転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2710話

 グローブ?

 いきなりそんな事を言ってきたのは、ダルシアの秘書か何かと思しき男。

 その秘書は、ダルシアと一緒に俺が……いや、正確にはガルマがいるのを見て、ぎょっとした表情を浮かべる。

 ……だが、そんな秘書の様子とは裏腹に、ダルシアと一緒にいた何人かの政治家がしまったといったような表情を浮かべたのを見た。

 それはつまり、そのグローブというのが何かを知っているという事だろう。

 

「サイド3のコロニーの1つにある街よ」

 

 俺がグローブという言葉の意味を理解していないと判断したのか、モニクがそう耳元で囁く。

 なるほど、街か。

 そのグローブという街で何らかの問題が起きた……というのは、間違いない。

 それも、ダルシアがグローブという名前を聞いて驚いている以上、その件は知らなかったのだろう。……もっとも、実はダルシアは結構な役者の才能があって、隠しているという可能性も否定は出来ないのだが……それでも、やはり何も知らないという方が正しいだろう。

 秘書の方に近付いていくダルシアを見ながら、続いて先程グローブという言葉を聞いて驚いていた……正確には、グローブという言葉の意味を知って驚いていた数人に視線を向けると……俺と視線が合った瞬間、あからさまに視線を逸らす。

 うん、さっきも思ったが……これは間違いなく何か知ってるな。

 

「モニク、そっちの政治家達の動きを警戒しておけ。もし逃げ出すようなら、殺す……のは不味いだろうから、捕獲してくれ」

 

 その言葉にモニクが頷くのを見てから、俺はダルシアのいる方に近付いていく。

 

「連邦軍が? そんな馬鹿な、勝手な真似を……ジオン軍の動きはどうなっている?」

「人数が足りません。元々地球に残っていた者達もいますし、ア・バオア・クーから脱走した者も多いので……」

「ルナ・ジオン軍は? 駐留軍……というには少し規模は小さいがいざという時に行動して貰える約束になっている筈だろう?」

「それが、グローブ以外にも幾つか同じような騒動が起きてまして……そちらに向かっています。ルナ・ジオン軍の面々なので、連邦軍の駐留軍くらい対処出来るだけの戦力を持っていますが、それでも数だけはどうしようもありません」

「くそっ、本当にこちらで回せる戦力はないのか?」

「勿論、皆無とは言えません。ですが、結構な量を今はズム・シティに集めていますので……」

 

 ダルシアと秘書はこちらに聞こえないように小声で会話をしている様子だったが、生憎と俺は混沌精霊で五感も鋭い。

 少し離れた場所に聞こえないように話している程度では、俺の耳から逃れる事は出来ない。

 

「グローブで連邦軍が何か問題を起こしたのか?」

「っ!? ……それは……」

 

 まさか、自分達の話が俺に聞こえているとは思わなかったのか、ダルシアと秘書は驚きの視線をこちらに向けてくる。

 

「ちなみに、本当にちなみにの話だが……そのグローブとやらの件、あそこにいる何人かは、詳しい事情を知っているようだぞ?」

『っ!?』

 

 俺の言葉が聞こえたのだろう。先程グローブの件と聞いてあからさまに焦っていた数人が驚きの表情を浮かべ……半ば反射的に、その場から逃げようとする。

 

「無駄ですよ」

 

 だが、そんな政治家達の前に立ち塞がったのは、モニク。

 その手には拳銃が握られており、その銃口は政治家達に向けられていた。

 本来なら、これから首相たるダルシアと会うのだから、拳銃のような武器を持つのは失礼以外のなにものでもない。

 しかし、それが失礼に当たるというのは、あくまでもお互いの立場が同等か……上下関係があっても、多少程度のものだろう。

 今のジオン共和国……いや、まだジオン公国か。そのジオン公国とルナ・ジオンの間には、数えるのが馬鹿らしくなるくらい、圧倒的な差があるのだ。

 だからこそ、モニクが拳銃の類を持っていても、特に問題にはならない。

 ……実際、それがこうして役に立っているのは間違いのない事実だし。

 そして……逃げようとした政治家達が拳銃を見て後退ると……

 

「熱っ!」

 

 俺が生み出した炎獣に触れて火傷をした政治家が悲鳴を上げる。

 そして政治家達が気が付けば、既に俺の生み出した炎獣によって囲まれているという事に気が付いたのだろう。

 その顔は自分が理解出来ないだろう未知の存在を前に、恐怖に染まっていた。

 

「さて、ここまで露骨に状況証拠を見せてくれると、こっちとしても好都合というよりは、拍子抜けといった感じだが……何をした?」

 

 そう告げるが、政治家達は恐怖を感じつつも、自分達が何をしたのかを言うような事はない。

 これは……自分達のした事が知られれば、破滅だとでも思っているのか?

 つまり、それだけの後ろ暗いところがあるのだろう。

 さて、こうなるとよっぽどのことじゃなければ、自分達が何をしたのかといった事を口には出さないだろう。

 そうなると、グローブの方を先にするべきか?

 いや、向こうの事情が理解出来ない以上、どうしようもない。

 となると、手っ取り早くこの連中に喋って貰う必要がある訳で……

 

「来い、刈り取る者」

 

 そう告げ、軽く床を……正確には自分の影を踏む。

 次の瞬間、俺の影から姿を現す刈り取る者。

 

「うっ、うわあああああああっ!」

 

 一体、そのような悲鳴を上げたのは誰だったのか。

 それは俺にも分からない。

 刈り取る者は、見る者を怯えさせる……恐怖に陥れるには十分な迫力を持っているのだから、それも当然だろう。

 そして刈り取る者は俺の意志に従い、銃身が異様に長いその拳銃の銃口を逃げようとした政治家達に向ける。

 

「こいつの名前は刈り取る者。俺の召喚獣……って言っても、理解出来るか?」

 

 ゲームの類をするような者であれば、召喚獣という言葉の意味も理解出来るだろう。

 だが、このUC世界においてゲームとかはない訳ではないのだろうが……その辺があまり発展していないように思える。

 それでも映画とか漫画とかそういうのを見ていれば、分かるかもしれないが……何だかんだと政治家はそれなりの年齢だし、政治家という立場からそういうのを楽しんでいる時間がそうあるとも思えない。

 

「そうだな。簡単に言えば俺の言葉に絶対服従する存在とでも覚えておけ。見ての通り、当然普通の人間とかじゃなくて、モンスターとかそういう存在だ」

 

 実際には、刈り取る者はペルソナ世界で俺が召喚獣にした存在である以上、モンスターではなくシャドウなんだが……いやまぁ、その辺の詳しい説明をしたところでUC世界の連中に理解出来るとは思っていないし、何よりも俺の血を飲んだ時点で色々と特殊な存在になっている以上、今の刈り取る者はシャドウと呼んでもいいのかどうかも微妙な存在だろう。

 

「モンスターである以上、当然のように魔法とかも使える。……それもこの刈り取る者はその世界でも最強クラスのモンスターである以上、使う魔法も極めて強力だ」

 

 これは事実。

 刈り取る者の使う魔法は、どの魔法もその系統の中では最強クラスの魔法だ。

 ……唯一の難点は、このような狭い場所で使えば周囲にも多大な被害を及ぼすという事だが。

 ただし、あの政治家達が刈り取る者を前にして、妙な行動が出来る程に度胸や行動力があるとは思えない。

 

「勿論、刈り取る者は魔法だけじゃなくて持っているその拳銃も武器として使う。……言っておくが、お前達程度が食らえば、まず即死だぞ」

 

 これがペルソナ世界の人間だったり、ネギま世界の人間だったりといったことであれば、刈り取る者の攻撃を受けても一撃で死ぬ……といったような事ないだろう。

 だが、このUC世界は人間が特殊な能力を持たない。

 あ、でもニュータイプがいたか。

 ただし、逃げようとした政治家達がニュータイプに覚醒しているとは、とても思えないが。

 

「そしてお前達の周囲にいるのは、俺の生み出した炎獣。その言葉通り、炎で出来た獣だ。俺が少し合図をすれば、刈り取る者同様に一斉にお前達に襲い掛かる。……さて、これで事情は分かったな? 痛い目……いや、死ぬという行為が救いとなるような目に遭いたくなければ、事情を話して貰おうか」

 

 これが自分の命を懸けて政治家という仕事をしている者なら、刈り取る者や炎獣の存在に驚きつつも、信念を曲げる事はないだろう。

 実際、ダルシアであればそんな態度を取った可能性は十分にある。

 ガルマやマツナガは当然のようにそんな感じだろうし、ガルマとの愛に生きているイセリナもまた同様だろう。

 だが、この場から逃げようとした政治家……いや、政治屋達は違う。

 自分の理解出来ない何かを前に、呆気なく降伏して事情を話す。

 

「外道がっ!」

 

 そう叫んだのは、ガルマ。

 何しろ、今回の一件は言わば連邦軍のガス抜きとして行われたものだったのだから。

 今までに俺が経験してきたように、連邦軍の中にはジオン軍を心の底から憎んでいる者も多い。

 コロニー落としが一番の原因だが、それ以外にも今までの戦闘で死んだ者は多く、その友人や家族、恋人達にしてみれば、ジオン軍を恨むのは当然だ。

 そんな状況で、連邦軍の部隊がサイド3に駐留していたのだ。

 憎むべき敵の中にいて、その憎むべき敵を殺す為の武器は手元にあるのに、それを使う事は出来ない。

 ……実際、連邦軍がサイド3に駐留するようになってから、感情から発生した問題はそれなりにあったらしい。

 それでも、ルナ・ジオン軍が間に入ったり、もしくは力を見せつけることによって連邦軍を押さえ込んでいたのだが……それも限界になってしまい、いつ連邦軍が暴発してもおかしくはない状況になった。

 そんな中で政治屋達が考えたのが、このままいつ爆発……いや、暴発するのか分からない状況よりは、それこそ自分達でコントロール出来るような爆発にすればいいと、そう判断したのだ。

 そして選ばれた生贄がグローブの住人。

 現在そこでは、連邦軍の兵士達が好き放題に暴れているらしい。

 そして名目上は、グローブに反連邦の暴動が起こり、それを鎮圧するために連邦軍がやむなく実力行使をした……と。そういう事になる。

 ガルマにしてみれば、ジオン公国という国を守るのが政治家であり、それを生贄の羊として送り出すような真似をするのは、とてもではないが許容出来ない。

 だからこそ先程のような叫びが出たのだろうし、それ以外の面々も政治屋達に向ける視線は厳しい。

 特にモニクとイセリナは、グローブにいる住人……特にその中でも女がどのような目に遭うのか、これまでの歴史を知っていれば容易に想像出来る為だろう。

 他の男達よりも厳しい……それこそ、絶対零度と言ってもいいような視線を政治屋達に向けていた。

 

「ガルマ様、申し訳ありません」

 

 深々とガルマに頭を下げるダルシア。

 ダルシアにしてみれば、ガルマの件があるまでは自分と一緒にジオン公国を盛り立てていこうと、そう思っていた仲間が起こした愚行だ。

 

「ダルシア首相、謝ることはない! 我々は政治家だ! 多数の人民の幸福の為には、必要な犠牲もある! 全ての者を救うといった真似は出来ない以上、少しでも多くの者を助ける必要があるのだ!」

 

 政治屋の1人が、頭を下げたダルシアに向かって叫ぶ。

 ……実際、言ってる事は決して間違いではない。ないのだが……だからといって、それが許容出来るかどうかというのは別の問題だろう。

 ましてや、少数が犠牲になるのは仕方がないと言いつつ、自分は絶対にその少数に入るといったことはないと理解している様子から考えて。

 

「貴様っ!」

 

 ガルマが怒るよりも前に、マツナガが険しい表情で叫ぶ。

 ドズルの下にいたマツナガにしてみれば、このような真似は絶対に許せなかったのだろう。

 ましてや、今日はガルマがジオンを率いるといった日になる予定だった。

 それをこのような形で汚されて、怒るなという方が無理だろう。

 そして幾多もの戦場を潜り抜け、白狼の異名を与えられたマツナガの怒気の込められた叫びに、結局のところ自分が美味しい思いをしたいだけの政治屋が耐えられる筈がない。

 悲鳴を上げ、腰を抜かしてその場に座り込む政治屋達。

 ……その中の何人かは、股間に染みすら作っていた。

 

「落ち着け、マツナガ。取りあえず今はこの連中よりもグローブを何とかする必要がある。……ガルマ、ダルシア。このままグローブに兵力を向けても、それこそジオン軍にも大きな被害が出るだろう。どうだ? ここは俺に任せてみては」

「アクセル……いいのか?」

 

 ガルマの言葉に、俺は問題ないと頷きを返す。

 実際、今回の一件は放っておくとジオンでだけではなく、月にも悪影響が来かねない出来事だ。

 であれば、やはりここは俺が出て行った方が手っ取り早く片付くだろうし……何より、ガルマとダルシアの双方に恩が売れるというのが大きい。

 そんな訳で、この愚行の始末をつけるべく、俺はグローブに向かうのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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