パーティ会場として用意された場所は、ペズンにいる面々とシーマ艦隊の面々の多くが揃っていても、狭苦しさを感じないような場所だった。
……ここ、普段は何に使われてるんだろうな?
「ふふっ、この件が知られたら……クリスには怒られるだろうね」
俺と腕を組んでいるシーマが、艶然とした笑みを浮かべる。
普段は軍服を着ているシーマだったが、今回はパーティということで、パーティドレスを着ている。
青いドレスで胸元と背中が派手に露出しているドレスなのだが……そのドレスを着ているシーマは普段の性格を表に出していない為か、非常に周囲の男達の目を奪っていた。
元々、シーマは美人という表現が相応しいくらいに顔立ちは整っているし、普段から厳しい訓練をしているだけあって身体は引き締まっている。
それでいながら女らしい起伏に富んだ体型はそのままな訳で……パーティに参加している者達の多くの目が奪われるのは、当然の事だった。
ましてや、このペズンで行われているMS開発計画は、非常に機密度が高い。
ジオン軍には結構女の軍人がいるのは事実だが、それでも比率で考えればどうしても男の方が多くなる。
実際にこのパーティに参加している比率も、6:4……いや、7:3くらいの男女比だし。
そんな男達にしてみれば、生唾を飲むという表現が相応しいパーティドレス姿のシーマに目を奪われるのは、そうおかしな話ではない。
「クリスが……怒るか? こんな時にパーティを楽しむのは不謹慎だとか、そういう理由でか?」
生真面目なクリスなら、そういう事で怒ってもおかしくはない。
そう思って言ったのだが、何故かシーマは俺に向かって呆れの視線を向けてくる。
何かおかしな事を言ったか?
そう疑問に思ったが、俺がそれに何かを言うよりも前に、このパーティの主催者たるダービットがこちらに向かってくる。
その後ろには、模擬戦で俺と戦ったガルバルディのパイロットのフィーリウスと、バネッサ、ガイウスの姿もある。
……バネッサの方はパーティドレスを着こなしており、淑女といった様子を見せていた。もっとも、バネッサの目はあくまでも軍人として……より正確にはフィーリウスの部下としての色が強い。
ガリウスも、その巨体を軍服に身を包んで周囲の様子を眺めていた。
バネッサがパーティドレスなのに何故ガイウスは軍服なのかといった事は若干疑問だったが、パーティに参加している中にはタキシードのような服ではなく、軍服を着ている者も多いので、そこまで違和感はない。
「楽しんで貰ってるかな? 月に比べると、食料の類は決して豊富ではないので、多少物足りなさもあるかもしれんが」
そう言ってくるダービットに、シーマは俺から離れると笑みを浮かべて口を開く。
「そこまで気にすることはないよ。ペズン側の事情も理解しているし、あたし達に対して精一杯のもてなしをしているというのは分かるからね」
「そう言って貰えると、こちらとしても助かるよ」
そう言い、シーマとダービットの2人は話し始める。
それを見ていた俺は、さてどうするか。……料理でも食べようと思っていたところで、フィーリウスがこちらに……より正確には俺に視線を向けているのに気が付く。
「どうした? 俺に何か用があるのか?」
「お前は、何故あそこまで強い?」
端的な質問だったが、その言葉の意味は十分に理解出来た。
フィーリウスは、ペズン計画で開発されているMSのパイロットとして、自分の技術に相応の自信があったのだろう。
だが、そんな自信は俺との模擬戦で木っ端微塵になってしまった。
……まぁ、当然だろう。あの模擬戦では、フィーリウスの操縦するガルバルディは殆ど何も出来ないままに、俺にやられてしまったのだから。
フィーリウスの若い……いや、まだ幼いと言ってもいいその外見から、もしかしたらあそこまで一方的に自分がやられるというのは、初めての経験だったのかもしれない。
また、バネッサとガリウスの2人もまた、シーマとマッシュの2人に圧倒されてしまった。
それでも、あれは偶然だとか、何か卑怯な真似をしたとか、そういう見苦しい真似をしない辺り、好感が持てる。
「そうだな。見たところ、フィーリウスはMSの操縦そのものは決して下手な訳じゃないと思う。……機体を動かしているところを見たのはそこまで長い時間じゃなかったから、あくまでも俺の印象だが」
そう告げると、フィーリウスの目に少しだけ面白くなさそうな色が映る。
当然か。操縦している時間が短かったというのは、それだけあっさりと俺に負けたという事なのだから。
「だが、フィーリウスが今までやって来たのは、基本的には模擬戦だろう? どうしてもそれは模擬戦の動きであって、実戦の為の動きではない」
あくまでもこれは俺がそう感じたというだけで、もしかしたら実戦に参加した事もあるのかもしれないが……それでも、やはり実戦よりは模擬戦の動きというのは、間違いのない事実だ。
「それは……」
フィーリウスも俺の言葉には思うところがあったのか、言葉に詰まった様子を見せる。
「とはいえ、フィーリウスはまだかなり若い。なら、そういう感じになってもおかしくないと思うが?」
「……だが、それはそちらも同じだろう。見たところ、アクセルも私とそう年齢が変わらないように思える」
「そう見えるのなら、そうかもしれないな」
今の俺は20代ではなく、10代半ば……フィーリウスが言うように、年齢としては同じくらいだろう。
その違いがあっても、1歳か2歳くらいの差といったところか。
だからこそ、フィーリウスは俺に向かって対抗心を抱いているのだろう。
こうして見た感じでは、ペズンの中にフィーリウスと同年代の者はいない。
一番若くても、10代後半くらいだろう。
そんな状況で同年代の俺に会い……そして、あっさりと負けてしまった。
それがフィーリウスにとっては、対抗心を抱く理由となったのだろう。
「ただ、俺はこう見えても実戦経験が豊富だ。その差が、あの模擬戦では出たんだろうな」
実際には経験の有無もそうだが、敵を倒して入手したPPによって自分のステータスを上げたり、スキルを習得したりといったような事をしているのも大きいのだが。
その辺に関しては、このような場所で言っても意味はないので、取りあえず置いておくとする。
「実戦経験か」
そう言い、フィーリウスはバネッサとガイウスの2人に視線を向ける。
その視線の意味するところは、俺には分からない。分からないが……視線を向けられた2人が、難しい表情を浮かべているのは間違いない。
だが、そんな2人がフィーリウスに向かって何かを言うような様子はない。
この様子では、恐らく何を言っても無駄だと、そう理解しているのだろう。
……さて、そうなるとこのような状況で一体フィーリウスは一体何を言ってくるのか。
そんな思いで視線を向けると、やがてフィーリウスが口を開く。
「アクセル、私を月に連れて行って欲しい」
「……本気か?」
思ってもいなかった言葉に少しだけ驚きつつも、そう尋ねる。
実際、今の状況でそのようなことを言われるとは、思ってもいなかったのだ。
「本気だ。月に行けば、実戦経験を積むことは出来るんだろう?」
「それは……まぁ、否定しないが」
1年戦争が終わった今となっては、戦争中と比べると実戦の機会が減るのは間違いないが、戦争の火種とも呼ぶべきものは、それこそ幾らでも存在している。
ジオン軍にしても、ア・バオア・クーから脱出したキシリア率いる突撃機動軍や、キシリアと行動を共にする事に異を唱えたデラーズ達。
俺が知ってるのはそれだけだが、それ以外にも個々で散らばっているジオン軍の残党がいる可能性は、十分にある。
ジオン公国にしても、ガルマを連れてくるつもりではあるが、そのガルマも国を率いるといった事になった場合、幾ら俺達と個人的な繋がりがあるとはいえ、時には私情よりも国の事を考える必要が出て来る。
また、ジオンではなく連邦にしても、連邦軍の強硬派は間違いなく月の存在を面白く思ってないだろうし、連邦政府の政治家の中にも、ルナ・ジオンの存在を面白く思っていない者も多数いる筈だ。
純粋にジオンの名を冠したルナ・ジオンという存在が目障りだと思っている者もいるだろうが、それ以上に月という、これまで連邦に多大な金を落としていた場所が、そっくりそのまま抜けたのだ。
連邦として受けた経済的なダメージは、間違いなく大きい。
その辺の事情を考えると、ジオンと連邦の双方から攻撃される可能性がある月は、実戦経験を積むという点では決して悪い場所ではない。
ないのだが……
「ペズンはいいのか?」
「ルナ・ジオンが守ってくれるのだろう?」
「それは間違いないが、だからといってルナ・ジオンに全てを任せるというのは、正直どうかと思うぞ」
「ルナ・ジオンでは、ペズンは守れないと」
上手いな。
この状況でそのような事を言われれば、俺としてはその言葉に否という事は出来ない。
さて、どうするか。
そう思い、口を開こうとしたところで、ダービットがシーマとの会話を一度切り上げ、こちらに視線を向けてくる。
「2人に話したい事があるのだが。……出来れば、人のいない場所で」
それは冗談でも何でもなく、本気でそのようなことを言っているというのは、すぐに分かった。
どうする? とシーマが視線を向けてくるので、俺はその言葉に構わないと頷きを返す。
それを見て、シーマはダービットの言葉を受け入れ……俺達は、一度パーティ会場を出るのだった。
「ここまでする必要があるのか?」
パーティ会場から少し離れた個室に、ダービットは俺とシーマ、それとフィーリウス達を案内する。
余程聞かれたくない話があるんだろうが……それでもここまで秘密裏に話をしたいというのは、少し気にしすぎな感じがする。
それこそ、今の状況においてそのように警戒する必要があることを、何か話そうとしているのだろうが。
「模擬戦を提案した時にも言ったと思うが、ペズンにもジオンの負けを認められない者がおり、抗戦派と呼ぶべき者達もいる。……そのような者達にとって、フィーリウス少尉は色々と便利な存在なのだ。それこそ、バネッサ曹長達が厳しく警戒しなければならない程にはな」
「……まさか、実はザビ家の人間なんて言わないよな?」
年齢的には、ガルマの弟か……あるいは、ギレンの年齢を考えると、ギレンの息子という可能性もあるのか?
「いや、さすがにそれはない」
ダービットが、俺の言葉に即時に首を横に振る。
どうやらフィーリウスがザビ家の人間だというのは、俺の考えすぎだったらしい。
……まぁ、ザビ家は能力的には優秀なのかもしれないが、顔立ちが整っているかどうかと言われれば、正直微妙だ。
そう考えれば、ガルマってやっぱり凄いな。
もしかして、実はガルマだけは母親が違うとか、もしくは養子だとかいう事はないよな?
ともあれ、そんなザビ家と比べてフィーリウスの顔立ちは非常に整っている。
将来的には、間違いなく女に群がられる感じになるだろう。
……あ、でもこうして見た感じだと、場合によっては女を寄せ付けないような、孤高の貴公子といったような感じになるかも?
「なら、なんでわざわざここに呼んだんだい? あたしたちだって、暇って訳じゃないんだ。明日にはもう出発するんだしね」
「その件についてだ。フィーリウス少尉も言っていたが、出来れば明日、フィーリウス少尉達を一緒に連れていって欲しい」
本気か?
シーマの問いにそう答えたダービットに、思わずそう考える。
いやまぁ、月に行きたいというのは、フィーリウスからも聞かされていた。
だが、幾らペズンの中ではエースパイロットであっても、結局のところ少尉でしかないフィーリウスと、ペズンの司令官のダービットが言うとなると、同じ内容でもその重要度は違ってくる。
「何でそんな事をするつもりになったんだい?」
シーマもダービットの言葉に疑問を持ったのか、そう尋ねる。
そんなシーマに対し、ダービットは少し考え……フィーリウスに視線を向ける。
それを見たフィーリウスが頷き、そしてダービットは口を開く。
「フィーリウスの母親は、ザビ家の血筋に近い人物だ」
「それは……」
ダービットの言葉は、シーマに言葉を詰まらせるには十分な内容だった。
俺もまた、シーマと同様に驚き、フィーリウスに視線を向ける。
ザビ家の血筋に近いということは、恐らくはザビ家の親戚とか従兄弟とか、そういう関係なのか?
だが……それはそれで、疑問が残るのも事実だ。
ザビ家の血筋に近い人物の息子が、何故月に行くのか。
普通に考えれば、セイラは父親をザビ家に殺されているのだから、とてもではないがザビ家に近い者が許容されるとは思わないだろう。
……だというのに、何故かシーマはダービットの言葉を聞いて少し考えた後で、セイラが受け入れるのならという条件付きで、頼みを引き受けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637