気絶した連邦軍の兵士はそのままにして……殴られていたジオンの人間も特に何をするでもなく、俺はその場を立ち去る。
助けられたジオンの人間は俺に何かを言おうとしていたが、助かったという安心感からか、そのまま気絶してしまった。
……そのままにしておけば風邪になりそうだったが、見た感じではそれなりに体格の大きな男だったので、多分問題はないだろうと判断する。
やっぱり敗戦国の中を歩き回るのは、止めたほうがいい。
そう判断し、ガルマやダルシア達が話し合いをしているホテルに戻る。
するとホテルの周囲には、まだガルマが生きているという話を聞いて集まってきた者達の姿が当然のように多数あった。
こういう連中が街中にいなかったから、もしかしてさっきみたいな騒動になったんじゃないのか?
ふとそう思ったが、それだけジオンの人間にとってガルマという存在は人気が高いのだろう。
いや、元々人気が高かったというのもあるが、やはりそれ以上に大きな意味を持つのはザビ家の最後の生き残りだという事か。
実際にはドズルの娘もまだ生きてるし、キシリアは突撃機動軍を率いてどこかに雲隠れすらしている。
そう考えると、実はザビ家の人間ってまだかなり生き残っているんだよな。
その辺が公になるのは、そう遠くない未来だと思う。
ドズルの娘は、まだ生まればかりだったという話なので、ザビ家云々といったことは特に気にする必要もないだろう。
だが、この場合の問題はキシリアだ。
突撃機動軍と一緒にどこかに雲隠れしている以上、キシリアは連邦軍に降伏するといったことは全く考えていないと思ってもいい。
そうなると、もしガルマがジオンを率いるといった立場になっても、大人しく出て来るといった事はないだろう。
そもそも、ガルマはキシリアの弟という点はともかく、突撃機動軍の傘下として北米で活動していたのだ。
それを考えると、ガルマの率いるジオンにキシリアが大人しく従うといったことは……まず、ないと思ってもいい。
そういう意味では、ガルマにとって1年戦争後にジオンを率いる立場になったとしても、気の休まる暇はないだろう。
……まぁ、イセリナと一緒の時間は気が休まるから、そこまで気にする必要もないだろうが。
そんな風に考えつつ、俺はホテルの中に影のゲートで転移する。
「お帰りなさいませ。……どうでしたか?」
ガルマとダルシアのいる会議室の前に立っている者達のうち、秘書が俺の姿を見てそう尋ねてくる。
ボディガードの方は、いつ何が起きてもいいように周囲に気を配っていた。
そこまで集中しすぎだと疲れるだろうから、緊張しないように適度にリラックスすればいいものを。
「そうだな。多くの住人がホテルの前に集まってきている為か、市街地に人の姿はあまりなかった。ただ、連邦軍の兵士が何人かでジオンの住人に殴る蹴るの暴行を働いていたから、そっちは止めておいた」
「ありがとうございます。ですが……また、ですか」
はぁ、と。
憂鬱そうな溜息を吐く秘書。
この様子を見る限り、どうやらああいう光景はそれなりに頻繁にあるらしい。
「終戦協定が締結されれば、そのような事もある程度減るのかもしれませんが……」
「その辺も、終戦協定次第だと思うぞ」
終戦協定の時に、連邦軍の駐留部隊がどれくらいサイド3に残るのか。
その辺は、ガルマやダルシアといった面々が連邦軍と交渉する時に、どれだけの実力を発揮出来るかで大きく変わってくる。
とはいえ、連邦軍の方にも現状でそこまで余裕がある訳ではない。
コロニー落としを始めとして、1年戦争の諸々で連邦軍……いや、連邦そのものが受けた被害は多い。
1年戦争中は、ジオン軍に負ける訳にはいかないと連邦全体のリソースを連邦軍に振り分けていたが、その1年戦争も終わったのだ。
であれば、戦後処理を行う必要が出て来る。
1年戦争の死人が具体的にどのくらいになったのかは分からないが、まず連邦は経済を立て直す必要がある。
当然のようにそうなれば、連邦政府は連邦軍に軍縮を求めるだろう。
1年戦争中は、連邦軍だけが目立って連邦政府の役割は……ない訳ではなかったが、それでもやはり出番は少なかった。
だが、その実態はどうあれ、現在の連邦軍はあくまでも連邦政府の下部組織なのだ。
連邦政府としては、ジオンとの戦争が終わった以上は地球の復興の為に軍縮を要求するのは当然だった。
そうなると、連邦軍もそれに従わない訳にはいかない。
それでいながら、ジオンの残党に対処する必要もある。
特に宇宙ならともかく、地球に残ったジオン軍の残党は……そのままゲリラ活動を続けるか、もしくは同じジオンの系譜という事でハワイに助けを求めてくるか、もしくは連邦軍に降伏するか。
最終的にその辺をどう判断するのかは、それこそ残党によって異なるが、取りあえず連邦軍に降伏をするといったことを選ぶ可能性は非常に少ない。
残るのはゲリラ活動かハワイに逃げ込むかだが……ルナ・ジオンという存在に嫌悪感を抱いている者がいるというのは、それなりに知られている。
……まぁ、話は分からないでもないが。
ジオン・ズム・ダイクンではなくザビ家に、ジオン共和国ではなくジオン公国に……もしくは、連邦軍の圧政によって犠牲になった恨みから連邦軍と戦っているような者達にしてみれば、月にルナ・ジオンというジオンの名を持つ国を作り、ジオン公国から人材や技術、物資の類を持っていったルナ・ジオンは、1年戦争の敗戦の理由としか思えないだろう。
そこまで自分の信念に拘っていない者であれば、素直にハワイに来るだろう。
しかし、そうでない者がゲリラ活動を続けるだろうから、連邦軍としてもそちらに対処する部隊が必要なる。
勿論、このサイド3はジオン発祥の地という意味で……ましてや、そのジオンを率いるのがガルマ・ザビである以上、連邦軍も監視名目の駐留軍を置かない訳にはいかない。
それ以外にも、月の警戒も必要である以上、そちらにも戦力は必要だろう。
また、ソロモンやア・バオア・クーに駐留する戦力も必要となる。
その辺りの事情を考えると、連邦軍がサイド3の駐留軍として出せる戦力は決して多くはない筈だった。
勿論、それはあくまでも連邦軍が連邦政府の軍縮に素直に従った場合の話だが。
「取りあえず、今この会議室の中でジオンの今後に関する話をしているのは間違いない訳だ。……入るぞ」
「はい」
秘書は俺の言葉に頷く。
そんな秘書の様子を見て、ボディガード達も特に何をするでもなく俺を通す。
そうして会議室の中に入ると、そこでは激しく議論をするガルマ達の姿があった。
ガルマとダルシアが議論をし、それにマツナガやイセリナが時々口を出す。
ダルシア側の方でも、グローブの件に関わっていなかった政治家達がダルシアと共に話をしている様子が見えた。
「どうだ?」
そんな議論をしている様子を眺めながら、離れた場所で特に何かを口出しするでもなく様子を見ていたモニクに声を掛ける。
「そうね。戦後のジオン共和国は、かなり優秀な上層部を備える事になるでしょうね。ダルシア首相も、ガルマ様の補佐に徹することを決めたようだし」
モニクとしては、やはりガルマを呼び捨てには出来ないか。
……ガルマはジオンの人間から強い人気があったという話だし、それを思えばもしかしたらモニクもまたガルマのファンだったのかもしれないな。
「何?」
「いや、何でもない。ただ、ジオン共和国に優秀な面子が揃っていても、月も負けてないだろうと思ってな」
実際、それは決して俺の思い込みではなく、客観的に見た事実だろう。
まず、月の女王たるセイラの前に立てば嘘がすぐに見破られるというのが大きい。
そしてセイラには、ラルやアンリを始めとして高い能力を持っている者達が支えている。
また、アンリが有能な人物と見込んでワルキューレに引き入れた政治家達もまた、その能力故に信頼出来る。
……その連中は、本来なら油断をすると妙な事を考えたりしかねないのだが、コバッタや量産型Wがいるおかげで、そのような真似も出来ない。
また、ジオンや連邦から引き抜いたり、自分からやってきたりといった人材が集まっているのも大きい。
俺達との契約によって、資源の類を格安で入手出来ているので、技術の発展も当然のように早くなる。
技術立国という点で、月は既に大きく前に進み出しているのだ。
「そうね。客観的に見て、月がかなり潜在能力が高い国なのは間違いないわ。戦後は、それこそ月がどう動くのかによって情勢が変わるといった事もあると思うし」
モニクのしみじみとした声は、俺を納得させるのに十分な説得力を持っている。
まぁ、モニクも弟を戦闘で無駄死にさせない為とはいえ、将来性のない国に亡命……というか投降するような事は、普通しないか。
「月が頑張ってくれれば、こちらとしても色々と助かるんだ。そっちも精々頑張ってくれよ」
「分かってるわよ」
そんな風に俺とモニクが会話をしている間も、ガルマ達の話は続いていたのだが……
「アクセル、ちょっといいかい? モニクも」
不意にガルマに声を掛けられる。
基本的に俺やモニクは今回の会話の見届け人といった感じでしかないのだが……ただ、こうしてガルマが声を掛けてきたという事は、相応の理由があるのだろう。
「どうした?」
「ダルシア首相と話していたんだが、どうやらやはり連邦軍がジオンの持つ技術を接収するつもりらしい。特に兵器メーカーの人材やニュータイプ研究所に強い興味を示しているとか」
「……ほう。それは本当か?」
ガルマの言葉にダルシアに視線を向けると、すぐに頷く。
「私が話した感触では、間違いなくそんな感じです。……とはいえ、まだ面と向かってそのように言われた訳ではなく、そのような雰囲気があったというのが正しいらしいですが」
ダルシアの言葉は信じてもいいだろう。
この状況において、ダルシアが俺を騙そうとするとは思えない。
もしそのような真似をして、それが公になればどうなるのか。
それこそ、ジオンに被害しか与えないだろう。
それで得られるのは、俺に一矢を報いたという満足感だけ。
ジオンの事を本当に思っているダルシアであれば、そのような真似はまずしない。
つまり、連邦軍が兵器メーカーの人材やニュータイプ研究所に興味を持っているのは間違いない。
とはいえ、それは理解出来る事でもある。
MSの技術という点では、連邦軍はジオン軍と同等……もしくは上回っている部分も多い。
だが、それがニュータイプ研究となると、未だにジオンの方が圧倒的に進んでいるのだ。
特に連邦軍はエルメスによってソロモンで大きな被害を受けているし、ジオングの戦いについても見た者は多いだろう。
それに対して、連邦軍の方でニュータイプ研究というと……ニュータイプの持つ反応速度についていけるように、マグネットコーティング技術を開発したくらいか。
いや、マグネットコーティングの技術は決して悪いものではない。
それどころか、以前までのMSに比べると俺の反応速度に多少はついてくることが出来るようになったし、ビットと違ってニュータイプでなくても使えるという点で、非常に高い汎用性を持っていた。
それを思えば、感心こそすれ、低い技術だと馬鹿にするような真似は出来ない。
だが……それでも、連邦軍にしてみればミノフスキー粒子散布下の中で無線誘導が可能なビットというのは脅威に思ったのだろう。
そして脅威に思うと同時に、その技術を欲するという意味でも。
だからこそ、連邦軍はジオン軍の持つニュータイプ研究所の接収を考えているのだろう。
「けど、ニュータイプ研究は突撃機動軍の……正確には、キシリアの下で行われていたんじゃなかったか? だとすれば……」
当然のように、キシリアが逃げている今はフラナガン機関の面々もキシリアと一緒に逃げていてもおかしくはない。
とはいえ、フラナガン機関はサイド6で俺達に潰されてからは、かなり頻繁に研究する場所を変えていたという話なので、フラナガン機関の全員がキシリアと一緒に行動しているとも限らない。
連邦軍が狙っているのは、恐らくそういう連中だろう。
そういう連中でも、大人しく連邦軍に協力するか……もしくは、連邦軍に協力するのが嫌でどこかに逃亡するといったような感じになる筈だ。
問題なのは、逃げ出した連中がどこに逃げるかだろうが。
「だとしても、連邦軍がニュータイプ研究に本腰を入れるのは確実でしょう」
「……そうか」
ニュータイプ研究となると、どうしてもいいイメージがないのはフラナガン機関のせいだろう。
月でもニュータイプの研究は行われているが、そちらはかなり被検者に配慮したものになっている。
その方が被検者のニュータイプ達も積極的に協力するだろうから、最終的に効率はいいと思うんだが。
そう思いながら、俺はダルシアやガルマと話を続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637