転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2687話

「あれ? クリスはいないのか?」

「……何を言ってるんだい?」

 

 リリー・マルレーンのブリッジに顔を出してそう尋ねると、シーマからは言葉通り何を言ってるのか分からないといったような言葉が返ってくる。

 

「うん? いや、クリスは一応シーマの部下という形になっていた筈だろ?」

「あのね、それは昨日の星一号作戦の時までだよ。今日からはもうディアナの方に顔を出してるんじゃないかね」

「……おう、そう言えばそうだったか」

 

 少しだけ意外そうに返すが、そう言えばシーマの言葉通りだった筈だと思い直す。

 あー……これは、今日ここに来るまでにディアナに顔を出しておけばよかったな。

 とはいえ、今の状況で俺がディアナに顔を出しても、特にやるべき事はなかったが。

 ただ、それでも昨日の今日でクリスに挨拶をしなかったというのは、後で何か言われそうな気がしないでもない。

 ……まぁ、取りあえずペズンの件が片付いたらディアナに顔を出してみてもいいか。

 ディアナに置いてきたMSの解析結果で、何か新しいのが見つかってるかもしれないしな。

 

「なら、レコアはどうした?」

「あのお嬢ちゃんかい。あのお嬢ちゃんならルナ・ジオン軍に所属したままだけど、今回のペズンの件には来ないよ」

「そうなのか?」

「ああ。今回連れていくのは、ソロモンとア・バオア・クーでは出番がなかった連中さね。あそこまでの激戦にはならない以上、昨日出撃した新米共より幾らか腕が落ちているパイロットでも、実戦経験を積めるだろうしね」

 

 ア・バオア・クーとペズンは、双方共に小惑星基地だ。

 だが、そこに駐在する戦力は大きく違う。

 ア・バオア・クーはジオンにとって最終防衛線であった以上、総帥のギレンが直接指揮を執っており、戦力も可能な限り終結させた。

 それに対して、ペズンは秘密裏にMSの開発を行っている以上、当然の話だが戦力はそこまで多くはない。……まぁ、MS開発を行っている以上、今まで遭遇した事がないようなMSが出撃してくる可能性もあるが。

 ただし、そういう未知のMSを相手にする場合は、それこそ黒い三連星やシーマのような者達が戦い、それ以外の相手と戦う時にはシーマが連れていく、これが初陣となるだろう新人達が戦えばいい……といったところか。

 

「なるほど。話は分かった。ただ、それだと多少なりとも被害が出る可能性が高いけど、それは大丈夫なのか?」

「しょうがないさ。このご時世に自分から兵士になる事を望んだんだ。そうである以上、当然のようにいつ死んでもおかしくはないと思ってるだろうしね」

 

 そう言い切るのは、やはりシーマが戦争という行為をよく知っているからだろう。

 とはいえ、戦争を甘く見ている奴でも軍隊に長くいれば自然とそれに馴染む。

 ルナ・ジオンとしては、そういう真似をして兵士を増やしていくという事も、考えないといけないだろう。

 とはいえ、今の状況でそんな悠長な事をしてもいられない以上、シーマの考えもそんなに悪いものではないのだろうが。

 

「話は分かった。……なら、そろそろ出撃するのか?」

「そうさね。準備は整ってるから、命令が来ればすぐに出撃出来るよ」

「シーマ様、ちょうど命令が来ましたぜ。タイミングばっちしって奴でさぁ」

 

 シーマの言葉が言い終わるかどうかといったところで、リリー・マルレーンの通信士がそう告げる。

 普通、通信士というのはパイロットのやる気を出させる為に女だったりする事が多いんだが、どうやらこのリリー・マルレーンにおいては男がやっているらしい。

 元々が海兵隊である以上、女が少ないのは当然だろうが。

 ……あ、でも今はシーマに憧れた女が結構増えているのか。

 だとすれば、そのうちリリー・マルレーンの艦橋にシーマ以外の女がいるなんて事も、あるのかもしれないな。

 

「よし、じゃあ命令も来た事だし……出撃するよ! 続く連中にも連絡しな! この戦いは、月にとって大きな意味を持つ! それが分かっている以上、馬鹿な真似は許さないってね! 目的地はラグランジュ4にある、小惑星ペズン!」

『おおおおおおおおおおおおおお!』

 

 艦橋にいたシーマの部下……それこそ、月に来てから出来た部下ではなく、ジオンにいた頃からの部下達が、揃って声を上げる。

 シーマの部下達にしてみれば、自分達こそがシーマの部下として一番の古株だと、そう思っているのだろうし、実際にそれは間違っていない。

 ともあれ、シーマの号令に従ってリリー・マルレーンを始めとして、ムサイ級、パプア級、チベ級といった軍艦が出撃する。

 チベ級の後継艦たるティベ級がないのは少し残念だったが、そもそもティベ級は数そのものがそこまで多くはない。

 ルナ・ジオン軍に亡命してきた者達の中で、ティベ級が一体どれくらいあるのかすら、俺には分からない。

 取りあえず、ヘルシングの艦隊がティベ級を使っているが、まさかこの戦いでヘルシング艦隊を連れていく訳にもいかないだろう。

 何しろ、ヘルシングは元々キシリアの部下のキリングを排除する形で、月に亡命したのだから。

 一度月に亡命した以上、ヘルシングの性格を考えれば、ここから更に裏切るといったような真似はしないだろう。

 それでも、わざわざキシリアとぶつかるかもしれない場所に連れて行くという必要はない。

 月を出撃した海兵隊……いや、シーマ艦隊とでも呼ぶべき戦力を眺めつつ、俺はそんな事を考える。

 にしても、軍艦か。……個人的には現在の軍艦の中ではグワジン級が頭一つ飛び抜けてる感じなんだが、問題なのは、やっぱりグワジン級はザビ家の象徴的な存在になっているって事だよな。

 ザビ家の者か、ザビ家からの信頼の厚い者しか乗る事が出来ないだけに、そのように思っている者は多い。

 そんなグワジン級を、ルナ・ジオン軍で使うというのは色々と不味い。

 いやまぁ、ジオンとの取引でグワジン級とドロス級がそれぞれ1隻ずつ、既にルナ・ジオンにあるんだが。

 

「軍艦か。……シーマ、グワジン級をルナ・ジオンで運用するのは可能だと思うか? 今ある1隻だけじゃなくて、量産するといった形で」

 

 量産そのものは、そこまで難しくはないだろう。

 ジオンと連邦の終戦協定を仲介するのだから、ジオンの持っている技術の多くは入手出来てもおかしくはない。

 だが問題なのは、やはりザビ家の色が濃い……といったところか。

 

「難しいだろうね。グワジン級はザビ家の戦艦というイメージが強いし、実際にそれは間違ってはいない」

 

 艦長用の席に座り、扇を手で弄びながらシーマはそう返す。

 どうやらシーマもまた、俺と同じ結論に達していたらしい。

 

「月がザビ家の色の濃いグワジン級を量産して使うとなると……他の者達にしてみれば、月もやっぱりジオンかと、そんな風に思うだろうね」

「……シーマの考えもそれか。ただし、グワジン級程に設計の優れた軍艦を使わないという選択肢はないと思うんだがな」

「そうさね。あたしもそう思わないでもないよ。けど、月の人間の中にはザビ家を好んでいない……いや、嫌悪していると言ってもいい者達も集まってるんだ。それを考えると、グワジン級を使うのはやっぱり止めておいた方がいいと思うけどね」

 

 シーマの立場としては、それは許容出来ないといったところか。

 とはいえ、その辺は考え方次第、情報の広め方次第だと思うが。

 

「ザビ家を倒したからこそ、その戦利品としてルナ・ジオンがグワジン級を使うようになった……というのは、どうだ?」

「それは……」

 

 俺の言葉が意外だったのか、シーマは少し考えた様子を見せる。

 まさか、ザビ家を倒した戦利品として……というのは、シーマにとっては全く考えられなかった事なのだろう。

 

「まぁ、結局のところその辺を決めるのはルナ・ジオン軍……いや、ルナ・ジオンの上層部が考えるべき事だ。俺が出来るのは、あくまでもアドバイスくらしかないからな。それを採用するかどうかは、それこそシーマ達が決める事だ」

 

 出来ればルナ・ジオン軍にはグワジン級を採用して欲しいとは思うが、ルナ・ジオン内部で話し合った上で却下とするのなら、それはそれでしょうがない。

 最悪の場合、シャドウミラーで作ってみる……いや、そこまでする程ではないか。

 幾らグワジン級が高性能な軍艦とはいえ、わざわざシャドウミラーで使う程の性能ではない。

 シャドウミラーが使う軍艦は、現在のところカトンボとヤンマの2つで十分間に合っている。

 シャドウミラーの主力は、メギロートやバッタのような無人機であり、次いで量産型Wの操縦するシャドウだ。

 それを思えば、無人機として運用出来るカトンボやヤンマが最善なのは間違いない。

 ……精霊の卵の方は、また別だが。

 個人的にグワジン級にそこまで拘っているのは、単純に俺がグワジン級の外見を気に入ってるからというのが大きいのだが、言ってみればそれだけでしかない。

 

「そうさね。ペズンの件が終わって戦争が終わって……全てが一段落したら、その辺は上に提案して見るよ。……そう言えば知ってるかい? 昨日終わった……いや、正確にはまだ終戦じゃないけど、あの戦争を1年戦争って呼んでる人がいるみたいだよ」

「1年戦争か。ジオン独立戦争とどっちがいいかと思えば、1年戦争だろうな」

 

 この辺は人の好みにもよると思うが、実際ちょうど今日は0080になってから数日といったところだ。

 普通なら、クリスマスや大晦日、年越しといったように様々なイベントがあるのだろうが、UC世界においては戦争中だったのを考えると、そんな事をしている余裕は存在しなかったのだろう。

 

「結局のところ、どういう呼び方をしようとも戦争であることは事実なんだけどね。……戦争は戦争。呼び方だけでどうにかなるようなものじゃないだろうね」

 

 シーマのその言葉には、俺も納得するしかない。

 今のシーマに俺が何を言っても、それをシーマが受け入れるとは思えないし。

 

「ジオン独立戦争も1年戦争も置いておくとして……今はまず、ペズンだろうな。シーマがいれば、その辺は大丈夫だと思うけど。……ちなみに、シーマはペズンについて何か知らないのか?」

「新型のMSを開発しているって噂は聞いてるよ。けど、それが具体的にどんなMSなのかと言われれば、少し分からないね。もう少し時間があれば、色々と情報を集められたんだろうけど……今は、その時間が惜しかったからね」

「そう言われると、何も言えないな」

 

 今の状況で必要なのは、少しでも早くペズンに向かうという事だ。

 キシリアがいる以上、ペズンに向かうという可能性は否定出来ないし……もしキシリアがペズンに向かわなくても、それこそペズンにいるジオン軍の者達がどのような行動に出るのか、分からない。

 それこそペズンに立て籠もって連邦軍と戦うといったような事をしてくれるのならまだしも、いずれペズンに連邦軍がやってくるという可能性を考えて資料だったり物資だったり開発したMSだったりを持ち出して姿を消す……といったような事をしないとも限らない。

 そのような事をさせない為に、出来ればペズンにいる者達が何らかの行動に出るよりも前に向こうに到着する必要があった。

 

「ペズン、どうなってると思う?」

「そうさね。普通に考えれば、逃げ出してもおかしくはないけど……新型MSがあるとなると、それがあるから連邦軍と戦っても勝てそうだと、そんな風に思ってもおかしくはないだろうね」

 

 シーマが少し考え、そう告げてくる。

 シーマにしてみれば、出来れば後者の方がいいと、そう思っているのだろう。

 いや、本当の意味で最善なのは、俺達が到着した時に大人しくこちらに降伏するといったような事になる事なんだろうが。

 だが、さすがにそれは都合がよすぎる。

 そう思ったからこそ、せめては……と、そう思ったのだ。

 

「新型MSか。正直なところ、ペズンという存在が興味深いのは間違いないが、それよりも……いや、それ以上に新型MSの方が興味深いな。そうは思わないか?」

「ふふっ、そう言われるとそうかもしれないね。ただ、問題なのはどんな新型MSがあるかだけど」

 

 秘密裏に開発されていたMSとなると、普通に考えれば、ゲルググの次世代機といったところだろう。

 ジオン軍としては、まさか数ヶ月でここまで連邦軍に押される……いや、もう負けが確定したといった状況になっているが、少し前まではそんな事になるとは予想していなかった筈。

 であれば、ゲルググの次の機体を研究するといった事は、十分に可能性がある。

 それが具体的にどのようなMSとして結実したのか……かなり気になる。

 ジオン軍のMS……いや、MSに限らず、兵器の類には結構ユニークな代物も多いだけに、興味を抱くなという方が無理だった。

 

「ともあれ、全てはペズンに行けば分かる」

 

 そう告げた俺の言葉に、シーマは獰猛な……女豹の如き笑みを浮かべるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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