Eフィールドに到着すると、すぐにシーマからの通信が入ってくる。
『アクセル、ちょうどいい所に来てくれた。実は、ア・バオア・クーから脱出する敵が増えてきている。それはいいんだけど、連中Eフィールドを通って脱出しようとしてるんだよ。倒した方がいいのかい?』
「……なるほど」
シーマの言葉には、納得出来る部分が強い。
何しろ、ア・バオア・クーを中心とした4つのフィールドの中で、このEフィールドは最も戦力の配備が少ない場所なのだから。
ジオン軍の戦力が少ないという事は、当然のように連邦軍の戦力も少ないと、そうア・バオア・クーから脱出しようとする者が思ってもおかしくはない。
実際にはルナ・ジオン軍を派遣している以上、その考えは正しくないのだが。
とはいえ、ルナ・ジオン軍は精鋭が多いのは事実だが、結局のところ数は少ない。
連邦軍から派遣されている部隊もいる事はいるが、その数はそこまで多くはない。
そういう意味では、ジオン軍の考えは間違っていないのだ。
問題なのは、俺達ルナ・ジオン軍がこれからどう動くかという事だろう。
それこそ本気になれば、こちらとしては逃げ出したジオン軍の多くを撃破するといったような真似も出来る。
だが……俺の判断は違った。
「向こうから積極的に攻撃してきたら反撃をするが、逃げるというのなら追う必要はない。……また、ルナ・ジオン軍であることをしっかりと示し、月に亡命や降伏を希望する連中は受け入れてもいい」
『本気かい?』
そう尋ねてくるシーマの言葉は、驚きに満ちている。
俺にとっては、そう驚くような事ではないと思うんだが、シーマにしてみれば予想外といった内容だったのだろう。
「ああ、本気だ。この状況で月に亡命を考える奴は、当然のように月に行った後で妙な事を考えたりもするんだろうが……コバッタをつけておけば、問題はないだろ?」
『まぁ、それは……』
コバッタは生身で倒すのは不可能ではないが、それでもUC世界の人間が倒すのは難しい。
人数を揃えたり武器を使って倒したりといった真似をしても、コバッタは無人機で数も多い。
1機が破壊されれば、すぐに別のコバッタが集まってくる以上、コバッタに攻撃をした時点で農場の強制労働送りは確実だ。
強制労働の人数は、多ければ多い方がいい以上、そうなってもこっちとしては不満はない。
コバッタや量産型Wがいる以上、一般人に被害が出るといったような事は、まずないだろうし。
「それに、ジオン軍に所属している奴には確固たる信念を持っている者も多いが、何となく成り行きに流されてって奴も多い」
ダイクン派の者だったり、現在のジオン公国に疑問を感じている者達はルナ・ジオンに移住したり亡命したりといったような事をしたが、世の中にはそのような者達のように行動的な者だけがいる訳ではない。
中には、ジオン公国……ザビ家に若干の疑問を感じていても、自分から行動を起こそうとは思わず、このまま何となくどうにかなるだろうと考えているような者や、ザビ家に忠誠を誓っている訳ではないが、独立戦争でジオン軍が勝つと考えている者もいる。
前者も後者も、ギレンがキシリアによって暗殺された事や、ア・バオア・クーを守り切る事は不可能である以上、月に移住をするという事を本気で考えてもおかしくはない。
そういう連中は、月に移住して……衣食住を保証すれば、特に何の問題もなく月の住人として生活するだろう。
現在の月は、とにかく人口が足りないのだ。
量産型Wやコバッタ、バッタ、メギロート、イルメヤといったような無人機がある月は多少事情が違うが、それでも人口と国力は密接な関係になる。
そうである以上、今は少しでも月の人口を増やすというのは必須事項だった。
また……月に来ないという連中も、サイド3に戻るというのなら、それはそれで問題はない。
まだ構想段階だが、この戦争が終了した後でジオン公国はガルマに率いて貰おうと、そう思っているのだから。
そういう意味では、ジオン公国の国力……そして戦力を極端に下げる訳にもいかない。
勿論、中には月にもサイド3にも向かわずに、自分の思うように行動しようと考える者がいてもおかしくはないが。
『……なるほどね。分かった。じゃあ、アクセルの指示通り、向こうから攻撃をしてこなければ無視するよ。けど、連邦軍がその件で何か言ってきたらどうするんだい?』
「その場合は、指揮系統が違うというのを強調しておけ。それでも向こうが不満を隠さずに攻撃を仕掛けてくるのなら、迎撃しても構わない。ただし、連邦軍とのやり取りは保存しておくのを忘れないでくれ」
戦後にこの件が問題になった時、指揮系統を無視して向こうが強制してきたのでそれを断ったら、攻撃してきたので迎撃した。
そのような証拠は、あって困るものではない。
それにEフィールドにいる連邦軍は、元からいた連中はともかく、俺達と一緒にやって来た3隻のサラミスは色々と不穏な動きをしていたし。
『了解。その辺はぬかりないようにしておくよ』
「ああ、頼む。それと、ア・バオア・クーの攻略が完了……星一号作戦が完了したら、俺達はア・バオア・クーではなくサイド3に真っ直ぐ向かう」
『サイド3に?』
「そうだ。ア・バオア・クーが陥落すれば、もうジオン公国に勝利の芽はない。……いやまぁ、ギレンがキシリアに暗殺された時点で勝ち目はなくなったと思ってもいいんだけどな」
『……そうだね』
俺の言葉に、シーマは複雑そうに告げる。
とはいえ、それも当然だろう。シーマは以前キシリアの部下であったのは、広く知られている事実だ。
その上で、シーマを騙して毒ガスを使わせたのだ。
また、毒ガスを使う必要があったのは、コロニー落としをする必要があった為であり、それを考えればコロニー落としを行ったのはギレンである以上、シーマとしてはギレンにもキシリアにも思うところがあるのだろう。
「そんな訳で、どうせア・バオア・クーが連邦軍に占拠される以上、俺達はサイド3を確保したい。こちらが得る戦利品として考えても、ア・バオア・クーよりもサイド3の方が上だろうし」
とはいえ、この場合の戦利品というのは金品の類ではない。
ルナ・ジオンとしては、あくまでも技術を欲している。
特に、ジオングやブラウ・ブロ、ニュータイプ用ザクといったように、MSそのものを確保したのとは違い、エルメスで入手出来たのはビットだけだ。
だからこそ、出来ればエルメスに関する各種データは確保しておきたい。
ジオン公国の本拠地たるサイド3では、当然のようにエルメスについてのデータが残っていても、おかしくはない。
そういう意味では、やはりサイド3の確保を最優先にした方がいいのは間違いない。
……勿論、そのような真似をすれば連邦軍が不満を露わにする筈だ。
自分達がア・バオア・クーを確保している間に、戦争をしている相手の本拠地を友軍とはいえ、別の軍隊に占領されるのだから。
間違いなく後々問題になるだろうが……連邦軍との関係よりも、ジオン公国が持っている技術を確保する方を優先的に行動したいし。
何よりも、もし今の状況ですぐに連邦軍との関係が悪くなっても、ジオン軍との戦争で消耗した連邦軍はルナ・ジオン軍を相手にすぐ行動に出るといったような真似は出来ない。
強硬派辺りが色々と騒ぎそうだが、幸いにして現在連邦軍の中で強硬派の数は決して多くはない。
月に攻めて来た時や、ルナツー攻略作戦でその辺は大きく減らす事が出来たのは大きい。
だが、問題なのは、この手の連中は一時的にいなくなっても再び姿を現すということだろう。
声が大きければ存在感を発揮出来るという意味で、強硬派は便利なのだろう。
……別に声を大きくするだけなら強硬派でなくてもいいと思うんだが……まぁ、その辺はしょうがないか。
『分かった。じゃあ、ルナ・ジオン軍は集めておくけど……アクセルがこっちに合流したら、すぐにサイド3に行くのかい?』
「いや、ア・バオア・クーが連邦軍によって占拠されてからだ。一応、ア・バオア・クーの占拠には俺達も協力してるんだから、星一号作戦の最中に抜けるといったような真似はしたくない」
そう告げると、シーマは頷く。
シーマにとっても、サイド3に向かうのは色々と思うところがあるのだろう。
『分かった。すぐに……うん? ちょっと待った。本国から連絡だよ』
「本国……月からか? この状況で一体何を?」
『……これは……アクセル、そっちにも通信を回すから見て貰えるかい?』
そう言い、シーマがカトンボのブリッジに通信を送ってきたのだが……それは映像ではなく、文字での通信。いわばメールのようなものだ。
だが、そこに書かれている内容はかなり予想外の代物だった。
何でも、俺達が星一号作戦に参加している時に、サイド3からの特使が……それもかなりの大物がやって来たらしい。
その大物の名前が書かれていないのは、盗聴――という表現が正しいのかは分からないが――された時の為だろう。
その特使がルナ・ジオンに対して要望したのが、連邦軍との停戦の仲介役。
確かに、現在このUC世界においてそのような真似が出来るのは、ルナ・ジオンくらいだろう。
一応中立という意味ではサイド6もあるが、あそこは表向き中立という事になってはいても、実際には連邦の影響力が強いし、中立を保てるだけの武力もない。
そういう意味では、やはり月が仲介役に相応しいのは間違いない。
……一応、現在の月は連邦軍と協力関係にあるのだが、それでも月を頼ってきたのは、やはりルナ・ジオンという国名で、ジオンという名前が入っているからだろう。
ジオン・ズム・ダイクンの娘のセイラ……アルテイシアが建国した国なので、ジオンという名前が国名に入っているのは、当然の事なのだろうが。
それで、セイラはその相手からの要望を受け入れたらしい。
ただし……セイラがするのはあくまでも停戦、もしくは終戦の交渉であって、ジオン公国が降伏する訳ではないらしい。
ア・バオア・クーを失い、デギンを失い、ギレンを失い、キシリアは部下からの信望が薄い。
戦力に関しても、最後の砦とも言うべきア・バオア・クーを失ってしまっている今、降伏ではなく停戦とするのは難しい……そう思ったのだが、セイラから送られてきた文章は、連邦軍全体としての窮状も書かれていた。
ジオン軍の方ではオッゴを見れば明らかなように、学徒兵も普通に最前線で戦っている。……その最前線というのが、サイド3のすぐ側のア・バオア・クーだというのは、ともかくとして。
そういう意味で、ジオン軍の人的資源はかなり厳しくなってきているのは事実だが、セイラからの情報によると、連邦軍の方でも正規の……しっかりと教育を受けた軍人はかなり減っているらしい。
まぁ、考えてみればそうか。
1週間戦争、コロニー落とし、ルウム戦役……その辺りから始まって、延々と戦ってきたのだ。
それも当初は連邦軍はMSがなく、通常兵器を使って……場合によってはレジーナとかいう対MS用のミサイルを使って生身の兵士が戦うといったような真似すらしている。
勿論、ジオン軍よりも連邦軍の方が人的資源という意味では上だ。
上だが……それでも、現在の状況を思えば、ここまでの戦いで消耗した人的資源は大きい。
そんな連邦軍だが、現在は士官候補生や……場合によっては、それこそジオンと同様に学徒兵まで駆り出すかどうかといったような状況になっているらしい。
その辺の事情を考えると、連邦軍はジオン軍から求められた停戦を受ける可能性が高い、と。そうセイラを含めたルナ・ジオン上層部の面々は判断していると書かれていた。
学徒兵というのは、それこそ数合わせくらいにしか使えないしな。
将来的には有能で連邦軍や連邦政府にとって大きな利益となる人物になる可能性もあるのに、学徒兵として戦いに参加すれば、そんな有能な人物であっても容易に戦死する。
現在のジオン軍のように敗北が近いのなら、学徒兵を出す事も考えられる。
だが、今の連邦軍は既に勝利が目前である以上、無理に学徒兵を出す必要はない。
……もっとも、ア・バオア・クーを落とした以上、残るのはジオン公国の本国だけだ。
学徒兵を出す必要はないと思うが……まぁ、その辺は色々とあるんだろう。
「……なるほど、分かった。それで俺達はどうするんだ?」
『月にはジオン公国の首相が来ているらしいから、一度戻った方がいいだろうね。連邦軍の方にも、この件は伝わってるんだろうし』
戦ってる最中は連邦軍より、戦後になればジオン軍寄りか。
一応、月もジオン軍とは敵対関係にあるんだが……その辺はギレンとデギンが死んだ事により、チャラになった感じか?
そう言えば、キシリアはどうしたんだろうな。アムロがシャアを追ってア・バオア・クーに行ったけど。
それに、ソロモンで捕虜にしたマツナガも、ガルマに会わせるという約束をしていたし……独立戦争が終わっても、暫くは戦後処理で忙しい事になりそうだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637