「随分と疲れてるんだな。……この一件か」
そう言い、俺はモーニングセットを食べているクリスに、テーブルの上の新聞に視線を向ける。
TVの方では、現在リボーの政庁に記者がおり、中継をしている。
……ただし、現在のところ政庁から何らかの発表とかはないらしい。
「あら、何でそう思うの?」
「政府関係の仕事をしてるって言ってただろ? なら、当然のように今回の一件で忙しくしてるんだと思ってな」
現在、俺はクリスが軍人だとは知らない事になっている。
俺が知ってる表向きの情報は、クリスが政府関係の仕事をしているという事だけだ。
工場で盗み聞きした話によると、クリスは士官学校を首席卒業したらしいから、アルに聞けば士官学校に入学したという情報も知る事が出来たかもしれないが。
「正解。昨日の夜に呼び出されて、それでついさっきまで仕事をしてたのよ。それでようやく一段落して家に帰れるようになったんだけど、夕方前にはまた仕事に行かないといけないわ」
「それはまた……ご苦労さんって言った方がいいか?」
そう告げると、クリスはウインナーを食べる手を止め、不満そうな視線をこちらに向け、メニューを開く。
「それよりも、もう少ししっかりとした何かで労って欲しいわね。……これとか」
そう言いながら、クリスが示したのは……メニューに乗ってたバナナパフェの写真。
一瞬、本当に一瞬だったが、その写真がゴーヤクレープに見えた俺は……いやまぁ、うん。余計な事は考えないようにして、バナナパフェを注文する。
「……いいの?」
「食べたいって言ったのは、クリスだろ? 何でそんなに驚くんだ? ……まぁ、これから家に帰って寝るってのに、朝食を食べてバナナパフェも食べたりしたら、後々後悔しそうだけどな」
「ぐ……いいのよ。きちんと運動はしてるんだから」
アレックスのテストパイロットをやってるのを考えれば、運動をしているのは間違いないだろう。
もっとも実機に乗って動かしている訳じゃなく、シミュレータとかでの訓練なら、そこまで運動量はないような気がするが。
ともあれ、クリスにはジムスナイパーⅡのパイロットから庇って貰った件があったしな。
それを考えれば、バナナパフェの1つや2つ奢るのは問題ない。
「そうか。なら、思い切り食べてくれ。そうすれば……うん、もう少し豊かになるかもしれないしな」
「……どこを見て言ってるのかしら?」
さりげなく胸を庇いながら、ジト目を向けてくるクリス。
俺はそれに特にどうこうといったことを口にせず、食後の紅茶を楽しむ。
そんな俺の様子に、クリスは不機嫌そうな様子を見せつつ、それ以上は何も言わない。
ここで何か言えば、自分のダメージが大きいというのが、分かってるんだろうな。
「それで、今回の一件はどうなってるんだ?」
「あのね、言える訳ないでしょ」
呆れの視線を向けてくるクリス。
クリスにしてみれば、連邦軍の人間なので政庁よりも詳しい事情は知っているのだろうが、それは余計に言う事は出来ない……といったところか。
それを理解しつつも、俺はクリスと世間話を続ける。
「アルは今日、学校か? ……というか、昨日の今日で学校はやってるのか?」
普通に考えれば、この状況で学校の授業をやるかと言われれば正直微妙なところだろう。
だが、コロニー内ではどのような教育をしているのかは、俺には分からないしな。
もしかしたら、このコロニー特有の何かがあったりとか、そういうのもあるかもしれないしな。
「え? さぁ? 多分今日は休みじゃないかしら。昨夜から仕事場に詰めてたから、その辺は何とも言えないわね。……妙な真似をしてないといいけど」
心配そうな様子を見せるクリス。
まぁ、アルは思い立ったら即行動といったような性格をしているしな。
それを考えれば、クリスの懸念も決して何の根拠もない訳ではない。
ましてや、クリスはアルの事を小さい頃から知ってるんだし。
「アルの事だから……それこそ、自分達でジオン軍のMSをどうにかして探そうとか、そんな事をしてそうだよな」
「ちょっと、止めてよね。アクセルがそんな事を言うと、本当に起こりそうじゃない」
……まぁ、実際に俺の場合は今まで幾つものフラグを建てたり、そのフラグをへし折ったりとかしてきたので、クリスの考えは決して間違いではないのかもしれないが。
俺の言葉で若干不機嫌になったクリスの機嫌を直したのは、喫茶店の店員が運んできたバナナパフェだった。
果実としての果物は勿論、バナナのアイスだったり、シャーベットだったり、チョコだったり。
そんなので綺麗に飾り付けられたバナナパフェは、この店自慢のメニューだと、店員が言っていた。
考えてみれば、メニューのデザートの場所でも一際巨大な写真で紹介されていたしな。
それを思えば、この店一番のメニューというのは十分納得出来る。
「これ、美味しいわね……」
アイスを一口スプーンで口に運んだクリスが、感心したように告げる。
どうやらバナナアイスはクリスの口にあったらしい。
「満足して貰ったようで何よりだよ。……取りあえずクリスの疲れが癒やされたら、満足出来るし」
「あら、今日は優しいのね」
少し意外そうに俺を見てくるクリス。
クリスが俺をどういう目で見ているのか、少し知りたいくらいだな。
そうして少し時間が経過し……クリスもバナナパフェを食べ終えたのか、満足そうに頷く。
そうしてお互いに食後の紅茶を飲みながら、色々と話をする。
そんな中、不意にクリスが真剣な表情になって口を開く。
「ねぇ、アクセル。ちょっと聞きたい事があるんだけど……いいかしら?」
「聞きたい事? まぁ、それは別に構わないけど。何だ?」
「いえ、昨日の騒動があった時、アクセルがどこにいたのかと思ってね」
これは……どういう意味での質問だ?
普通に考えれば、クリスが俺を怪しんでいると思っても不思議ではない。
だが、イザークと名乗った昨日の俺と今の俺では、体格からして違う。
そうである以上、昨日アレックスに乗ったイザークと俺を同一人物だと判断するような理由はどこにもない。
そう思うも、クリスの真剣な視線を見る限り、迂闊な事を言う訳にもいかなかった。
「昨日? 夜だったから、泊まってるホテルにいたな。ただ、騒動があったからって事で、ちょっと外に出て様子を見ていたりしたけど」
取りあえずそう誤魔化しておく。
一応俺が昨日ホテルに泊まったのは、間違いのない事実だ。
問題なのは、実際に俺がホテルに戻ったのはアレックスの件が全て終わってからとなる。
その辺を調べられると厄介なのは間違いないが……幸い、俺が泊まったのは身分証とかがなくても泊まれるような、怪しげなホテルだ。
もし何かを調べようとしても、その辺を調べるのは難しいと思う。
勿論、警察とかその辺が本気になって調べれば、ホテル側でも渋々ではあっても協力する必要が出て来るだろうが……現在のリボーの状況を考えれば、警察にそこまでする余裕があるとは思えない。
ジオン軍のMS隊は死人が出ないように……リボーの住人に被害が出ないようにして行動したのは間違いないが、それでも移動する途中で車を踏みつけたり、建物にぶつかって破壊したりといったような事は起きてるのだから。
……多分、本当に多分だが、建物を破壊したり車を踏み潰したりしたのって、あのザクのパイロットだろうな。
他のMSパイロットは全員精鋭と呼ぶに相応しいだけの技量を持っていたが、あのザクのパイロットだけは、センスはあっても現時点での技量は未熟と呼ぶしかなかったし。
ともあれ、そんなザクのパイロットのおかげで、現在警察は現場検証とかで忙しく、他の事に手を回すような余裕はない。
「そう、ホテルに……無事だったのよね?」
「そうだな。何だかんだと、俺が泊まっているホテルはMSが通った場所からは離れていたしな。現場に行った時は、もうMSはなかったよ」
これは事実だ。
俺が泊まったホテルはMSが移動した経路からは外れており、全く被害らしい被害が出ていないというのは間違いなかった。
この辺は調べられればすぐに知られる事なので、わざわざここで嘘を吐く必要もないだろう。
「そう。なら、いいんだけど……」
「どうした? 俺の心配をするなんて珍しいな」
「アクセルでも、危ない目に遭ったら大変でしょ? なら、その辺を少し心配するくらいは当然じゃない」
拗ねた様子を見せるクリス。
何気にこういう表情はクリスに似合うんだよな。
普段は……というか、アルの前では隣の優しいお姉さんといった様子を見せているのが影響しているのか、それとももっと別の理由か。
ともあれ、クリスの様子を見る限りでは俺を疑っているといった訳ではない……のか?
正直なところ絶対に怪しんでないとまでは言えないが、それでも多分大丈夫なのは間違いないと思う。
「俺でもって言い方はどうかと思うけどな。……まぁ、クリスが俺を心配してるのは、嬉しく受け取らせて貰うよ」
「何よ。言っておくけど、別に私はそこまでアクセルの事を心配していた訳じゃないんだからね。そこは誤解しないでよ」
こういうのも、ツンデレなのか?
クリスの態度にそんな疑問を抱きつつ、時計を見る。
そろそろモーニングという時間が終わりそうだ。
食事が終わったのに、いつまでも店の中にいるのもどうだろうな。
「さて、時間も時間だし、俺もそろそろ用事があるから店を出るよ。クリスはどうする? もう少しいるか?」
「いえ、私も家に帰って眠りたいわ。また夕方から忙しくなるんだし」
そう言い、クリスも席から立つ。
そして会計になった時……
「何よ、私が奢ってあげるって言ってるでしょ?」
「こういう時は男に支払わせるものだろ?」
「あのね……アクセルみたいな年下の子が私みたいなお姉さんに奢るなんて5年早いの。分かる?」
「5年……?」
じっとクリスの胸を見てそう告げると、当然のようにクリスも俺がどこを見ているのか分かったのだろう。
慌てて手で自分の胸を隠す。
そんなクリスの手から、どんなメニューを注文したのかといった紙を奪い取り、店員に渡して素早く会計をする。
……会計をした店員が女だった為か、クリスの胸について口にした俺にどこか責めるような色があったが、取りあえずそれは気にしない事にしよう。
ちなみに、本当にちなみにだが、その店員も胸の方はクリスと比べてもかなり貧しかったが……うん。きっとそれは気のせいだな。
ともあれ、若干の問題はあったが会計は無事に終わらせて店から出る。
「……もう。本当に奢らせるつもりはなかったのに」
そして、当然ながら俺の前ではクリスが不満そうな様子を見せていた。
クリスにしてみれば、俺のような子供に奢られた事が面白くないのだろう。
また、それ以外にも胸の件でからかわれたのもあるのかもしれないが。
「これは昨日今日、そして明日と、仕事で忙しくしているクリスへの激励だとでも思ってくれ」
「……分かったわよ。じゃあ、私はそろそろ家に帰るから。……ご馳走様」
「ああ。そっちも色々と大変だと思うけど、頑張れよ」
そう言い、俺はクリスと別れて歩いていき……
「アクセル!」
と、不意にその背中にクリスの声が聞こえてくる。
何だ? とそちらを見ると、そこには真剣な表情をしたクリスの姿があった。
「あの……ありがとう」
それだけを言うと、クリスはその場を走り去る。
今の感謝の言葉は一体何だ?
普通に考えれば、喫茶店で奢って貰った事についてだろう。
だが、それだけであそこまで真剣な表情で感謝の言葉を口にするか?
そうなると、考えられるのはもっと別の……いや、まさかな。
喫茶店での会話の時も一瞬、俺を怪しんでいるのではないかといった風に疑問には思ったが、クリスの性格から考えて、俺がイザークだと知ってる……もしくは予想してるのなら、この状況で何も言わないというのは分からない。
けど、なら何であんな風に感謝の言葉を口にしたんだ?
そう思うも、ここで追って聞いても、多分何故そのような事をしたのかといった理由は口にしないだろう。
取りあえず、今の感謝の言葉は気にしないことにして……まず今の俺がやるべき事は、ジオン軍と連邦軍に関しての情報収集だ。
そしてこの状況で情報収集をするとすれば、当然のように向かうのはルナ・ジオンの諜報員が拠点としている場所だ。
俺がこっちで色々と調べるよりも、本職の連中から事情を聞いた方が正確で多数の情報を入手出来るだろう。
……とはいえ、向こうも昨日の今日で何らかの情報を入手出来ているとは、限らない訳だが。
ただ、ソロモンの方で何か動きがないのかというのも、気になるし。
現在、ア・バオア・クーの攻略を準備している筈だが……何も問題がないといいんだが。
そんな風に考えながら、建物の陰に入ってそこで影のゲートを使うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1190
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1617