ビグ・ラングとその周辺にいる数機のオッゴ、それに他にもいた別のゲルググは、こちらに向かって攻撃をする様子がない。
ビグ・ラングの方はビグロの部分のメガ粒子砲がいつでも撃てるようになっているし、オッゴの方もザクマシンガンの銃口やミサイルをこちらに向けてはいるが、撃ってはこない。
向こうにしてみれば、俺がゲルググの胴体を盾にしている以上、動きようがないのだろう。
この状況でもし撃ってきたとしても、それこそガンダム7号機を撃破するよりも前に、ゲルググのパイロットが死んでしまう。
それが分かっているからこそ、攻撃してこないのだ。
……このゲルググのパイロットは女だが、それなりに人望があるのは間違いないらしい。
『くっ、この……離しなさい、卑怯者!』
このパイロットも、自分が盾とされる事で味方が攻撃出来ない状況になっているのは分かっているのか、先程から接触通信で必死に声を張り上げていた。
「卑怯者と言われてもな。それを言うなら、コロニー落としだったり、巨大なビームで名目上とはいえ、自分達のトップを殺すような真似をするのは卑怯じゃないのか?」
『そ、それは……』
言葉に詰まる女。
コロニー落としの方は地球に大きな被害を与えた。
もっとも、その当時は南極条約の類はなかったので、別に卑怯と言われるような攻撃ではないのだが。
ただ、それによって地球の環境にも大きな被害が起きたのは間違いなく、この女もそれに対しては色々と思うところがあったのだろう。
そしてこの様子から考えると、ギレンがデギンを殺した事に対しても、思うところがあるのは間違いない。
正直なところ、コロニー落とし云々よりもこっちの方が大きな収穫だった。
現在のジオン軍の中でも、やはりデギンを殺したギレンに思うところがある者はいるのだ。
……とはいえ、客観的に見た場合は間違いなくあの一件によってジオン軍が有利になったのは間違いないのだが。
幾らジオン公国の公王とはいえ、今では所詮名目上のトップたるデギンの命と引き換えに、実際に連邦軍を指揮しており、下の者達からもかなり慕われ……また、これは意図していたかどうかは不明だが、連邦軍の中でもゴップと並んでシャドウミラーという存在を理解していたレビルを殺し、更にはレビルの乗っていたマゼラン級の後方にいた、言ってみれば連邦軍にとって主力にも大きなダメージを与えたのだ。
純粋に利益だけを考えれば、ギレンの放ったあの一撃はジオン軍に対しては非常に大きな利益を与え、連邦軍には多大な不利益を与えたということになる。
とはいえ、利益だけではなく感情も大きな意味を持つのが人間だ。
そういう意味では、ギレンは自分を基準にして考えすぎたのかもしれないな。
「取りあえず、その件は置いておくとして……お前の名前を聞かせて貰おうか」
『……私の名前を?』
「ああ。そうでないと、交渉も出来ないだろう? 勿論、名前を教えていない状況であっても、交渉は出来るが……名前を知っていた方が、お互いに色々とやりやすいんじゃないか?」
『……モニク・キャディラックよ』
モニク、か。
モニカとかならともかく、モニクというのは少し珍しい名前だな。
『私は名乗ったんだから、そっちも名乗りなさい』
「アクセル・アルマーだ」
『なっ!? アクセル・アルマー!?』
俺の名前を聞いてモニクが驚きの声が上げる。
現在のこのUC世界において、アクセル・アルマーという名前が持つ力を考えれば、そこまで不思議な事でもないか。
とはいえ、だからといって今の状況で向こうが俺の名前を知ってもどうにか出来ないだろうし……
『……貴方が?』
と、不意に映像モニタに女の顔が表示される。
パイロットスーツのヘルメット越しだが、美人と言ってもいいだろう顔立ち。
ただし、かなり厳しくお堅い性格をしているような、そんな美人だ。
そんなモニクが、俺の方を見て信じられないといった様子を見せている。
……まぁ、アクセル・アルマーという名前を聞いてモニクが想像したのは、間違いなく二十代の俺の姿だろうから、そう考えればこのような表情を浮かべるのも無理はない。
「ああ。お前が誰を想像してるのかは予想出来るが、俺の名前がアクセル・アルマーだというのは、間違いのない事実だ」
一応、嘘は言っていない。
俺がアクセル・アルマーであるのは事実だし、モニクが二十代の俺を想像したのも間違いないだろうが、今の俺は何も嘘を口にしていないのは事実だった。
そして、モニクと話している間にも、ビグ・ラングとの距離は縮まっていく。
モニクの命が惜しいからだろう。ビグ・ラングも、その周辺にいるオッゴも、こちらに攻撃してくる様子はない。
……やがて、ガンダム7号機がビグ・ラングに接触したところで、接触回線を開く。
「こちら、ルナ・ジオン軍のアクセルだ。手っ取り早く要求を告げる。そのビグ・ラングというMAをこちらに引き渡せ。そうすれば、モニク・キャデラックはそちらに引き渡す」
『なっ!?』
そんな驚きの声が、接触回線から聞こえてくる。
まぁ、敵もまさかビグ・ラングを寄越せと言われるとは、思ってもいなかったのだろう。
「繰り返す。モニク・キャデラックとビグ・ラングの交換を要求する」
『そんな……そんな事を言われても……』
ビグ・ラングのパイロットは、強気なモニクと比べると優柔不断というか、はっきりと自分で物事を決められる様子はないらしい。
いやまぁ、普通ならこんな要求がされるという事そのものがないのだから、そんな風に思ってもおかしくはないだろうけど。
ただし、今の状況を考えると向こうのパイロットはこの提案を簡単に受け入れる事は出来ないだろうし……同時に、断る事も出来ない。
「俺がモニクの乗っているゲルググをここまで簡単に無力化したのは、その光景を見ていたのなら分かるな? であれば、俺がそのビグ・ラングを入手する為に、ここまでしたんだ。その気持ちを理解してくれると、助かるんだけどな」
それは、もし俺がその気なら、容易にモニクを撃破出来たという事を示しているし、実際それは決して間違っていない。
取引材料として欲していたので、ゲルググの手足と頭部を破壊しただけに留めたが、もし撃破する気なら、それこそコックピットを撃ち抜けばそれで終わったのだから。
ビグ・ラングのパイロットもそれが分かっているからこそ、俺の言葉に反論出来ないのだろう。
だが……ここで反論してきたのは、ビグ・ラングのパイロットではなく、モニクだった。
『オリヴァー中尉! 今は、私よりもジオン軍全体の事を考えなさい!』
モニクの叫び声が聞こえてくる。
これは、ビグ・ラングとゲルググ、その双方共に接触回線で通信が繋がっているからこその現象だろう。
向こう……特にモニクにしてみれば、こっちに通信が繋がっているのは……ある程度理解してはいるのだろうが、だからといってビグ・ラングのパイロット……オリヴァーとかいう男が俺の言葉に頷いてしまいかねないと、そう思っての行動か。
実際、その考えはそれ程間違っているようには思えなかった。
話したのは少しだが、その少しでもオリヴァーという人物の性格は何となく理解出来た。
つまり、押しに弱いと。
勿論、ただ押しが弱いだけの性格がビグ・ラングなんて新兵器……もしくは秘密兵器のパイロットになれるとは思っていない以上、表に出てこない何かがまだあるのは間違いない。
だが、その辺りの本当に深い場所の性格までは、さすがに少し話したくらいではどうにも出来ない。
その辺に関しては、取りあえず今は置いておく事にする。
「どうする? モニクはお前にとっても重要な人物だろう?」
この2人の会話を見る限り、恋人同士といったような事はないと思うが、それでもお互いに信頼しているというのは想像出来る。
でなければ、ビグ・ラングのパイロットに選ばれたり、その護衛をしたりといったような真似はしないだろう。
取り合えずお互いを嫌い合っているといったような関係でないのは明らかだ。
『それは……』
『オリヴァー中尉、敵の言葉に耳を傾けるな!』
先程までの少しは女らしい言葉遣いから一転し、軍人らしいというか、上官らしい言葉遣いでオリヴァーに叫ぶモニク。
なるほど。恐らくこの2人だと、モニクの方が階級は上なのだろう。
オリヴァーが中尉である以上、大尉以上か。
「コロニー落としをやり、自分達を率いるデギンを殺すようなギレンについていくのか? それが本当にスペースノイドの為になると?」
そう告げると、オリヴァーは黙り込む。
オリヴァーにしてみれば、今の俺の言葉に思うところがあったのだろう。
まぁ、モニクにとってもそんな感じがしていたのを考えれば、オリヴァーはもっと如実に俺の言葉の影響を受けた……といったところか。
このまま上手く説得出来ればいいんだが……モニクの様子を見る限りでは、とてもではないが無理そうだな。
『そんな事を急に言われても……』
「すぐに決めろとは言わない。だが、お前にとって……いや、この宇宙に住むスペースノイドにとって、現在のジオンは正しい事をしていると言えるのか?」
『それは……』
言葉に詰まるオリヴァー。
まぁ、コロニー落としを始めとして、ジオン軍がやってきた諸々を考えると、とてもではないがそれがスペースノイドの為になるとは思えないような事が多数ある。
もっとも、同時に連邦軍……いや、連邦政府が行ってきたスペースノイドからの一方的な搾取もまた、問題ではあるのだが。
何しろ、連邦政府から派遣されてきた役人や政治家の類は各コロニーから税金を搾り取り、それを自分の懐に入れていたから。
勿論それは違法な行為なのだが、連邦政府の慣習となっている以上、それは問題にならない。
いやまぁ、もしかしたら連邦政府の政治家にもその手の悪習を嫌っている者もいるかもしれないが、幾らそれを嫌っていると言っても実際にそれを阻止出来るだけの力がなければ、意味はない。
……そういう意味では、何気にルナ・ジオンという第3勢力は魅力的に映ってもいいんだけどな。
少なくても、何かあからさまに悪事を行っていれば、すぐにそれを裁くだけの体制は出来ている。
その上で、ルナ・ジオンのトップに立つセイラの前では、何か隠し事をしようとしても、UC世界でも最高レベルのニュータイプ能力を持つセイラを前にして、隠し事は出来ない。
……最高のじゃなくて、最高レベルとしたのは、現在の月には奇跡の子供達がいるからだ。
実際にステータスを見る事が出来る訳ではないので、奇跡の子供達のニュータイプ能力が具体的にどれくらい強いのかは分からない。
だが、コロニー落としを予知するだけの能力を持っている以上、セイラに勝るとも劣らずと、そう考えてもいいと思う。
いやまぁ、今はそんな事はどうでもいいか。
今やるべき事は、ビグ・ラングを確保する事なのだから。
「どうする? ……そうだな、ここで大人しく降伏をすれば、お前達を逃がしてもいい。仲間のゲルググがもう数機いるし、それがあればお前達が逃げるには十分な筈だ。もしくは、月に亡命をするのなら受け入れてもいい」
正直なところ、月は未だに人手不足だ。
人手は幾らでもあった方がいい状況となっている。
……このUC世界では、人が多すぎて棄民政策と言われるコロニーへの強制移住が行われていたのだが、今の月にしてみれば、人がいるのなら幾らでも欲しいというのが正直なところだ。
地球やコロニーから大々的に移民を募っているし、実際にそれで結構な数が月に集まっているのも事実だが、それでもまだ足りないのだ。
それこそ、今回の一件で連邦軍からどんな報酬を希望するのかと言われたら、月に移住してもいいと言ってる奴を集めて欲しいくらいには。
『それは……』
そして月というのはやはりオリヴァーにとっても魅力的だったのか、迷ったような言葉が聞こえてくる。
このまま上手く話を進めれば、ビグ・ラングだけじゃなくて、そのパイロットもこっちに引き込めるか?
普通のMSならともかく、このビグ・ラングというMAは明らかにオッゴの運用を前提としている特殊なMAだ。
そうである以上、このMAについての情報はやはりパイロットから引き出すのが最善なのは間違いない。
……一応ディアナにはMIP社とも繋がりがある以上、そっちから情報を入手出来る可能性もあるが……それでも、やはり一番機体の事を知ってるのはパイロットだろう。
いや、この機体の整備をしているメカニックもあるいは……と思わないでもなかったが、この場にいない人物をどうこう出来る筈もない。
「どうする? 言っておくが、今がチャンスなのは間違いないぞ」
『それは……』
そうしてオリヴァーが何かを言い掛けた、その時……不意にロックオンの警報が鳴り、俺はモニクの乗っているゲルググの胴体を持ちながら、ビグ・ラングの装甲を蹴ってスラスターを全開にして、その場から退避する。
すると次の瞬間、ガンダム7号機のあった場所をビームが貫く。
それをやったのがゲルググなら理解出来たが……映像モニタでこちらにビームガンを向けているのは、連邦軍のジムコマンドだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1265
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1632