「じゃあ、またね。アルは私が送っていくから」
「ああ。ごちそうさん」
喫茶店から出ると、もう既に夕方になっていた。
正確には、ここはコロニーの中である以上、本当の意味での夕方という訳ではなく、あくまでもコロニー側が夕方に設定したというのが正しいのだが。
ともあれ、2時間くらい料理を食べながら一緒に話した影響もあってか、クリスの俺に対する態度は若干柔らかくなっている。
……というか、俺が運ばれてきた料理を食べているのを見て、何故か気安くなったんだが、一体何でだ?
そんな疑問を抱くも、だからといってクリスがサイド6の側であった戦いについて情報を話すような事はなく、基本的に世間話だけで終わってしまったのは残念だった。
「……アクセルって、一体どこに住んでるの?」
「は? 俺か? リボーには用事があって来ただけだから、どこかのホテルでも適当に借りるつもりだけど?」
「ふーん。そうなの」
「何だ? もしかして泊めてくれるのか? ……まぁ、俺とクリスなら間違いは起きないだろうけど」
クリスのささやかな……いや、平均的な大きさくらいはあるのかもしれないが、俺の恋人達と比べるとどうしてもそのように思ってしまう胸を見ながらそう告げると、クリスの顔が急速に赤く染まっていく。
勿論それは照れで赤く染まってる訳ではなく……
「そう、そうなの。全く、こうなったら私が連邦政府の中でも選ばれた存在であるということを示さないといけないわね。ふふ……ふふふふ……」
当然のように、怒りで顔を赤く染めていた訳だ。
……とはいえ、こういう反応をするからクリスはついからかいたくなってしまう訳で。
「連邦政府でも屈指の……いや、何でもない」
「あら、何でもないなんて事はないでしょ? しっかりとその辺も教えて貰えないかしら? そうすれば、こちらとしても色々と教えてあげる事が出来るんだけど?」
ふふ、ふふふふ……と笑みを浮かべてそう呟くクリス。
なまじ美人なだけに、その迫力は凄い。
……さっきまでクリスの側にいたアルも危険を察知したのかそっと俺達から離れているし。
ただ、連邦軍の中でも選ばれた存在ってのは、一体何を言ってるんだ?
まさか、ニュータイプ……いや、食事をしている時にちょっと触れたことがあったが、ニュータイプに特有の感覚はなかった。
だとすれば、クリスがニュータイプという可能性はまずない。
けど、そうなると特別という言葉が気になるのも事実な訳で……さて、一体どうしたものか。
そんな事を考えていると、不思議な迫力を発しているクリスが俺の方に向かって1歩進む。
クリスの迫力に、少しからかいすぎたか? と思いつつ、そのまま後ろに下がる。
うん、俺を後退りさせたというのは、クリスにとって褒められてもいいことだと思う。
「あー……取りあえず、クリスが美人なのは間違いないと思うぞ」
それは、クリスを誤魔化す為に言ってる訳ではなく、俺の素直な気持ちだ。
実際、クリスが美人なのは自信を持って断言出来た。
それもクラスで1番の美人レベルではなく、学校で1番の美人クラス。……ミスコンとかに出ると、小規模なミスコンなら優勝間違いなしだが、大規模なものになると大抵が準優勝や3位で、時々優勝出来るといったようなレベルの美人だ。
……生憎と、俺の周囲にはそんなクリス以上の美人が揃っているので、クリスを見ても顔を赤くして喋れなくなるとか、そんな事はなかったりするが。
「そう、ありがとう。でも……アクセルにとっては、魅力的じゃないんでしょ?」
「いや、十分に魅力的だと思うぞ」
別に口説こうとは思わないけど。
その言葉は、もしクリスが聞いたら女としてのプライドを傷つけそうなので、黙っておく。
「ふーん。……言っておくけど、私はこう見えても着痩せする方なんだからね」
もう十分に女としてのプライドを傷つけてしまっていたらしく、クリスは俺に向かってそう言ってくる。
やっぱり本人もその辺を気にしてるんだろうな。
「着痩せしてるって言っても、俺には分からないし」
「……いいわ。ちょっとこっちに来なさい」
そう言いながらも、言葉とは裏腹にクリスの方が俺に近付いてくる。
もし俺が本当に外見通りの年齢なら、多分顔を赤くしたりするんだろうな。
10代半ば……中高生辺りの男は、年上の美人に弱い奴が多いし。
勿論全員が確実にそうだと言い切る訳ではないが。
「で? そうやって俺に近付いて何をするんだ? 着痩せじゃないって言うなら、もしかしてそれを証明するのか?」
出来ないだろう。
そんなニュアンスを込めて、クリスに告げる。
実際、もしクリスが着痩せをするのだとすれば、それを俺に確認させるには直接見せるか、もしくは触らせるかするしかない。
だが、クリスの性格を考えれば、そんな事をするように思えないのは事実だった。
しかし……そんな俺の言葉に、クリスは頷く。
「ええ。プールがあるから、今から行くわよ。それなら、私が着痩せをするかどうか分かるでしょ?」
「……プール、あるのか?」
まぁ、サイド7には川とかあったし、ここにプールの類があってもおかしくはない。
それでもここがコロニーであるという事を考えれば、少し……いや、かなり贅沢な設備なのは間違いない。
とはいえ、月とかも普通にプールとかはあるから、そこまで難しい話でもないのか?
「ええ、あるわよ。もっとも、そこまで大きなプールじゃないけど」
「……でも、そこに今から行くのか?」
そう言い、空を見る。
コロニーの中なので、そこにはあるのは空ではないのだが。
ともあれ、コロニーの中はもう夜に近い。
そもそもの話、だからこそアルを家に送っていくという話だったし、クリスが俺はどこに泊まるのかといったような事を聞いていたのだ。
にも関わらず、これからプールに行くってクリスの言葉は素直に納得する事が出来ない。
まぁ、それでも水着のクリスが自分の身体を俺に見せつけるといったようなのは……まぁ、健全と言ってもいいのか?
「勿論よ。アルを家に送ってから行くから、少し時間が掛かるけど」
「そう言われてもな。水着なんか持ってきてないぞ?」
実際には、今まで何度も海に行ったりしてるので、空間倉庫の中に水着は入っている。
入っているが……まさか、今のこの状況でそんな事を言える訳がない。
「大丈夫よ。プールでも簡単な水着は売ってるし」
「……そこまで無理をする事はないぞ?」
そんな俺の言葉に、クリスは更に意地になって口を開く。
「無理をするって何よ、無理をするって。アクセルが私をどう思ってるのか、その言葉でよく分かったわ」
無理をする必要がないという俺の言葉を妙な風に理解したのか、顔を赤くしながらそう言ってくる。
「取りあえず、クリスとプールに行きたいのは間違いないが、これからってのはちょっとな。明日なら空いてるけど、どうだ?」
俺が連邦軍の軍人なら、それこそ今はソロモンで色々とやるべき事があるのだろう。
だが、俺は月の人間だ。
ア・バオア・クーを攻略する為の諸々は特に関係がない。
ルナ・ジオン軍の規模自体はそれ程大きくはないし、シーマがいれば十分だ。
それ以外だと、重装フルアーマーガンダムの整備とかがあるが……これも基本的には俺がやるのは最後の調整くらいだ。
なので、基本的にはやるべき事がない。
やるとすれば……それこそ模擬戦とかだろう。
そんな訳で、今の俺はやるべき事がない訳だ。
……ちなみに、本当にちなみにの話だが、クリスが連邦軍の軍人ならここにいていいのか? といった疑問がない訳でもない。
ソロモン、ア・バオア・クー、そしてサイド3。
そのどれを攻略するにも、戦力は幾らあってもいい筈だ。
なのに、中立のサイド6に連邦軍の軍人がいる。
クリスの故郷がこのリボーらしいから、そこまでおかしな事ではないのだが……それでも疑問を抱くなという方が無理だ。
プール……プールか。うん、やっぱりその辺りの探りを入れる意味でも、明日はプールに行った方がいいのかもしれないな。
「明日? 明日は……うーん、ちょっと午前中は外せない用事があるのよね。あ、でも午後からなら時間は空いてるから、午後からでもいい?」
「俺はそれで構わない。明日の午前中に水着とかを買ってもいいし」
まぁ、暦的には12月なので、水着がプール以外で売ってるかどうかは分からないが。
ここは地球ではなくコロニーだし、そういう季節感は気にしなくてもいいんだろうけど。
ただ、コロニーによってはその季節に合わせて気候を調整しているところもあるって話を聞いた事があるな。
「そう。なら、明日の午後1時にプールの前でね。……プールの場所は分かる?」
クリスの言葉に首を横に振る。
そもそもの話、俺はこのリボーというコロニーには殆ど来た事がないのだ。
そうである以上、プールのある場所など知る筈がない。
とはいえ、プールのある場所は別に隠されている訳でもないらしく、クリスからあっさりと場所を教えて貰った。
……それにしても、幾ら胸の事を言われたからって、会ったばかりの男と一緒にプールに行こうとするか?
いやまぁ、クリスにしてみればデートという認識はないんだろうが、これって普通に考えればデートだよな。
クリスの性格は、優しい近所のお姉さん……というのとはちょっと違うみたいだが、それでも自分から男を誘うようには見えない……見えない? 何気に結構後先考えないような感じもするし、実はこれってクリス的にはおかしな話じゃないのか?
もしくは何かを企んでいる……いや、やっぱり考えすぎか。
ともあれ、俺を怪しんでいたとしても俺を調べられる筈がない。
調べられても、俺を捕まえるなんて真似はこのUC世界の者には不可能だし。
「じゃあ、明日ね。……いい? 私が着痩せしているのをしっかりと教えてあげるんだから。それを忘れないでよ」
そう言い、クリスはアルを連れて家に帰っていく。
うん、やっぱりクリスが何かを企んでいるというのは、単純に俺の考えすぎのような気がしてきた。
ともあれ、明日の約束をしてしまった以上はここでどこか泊まる場所を用意しないとな。
やっぱり月の人間が使っている場所に向かうか?
けど……もしクリスが俺を怪しんでいるとすれば、わざわざ自分から月の拠点の1つを教えるなんて真似をしなくてもいいだろう。
そうだな。ビジネスホテルか何かに泊まるのがいいか。
そう判断すると、俺は適当なビジネスホテルに向かう。
サイド6は、ジオンの独立戦争が始まって早々に中立を宣言したのを見れば分かるように、元々上層部がやり手なのだろう。
他のコロニーから来た客の為に、ビジネスホテルの類は結構ある。
……もっとも、サイド6を治めているのも連邦政府の人間で、自分の懐に入る金を増やす為の政策なのかもしれないが。
ともあれ、宿泊施設は結構ある。
あるのだが……出来れば身分証が必要な場所に泊まるのは避けたい。
クリスが俺を怪しんでいるのかどうかは、まだ分からない。分からないが、それでも身分証が必要な場所に行けば、色々と疑われる可能性がある。
ちなみに身分証という意味では、ルナ・ジオンの身分証を持っていたりする。
勿論本物ではなく偽物……いや、しっかりと行政府が用意した物なので、この場合は本物と呼ぶべきなのか?
ともあれ、身分証はある。
それでも、出来れば身分証を使いたくないというのは、一応念には念を入れてといったところだ。
そんな風に考えながら、表通りではなく裏通りに向かう。
何となくイメージ的には、こういう裏通りにあるビジネスホテルとかは、身分証がいらないような感じがするし。
とはいえ……当然の話だが、スラム街となれば色々と問題もある訳で……
「おらぁっ!」
不意にそんな声が聞こえてくる。
明らかに喧嘩か何かをしている声ではあるが、別に俺に絡んで来てる訳じゃないし……そう思っていると、裏通りの横道から1人の男が吹き飛ばされてくる。
「ぐっ……」
見た感じでは、金髪で顔立ちはそれなりに整っている。
ただし、顔に殴られた跡があるのを除けばだが。
スラム街にいるような人間には見えないんだが……まぁ、その辺は俺がどうこう言う問題じゃないか。
とはいえ、道のど真ん中に倒れてる以上、邪魔なのは間違いない。
そんな金髪の男を追って、数人の男が姿を現す。
見た感じだと、数人の男が恐喝でもしようとして、それを金髪の男が断ったといったところか?
そう思っていると、数人の男の方が1人の俺を見つけて言い獲物だと思ったのか、こちらに向かって近付いてくる。
「はぁ」
そんな溜息と共に男の1人が何かを喋るよりも前に気絶する程度の強さで殴って地面に寝転がさせると、俺は金髪の男を避けてその場から立ち去る。
背後で金髪の男が何かを騒いでいたり、男達が唖然とした様子を見せていたりしたが、俺の経験上ここで足を止めれば間違いなく面倒な事になるので、それは無視するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1190
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1617