転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0255話

「アクセル君、起きて下さいまし」

 

 ベッドで眠っている俺にそう声が掛けられ、意識が浮上していく。

 目を覚ますと、そこには昨日と同じく黙ったまま顔をこちらへと近づけてくるあやかの姿が。全く、外見だけを見れば文句無しの美人なのに性癖で完全に損をしているよな。

 苦笑を浮かべ、顔を近づけてくるあやかから身を躱してベッドから起き上がる。

 ちなみにこの天蓋付きのベッドだが、金持ちのあやかが用意しただけあってかなり寝心地がいい。と言うか、寝心地が良すぎてホワイトスターに戻れた時にあっちのベッドで眠れるかどうか不安になるレベルの寝心地の良さだ。

 おはようのキスを回避されて多少残念そうな顔をしたあやかだったが、それでも笑みを浮かべて挨拶をしてくる。

 

「おはようございます、アクセル君」

「ああ、おはよう」

「あやか、アクセル君、朝食の用意が出来たから準備して来てね。特にアクセル君は今日が転校初日だから、職員室に行かないと駄目なんでしょう?」

 

 千鶴の言葉に従い、手早く準備を終えると昨日に引き続き今日も美味い和風の朝食を美味しく戴いた。

 ちなみに、あやかが用意してくれた制服というのは普通にブレザータイプの制服だった。あやかの事だから、自分の妄想でそれこそセーラー服でも用意してるんじゃないかと微妙に不安だったんだが……さすがにそこまで酷くは無かったらしい。

 そして朝食も終わり、まだ余裕のある千鶴、あやか、夏美と違って一足早く学校に行かなければならない俺は、先に部屋を出る……と思ったら、何故か千鶴達3人も少し早いが学校に行く事になった。

 

「俺は一人で学校まで行けるぞ?」

「そうかもしれないけど……アクセル君、ここが女子寮だって忘れてないかしら?」

 

 苦笑を浮かべる千鶴の言葉に、何を言っているのか理解する。確かに女子寮の中に男の子供が一人でいれば何事かと思うだろう。それで騒ぎになって遅刻とかいうのは御免被りたいから、この心遣いは助かった。

 

「悪い、助かる」

「そんな水臭い事を仰らないで下さいな。アクセル君の転校初日ですもの、少し早く寮を出るくらいはどうという程のものでもありません」

 

 朝からハイテンションなあやかに連れられ、部屋を出る。部屋を出てすぐの時には周囲にまだ人もそれ程多くなかった為に目立たなかったのだが、寮の出入り口付近まで行くとさすがに人が増えてくる。そしてその殆どが俺を見て何故こんな場所に男の子が? といった不思議そうな表情をしているのはある意味当然だろう。

 まぁ、中にはあやかの姿を見て酷く納得している者もそれなりの人数がいるのだが……あやかの性癖はかなり広範囲に広まっているのかもしれない。

 ちなみに、千鶴はそんなあやかをニコニコしながら見守り、夏美は注目されるのに馴れていないのかどこか恥ずかしそうにしていた。

 女子寮から出て、ようやくそれまでのような好奇心たっぷりの視線が少なくなり、安堵の溜息を吐いた夏美が千鶴へと話し掛ける。

 

「ちづ姉、この時間なら電車は混雑してないよね?」

「そうね、後30分もすればいつもの混雑になるでしょうけど」

 

 詳しい話を聞くと、どうやらその辺の時間帯から登校する生徒が集中するらしく、それこそすし詰め状態になるらしい。……明日からもこの時間帯に出た方が良さそうな気がする。

 そんな状態でガラガラ……とまではいかないまでも、ゆっくりと座れる程度まで空いている電車を使って麻帆良女子中の最寄り駅である麻帆良中央駅へと到着し、そこから歩いて15分程度で一昨日も来た麻帆良女子中学校が見えてくる。

 

「明るい所で見ると、随分と印象が違うな」

 

 一昨日は夜に来た為か、寂しげな印象を受けたが……こうして朝日の中で見ると普通の学校にしか見えない。少なくても、こんな校舎の中に魔法使い達の親玉がいるとは普通は思わないだろう。

 

「じゃ、取りあえず俺は職員室行くからここでお別れだ」

「あぁっ! 愛し合う2人が引き裂かれるとは……運命とはかくも皮肉なものなのでしょうか!」

「いいんちょ、ぶれないねぇ」

 

 大袈裟に嘆くあやかに、夏美も苦笑を浮かべている。千鶴はいつもの如く優しげな笑みを浮かべながらあやかを見守っていた。

 

「どのみち、クラスが一緒なのは間違い無いんだ。すぐにまた会えるからそう気にするな」

「そうですわよね! 何と言っても、私とアクセル君は運命に導かれた2人なのですから!」

「……まぁ、いい。このままここで話をしてたら、いつまで経っても職員室に向かえそうにないから、取りあえずそれで納得しておくよ。じゃあ、また後で」

 

 千鶴達3人に軽く手を振り、職員用の昇降口へと向かう。

 当然、今日転校してきた事になっている俺なので昇降口に俺の下駄箱がある筈もないからだ。

 ……いや、あやか辺りに頼めば普通に用意してくれそうではあるんだが。

 

「職員室は……ここだな」

 

 職員用の昇降口から徒歩数分。職員室と書かれたプレートの下がっている扉を見つけ、軽くノックしてから中へと入る。

 

「失礼します。高畑先生はいますか?」

 

 職員室の入り口付近にいた教師へと尋ねる。

 ここまで丁寧な口調で話すのはいつ以来だろうか、なんて風に思いつつ。

 話し掛けた教師は、20代中程に見える男の教師だった。ただ、どこかひょろっとした印象を受けて、なんとなく頼りない感じがする。

 

「あぁ、話は聞いてるよ。君がアクセル・アルマー君だね。高畑先生なら……ほら、あそこだ」

 

 男の視線を追うと、確かにそこには無精髭をした高畑の姿があった。どこか真面目な顔をして何かの書類に目を通していた。

 

「高畑先生、アクセル君が来ましたよ」

「ん? あぁ、ごめんごめん。早かったね。もう少し後になるかと思ってたけど。……まぁ、丁度いいと言えば丁度いいか。学校生活に関してちょっと話しておきたい事もあるから少しいいかな?」

 

 高畑の言葉に無言で頷く。

 それを確認した高畑が、職員室の隣にある進路指導室と書かれた場所へと俺を誘う。

 

「さて、悪かったね。さすがに人の大勢いる前で魔法云々については話せないからね」

「いや、そっちの事情は大体分かってるから気にしないでもいい。ところで、こんな場所に誘ったって事は何かしら人前で話せない内容なんだろう?」

「ああ。一昨日は夜が遅かったせいもあって詳しい話が出来無かったからね。この麻帆良における魔法使いの扱いやどう秘密を守っているかについて話しておこうと思ってね」

 

 そこから、この麻帆良に付いての大雑把な説明を受ける。この麻帆良には魔法先生や魔法生徒と呼ばれる存在が多数いることや、認識阻害の結界により多少の事なら『麻帆良だし』で済ませられるらしい。他にも、この麻帆良の中心に位置する世界樹――正式名称神木蟠桃――や図書館島と呼ばれる施設にある貴重な魔法の文献を狙って魔法使いが侵入して来る事。

 ちなみに、千鶴とあやかを襲った魔法使いもこれにあたるらしい。

 そんな風に話をしていると、いつの間にか時間は随分と過ぎ去っており間もなく始業開始の時間となっていた。

 

「っと、まぁ、大体こんな所かな。時間が無かったから急いで説明したけど、この麻帆良で生活する上で何か分からない事があったら遠慮無く聞いてくれ。あるいは、君はエヴァに気に入られているようだから彼女に聞くのもありかもしれないな。僕も魔法使いとしての仕事があって良く出張中になってるしね」

 

 何でも、魔法使いの団体である悠久の風というグループに所属しておりその関係で出張が多いらしい。また、その悠久の風というグループもNGOとして登録されており大っぴらに名乗っても構わないのだとか。

 と言うか……

 

「担任教師がそうちょくちょく出張に出かけても問題無いのか?」

「それはそうなんだけど、どうしても僕が出ないといけない場面というのが多くてね。一応、2-Aについては副担任のしずな先生にお願いしているし……いや、クラスの皆はきっと、しずな先生を本当の担任で、僕が副担任だと思ってるんじゃないかな。あはははは」

 

 どこか煤けたような笑い声を上げる高畑。

 件のしずな先生とやらも、高畑の事で苦労しているんだろう。

 

「っと、そろそろ時間だね。じゃ、教室に行こうか」

 

 我に返った高畑と共に一度職員室へと戻り、2-Aへと向かう。

 ちなみに、しずな先生とやらは今日はいないらしく会う事は出来無かった。

 

「そうそう、来月ここに来るネギ君についてだけど、色々と事情のある子でね。学園長からの仕事という意味じゃなく、出来れば個人的にも仲良くしてやって欲しい」

「個人的にも?」

「ああ。何せ一昨日も言ったように君と同じくらいの年齢の子だ。周り全部が年上の女の子ばかりというのはどうしても息苦しくなる時があるだろうから」

「……と言うか、なんでわざわざ9歳の子供に教師を?」

 

 俺のその疑問に、苦虫をかみ潰したような顔になる高畑。

 

「今も言ったように、色々と事情があるんだよ。……詳しい説明をしてあげたいけど、それはまた今度かな」

 

 高畑の視線を追うと、そこには『2-A』と書かれたプレートがぶら下がっている教室があった。

 

「さて、まずは僕が中に入って皆に君の事を説明するから、呼ばれたら入って来て欲しい」

 

 高畑の言葉に頷き、教室へと入っていく高畑の後ろ姿を見送る。

 ドアを開けた途端落ちてくる黒板消しを右手でキャッチ。同時に飛んできた吸盤付きの矢を左手で叩き落とし、上から落ちてきたバケツを受け止める。

 ……どんなトラップ屋敷だ、ここは。

 唖然としつつも、廊下で高畑が呼ぶのを待つ。

 

「えー、今日からこのクラスに1人転校してくる事になったので紹介しておこう。入って来てくれ」

 

 そう声が聞こえてきたので、ドアを開けて教室の中へと入る。

 その時に多少躊躇してしまったのは、高畑を襲ったトラップの山を見ていた者として当然だろう。

 

「さ、アクセル君。自己紹介をしてくれ」

 

 差し出されたチョークを受け取り、黒板にアクセル・アルマーと書いて教室の方へと振り返る。

 

『キャアアアアアアアアアアっっっっっっ』

 

 と、突然聞こえてきた歓声……いや、悲鳴? その声の大きさに思わず耳を塞いでしまったが、それでも教室の中の興奮は冷めやる事無く広がっている。

 

「ちょっと、なにあの子」

「男の子?」

「っていうか、子供ですー」

「お前が言うなや」

「ムム? 何か強者の匂いがするアルね」

「一度お手合わせ願いたいでござるな」

 

 以下そんなような話が続く。

 さすがの高畑も為す術がないのか、苦笑を浮かべて成り行きを見守っている。

 

「皆さん、お静かになさーーーーーーーいっ!」

 

 そんな中、教室の中に一際大きく響き渡ったのはあやかの声だった。

 

「全く、転校してきたばかりのアクセル君に興味があるのは分かりますが、もう少し落ち着いたらどうですの?」

「いいんちょ、いいんちょ、何でそんなに落ち着いてるの? 子供だよ? しかもいいんちょ好みの美少年」

「あらあら。ハルナさん、それはアクセル君が……」

 

 髪の毛が触覚状になっている少女の言葉に、千鶴が答えているのを見ながらどうしたものかと高畑へと視線を向ける。

 

「悪いね。もう少し落ち着くまで待っててくれないか?」

 

 苦笑しながらすまなそうに言われたので、それに頷く。だが、次の瞬間。

 

『ああーーーーーーっっ』

 

 突然教室の中で2人の生徒が叫び声を上げながら立ち上がる。声のした方を見ると、そこには黒髪のショートカットと、桃色のロングヘアーの女がこちらを指さして驚愕の表情を浮かべていた。

 ん? 黒と桃? どこかで見覚えのある組み合わせだな。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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