「クレイドル条約の締結と終戦を祝って……乾杯!」
『乾杯!』
俺の言葉に従い、パーティ会場にいる参加者達がそれぞれコップを掲げ、乾杯と口にしてからそれを飲む。
そんな光景を見ながら、何だか最近はパーティばかりしてる気がするなと思う。
ペズン、木星、そして今日。
……あ、でも木星ではパーティというよりも会食といった感じだったか。
まぁ、1年戦争が終わったという事を喜びたい気持ちは十分に分かる。
クレイドル条約が結ばれた後で行われた記者会見においては、それこそ数百人単位で記者達が集まってきてたし。
1年戦争が正式に終了したという事で、TV、新聞、雑誌……それ以外も様々な記者が地球圏全土から集まってきたのだ。
そうした中には、マスゴミと呼ぶべき連中もいて、そういう奴等は可能な限り排除しておいたが……うん。何気に大手の場所から派遣されてきた記者がそれなりにいたんだよな。
いや、大手に所属しているからこそ、それが後ろ盾になって自分の実力となっていると、妙な勘違いをしてしまったからこそ、その手の記者は大手に多かったのかもしれないが。
ともあれ、そうして大勢の前で記者会見を行い……質問とかそういうのも合わせると数時間使い、それで現在はこうしてパーティの時間になっていた。
そうしてようやく始まったパーティは、予想外に盛況だった。
終戦協定の交渉には参加していなかった者達も、このパーティには参加出来る。
それだけに、この機会に色々と情報を入手しようとしたり、コネを作ろうとしたりといったようなことをしている者も多かった。
また、このパーティに参加しているのはジオンと連邦だけではなく、ルナ・ジオンの者も多い。
連邦やジオンの者達にしてみれば、ここでルナ・ジオンの人間と顔見知りになっておくといったことは、非常に価値があるのだろう。
「ご苦労様」
「ん? ああ、セイラ」
俺にそう声を掛けてきたのは、セイラだ。
セイラは赤いパーティドレスを身につけている。
まだ10代後半の瑞々しい肌を周囲に見せつけているその姿は、セイラの美貌と生まれ持った気品とでも呼ぶべきもので多くの者の目を惹いていた。
シーマを始めとした大人の女達とは違って、女の色艶という点では負けている。
だが、セイラはその若さと大人になりかけている姿から、十分に女らしい姿と言えた。
……実際、パーティ会場の中でもセイラに視線を向けている者は決して少なくない。
男は当然の事、女も憧れの視線をセイラに向けている。
そんなセイラは、最初に声を掛けてきた以外には何も言わずに俺を見ている。
何だ?
そんなセイラの様子に戸惑ったが、少ししてようやくセイラが何を待っているのかに気が付く。
「そのドレス、似合ってるな」
「あら、そう? ありがとう」
言葉は素っ気ないが、頬が緩んで口元に笑みを浮かべたのを、俺は見逃していない。
どうやら俺の言葉は正解だったらしい。
パーティで女が着飾っているのだから、それを褒めないという選択肢はないのだろう。
それに実際、セイラのドレス姿は非常に似合っているのだから、それを素直に口に出すくらいはおかしな話ではないだろう。
「それにしても、赤いドレスか。……やっぱりシャアか?」
赤い彗星という異名通り、シャアのパーソナルカラーは赤だ。
そんな赤のドレスを着ているのは、やはりセイラなりに色々と思うところがあっての事なのだろう。
そう思ったのだが……
「そう思う?」
何故か若干不満そうな様子を見せるセイラ。
何だ? 実は違うのか?
シャア以外だと、俺のパーソナルカラーも赤だ。
……ただし、赤なのはニーズヘッグとかであって、俺がこのUC世界で現在使っているガンダム7号機とかは、普通にガンダムらしい色だが。
いっそ、ガンダム7号機を赤く塗り替えれば……うん。シャア専用ガンダムとか、そんな感じになりそうだな。
それは少し思うところがあるので、止めておくとして。
「ともあれ、これでようやく1年戦争も終わりだ」
「……そうね」
俺が露骨に話題を変えたという事には、セイラも気が付いただろう。
だが、それでもセイラは特に怒る様子もなく、そう返事をしてくる。
セイラにとっても、俺の口から出た言葉は他人事ではなかったという事か。
俺がセイラとサイド7で会ってから、また1年も経っていないんだよな。
何だかんだと、結構セイラとは一緒にいたような気がするんだが。
実際にはホワイトベースと行動を共にしていたり、ルナ・ジオン軍として行動していて、月にいた期間はそこまで長くないんだけどな。
それでもセイラと長い時間一緒にいたような気がするというのは、それだけ俺とセイラが一緒にいた時間の密度が高かったという事か。
「とはいえ、戦争が終わっても月は色々と忙しい日々が待ってそうだけどな」
「連邦との関係が今までよりも色々と大変な事になるのは間違いないでしょうね」
はぁ、と。
セイラは若干憂鬱そうな様子で溜息を吐く。
セイラにしてみれば、今回の一件は色々と思うところがあるのだろう。
連邦という巨大な集団を纏めるとなると、一番手っ取り早いのは外に敵を作る事だ。
事実、ジオン軍との戦いでは連邦は一枚岩になっていたのだから。
……そんな中でも、自分の利益だけを考える者はいたが。
ともあれ、セイラが言う通り戦後に連邦は間違いなく月にちょっかいを出してくるだろう。
「キシリアやジオン軍の残党とか、そっちに目を向けさせる事が出来ればどうだ?」
「難しいでしょうね。ジオン残党はともかく、突撃機動軍は相応の戦力を有しているけど……それを言うなら月の方が大きな戦力を持っているもの」
「連邦軍だからこそ、月の戦力に恐怖するか」
友軍として戦った影響で、ルナ・ジオン軍の強さは連邦軍に知られている。
こういう場合は敵対したジオン軍の方がルナ・ジオン軍を相手により脅威を覚えてもいいと思うんだが……生憎と、連邦軍の方がこちらに脅威を抱いてしまったのは、雰囲気で感じ取れた。
連邦軍にしてみれば、青い巨星、黒い三連星、宇宙の蜉蝣、ソロモンの悪夢、荒野の迅雷。そして……月の大魔王。
そんな風に異名持ちがこれでもかと揃っている今の現状において、ルナ・ジオン軍を脅威に思うなという方が無理だ。
ましてや異名持ち程ではないにしろ、パーソナルカラーを許されたエースも結構な数揃っているしな。
「とにかく、戦後になったのはいいけど……それはそれで大変なのは間違いないのよね。それはいいとして、アクセルはこれからどうするの?」
「どうするって?」
「戦後になったらよ。この世界で1年戦争が終わったという事は、アクセルがUC世界にいる理由は完全になくなった……とは言わないけど、かなり減ったのは事実でしょ?」
「そうだな。……クレイドル条約を結んでも、まだジオンの残党だったりキシリアだったりが暴れているのは間違いない。ただ……それはぶっちゃけると連邦軍かジオン軍が動く事だしな」
連邦軍はジオン軍を実質的な属国という扱いにする事にした。
ガルマ達にとって……そしてサイド3にいる者にとって、それが面白くないのは間違いない。
だが、その面白くないのと同時に、ジオン共和国を属国にした連邦軍が、これからキシリアも含めたジオンの残党に対処しなければならないのは間違いなかった。
そういう意味では、連邦の属国という立場だったり、軍備を制限されるというのも決して悪い話だけって訳ではないのだろう。
「ジオン共和国に対して援軍を要請出来ない分、私達に援軍を要請してくる可能性もあるけどね」
「そうなったらそうなったで、恩を売ればいいだろ? それに……こう言っちゃなんだが、ルナ・ジオン軍の中には実戦経験が足りない奴も多い」
ルナ・ジオンの建国が1年戦争中だったし、そこからツィマッド社のヅダやその開発チームがやって来て、色々と不具合のある場所を改修して完成したのが、今のルナ・ジオン軍で使っているヅダだ。
元ジオン軍の連中はともかく、シーマの存在に憧れた者や、自分の国は自分で守るといったような思いを抱いて兵士になったような者達は、どうしてもジオン軍や連邦軍の生き残りと比べると練度が落ちる。
レコアのように最初から平均以上の技量を発揮するような者もいるが、そのような者はどうしても数が少ない。
だからこそ、ジオンの残党を相手にしての戦闘というのは規模がそこまで大きくはない事もあって、練度を上げるという意味では悪くない。
フィーリウスのように、強さを求める者も実戦の機会はありがたいだろうし。
ただし、この場合あくまでも戦うのはジオンの残党だけの方がいい。
キシリア率いる突撃機動軍は、宇宙攻撃軍の戦力を吸収した事もあってか、かなり戦力を残している。
「キマイラ隊が厄介だしな」
「え?」
と、呟いた俺の言葉に反応したのは、セイラ。
「どうかしたか?」
「いえ、知らなかったの? キマイラ隊は連邦軍に降伏したわよ?」
「……何がどうなってそうなったんだ?」
セイラの口から出たのは、俺にとっては完全に予想外の言葉だ。
俺が知ってる限り、キマイラ隊というのはエースだけが集められている部隊で、その戦闘力は極めて強力なのだ。
勿論全員がエースであっても、その中には個人として強いのや弱いのが揃っているが、それでも全員がエース級である以上、戦力という点では非常に高いのは間違いない。
何しろ、俺が戦って撃破出来なかった相手なのだから。
自慢じゃないが、俺の操縦技術で撃破出来ない敵はそこまで多くはない。
エースだというのに、連携が上手いというのがキマイラ隊の特徴なんだよな。
「まだ確定情報じゃないけど、ア・バオア・クーでの戦いが終わった後で、ルナツーにいた連邦軍によって包囲されて降伏したみたいね」
「……ルナツー?」
それもまたおかしい。
連邦軍は、ソロモンとア・バオア・クーの戦いに可能な限りの戦力を投入していた筈だ。
勿論、何かあった時に対処出来るよう、ある程度の戦力を残してはいたが……それでも、キマイラ隊を降伏させる為の戦力だとは思えない。
だとすると、もしかしてキシリアから何らかの命令を受けての行動か?
それなら、納得出来ない訳でもない。
キシリア機関という諜報部隊を率いていたキシリアだけに、そのくらいの事は平気でやりそうなんだよな。
これでキマイラ隊が連邦軍内部でどんな動きをするのか、少しだけ興味深い。
そんな風にセイラと話していると、不意にパーティ会場に流れていた音楽が変わる。
ちなみに、パーティ会場にはオーケストラと言うのか? 生身の人間達が揃っており、それで音楽を奏でていたのだが……その音楽が変わったのだ。
一体何だ?
そう思ったが、その答えはすぐに明らかになる。
何人もの者達が、男女ペアになってパーティ会場の中でも中央付近に集まり、踊り始めたのだ。
なるほど。これはダンスの為の音楽だったのか。
「アクセル、お願い出来て?」
そう言い、俺に手を伸ばすセイラ。
「……俺はダンスはあまり得意じゃないぞ?」
セイラの手を取りながら、そう告げる。
実際、俺がダンスを正式に習ったのは、士官学校時代だ。
その後も少しはダンスをする機会があったが、言ってみればそれだけだ。
「構わないわよ。アクセルなら何とでも出来るでしょうし」
セイラの言葉に小さく溜息を吐き、その手を引いてダンスの行われている場所に移動する。
ダンスをしていた者達は、俺とセイラがやって来たのを見ると驚くが、すぐに素直に場所を空ける。
そして、俺はセイラの腰に手を当ててその瑞々しい身体を抱きしめるようにしながら、音楽に合わせて踊り始める。
「ほら、随分と上手いじゃない」
「そうか? ……本職のダンサーとかが見たら、呆れる程度の動きだと思うけどな」
「……あのね、それは当然でしょ?」
周囲に聞こえないような小声では話しつつ、俺とセイラは踊り続ける。
そうして踊っている間に……セイラの鼓動が聞こえてくる。
いや、ここまで密着していても、普通なら相手の息づかいとかならともかく、鼓動が聞こえてくるようなことはない筈だ。
確かにセイラの豊かな――あくまでも年齢として考えればだが――双丘は俺の身体に押しつけられ、柔らかそうにひしゃげているが分かる。
分かるのだが……俺が聞こえてくる鼓動はそこから聞こえてくるのではなく、頭の中に直接流れ込んでくるような鼓動だと、そう理解出来た。
そして理解してしまえば、これがどのような現象なのかも理解出来る。
つまり、これは以前……最初にセイラに会った時に起きたのと、同じような現象だろう。
とはいえ、まさか同じ人物に2回目も起こるとは思っていなかったが。
この不思議な一体感……それこそ、俺とセイラの心と身体が1つになったかのような、そんな奇妙な感触を覚えつつ、俺達は踊り続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637