転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2712話

 グローブで略奪や暴行をしていた連中は、結局かなりの人数を確保する事に成功した。

 ……全員を生け捕りに出来なかったのは、グローブの住人達の中でも家族や友人、恋人が殺されたり強姦されたりした者達の手によって、なぶり殺しになった為だ。

 武器もなく、骨の一本や二本が折られている状態で怒りや復讐心に満ちている住人に集団リンチをされれば、幾ら兵士であっても生き残るのは難しいだろう。

 中には、わざと即死しないように指や足の先端から切断しては焼いて強引に血止めをするといったような事をされた者もいたらしい。

 それ以外にもかなり酷い行為をしていた者は、殺されなくても指や手足、目、耳、舌を切断されたり抉られたりもしたとか。

 何しろ、女を強姦する様子をビデオに撮っていて、しかもそれを闇ルートで流すとか話していたらしいな。

 そんな目に遭っても自業自得だろう。

 俺も事情を聞いてから急いでグローブまで来たのだが、それでも既に何人もが面白半分に殺されたり、犯されたりといったような事をされていた。

 ……それでも何も知らない状態のまま、連邦軍のガス抜きとダルシアの部下の政治屋の思い通りになる事がなくて何よりだろう。

 結局捕らえた連邦軍の兵士は、ダルシアの命令によってやって来たジオン軍に引き渡した。

 あの連邦軍の兵士達が、これからどういう扱いを受けるのかは分からない。

 そもそも、このグローブの一件がどのような扱いになるかも不明なのだ。

 普通に考えれば、この件は大々的に公表して連邦軍を責め、嫌らしい言い方になるがジオンと連邦の終戦協定の際のカードにするといったような真似も出来る。

 だが……今回の一件は連邦軍だけで決めた話ではなく、ジオンの政治屋達が許可をしていた。

 そうなると、もし連邦軍側が責められても、ジオン側で許可を出したという一点が致命的だ。

 ぶっちゃけ、この件がサイド3の住人……もしくは親ジオン派の面々に知られると、その被害はかなり大きなものとなるだろう。

 その辺の事情を考えると、この一件をダルシアやガルマがどう判断するのは興味がある。

 そう思いながら、影のゲートでガルマ達がいるホテルに戻る。

 ……ちなみに、当然の話だがグリや刈り取る者は既に元いた場所に帰していた。

 グリと違って刈り取る者の場合は、俺の影の中なのだが。

 グローブで捕まった連邦軍の兵士達や、グローブの住人……もしくはグローブに隣接している街の面々が、グリを見てどのように思ったのかというのは、俺には分からない。

 この世界でもグリフォンという存在はお伽噺とかそういうので出て来てるだろうし。

 正確には、グリはグリフォンではなくグリフィンドラゴンで、その名の通りドラゴンの一種なのだが……それをこのUC世界の人間が理解出来るかどうかは、また別の話だ。

 ともあれ、ホテルの周囲には現在多数の……それこそ数え切れない程の者達が集まっているので、俺はわざわざ外からホテルの中に入ったのではなく、直接ホテルの中に転移した。

 ホテルの周囲に集まっている連中は、もしかしたらグローブの一件が理由でやって来たのでは? と最初思ったが、ホテルに転移する前に一度少し様子を見てみたところでは、皆が信じられないといった驚きや、何よりも心の底からの嬉しさを表情に出して、ガルマの話をしていた。

 それを見れば、ホテルの周囲に集まった者達はグローブの件でやって来たのではなく、ガルマが生きていたという話を聞いて集まってきたのだろう。

 あの光景を見れば、ガルマがどれだけ慕われていたのか、よく分かる。

 サイド3に潜んでいた時とか、ホワイトベースに乗っている時に仇討ちの何度も狙われたので、ガルマがどれだけ慕われていたのかは知っていたが……うん、こうして改めて見ると驚くよな。

 そんな風に考えながら廊下を歩き……

 

「あ!」

 

 とある部屋の前にいた男が、俺を見てそんな声を上げる。

 誰だ? と一瞬思ったが、改めてその男の顔を確認すると、それが誰なのかをすぐに思い出す。

 ダルシアにグローブの件を知らせてきた男だ。

 多分、ダルシアの秘書か何か。

 

「その……どうでしたか?」

 

 ガルマ辺りから既に俺の事は聞いているのか、俺の姿を見ても特に騒ぐ様子はない。

 影のゲートから出て来る光景を見ていれば、もしかしたら驚いた可能性はあるが……別に、この男を特に驚かせる必要もない。

 

「取りあえずグローブの件は解決した。……いや、解決したと言ってもいいのかどうかは分からないが、ともあれグローブにいた連邦軍の兵士達は全員捕らえてジオン軍に渡してきた」

「そうですか」

 

 心の底から安堵した様子を見せる男。

 だが、解決はしたが、連邦軍の軍人の行動を前もって止められた訳ではなかった以上、色々と被害にあった奴はいたんだけどな。

 ……それでも、政治屋達が当初考えていた通りの流れにならなかったという意味では、秘書の男が喜ぶのも理解出来たが。

 

「それで? 他の連中はこの部屋の中か?」

「はい。現在、その……色々と話し合っています」

 

 色々というところで若干言い淀んだが、何となくその理由は理解出来た。

 ダルシアやその仲間達としては、恐らくガルマにこれからのジオンを任せるといったような真似はしたくなかったのだろう。

 だが……これからのジオンを率いていく筈の自分達が、グローブという街の住人を生贄の羊として、連邦軍のガス抜きに使おうとした。

 おまけに、あの時の様子からしてダルシアは今回の一件を知らなかった。

 そう考えると、ダルシア本人は相応の人物でも人を見る目が致命的に欠けている。

 今回の一件を起こした連中が、上手い具合に尻尾を掴ませていなかったという可能性も否定は出来ないが。

 

「そうか。なら、中に入らせて貰うぞ」

 

 そう告げると、秘書の男と……それ以外にも、余計な人物を中に入れないようにというボディーガード達が場所を開ける。

 そして部屋の中に入ると……

 

「うん、まぁ……分かってたけどな」

 

 部屋の中に漂う重苦しい雰囲気を感じながら、周囲の様子を見る。

 ダルシア達とガルマ達は、それぞれが向かい合うように座って、それぞれに話をしていた。

 そんな中で疑問だったのは、ダルシアの仲間……グローブの件を知っていた政治屋達が、まだこの部屋の中にいた事だろう。

 ガルマの性格だったり、マツナガがいる事を考えれば、あの政治屋達はすぐにどこかに隔離してもおかしくはないんだが……

 

「ですから、これは必要悪なのです。もしグローブの住人を犠牲にしなかった場合、もしかしたらジオン全土……このズムシティだけではなく、他のコロニーでも同じような事が起きていた可能性があります。確かに、私もこの件を持ち掛けられた時は即座に断ろうと思いました。ふざけるなと。ですが、私達は政治家……それも敗戦国の政治家です。そうである以上、少数を犠牲にしても多数の者達を守る必要があります」

 

 そうガルマに向かって弁明……いや、言い訳したのは、今回の一件を知っていた政治屋の1人。

 

「政治家じゃなくて政治屋だろ」

 

 そう呟いた俺の言葉が部屋の中に響く。

 

「アクセル!」

 

 そんな俺の言葉に真っ先に反応したのは、ガルマ。

 座っていた椅子から立ち上がり、俺に向かって駆け寄ってくる。

 

「グローブは?」

「問題ない……訳じゃないが、取りあえず連邦軍の兵士は全員無力化して、グローブの住人に殺された以外の者達はやって来たジオン軍に引き渡した」

 

 その言葉に、安堵した様子を見せるガルマ。

 ……だが、そんなガルマとは裏腹に、政治屋達の何人かは表情を引き攣らせていた。

 こうして俺が戻ってくるのが予想外だったのか、それともここまで早く戻ってくるのが予想外だったのか。

 その辺の理由は俺にも分からないが、あの政治屋にとって俺が戻って来たのが最悪の事態であったのは、間違いない。

 

「き……君ぃっ! 政治屋とはなんだね、政治屋とは! それはまさか、私に言ったのかね!?」

 

 先程まで弁舌を振るっていた政治屋が、俺に向かってそう叫ぶ。

 向こうにしてみれば、自分が侮られたというのが面白くなかった……いや、違うな。目の瞳孔が開いている。

 一件興奮しているようにも見えるが、それはどちらかと言えば自分の中にある……俺に抱いた怯えを表に出さないようにして隠そうとしていると見るべきか。

 

「当然だ。……いや、正確にはお前以外にもそっちの連中に対しても言ったんだがな」

 

 そう告げる俺の言葉に、政治屋達の何人かは顔を赤くしてこっちを見てくるが……それでも俺が視線を向けると、本能的に格の差を理解したのか、それとも後ろめたいところがあったのか、結局何を言うでもなく黙り込む。

 そんな連中と、こっちに向かって叫んだ政治屋の男を鼻で笑ってから、ガルマやダルシアに話し掛ける。

 

「で? これからの話し合いについてはどうなってるんだ?」

「……今回の件を考えると、私達がジオンを率いるのは難しいと思っています」

「つまり、ガルマに任せると?」

 

 ダルシアは俺の言葉に頷きを返す。

 

「はい。どのみち、今回の一件が知られれば、多くの人達は私達がジオンを率いるといったことは許容しないでしょう。それこそ、すぐにでもデモが起きる可能性もあるかと」

「だろうな」

 

 普通に考えて、自分達を連邦軍に対する生贄として差し出すような者が上にいるというのは、とてもではないが許容出来ないだろう。

 あるいは、ガルマという存在がいなければ他に誰もいないという事でダルシア達に任せるといったような流れになったかもしれないが……ガルマがいるという時点で、ダルシア達に任せる必要はない。

 ダルシア達――正確には、その仲間の政治屋達――としては、グローブの一件を隠し通そうとしたのかもしれないが、グローブの住人の多くが生き残り、連邦軍の兵士達も捕らえられている状況では、この一件を隠し通すような真似は出来ないだろう。

 

「待って下さい! ガルマ様は確かに民衆に人気があります。ですが、1年戦争を引き起こした……コロニー落としを行ったザビ家の者であるというのも、間違いのない事実です! 勿論私はガルマ様をそのように思ってはいませんが、ジオン以外の民衆や……連邦の人間は違います!」

 

 先程グローブの件は必要悪だったと言った政治屋が、ダルシアの言葉に口を挟む。

 自分はそう思っていないとか、明らかに上辺だけの言葉にしか思えない。

 ジオンも……というか、ダルシアもよくこんな奴を仲間にしたな。

 

「貴様!」

 

 そんな政治屋に怒りの言葉を口にしたのは、ガルマ……ではなく、マツナガ。

 自分が仕えるべき相手を貶すような発言に、我慢出来なかったのだろう。

 とはいえ、ガルマは手を伸ばしてまだ何かを言いたそうな様子のマツナガを押さえる。

 

「1つ聞かせて欲しい。このような真似をしたジオンを相手に、月が接するとすればどうなるかを」

 

 そう言い、ガルマの視線は俺に向けられる。

 だが、俺はそれに対して何を答えるでもなく、見届け人として少し離れた場所に座っていたモニクに視線を向ける。

 俺は一応月の所属という事になってはいるが、実際にはシャドウミラ-の所属……というか、シャドウミラーを率いている立場だ。

 そうである以上、本当にガルマが知りたい事は実際に月の人間であるモニクに聞く必要があるだろう。

 それをモニクも理解したのか、数秒の沈黙の後に口を開く。

 

「少なくても、ダルシア首相やその仲間が率いているジオンに対しては、警戒する必要があるかと」

 

 その言葉に、話を聞いていた多くの者が頷く。

 何人か頷いていないのは……当然のように今回の一件に関係している政治屋だ。

 

「だが……月としても、ザビ家のガルマ様がジオンを率いるのは困るだろう!」

 

 モニクの言葉が許せない為か、そう叫ぶ政治屋。

 今の流れのままだと、待っているのは政治屋達にとっては最悪の出来事だ。

 それを考えれば、何とかこの状況を覆そうとするのは当然だろう。

 ……とはいえ、今のこの状況で政治屋達に何が出来るかと言われれば、そんな事は殆どない。

 戦後のジオンにとって、月との関係が大事なのは、言うまでもない事だ。

 終戦協定の内容がどうなるのかは、正直なところ俺にも分からない。

 だが、ジオンが1年戦争において行ってきた事を考えれば、その被害額だったり、賠償金の類だったりがどうなるのかは考えるまでもないだろう。

 そこまでした上で、ジオン軍としては資源が必要な事は幾らでもある。

 だが、1年戦争中にジオンが資源を得ていたオデッサも、今は連邦軍の支配地域だ。

 そうなると、ジオンとしては連邦から資源を言い値で買うか、もしくは小惑星の類を持ってきてそこから資源を採掘するか……はたまた、月から資源を購入するか。

 どれが一番楽かと言えば、当然のようにそれは月からの資源の購入だ。

 実際、連邦軍との値段競争をしても、こっちはキブツがある以上、負ける事はないが。

 

「月としては、自国民を売り払うような信用出来ない政治屋よりは、ザビ家の者であっても信用出来るガルマ様がジオンを率いる事が望ましいです」

 

 モニクは、政治屋達の言葉にそう断言するのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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