのくらいの宿を選ぶかというのは、大きな問題だろう。
個人的には当然のように施設が充実しているような宿がいいのだが、そのような宿は当然値段も高い。
今の俺達にはそこまで大きな余裕がある訳ではない以上、そこまで贅沢は出来ない。
……ゲートを設置するのは無理だが、今はもう使わなくなったマーカーがある。
世界間を固定するような機能はないが、マーカーがあればその座標を辿ってホワイトスターからまたこの世界にやって来る事が出来る。
だとすれば、いっそマーカーを設置してホワイトスターに戻るのもありか?
とはいえ、俺1人だけならまだしも、マーベルが一緒だとそんな真似をするのは難しいか。
「どこか安い場所がいいんでしょうけど……そういうところは治安が悪そうよね」
素直にそのように思うのは、マーベルがしっかりとしているからか、それともアメリカ出身だからか、
ともあれ、マーベルの言ってることは決して間違いではない。
そうである以上、狙うのはそこそこの値段の宿なのだが……この世界の貨幣価値ってのが、いまいち分からないんだよな。
一応服の売買でそれなりの金額は入手したのだが。
「その辺は、最悪俺がどうにかするよ。とにかく、こっちの世界の常識が分からない以上、色々と歩き回っていてもしょうがない。適当な宿にした方が、休める時間が増えていいと思うんだが。……どうだ?」
「そうね。いい場所を探すのは大変そうだし。……そうしましょうか」
マーベルが俺の言葉に頷く。
とはいえ、宿屋がどこにあるのかというのも分からないんだよな。
宿屋の看板がどういうのとか、そういうのが分かればこっちでも対処のしようはあるんだが。
そんな事を現在の状況では出来ない以上、誰かから話を聞くしかない訳で……
しまったな。それならさっき服を売った店でどこかお勧めの宿を聞いておけばよかった。
そう思いながら、少し離れた場所にある屋台に向かうのだった。
「え? それは……」
宿屋の店員の言葉に、すぐに返事をする事は出来ない。
何の肉なのかは分からないが、ともあれ串焼きを売っていた屋台で数本の串焼きを購入し、お勧めの宿を教えて貰った。
その宿がここだったんだが……問題なのは、ここがお勧めの宿であり、つまり人気の高い宿でもあるという事だ。
そして評判のいい宿であれば当然のように客は多く……結果として、今日はもう殆ど部屋が埋まっており、現在空いている部屋は1つだけという有様だった。
これで、俺と一緒にいるのがレモンを始めとした恋人達なら、別に1部屋であっても問題はない。
何しろ、毎晩のように一緒のベッドで……それも夜の営みをしているのだから、部屋が同じ程度は何の問題もないのだ。
だが、現在俺と一緒にいるのはレモン達のような恋人ではなく、この世界にやって来た時に一緒にいたというだけのマーベルだ。
これでマーベルが男であれば、そこまで気にするような必要もなかったのだろうが、マーベルは間違いなく美人と呼ぶに相応しい人物だ。
それだけに、数時間程度一緒にいるだけの俺と一緒の部屋で一晩を……となれば、当然の話だがそれを好む筈がない。
だとすれば、別の宿に行くか。
そう思ったのだが……
「それで構わないわ」
俺が何かを言うよりも前に、マーベルがそう告げる。
まさか、マーベルがそんな事を言うとは思っていなかったので、思わずそちらに視線を向ける。
「マーベル?」
「アクセルとはまだ会ったばかりだけど、どういう性格なのかは分かるわ。ここで妙な真似はしないでしょう?」
「それはまぁ……けど、ちょっと警戒心が薄すぎるんじゃないか?」
「まぁ、この人は見た限りではガロウ・ランじゃないみたいだしね。そっちのお嬢さんがそう言うんなら、いいんじゃないかい?」
ガロウ・ラン?
文脈からすると、悪人とかそういう感じか?
また分からない単語が出て来たな。
ファンタジー世界だけに、こっちが理解出来ない単語が多いのは困る。
……とはいえ、普通に考えれば言葉が通じるというのがそもそもおかしいのだろうが。
ともあれ、ここで考えると怪しまれかねないし……
「分かった。マーベルがそれでいいのなら」
結局、俺はそう言って部屋を借りるのだった。
「へぇ……お勧めってだけあって、結構いい部屋だな」
ホワイトスターにある俺の部屋と比べれば、当然数段劣る。
だが、ファンタジー世界の一般的な宿屋とホワイトスターにある家の部屋を比べるのが、そもそも間違っているだろう。
ただし、問題もある。
「ベッドが1つしかないのは問題だが」
「それはしょうがないでしょ。元々1部屋しかないってところに、無理に2人で部屋を取ったんだから。……私が床で寝るわ」
「いや、俺が床で寝るから、マーベルはベッドを使え。マーベルみたいな一般人を床で眠らせて、俺がベッドで寝るってのは色々と不味い」
実際には、マーベルが女だからベッドを使わせるというのが正しいのだが、今の状況で俺がそんな事を言っても、マーベルは頷かないだろう。
だからこそ、俺は一般人というのを押し出したのだ。
幸いにして、マーベルはそんな俺の言葉に納得したのか、素直に頷く。
……これ、多分今の俺が20代の姿だから信じたんだよな。
UC世界で活動していた時のように10代半ばでマーベルよりも年下の姿だったら、とてもじゃないが信じて貰えなかった気がする。
「それで……アクセルが知ってる事を、色々と教えてくれる?」
マーベルがベッドに座り、俺が部屋に備え付けの椅子に座ると、そうマーベルが尋ねてくる。
この期に及んで隠し事をするつもりもないので、俺は素直に頷く。
「俺は異世界から来た。……まぁ、そういう意味だとマーベルもこことは別の異世界から来たって事になるんだろうが、俺の場合はマーベルのいた世界とはまた別の世界から来たんだ。異世界、パラレルワールド、平行世界……言い方は色々とあるけどな。そんな中で、世界と世界の狭間の異空間とでも言うべき場所に俺がやってきた場所はある」
「……続けて」
俺の言葉を素直に全部信じた訳じゃないんだろうが、それでも話の続きを促すマーベル。
俺の言葉を信じるかどうかは、最後まで聞いてからといったところか。
「で、俺達の世界は世界と世界の狭間にあるってのを利用して、色々な世界と接触している。そんな中で、新しい世界と接触する時には、世界を転移する装置をランダム設定にして未知の世界に俺が行く訳だが……それでやって来たのが、この世界だった訳だ」
「何でアクセルがそんな真似をする必要があるの? それはまぁ、強いのかもしれないけど……」
ああ、そんな疑問を持つのは当然か。
普通の神経をしていれば、それこそ未知の世界に転移するなんて真似はとてもじゃないが出来ないだろうし。
「簡単な話だ。単純に、俺がその国……シャドウミラーの中だと最強だからだよ」
「そういう風に煽てられてるの?」
「……あのな。いやまぁ、そんな風に思うのはおかしくはないが。正真正銘の事実だ。でもって、シャドウミラーを率いてる立場……大統領とか首相とかそんな感じのも、実は俺だったりする」
そう告げると、マーベルの俺を見る目が強い疑惑に覆われる。
普通に考えれば、そういう風になってもおかしくはないのだが……それでも、俺としては色々と言いたい事があった。
「冗談とか、嘘とか、そういう風に思ってるのかもしれないが、間違いなく真実だぞ。……その一端は、お前も見ただろ?」
そう告げ、空間倉庫からゲイ・ボルクを取り出す。
真っ赤な槍は、一目見ただけで普通の槍ではないと、そう相手に理解させるには十分な迫力を持つ。
「……何、これ……」
「力だよ」
そう告げ、ゲイ・ボルクを空間倉庫の中に収納する。
普通に考えて、これをアイルランドの英雄たるクー・フーリンが持っていたとか言われても、普通は信じないよな。
「他にも色々とあるけど、ともあれ俺は強い。……まぁ、この世界だとどうだか分からないが」
俺の強さの要因の1つに、拳銃だろうが何だろうが、単純な物理攻撃では効果がないというのがある。
魔力や気の類がなければ、俺にダメージを与える事が出来ないのだ。
なので、普通なら俺に向かって攻撃をしてきても意味はない。
だが……この世界はファンタジー世界だ。
オーラバトラーというロボットがあっても、ファンタジー世界であるのは間違いない以上、魔法の類がある可能性は否定出来ない。
だとすれば、この世界では俺にダメージを与える手段は普通にある可能性があった。
「……取りあえず、アクセルが強いというのは分かったわ。続けて」
「そう言われてもな。ともあれ俺がそうやって未知の世界に転移したんだが、その転移中にマーベルに巻き込まれたのか、それともマーベルを巻き込んだのかは分からないが、そうして俺はこの世界に来た訳だ」
「私が巻き込んだって……そんな事はまずないと思うわよ?」
そう告げるマーベルだったが、今まで一般人として生きてきた以上、そのように思うのは当然だろう。
とはいえ、今の状況を考えると、俺が何らかの手段によってマーベルがこの世界に転移するのに巻き込まれた……という可能性の方が高いのだが。
「どうだろうな。まぁ、その辺はともかくとして……俺もマーベルも、こんなファンタジーの世界にやって来てしまった以上、どうにかする必要がある」
「アクセルが何とか出来ないの?」
「一応俺の国のあるホワイトスターって場所に戻る事は出来ると思うけど、マーベルのいた世界に行くってのは難しいだろうな」
ゲートにしろマーカーにしろ、今の状況でマーベルの世界に戻るといった事は出来ない。
「それに俺の世界に戻るにしても、色々と条件がある。出来れば自分の土地……誰かに妙なちょっかいを出されないような土地を確保する必要があるから、すぐにって訳にはいかないな」
そう告げる俺の言葉に、マーベルは残念そうな表情を浮かべつつ……もっと事情を話して欲しいと、そう視線を向けてくるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637