ガルマがジオン公国……いや、ジオン共和国を率いると決めてから、多少の時間が経った。
当然の話だが、ガルマがそのような立場になるというのは色々と根回しが必要となる。
そんな中でも一番大きな根回しが必要だったのは……ジオンの首相たるダルシアやその周辺だろう。
ダルシアとしては、現在の状況においては自分が国を動かす事になると思っていた筈だろうし、そうなった時の為に色々と前もって準備をしていた筈だ。
当然だろう。ダルシアにしてみれば、ガルマ、ドズル、ギレン、デギンといったザビ家の4人は死に、生き残りのキシリアはア・バオア・クーから姿を消している。
現在どこにいるのかというのは、未だに判明していない程だ。
……実は、ザビ家という事であればまだ生き残りはいる。
ソロモン陥落時に、ドズルの妻と娘が脱出してるのだ。
しかし、ドズルの娘……ミネバは、未だにどこにいるのかが不明のままだ。
そんな訳で、連邦軍との終戦協定終了後は自分がジオンを動かす必要があると、そう思っていたのだろうが……そこに、急にガルマが姿を現したのだ。
ダルシアやその周辺にいた者達にしてみれば、青天の霹靂以外のなにものでもないだろう。
とはいえ、ダルシアやその周辺の者達にしても、ガルマの存在というのは蔑ろに出来る訳ではない。
そんな訳で、現在ガルマはマツナガやイセリナを連れてサイド3にやって来ていた。……何故かそこには俺の姿もあったが。
「……で、何で私も一緒に来る必要があるのかしら?」
モニクが不満そうに俺にそう言ってくる。
そう、俺以外にもモニクがいるのだ。
本来ならもっと別の人物が来る予定だったのだが、現在は連邦とジオンの終戦協定の準備で忙しい。
とてもではないが人を派遣するような余裕はなかった。
勿論、毒にも薬にもならないような人材を派遣するつもりなら幾らでも派遣出来るだろうが、そんな人材を派遣しても意味はない。
相応に能力があり、それでいてまだ仕事に余裕がある者。
そういう事で、モニクが派遣されたのだろう。
とはいえ、これは決してモニクが無能だから仕事に余裕があるという訳ではない。
単純に、モニクはまだ月に来たばかり……つまり、言い方は悪いが本当に月に所属するつもりがあるのかどうか。有り体に言えばスパイではないかという疑いがある為に、重要な仕事を任されていなかったのだ。
これは別にモニクだけが特別という訳ではなく、降伏や投降、亡命といった事をしてきた者は全員が最初のうちは程度の差こそあれ、どうしても怪しまれる。
そういう意味では、政治将校としてジオン軍の内幕に詳しく、MSの操縦技術も高く、生身での戦闘能力も本職の軍人程ではないにしろ高いというモニクは、今回のような件では大きな役割を果たせるのは間違いない。
「そう言ってもな。モニクを派遣するように言ったのは、別に俺じゃなくてルナ・ジオンの上層部だろ? なら、それを俺に言われても正直困るぞ」
「……ふん」
俺の言葉を聞き、不満そうな様子のモニク。
ちなみに現在俺達がいるのは、サイド3の首都たるズムシティにあるホテルだ。
俺とモニクがいるからという意味で、そういう行為をする為のホテルではなく、純粋な宿泊施設としてのホテル。
別の部屋では、ガルマ達が今後の事について色々と話し合っている訳だが……
「ガルマ達と一緒に行動しなくてもいいのか? モニクの役割は、ルナ・ジオンのお目付役といったところだろ?」
「だからこそ、よ。ガルマ様達がこれからのジオン公国……いえ、ジオン共和国だったかしら。それについて話し合っている場所に、月の人間がいるのは不味いでしょ。もし月の人間に何か意見を聞きたくなったら、アクセルの部屋にいると言っておいたし」
モニクの奴……ホテルで男の部屋に来るってのに、警戒心がなさすぎないか?
モニクはあまり自覚がないみたいだが、モニクの顔立ちは整っており、気が強い系の美人だ。
身体付きも成熟した女らしく起伏に富んでおり、男なら思わず見てしまうくらいなのを、以前パイロットスーツ姿のモニクを見た事で知っている。
もし俺が女好きなら……いやまぁ、恋人が10人以上いる時点で女好きではないと言っても説得力はないが、ともあれ見境のない女好きであれば、モニクはベッドに押し倒されていてもおかしくはない。
にも関わらずこうして俺の部屋に平然と来ているのは、俺が自分を襲う事はないと判断しているのか、それとも自分がいい女であるという自覚がないのか。
取りあえず、信頼されていると思っておくか。
「これからの事か。……モニクの目から見て、ガルマがこれからのジオンを率いていくという点は上手く行くと思うか?」
「難しいでしょうね。普通の市民からの人気は高いから、ガルマ様を歓迎すると思うわ。けど、上層部になると……中には、例え敗戦国であろうとも、自分達がサイド3を率いていくと、そう思っていた人も多いでしょうし」
だろうな。
その筆頭が、ダルシアだ。
もっとも、セイラから聞いた話によると、ダルシア本人にそこまで……そう、一種の野望とも言うべきものは感じないらしい。
没落していくジオンを何とかしようとしているとかなんとか。
そのような人物だからこそ、セイラもダルシアからの終戦協定の仲介を引き受けたんだろうが。
ただ……あくまでもセイラが信用しているのは、ダルシアだけというのも事実。
ダルシア以外の面々とまだ会った事がないから、何とも言えないらしい。
これが、自分の考えを読まれるのが嫌でセイラと生身では会っていないのか、それとも偶然そんな形になっているからなのか。
その辺りは俺には分からないが、ともあれダルシアが信用出来る相手なのは、セイラのお墨付きな訳だ。
「ダルシアがセイラから聞いた通りの人物なら、やっぱりガルマにジオンを率いて貰うといった訳にはいかないか」
「でしょうね。1年戦争はザビ家が引き起こしたんだもの。例えサイド3の一般市民の人気が幾ら高くても……」
そうしてモニクと話している間に、やがてダルシア達との会談の時間となり、俺とモニクはガルマに合流してズムシティにある別のホテルに向かう。
どうせなら、このホテルで会談をすれば面倒がなくていいと思うんだが……残念ながら双方に色々と見栄のようなものがあるらしい。
「いっそ、俺の影のゲートで転移した方が手っ取り早いんだけどな」
「それは否定しないけど、そんな真似をしたら色々と不味いことになるのは間違いないだろ? こういうのは形式が大事なのさ。……私も、正直そっちの方が手っ取り早いというのは否定しないがね」
車……それも外見から一目で高級車と分かる車での移動ではあったが、ガルマにとってはあまり面白いものではなかったのだろう。
北米にいた時なら、こういう車に乗るのも珍しくはなかった筈だが……ハワイで隠遁生活をしている間に、その辺の感覚が変わってしまったのだろう。
「ガルマ様」
ガルマのその言葉に、マツナガが短く一言だけそう告げる。
マツナガにしてみれば、ガルマの言葉は現状では色々と不味いと、そう思ったのだろう。
どうやら、マツナガはガルマの軍事的な意味での切り札というだけではなく、あらゆる面で支えようとしているのだろう。
俺が説得して投降させた当初は、ドズルの可愛がっていたガルマだからこそ仕えるといった感じだったが、今となってはガルマがガルマだから仕えるといったように見える。
あくまでも俺から見てそう見えるというだけで、実際にどういうつもりなのかは分からないが。
「まぁ、取りあえず頑張ってくれ。ガルマがジオンを率いるようになってくれれば、月の方でも大きな利益があるだろうし。……なぁ?」
「ノーコメントで」
モニクが俺に向かって素っ気なく返す。
月にとっては、やはりダルシアよりもガルマの方が色々とやりやすくなると思ってるのは間違いないだろうに。
ガルマ達も月の思惑は当然のように理解しているだろうが、それでも現在のジオンの状況を考えれば……自分が出るしかないと判断したのか。
そんな風に話をしている間にも車は進み、やがて目的のホテルの前に到着する。
「へぇ、ガルマはやっぱり重要人物と見なされてるんだな」
ホテルの前にダルシアやそれ以外に何人もの政治家と思しき者達がいるのを見て、ガルマにそう告げる。
だが、ガルマが俺に向ける視線は微妙な色だ。
……まぁ、無理もない。
ダルシアはともかくとして、それ以外の何人かの政治家達の顔には不満の色があり、それを隠し切れてないのだから。
とはいえ、その気持ちも理解出来ない訳ではない。
これからのサイド3は自分達が動かしていくのだと、そう思っていたところで……急に姿を現したのが、死んだ筈のガルマだったのだから。
とはいえ、ガルマ・ザビという人物が出て来た以上、それを無下にも出来ない。
「さて、行くぞ。ここからは私達の戦場だ」
俺に向けていた視線を逸らすと、ガルマはそう告げて車から降りる。
……瞬間、ダルシアや政治家達がいるということで何が起きるのかと疑問に思って見ていたホテルの客の何人かと……隠そうとはしていたが、従業員の口からも悲鳴とも歓声ともつかない声が上がる。
当然だろう。今のガルマは変装をしておらず、誰もが知っているガルマ・ザビ……国葬まで出された筈の人物であったからだ。
そんな人物が普通に姿を現したのを見れば、そんな声が上がるのも当然だろう。
そして聞こえてきた声に、ダルシアや他の政治家達も一瞬だけ面白くなさそうな様子を見せる。
ガルマの生存というのは、色々な意味で大きい。
それこそ、可能であればダルシア達も隠しておきたかったのだろうが……ガルマとしては、自分の生存を知らしめるというのが自分にとって大きな利益となる以上、それを使わない手はない。
「ガルマ様、よくぞご無事で」
そう言い、ダルシアはガルマに近付き、笑みを浮かべて握手を求め、手を伸ばす。
この辺は周囲に見せる為のものであり、自分とガルマが友好的な関係にあると印象づける為だろう。
実際、ガルマ・ザビという名前を口にする時は少し大きな声だったし。
ガルマもその辺は理解しているが、特に気にした様子も見せずにダルシアの手を取る。
「ダルシア首相こそ、よく連邦軍との戦争の終戦に取りかかってくれたね。……私がそのような事を言うのは、正直どうかと思うが」
「いえ、それも全てはジオンを思えばこそです。……それより、早速これからのジオンについて話をしましょう。部屋は取ってあるので」
「ああ、そうしてくれると、こちらとしても助かるよ」
ダルシアはガルマの言葉に頷き、次にガルマ以外の俺達に視線を向けてくる。
「そちらの方々もですね?」
「ああ、そうなる。知ってると思うが……ドズル兄さんの下にいた、シン・マツナガ。そして私の婚約者でもあるイセリナ・エッシェンバッハ。それと月から派遣されてきたアクセル・アルマーと、モニク・キャディラックだ」
「……月から……」
ガルマの言葉にそう呟いたのは、ダルシアではなく近くにいた別の人物だ。
俺達がルナ・ジオンの人間であるというのを知らなかったのか、それとも知っていた上でこんな風に言ったのか。
その辺の事情は俺にも分からなかったが、ともあれ今はそんな事は気にする必要はない。
「俺達はあくまでもアドバイザーというか、立会人というか、そんな感じだ。気にしなくてもいい」
そう言うものの、政治家達が俺の言葉を素直に信じる筈もない。
「ともあれ、ホテルの方にどうぞ。この状況では、色々と不味いでしょうし」
ダルシアの言葉に頷き、俺達はホテルの中に入る。
……当然だが、ガルマの件もあってかこちらを見ている者の数は多い。
「あ」
と、俺の隣を歩いていたモニクが、不意にそんな声を上げる。
どうした? と疑問に思って視線を向けると、モニクが驚きの表情を浮かべてとある方向を見ていた。
モニクの視線を追うと、そこにはモニクよりも少し年上といった様子の女が一人。
その女もまた、モニクを驚きの視線で見ている。
恐らく知り合いなのだろう。
モニクのジオン軍での立場を思えば、顔を合わせにくい顔見知りの一人や二人いても、おかしくはない。
こういうホテルにそういう人物がいたというのは、少し驚きではあったが。
ともあれ、モニクとその女の件では特にそれ以上どうこうなる事はなく、多くの注目を集めながら、エレベーターに乗る。
さすがに俺達に注目しても、エレベーターに乗るといったような事をする奴はいなかったな。
図々しい奴なら、そのくらいしてもおかしくはないのだが。
ともあれ、ホテルの最上階にある階でエレベーターが止まり、そうして降りたところで……不意に、何人かの男達が走ってくるのが見えた。
もしかして、テロか?
一瞬そう思ったが、男達の様子を見ると特に敵意の類はなく、ダルシア達も驚いてはいるようだが、それは知らない男達が自分達に向かって走ってくるのではなく、知ってる相手が何故か慌てて自分達の方に走ってきているという事で驚いている様子だった。
「ダルシア首相、大変です。グローブが!」
近付いてきた男は、切羽詰まった様子でそう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637