「いいか? ジムスナイパーⅡのコックピットからは絶対に出るなよ」
『分かってるわ。……それにしても、これがニーズヘッグ……何と言うか、アクセルの異名にこれ以上ないくらい相応しい機体ね』
ジムスナイパーⅡに乗っているクリスから、納得したような、呆れたような、そんな声が聞こえてくる。
現在俺とクリスがいるのは、ヘルシング艦隊がいた場所からかなり離れた場所。
ニーズヘッグのシステムXNについては、知っている者が少ない方がいい。
だからこその行動だった。
そしてクリスがここにいる理由は……本人がヘルシング艦隊と一緒に行動するのを拒否した為だ。
……まぁ、その気持ちも理解は出来る。
月に亡命する事を決めたとはいえ、ヘルシング艦隊は元ジオン軍というのは変わらないのだ。
その中には、当然のように連邦軍に強い憎悪を抱いている者もいるだろう。
そんな中でクリスだけをヘルシング艦隊に残すのは、色々と不味い。
一応サイクロプス隊とは友好的な関係を築いてはいるが、それでもクリスが不安に思い、俺と一緒に行動したいと主張したのも納得出来る事ではあった。
もっとも俺と一緒に行動するという事は、サイド6の一件が終わった事でソロモンに戻り、最終的にはア・バオア・クー攻略作戦に参加するという事になるんだが。
元ジオン軍と一緒にいるか、戦場に出るか。
そのどちらかを選ぶ事になったクリスが選んだのは、後者だった訳だ。
当然ながら、そうなるとクリスにもニーズヘッグを見せなければならない訳で……
「言っておくが、ニーズヘッグはシャドウミラーの中でも最高軍事機密だからな。くれぐれも情報を漏らすような真似をするなよ」
『あのねぇ、私だって連邦軍ではアレックスの開発に関わっていたのよ? 重要な軍事機密をどう扱うのかといった事は理解してるわよ』
「なら、いいんだけどな」
実際、ニーズヘッグというのはシャドウミラーの中でも最先端技術の塊だ。
……それどころか、魔力属性を持っていたり、グレートグランドマスターキーというネギま世界においても秘宝と呼ぶに相応しい物を持っていたり、ネオ・グランゾンのパーツを分析したり流用したりといったように、今の技術班でも完全に理解出来ている訳ではない部分も多い。
そういう意味では、最高機密という言葉ですら生温いだろう。
システムXNを起動し……最後に確認の意味を込めて尋ねる。
「クリス、最後の確認だ。これで俺と一緒に行くということは、最低でもア・バオア・クーの攻略戦には参加する事になる。それでも構わないんだな?」
『ええ、勿論』
一瞬の躊躇もなく、クリスは俺の言葉にそう返事をする。
これで少しでも躊躇するのなら、ソロモンに連れて行ってもア・バオア・クーの攻略戦には参加させないようにしようかとも思っていたのだが、見た感じではクリスは一切の迷いもない。
これならア・バオア・クーの攻略に回しても大丈夫だろう。
ただし、MSをどうするかが問題だろうな。
アレックスはまず論外。
ジムスナイパーⅡの方も、連邦軍の最新鋭量産MSである以上、それをルナ・ジオン軍が使っていれば非常に目立つ。
一応、ジャブローで報酬としてジムスナイパーⅡを貰っているので、ルナ・ジオン軍がそれを使ってもおかしくはないのだが、それでもクリスの存在が目立つのは出来るだけ避けたい。
それに、当然のようにMSには識別番号だったり登録番号だったりがされている筈で、連邦軍の方でそれを確認すれば、現在クリスの乗っているジムスナイパーⅡがスカーレット隊に所属するMSであるというのは十分に理解出来る筈だ。
「お前の家族に関しては、手を回してあるから心配するな」
不意に変わった話題に、映像モニタのクリスは疑問の表情を浮かべる。
ちなみにこれは事実で、リボーから一時的に他のコロニーに退避した諜報員達にその辺を頼んである。
クリスの家族が一体どういう判断をするかは分からないが、もし月に来るという判断をすれば、全力で協力するように言っておいた。
『ありがと』
「クリスの乗るMSについては、ソロモンに行ってから考える事にするか。……多分、ヅダになる可能性が高いけど」
現在のルナ・ジオン軍の主力量産MSは、ヅダだ。
その性能はベース機となったヅダと比べてもかなり高く、それこそリックドムⅡくらいの性能はあるんじゃないかと思う。
……装甲が薄いので、防御力という点では厚い装甲を持つドム系MSよりも明らかに脆弱だが。
『その辺は任せるわ。これでもMSの操縦にはそれなりに自信があるから、普通のMSなら乗りこなせるわよ。……普通なら、だけどね』
この場合の普通じゃないMSというのは、恐らくアレックスの事を言ってるのだろう。
俺が最初に工場に忍び込んだ時に聞いた話によれば、クリスはアレックスの反応速度に対応出来ていないって話だったし。
「それなら大丈夫だろ。……よし、じゃあそろそろ転移するぞ。準備はいいな?」
『……ええ』
一応、クリスも影のゲートで転移魔法というのは経験している。
だが、ニーズヘッグのシステムXNを使った転移というのは、魔法ではなくあくまでも科学技術によって行われるものだ。
同じ転移であると知ってはいても、未知の現象に緊張してしまうのは当然の事だろう。
「システムXN、起動。転移座標入力……OK。転移フィールド形成開始」
ニーズヘッグとジムスナイパーⅡの2機が、光の繭に包まれていく。
そして……
「転移」
その言葉と共に、ニーズヘッグとジムスナイパーⅡはソロモンから少し離れた場所に転移するのだった。
『これが……転移……』
光の繭が消滅した瞬間、周囲の状況が先程までとは全く違う光景になっていたのに気が付いたのか、接触回線を通じてクリスの驚きの声が聞こえてくる。
影のゲートを経験していても、またそれとは一味違った様子なのだろう。
それは分かるし、もう少しクリスにそんな感動に浸らせてやりたいという思いがない訳でもなかったが……それでも、いつまでもここにこうしている訳にもいかない。
ソロモンから連邦軍がパトロールをして、ここに近付かないとも限らないのだから。
そんな時、ニーズヘッグが見つかると色々とやばい。
かといって、ガンダム7号機はソロモンに置いてある。
俺だけなら、それこそ生身で移動しても構わないんだが……そこにクリスがいるとなると、また話が違ってくる。
感動しているクリスをそのままに、一旦ルナ・ジオン軍用の周波数でソロモンに通信を入れる。
……クリスの乗っているジムスナイパーⅡでソロモンに向かおうかとも考えたのだが、スカーレット隊のMSだとソロモンにいる連邦軍に知られると、色々と不味い。
ただでさえ、ジムスナイパーⅡは連邦軍の中でも非常に高性能な最新鋭量産機なのだから。
それを思えば、ルナ・ジオン軍がジムスナイパーⅡを使っているのを、連邦軍に怪しむなという方が無理だ。
まぁ、もし怪しんだとしても、レビルなら何も言わないだろうが……その下にいる連中も同じように反応するかと言えば、また別の話だろう。
寧ろ、レビルにはリボーの件で早めに話を通しておいた方がいいか。
連邦軍が何故か中立の筈のコロニーで最新鋭MSを開発していて、それを目当てにしてジオン軍が襲ってきた結果として、リボーに核ミサイルを撃ち込まれそうになったので、それを防いだ。
代わりに、リボーにいたクリスを貰い、アレックスと……ついでにジムスナイパーⅡも確保したと、そう話を通しておけば、レビルも無理は言えない筈だ。
アレックスの現物を失ったのは痛いが、それが結果としてリボーを守る事に繋がったというのは大きい。
アムロに行く筈だったアレックスを俺が貰った事になる訳だが……ぶっちゃけた話、アレックスの設計データは連邦軍に残っているのだ。
ルナ・チタニウムは非常に高価だが、それでも連邦軍にしてみればそこまで苦労する代物でもない。
であれば、連邦軍が再度アレックスを製造するくらいは難しくはないだろう。
「こちらアクセルだ。ルナ・ジオン軍、聞こえるか?」
通信を送り、少し待つ。
ソロモンを攻略するチェンバロ作戦が終わってから、まだ数日だ。
散布されたミノフスキー粒子が効果を発揮しなくなるまでの条件は様々だが、数日程度となれば、まだミノフスキー粒子が残っている可能性は高い。
この距離なら通信は届くだろうが、ミノフスキー粒子の影響で通信が聞こえにくかったり、場合によっては反応が鈍かったりするのだ。
このミノフスキー粒子の対策についても、後々色々と考える必要があるだろうな。
Nジャマーに対するNジャマーキャンセラーのように。
とはいえ、軽く調べてみた限りではミノフスキー粒子とNジャマーは同じ扱いには出来ないんだよな。
厄介さでも有用さでも、ミノフスキー粒子の方が上なのは間違いない。
いや、こっちの任意ですぐにでも無効化出来るという意味でなら、有用性はNジャマーの方が上か。
『アクセル代表? 戻ってきたんですか?』
通信に出たのは、シーマの部下の1人として何度か見た顔だ。
「ああ、早速だが迎えに来てくれ。ニーズヘッグでソロモンに移動する訳にはいかないし」
『分かりました』
短い通信が終わると、次にジムスナイパーⅡの方に通信を入れる。
「クリス、これからソロモンの迎えがくるから、そのつもりでいてくれ」
『分かったわ』
そう答えるクリスだったが、やはりどこか緊張しているように見える。
無理もないか。
つい数日前まで、クリスは連邦軍のエリートだったのだ。
だというのに、今はルナ・ジオンの一員。
いや、まだ正式にルナ・ジオンに所属してた訳ではない以上、どこにも所属していないといった形になるのだ。
その辺の事情を考えれば、今のクリスのようになってもおかしくはない。
とはいえ、これはあくまでもクリスが自分で決めた事だ。
それに、実際ルナ・ジオンは居心地のいい場所なのは間違いない。
連邦に所属するコロニーとかと比べれば、間違いなく税金や物価も安い。
また、コロニーと比べれば考えられないくらいの安値で食料を始めとした生活に必要な諸々を購入することも出来た。
まぁ、これは月の首都たるクレイドルにゲートがあって、色々な世界から各種物資や食料品を購入する事が出来るからなんだが。
この点だけでも、コロニーとは違う。
コロニーは、それこそ自分達で諸々を作るか、作っている他のコロニーから輸入するか、はたまた地球から輸入するか……といった手段を取る必要がある。
そういう意味でも、新鮮な食材を新鮮なまま購入出来るルナ・ジオンは、暮らしやすい場所なのは間違いない。
『ねぇ、アクセル。ルナ・ジオンについてもう少し色々と教えてくれる?』
「そうだな、取りあえず食べ物が美味いのと治安がいいのは自慢出来る事だな。もっとも、治安についてはコバッタとかが主に担っているから、監視されてるみたいで息苦しいと思う奴もいるだろうけど」
他にも後ろ暗い事のある奴は、コバッタの存在をかなり鬱陶しく思っているらしい。
そこまで神経質ではなく、その上で後ろ暗い事がない者にしてみれば、コバッタの存在は治安の点で非常に大きいのだが。
量産型Wもそうだが、何か困ってる時に頼めば大抵は何とかしてくれるし。
勿論、自分の代わりに店の支払いをしてくれとか、そういうのは当然のように却下されるんだが。
『治安、ね。だとすると、何か問題を起こして治安を悪化させたらどうなるの?』
「捕まって強制労働だな。ちなみに、月に死刑は存在しない。どんなに重罪であっても、基本的には強制労働だ」
『随分と優しいわね』
「そうか? 折角の労働力なんだ。それを排除するような真似は、勿体ないだろ」
それに……強制労働をやっている者の食事は、基本的にマブラヴ世界から入手した合成食だ。
この合成食の何が最悪かって、味はともかく栄養的には十分だという事なんだよな。
つまり、嫌々であってもこの合成食を食べていれば、栄養失調とかにはならない。
……料理の心得がある者が一緒に行動しているグループの中にいれば、ある程度食えるようにも出来るんだが、料理をやった事がないという奴達だけの集まりだった場合、それこそ食事は地獄でしかない。
また、そんな生活が嫌になって農場から抜け出そうにも、当然のようにコバッタや量産型Wが見張りにいる訳で……
ぶっちゃけ、強制労働で農業をやらせて食料を増やすというのは、コバッタや量産型Wといったような、こっちの手間暇を必要としない存在がいるからこそ、出来る事だ。
もし俺達にコバッタや量産型Wがいなければ、それこそ自分達が見張りをする必要があるし、見張りに対する賄賂とか、そういう心配もしないといけないし。
それらを説明すると、クリスは何故か微妙な表情を浮かべるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1205
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1620