キマイラ隊との戦いで、一体どれだけの時間が経ったのか。
気が付けば、俺の周囲には10機を超えるゲルググがいた。
その上、その全てのゲルググに乗っているのがエースパイロット級で、それでいながらもエースパイロットが持つ我の強さを持たず、1つの部隊として仲間と共に有機的に結合しているかのような動きをしている。
アムロとシャア、エルメスとの戦いが一体どうなったのか、気にならないでもなかったが、気が付けばアムロ達の姿はこの宙域からは消えていた。
俺が戦いながら移動したのか、それともアムロ達が戦いながら移動したのか。
向こうにはエルメスというMAがいるし、それを考えれば恐らく向こうが移動したのは間違いない。
「って、しつこいんだよ!」
こちらに向かってビームライフルを撃ってきたゲルググの一撃を回避しつつ、それと連携してきた別のゲルググの攻撃を次々と回避しながらビームサーベルを引き抜き、一気に足を破壊されているゲルググとの間合いを詰め……真っ直ぐ移動するのではなく、スラスターを使って敵の攻撃を回避しつつ、移動していく。
こっちの行動を先読みしたかのように、ゲルググキャノンのビームキャノンの一撃が放たれるが、その呼吸はもう読んでいる。
スラスターを使いつつ、移動しながら敵の中でも技量の劣る1機……俺のビームライフルによって足を失ったゲルググに近付くと、その相手はビームライフルではどうしようもないと判断したのだろう。
ビームナギナタを抜き放ち、こちらの攻撃を受け止めようと……いや、それこそ、俺を撃破しようとする。
「甘い。……って、またか!」
ビームナギナタの一撃を回避し、ビームサーベルで胴体を切断しようとした瞬間、紅の……ジョニーのゲルググが、それを防ぐようにビームライフルを撃ったのを、回避した。
ビームライフルの一撃は回避に成功したが、同時にビームサーベルの一撃は狙っていた胴体ではなく、腰の辺りを切断するに留まる。
とはいえ、撃破は出来なかったが、これでもう戦力としては数えられないだろう。
ようやく1機……そう考えつつも、ガンダム7号機の動きは止めない。
というか。この連中と戦ってる最中にMSの動きを止めようものなら、それこそこれ幸いと集中攻撃されてしまう。
特に遠距離からビームキャノンで狙ってくる狙撃手の腕は一級品だ。
出来れば、ルナ・ジオン軍に来て欲しいくらいに。
……とはいえ、ここでもし誘ったとしても、それに乗るような奴でないのは、容易に想像出来た。
深紅の稲妻ジョニー・ライデンを中心に、これだけしっかりと纏まっている部隊だ。
そんな場所から抜けたいと思う者は……まずいないだろうと、そう思える。
「しょうがないか。……恨むなよ。加速」
アムロを助ける為にも、いつまでもこのままキマイラ隊と戯れている訳にはいかない。
そう判断し、精神コマンドの加速を使う。
今までよりも明らかに違う速度でガンダム7号機は動き、少し離れた場所にいたゲルググとの間合いを詰め……そのまま、ビームサーベルを振るう。
倒した。
一瞬そう思ったが、やはりエースだけあってコックピットへの致命的な一撃を避ける。
とはいえ、コックピットへの一撃は避けたが、代わりに袈裟懸けにゲルググの上半身は切断される。
……その袈裟懸けの一撃でもコックピットを避けた辺り、さすがエースといったところだろう。
『そんな、私が!?』
機体を切断した時に接触回線でそんな声が聞こえてくる。
どうやら、このゲルググのパイロットは女だったらしい。
いやまぁ、MSの操縦技術に男も女もないってのは、それこそシーマを見れば明らかだったが。
「残念だったな。いい腕だ。この戦争が終わったら、月に来て欲しいくらい……だな!」
『ちょっ、あんた一体!?』
最後まで言葉を聞かず、袈裟懸けに切断されたゲルググをこちらに向かって近付いてきたジョニーが乗る紅のゲルググに向けて蹴り出す。
『きゃあっ!』
最後に悲鳴が聞こえてきたが、今の状況でそれを気にしているような余裕はこちらにはない。
ジョニーの赤いゲルググは、自分の方に向かって蹴り飛ばされたゲルググを受け止めながら、素早くその場を退避する。
……ちっ、数秒でも戸惑えば、ビームライフルで撃破……は無理でも、多少なりともダメージを与える事が出来たものを。
キマイラ隊にとって、ジョニー・ライデンという男は自分達を率いる者であると同時に、戦力の要でもある。
最初に俺に攻撃してきた時のことを考えれば明らかだったが、普通は部隊を率いる者が真っ先に敵に突っ込んでいくといったような事はしない。
それをジョニーが行ったのは、キマイラ隊の中でジョニーが最強だからこそだろう。
言ってみれば、シャドウミラーが戦いになった時、俺が真っ先に突出していくようなものだ。
だからこそ……そう、俺と似たような行動をするジョニーだからこそ、ここでダメージを与えるようなことが出来れば、そして可能なら撃破してしまえば、キマイラ隊は非常に大きなダメージを受ける。
シャドウミラーが戦っている時、もしニーズヘッグが敵によって撃破されたら、実働班が受ける精神的な衝撃はどのくらいのものか。
それを考えれば、その辺を予想するのはそう難しい話ではないだろう。
俺の事までをも分かってるとは思わないが、ともあれジョニーは自分がここで撃破がされれば、キマイラ隊に大きなダメージがあるというのを理解した上で、仲間の女を助けた瞬間、即座に脱出したのだろう。
だが……仲間の女を助けて脱出したのはいいが、それはつまりキマイラ隊の俺に対する攻撃の密度が減ったということを意味する。
「加速」
再度精神コマンドの加速を使い、スラスターを全開にしながら、普通ならGで怪我をしてもおかしくないような動きをしつつ、1機のゲルググに向かって突っ込んでいく。
攻撃の密度が減った結果、こちらも動きやすくなった。
それだけではなく、俺が敵との間合いを詰めるという事は、敵も迂闊にビームライフルを撃ってきたりといったようなことは出来なくなるという事の証だった。
「これで、1機目!」
俺を迎え撃とうと、ゲルググが振るったビームナギナタの一撃を回避しつつ、ビームサーベルを振るい……ってこの距離で撃つのか!?
「ちぃっ!」
遠くから放たれたゲルググキャノンのビームキャノンが、ガンダム7号機とゲルググの間を、縫うような精密さで撃ち抜く。
ここまで間合いが詰まった状況で撃ってくるってのは、正気か!?
一瞬そう思ったが、俺が攻撃をしようとしたゲルググは、仲間の援護を効果的に活かすと、スラスターを使って俺から距離を取る。
結局のところ、装甲に軽くビームサーベルの先端を当てただけ、か。
「厄介な」
確かに、キマイラ隊はエース級と準エース級と言ってもいいような技量のパイロットが集まった集団なのは間違いない。
だが、それでも俺と1対1で戦えば……それこそ、ジョニーですら勝てるだけの自信はあった。
しかし、それをさせないのがパイロット同士の連携だ。
こちらが攻撃をしても、仲間がそれをフォローするのだ。
まさに、連携をここまでのレベルに仕上げてる辺り、大したものだと言ってもいい。
……ガンダム7号機の性能がこっちの動きについてこられないというのも、この苦戦の理由ではあるのだが。
UC世界においてはトップクラスの反応速度を誇るアムロでさえ、満足させるだけの追従性を持つマグネットコーティングだが、生憎と俺の反応速度には追従しきれない。
だからこそ、機体の限界を見極めて操縦してるんだが……そんな動きをしたままでは、キマイラ隊を相手に負ける事はないだろうが、勝つ事も出来ない。
そもそも、キマイラ隊というエース揃いの部隊を俺1人で対処してるのが、異常なんだろうけどな!
「加速!」
三度精神コマンドの加速を使い、たった今俺の攻撃を回避したゲルググのいた場所から出来た隙間を通って、キマイラ隊の包囲網を抜け出す。
取りあえず、これで四方八方から攻撃されるような真似だけは避けられるので、キマイラ隊を相手にしても対処はしやすくなる。
そんな風に考えつつ、背後からこちらに向けてビームライフルを撃とうとしたゲルググの機先を制するように、後ろ向きの状態からビームライフルを撃つ。
ちっ、狙いが逸れたか。
MSでの操縦だけに、別に顔の部分が後ろを向いていなくても背後の状況を映像モニタに表示するような真似は出来る。
だが、それはビームライフルのトリガーと連動していない以上、何ヶ所からも集中攻撃をされている現状で、その攻撃を回避しながら命中させるのは、ステータスで命中の数値が350オーバーの俺でも難しかった。
精々が、狙っていたゲルググのすぐ側をビームが貫き、それによる驚き――まさか後ろに向けてビームを撃ってくるとは思わなかったのだろう――で一瞬動き止めるのに十分というだけで、そういう意味ではこちらとしても悪くない結果だろう。
「加速」
四度目の精神コマンドを使い、ゲルググの包囲網から距離を開け……そうなると、当然ながら背後から追ってきたゲルググも、こちらを追う。
勿論、ゲルググ全機がこちらに向かってくる訳ではないが、それでも追ってくるゲルググがいるのは、俺にとって幸運なのは間違いない。
追ってきているゲルググは、2種類に分けられる。
血気逸って俺が逃げたのを追ってきたゲルググと、しっかりと俺という存在に狙いを定めて追って来ている……といったように。
勿論、血気逸ってる方もキマイラ隊にいるということはエースなのだろうが……最初に俺が大破させたゲルググといい、俺を追ってきているゲルググといい、キマイラ隊といっても色々といるらしい。
「けど……残念だったな!」
右側のスラスターを全開にして、強引に180度の方向転換をする。
混沌精霊の俺だからこそ、Gの問題を無視して可能な行動。
そして……キマイラ隊の面々にしてみれば、俺の行動が完全に予想外だったのは間違いない。
それを示すかのように、振り向きながらビームライフルを構えた時、丁度一番俺の近くにいたゲルググは、無防備に突っ立っていたのだから。
「終わりだ」
呟きながら、トリガーを引こうとして……その瞬間、今までと同じようにゲルググキャノンが放ったビームキャノンのビームがこちらに向かって飛んでくる。
だが、今まで何度も邪魔された以上、そんな敵の攻撃は当然のように読んでいる。
ビームライフルを構えたまま、スラスターを使って移動しつつトリガーを引く。
放たれたビームは、真っ直ぐにゲルググに向かい……その胴体を貫く。
「よし、ようやく1機」
そう思った瞬間……ゲルググのコックピットが開き、パイロットが飛び出してくる。
爆発する前に機体を捨てる事を選択したのか。
この辺りの判断の素早さは、さすがと言うべきなのか、それとも血気に逸って俺を追ってきた無茶苦茶ぶりが発揮されたのか。
ともあれ、脱出したところで、この状況では生き残るのは難しいだろう。
それにキマイラ隊のメンバーは出来るだけ減らしておいた方がいいだろうし。
そう思い、頭部バルカンのトリガーを引こうとしたその時……偶然なのか、それともそのパイロットの力なのかは分からないが、間違いなく、そのパイロットと俺は目が合った。
勿論、直接目と目があった訳ではなく、全天周囲モニタのスクリーン越しである以上、向こうは目が合ったという事すら感じていないかもしれない。
だが……俺は間違いなく目が合い、そしてパイロットスーツを着ているのがまだ10歳かそこらではないかと思えるくらいに若い、少女……場合によっては幼女と呼ぶような者がいてもおかしくないくらい、小柄な事に気が付く。
今の俺の外見も、年齢的には10代半ばといった程度でしかない。
そんな俺よりも年下となると……さすがにそれを知った瞬間、撃つのを躊躇ってしまう。
そして、キマイラ隊の方でもこの少女が脱出したのを理解したのか、攻撃をしてくるような事はしない。
勿論、俺が動いた時はすぐに撃てるようにビームライフルの銃口を向けてはいたが。
そんな中、やがて紅のパーソナルカラーのゲルググがこちらに近付き……ゲルググを脱出した少女は、そちらに向かって近付いてく。
『……名前を聞かせてくれないか?』
と、オープンチャンネルでそんな通信が入ってくる。
映像ではなく音声だけだったが、それが誰からの通信なのかは、言うまでもないだろう。
「アクセル。アクセル・アルマーだ」
『月の大魔王?』
「まぁ、そんな風に呼ぶ奴もいるな」
ここで自分の正体を隠すという気持ちは思い浮かばなかった。
何故そのように思ったのかは、それこそ俺も分からなかったが。
ともあれ、ジョニーは俺を俺と認識し……
『まさか、キマイラ隊総掛かりで傷もつけることが出来ないとは思わなかったな。……イングリッドを助けてくれた事には、礼を言っておく。またいつか会えるといいな』
それだけを言うと、オープンチャンネルは切れ……そして、ジョニーはキマイラ隊を率いて、この戦場から去っていく。
追撃をしようと思えば出来ただろうが、こっちも今までの戦闘でビームライフルのエネルギーは残り少ない、推進剤の方も心許ない。
そんな訳で、まずはアムロを……と思ったその瞬間……
『ああああああああああああああああああああああああああああっ!』
通信ではなく、心そのものにそんなアムロの慟哭が響き渡るのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1260
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1631