炎獣は、ドゥガチを含めてその護衛や副官といった者達を驚かせるには十分だった。
……まぁ、普通に考えて炎が犬や猫、リス、鳥といったような形をとって、その辺を自由に動き回る……なんて事は有り得ない。
ましてや、白炎で構成されたその身体に触れても火傷もしないのだから。
炎に直接触れて、それで火傷をしないという感触はドゥガチ達にとっても予想外のものだったのだろう。
「どうだ? これで俺の存在を……取りあえず魔法については理解して貰えたと思うけど。もしこれで信じて貰えないようなら、他にも色々と証明する手段がある。……こんな風に」
そう言い、俺は影槍を生み出す。
影がそのまま物質化したかのように伸びてきたのを見て、再びドゥガチ達は驚きの声を上げる。
影槍ではあるが、その先端は決して尖っていない安全設計だ。
だからこそ、ドゥガチ達も影槍に驚きつつも恐怖は覚えなかったのだろう。
……未知の存在に対する恐怖、という意味では間違いなくあるだろうが。
「これでもまだ魔法を信じないなら……そうだな、グリは大きさ的にちょっと無理だけど、刈り取る者でも召喚しようか?」
「アクセル、アクセル。そのくらいにしておいてやりな。もう十分に向こうはアクセルの言いたい事を理解したようだし」
シーマのその言葉に、ハモンとシャリアの2人も同意するよう頷く。
ドゥガチ達の方は? とそちらに視線を向けると、そこでもやはりドゥガチやそれ以外の面々も頷いていた。
「そうか。分かって貰えたようで何よりだ。……そんな訳で、俺が異世界の存在なのは理解して貰ったな?」
「はい。……ですが、アクセル殿のような方がどうしてこの世界に干渉するのですか?」
「こっちにも色々と事情があるんだよ」
このUC世界に存在する、独自の技術の収集とか。
ただし、その点では実は結構肩すかしだったのも事実だ。
何しろUC世界のMSやMAは、基本的にミノフスキー物理学……つまり、ミノフスキー粒子が必須の代物が多い。
ミノフスキー粒子が有益な存在なのは間違いない。
だが同時に、周囲に様々な悪影響を与えるような害悪となる一面もあるのは、間違いのない事実なのだ。
そうである以上、シャドウミラーとしてはミノフスキー粒子関係の技術を迂闊に他の世界に持っていくような真似は出来ない。
……一応ミノフスキー物理学を使わない、普通の技術で生み出された核融合炉もあるのだから、個人的にはそっちの技術を発展させて欲しかったというのが正直なところだ。
ミノフスキー粒子と似たような存在としては、Nジャマーがある。
だが、Nジャマーは兵器という認識になっているので、基本的にSEED世界から輸出するといったような真似は異世界間条約で禁止されている。
例外としては、シャドウミラーで運用されているNジャマーⅡだろう。
これはNジャマーを改良した代物で、ニーズヘッグを始めとした機動兵器に搭載されている。
これを使えば、ミノフスキー粒子と似たような効果を発揮出来るが、ミノフスキー粒子の場合は散布した後で消滅するまで延々とその効果を発揮するのに対し、NジャマーⅡはスイッチを切り替えるだけで即時にその効果をオフにする事が出来る。
そういう意味で、ミノフスキー粒子よりも色々と便利なのは間違いない。
……SEED世界で地球に降り注いだ大量のNジャマーは、そういうスイッチの類がないので、未だ向こうの地球では色々と困っているらしいが。
「まぁ、こっちの事情はともかく。俺達が異世界の存在で、月を……ルナ・ジオンの後ろ盾となっているのは間違いない。木星側としても、片道2年も掛けてやって来る連中よりは、俺達のように転移技術を使って一瞬で……」
「待って下さい!」
俺の言葉を遮るように、ドゥガチが叫ぶ。
その表情に浮かんでいるのは、驚愕と疑念。希望や絶望といったような、様々な感情だ。
「どうした?」
「アクセル殿……今、転移と、そう言ったのですか?」
「ああ」
「その転移というのは、よくあるような一瞬にして別の場所に移動出来るという意味での転移と考えてもいいのでしょうか?」
「正解だ。俺達シャドウミラーは、転移技術を保有している。ちなみに、これは転移技術と言った通り、魔法でなく科学技術的な意味での転移だ」
「……魔法の転移というのも気になりますが、技術としての転移ですか」
俺の説明に納得したのか、強い憧憬の視線をこちらに向けてくるドゥガチ。
木星にいる者として、一瞬で地球まで移動出来る転移技術というのは羨ましいのだろう。
実はシステムXNによる転移や影のゲートを使った転移以外にも、マクロス世界から得たフォールドという転移技術も持っているのは、秘密にしておいた方がいいか。
「ああ。大体、俺達の艦隊を見て、不思議に思わなかったのか? とてもじゃないが、月から木星まであの様子で来られるとは思わないだろ?」
「それは……」
図星だったのだろう。ドゥガチは俺の言葉に頷く。
シャリアから聞いた話によると、地球と木星を行き来する宇宙船はかなり巨大らしい。
それこそコロニー並……というのは若干大袈裟だが、ザンジバルやムサイ、チベといった軍艦に比べると、桁違いの大きさなんだとか。
その桁違いの大きさが一体どのくらいかと言えば、1年戦争で使われた最大級の大きさを誇るドロス級は、全長が約500m。
それに比べて、シャリアが乗っていた木星と地球を行き来する輸送船の全長は約2km。
言わば、ドロスが縦に4隻繋がっているかのような、そんな輸送船なのだ。
その中には当然のようにヘリウム3を入れて持ち帰る為の施設もあるだろうし、それ以外にも推進剤や食料、水、各種生活物資等々、持っていく物は幾らでもある。
そう考えると、とてもではないが俺達がやって来たような艦隊で地球から木星に来るのが不可能なのは間違いない。
しかし、転移技術があればどうなるか。
それこそ片道2年どころか、片道1秒かそこらとなる。
普通に考えれば、到底有り得ない技術。
だが、だからこそドゥガチ達にとって喉から手が出る程に欲しいのだろうが……
「残念だが、この転移技術は渡す事は出来ない。ああ、別に木星だからどうこうという訳じゃなくて、この技術はシャドウミラーが接しているどこの世界に対しても渡してはいない」
マクロス世界のフォールドや、ナデシコ世界のボソンジャンプのように、独自の転移技術を持っている世界もない訳ではないのだが。
「しかし……今、こうしてその技術を使っているのは何故です?」
「簡単な話だ。他の世界の連中に転移技術を渡したりといったような事はしないが、その技術を俺達が使う分には何の問題もない為だ。具体的には、この艦隊が月から木星まで転移したのは、俺がやったからこそだ」
「……それは、あまりに贔屓なのでは?」
「だろうな。だが、ルナ・ジオンは俺達が協力して作った国だ。ぶっちゃけ、ルナ・ジオン建国の際に俺達が持ち出した多くはシャドウミラーからの持ち出しとなる。そういう意味で、今の状況ではルナ・ジオンというのはシャドウミラーの従属国、もしくは出先機関と言っても間違いじゃない」
その言葉に、シーマは若干不満そうな表情を浮かべる。
シーマにしてみれば、ルナ・ジオン建国時から関わっているだけに、その辺りの事情はよく分かっているのだろう。
だが、それでもやはりジオン軍にて居場所をなくしていた自分の居場所たるルナ・ジオンが、従属国だったり出先機関だったりといったように言われるのは面白くないのだろう。
とはいえ、幾らシーマが不満に思っても、それが事実なのは変わらない。
ただし、ルナ・ジオンとしてもいつまでもそのような立場でいいとは思っていないので、何とかして負債をシャドウミラーに返す事によって、きちんした独立国となるように頑張っている。
女王のセイラとしては、ぶっちゃけシャアの小惑星落としを止めさせる事が出来れば、ルナ・ジオンという国は必須という訳でもないのだろうが。
それでも今となっては、シーマのようにルナ・ジオンという国を大事に思っている者がいる以上、そう簡単にシャアの一件を片付けたからといって、国を捨てるといったような真似は出来ないだろうが。
「そんな訳で、俺達シャドウミラーがルナ・ジオンに協力する意味というのは、大きい。……それに、もし月と木星が友好的な関係を結ぶ事が出来れば、これからは定期的に転移でやってくるから、そこまで不安に思わなくてもいいと思うぞ」
ただし、と。
軽く殺気を放つ。
ニュータイプ能力の為か、その殺気を鋭敏に感じたドゥガチの顔が固まったのを確認しながら、言葉を続ける。
「さっきも言ったように、転移技術はあくまでもシャドウミラーの占有技術だ。もし何らかの手段でそれを奪おうとしたり、もしくは何か悪意を込めた企みを抱いたりした場合……木星のコロニーは壊滅的な被害を受けるだろうな」
その脅し……いや、俺としてはもしドゥガチ達が何かしてきた場合、実際に言ったような報復をするだろうから、脅しではなく事実を口にしただけなのだが。
ともあれ、そんな俺の言葉にドゥガチは固まった状態から、何とか頷きを返す。
ニュータイプ能力を持つドゥガチが、今の俺から放たれた殺気に何を思ったのかは分からない。
それでも殺気に対し、強い恐怖を抱いたのは今の様子から考えて間違いないだろう。
取りあえず、ドゥガチがトップにいる間はこれで何か妙な真似をするような事はない筈だ。
ドゥガチがトップから交代したら……その時はその時で、また何か手を打てばいい。
「そんな訳で、シャドウミラーと月の関係はこれで終わりだ。……実際にはまだ色々とあるんだが、それは今は関係ないしな。後は、月と木星の面々でそれぞれ話してくれ。俺は基本的にこれ以上は何も言わないから」
「……分かりました」
軽くとはいえ、俺の殺気を浴びたドゥガチだったが、それでもすぐに気を取り直す事が出来るのは、木星の頂点に位置するだけはあるといったところか。
「では、ここからは私が交渉させて貰います」
そう言い、ハモンとドゥガチが会話を始める。
とはいえ、交渉という事であっても今回は月側が得るといったようなものはなく、あくまでも友好関係を結ぶ為に来たのだ。
そこまで激しい交渉のやり取りといったような事はない。
「月から送られた援助物資は、ありがたく受け取らせて貰おう。とはいえ、こちらもただで物資を貰ってばかりでは、問題がある。ヘリウム3をお礼として渡したいのだが、受け取って貰えるかね?」
ドゥガチがハモンに話す態度は、俺に対するものとは全く違う。
いやまぁ、木星の頂点……言わば、木星の長という立場にいるのだから、これは当然か。
ハモンは月で大きな影響力を持つ1人であるとはいえ、実際のところはセイラに仕える部下の1人でしかない。
……実際にはセイラはハモンを頼りになる女として、そして自分にとっての父代わりと言ってもいいだろうラルの内縁の妻という事で、他の者達に比べれば別格の存在である。
だが、それはあくまでも内部的な意味での話であって、ドゥガチが知っている訳ではない。
いや、ドゥガチのニュータイプ能力が強化されたのを思えば、その辺も理解していてもおかしくはないのか?
ただ、ドゥガチがそれを表に出すといったような真似は、する様子がなかった。
「勿論、こちらとしては歓迎します。ですが……木星船団公社の方は問題ないのですか?」
「構わんよ。そちらのシャリアが所属していた、ジオンの木星船団とも私達は取引をしていたのだ。そうである以上、月の人間に貰ったプレゼントに返礼をしても、おかしな話ではないだろう?」
これは、木星の長としてのプライドから来たものだろう。
木星の人間として、一方的に援助して貰うのはプライドが許さない。
そうである以上、返礼として月の人間が……より正確には地球圏の人間の多くが欲している、ヘリウム3を渡すと。
ドゥガチ達にしてみれば、ヘリウム3というのは木星から幾らでも採取出来る。
そんな代物でよければ、幾らでも持っていって欲しいと、そういう事なのだろう。
ハモンもそんなドゥガチの考えを理解したのか、ヘリウム3を渡すという言葉に特に反論するでもなく、頷く。
「分かりました。では、そのようにお願いします。こちらとしても、ヘリウム3という戦略物資は、あればあっただけ助かりますし」
ハモンの言葉に、ドゥガチも笑みを浮かべる。
お互いに言葉には出ずとも、自分の意思はしっかりと相手に伝えることが出来た。
そして相手の意思もしっかりと認識し……そういう意味では、この交渉はお互いにとって大きな利益となったのは、間違いのない事実だった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637