シン・マツナガ。
それはドズル率いる宇宙攻撃軍の中でも白狼の異名を持ち、白のパーソナルカラーを許されているパイロットで、シャアがいなくなった今では宇宙攻撃軍のトップエースと言ってもいいだろう。
だが同時に、マツナガの名前は別の理由でも知られている。
つまり、ドズルの腹心。そしてドズルを兄とも慕う人物として。
そんなマツナガにとって、ドズルの乗った巨大MA……シーマからの情報だとビグ・ザムという名前らしいが、そのビグ・ザムを撃破してドズルを殺した俺は、決して許せる相手ではないだろう。
だからこそ、血眼になってドズルの敵討ちの為に、俺を殺そうしているのだ。
あるいは、俺がビグ・ザムを消滅させた事によって、ドズルの死体さえ消滅させたと思っての行動か。
……実際には、ビグ・ザムは消滅させた訳ではなく空間倉庫の中に収納しただけなのだが。
「分かった。ともあれ、そっちは技術情報や……可能なら他にも適当に色々と奪ってからソロモンから撤退してくれ……っと!」
『あいよ』
シーマにしてみれば、俺が今何をしているのかは分からないのか、それとも分かっていても俺なら死なないと判断しているのか。
その辺りの情報は分からなかったが、ともあれ通信が切れる。
ちなみに俺がシーマと話している間にも、当然のように右足を失った白いゲルググは止むことなく攻撃し続けていた。
まさかドズルが死んでいたとは思わなかったし、マツナガがこれだけ血眼になってこっちに攻撃してくる理由も理解出来た。
問題なのは、マツナガをどうするべきかということか。
この様子を見る限りでは、ルナ・ジオンに投降するという選択肢は存在しない。
だが、ドズルが可愛がっていたガルマの部下なら、あるいは……
もっとも、ガルマに対してもドズルの事はいずれ話さないといけないだろうな。
そもそも、俺が言うべき事じゃないだろうが、何だって一軍の長ともあろう者が最前線に出て来る?
俺みたいに、この世界でなら死なないといった訳でもないし、ビグ・ザムは強力なMAだったが、それでもドズルに突出した操縦技能があった訳でもない。
あのバリアがあるから、自分が死ぬ事はないと判断したのか。
ともあれ、迂闊としか言いようがないのは間違いない。
「とにかく、お前には捕虜になって貰うぞ!」
ビームナギナタの一撃を受けながら、至近距離で小型ミサイルを1発発射する。
白いゲルググの左腕が肩の付け根から破壊され、持っていたビームライフルごとどこかに流れていく。
至近距離……ほぼゼロ距離と呼ぶに相応しいこの距離でミサイルを使うのには、若干の躊躇いがあった。
だが、重装フルアーマーガンダムはMS本体もセカンドアーマーもルナ・チタニウム製だ。
直接命中するのならともかく、間近で命中した程度なら被害が出るとは到底思えなかった。
ともあれ、これで残りは手足が1本ずつ。
そんな状態になっても、スラスターを使ってビームナギナタを振るゲルググだったが、機体が万全の状態ではない以上、その威力はどうしても落ちる。
最初に戦っていた時と比べると、圧倒的に落ちるビームナギナタの威力に、その一撃をビームサーベルで弾くと、返す刃でビームナギナタを持っていた右腕を肩から切断する。
こうなれば、もうゲルググには攻撃手段はない。
ないにも関わらず、唯一残った足で蹴りを放ってくる。
それを回避し、ビームサーベルでその足も切断すると、唯一残ったのは胴体と頭部。
……そして、これもまた当然のようにバックパックのスラスターを全開にして、頭突き、もしくは体当たりを食らわせようとしてくる。
その一撃を受け止め、マツナガに接触回線で通信を送る。
「ドズルの遺体が残ってるかどうかは分からないが、ビグ・ザムだったか? あのMAは俺が確保してあるぞ」
『……何?』
その言葉は、マツナガにとっても予想外だったのだろう。
訝しげな様子を見せつつも、これ以上の反撃は止める。
……まぁ、ゲルググは四肢を失い、その胴体を重装フルアーマーガンダムによって受け止められているような、そんな状況だ。
普通に考えれば、この状況ではこれ以上どうしようもないだろう。
自爆装置の類でもあれば、話は別だったが。
あ、でもゲルググはジオン軍にとって最重要機密の1つと言ってもいいのか。
そのスペックは、ジムはおろかガンダムをも上回ってるって話だし。
もっとも、今のガンダム……特にガンダムとして一番有名と言ってもいいアムロのガンダムは、以前とは違ってG-3ガンダムに改修されている。
それを思えば、やっぱりゲルググはガンダムよりも性能は低い……と、そう思ってもいいのかもしれないな。
『今の言葉は本当か? 嘘でも何でもなく?』
「ああ。……そうだな、こう言えば信頼性も上がるか? 俺の名前はアクセル・アルマー。月……というか、シャドウミラーの人間だ」
『アクセル・アルマー!? 月の大魔王だと!?』
俺の名乗りを聞いて、マツナガが驚きの声を上げる。
いや、ルナ・ジオン軍もチェンバロ作戦に参加してるんだから、俺がここにいてもそうおかしな話ではないと思うんだけどな。
というか、何気に月の大魔王という異名は広まってるんだよな。
おのれ、ムウめ。
……まぁ、俺もエンデュミオンの鷹という異名を広げたんだから、何とも言えないんだが。
それに、ぶっちゃけた話、月の大魔王という異名が広がったのは、やっぱり俺がニーズヘッグ1機だけでグラナダを落として、しかもその映像を流した事が影響している。
そう思えば、ある意味で自業自得なのかもしれないが。
「そうだ。俺はお前達が月の大魔王と呼んでいる男だよ。だからこそ、白狼。お前も俺が魔法を使えるというのは分かっている筈だ。現在俺の魔法によって、ビグ・ザムは俺だけが取り出す事が可能な場所に収納されている。ビグ・ザムはこちらで色々と調べる必要があるから渡せないが、ドズルの死体は……コックピットにまだ残ってるかどうかは分からないが、もし残っていたらそちらに渡してもいい」
『……聞かせろ。お前達は魔法を使えると聞いた。それを使えば、ドズル閣下を生き返らせる事は可能なのか?』
「無理だな」
一縷の希望に縋るようにして尋ねてくるマツナガの言葉を、俺は即座にそう切り捨てる。
実際、シャドウミラーにおいても死者の蘇生といったような事は出来ない。
Wシリーズの技術を使えば、擬似的に生き返らせられるかもしれないが、それはドズルの外見をしていても、ドズルの記憶は持っていない。
疑似記憶のデータとかがあれば、それを入力する事も出来るだろうが……ドズルの疑似記憶など、ある訳がない。
とはいえ、今の状況ではマツナガがこちらに一方的に恨みを抱くだけだろうから、それに対処する為にカードを1枚切るとする。
「ただ、お前に1つ希望を与えてやれるとすれば……」
『すれば?』
「お前の事を、ドズルが可愛がっていたガルマに紹介してやろう」
『ガ……ガルマ様だと!?』
ガルマの名前が俺の口から出てくるのは予想外だったのか、マツナガは動揺したように呟く。
まぁ、ガルマは表向き死んだという事になっているんだし、それを考えれば当然の結果なのかもしれないが。
俺が予想していたよりも大きな驚きなのは……ああ、そうか。マツナガはドズルと昔から知り合いだったらしいから、当然のようにドズルが可愛がっていたガルマと面識があってもおかしくはないのか。
『ガルマ様は、生きてるのか!?』
「ああ。戦死しそうな時に俺が助けた。今は安全な場所で、恋人と2人で穏やかに暮らしているよ」
取りあえず、シャアに暗殺されそうになったというのは言わない方がいいだろう。
これからシャアと一体どのように関わっていく事になるのかは、俺も分からない。
だが、もし本当にその辺りの情報を教えなければならないとなると、それはガルマが教えるだろう。……勿論、それはマツナガが俺の提案に同意すればの話だが。
『……そのような事が……』
愕然とした様子の、マツナガの言葉。
ガルマはジオン公国においては非常に高い人気を誇っていただけに、マツナガが驚くのも当然か。
「さて、どうする? お前が大人しく降伏するのなら、こちらも色々と便宜を図れるんだが?」
普通なら、こうして誘ってもそれに従うような者はあまりいないだろう。
だが、マツナガの場合はジオン軍の軍人というよりは、ドズルの腹心といった感じだ。
言ってみれば、サハリン家に対するノリスのスタンスと似たようなものか。
ただし、マツナガの忠誠心が向けられているのはザビ家ではなく、ドズル個人だが。
それだけに、マツナガも面識があり、ドズルが可愛がっていたガルマがいるとなれば、どう判断するのか。
『……分かった。降伏しよう』
よし、ビンゴ。
人によっては、この辺りの判断を感情から反対するといったような事をしかねない。
だが、マツナガはこうして短く話しただけでも、感情よりも理性を重視する性格に思えた。
いやまぁ、実際には重装フルアーマーガンダムに向かって特攻するかのように攻撃してきたのを思えば、完全に理性だけではないのだろうが。
だが、それもドズルという人物を失ったからの事。
そのドズルが可愛がっていたガルマがいると知れば……こうなるのは、ある意味で予想通りだと言ってもいい。
「よし、じゃあ移動するぞ。……お前の機体はどうだ? 四肢を破壊したが、爆発するとか、そういう感じはしないか?」
白狼の異名を持つマツナガをこうも簡単に無力化出来たのは、俺の操縦技術が勝っていたり、MSとしての性能差だったりもするが、最大の原因としてはやはりマツナガの頭に血が上っていた事だろう。
いつも通りの動きをしていれば、俺ももう少し苦戦していたのは間違いない。
……MA的な性能を持つ重装フルアーマーガンダムにとって、ゲルググのような運動性が高いMSというのは、ある意味で鬼門だし。
それでも対処出来たのは、重装フルアーマーガンダムはガンダム7号機がコアユニット的な存在で、ある程度自由に動けたからというのが大きい。
『問題はない。その辺りはきちんと処置してある』
どうやら感情に流されて攻撃してきたとはいえ、MSパイロットとしてその辺の処置はやっていたらしい。
ある意味で半ば本能的なものなのかもしれないが。
「分かった。なら大丈夫だな。……もう少し待ってろ」
そう言い、今度こそ俺はヤンマに向かう。
途中で連邦軍の部隊とすれ違ったりもしたが、ソロモンに向かうのに集中している為か、妙なちょっかいを掛けられる事もないままに。
……ゲルググの胴体と頭部を持っている俺を不審に思いはしたかもしれないが、俺の乗っている機体がガンダムの一種だというのは、それこそ見れば分かる。
だからこそ、見た者も特に何をするでもなく素直にすれ違ったのだろう。
映像モニタを確認すると、ソロモンの周辺ではまだ戦闘の光が見える。
恐らくまだソロモンから撤退せず、残って戦っている者が……もしくは撤退する味方の殿として戦っている者がいるのだろう。
ルナ・ジオン軍の方は一体どうなってるのか、ちょっと気になる。
ただ、シーマが指揮を執り、青い巨星や黒い三連星がいて、ビグロ隊がおり、更には高機動型ギャンを使うガトーとノリスがいる。
ぶっちゃけ、戦力的には過剰戦力と言っても決して間違いではない……と、思う。
だからこそ問題はないだろうと安心しながら、ヤンマに到着した。
「ヤンマ、こちらアクセルだ。これから帰還する。捕虜が1人と、確保したMS……胴体と頭部だけだがある」
『了解しました』
艦長役の量産型Wと通信を交わし、そのままヤンマの格納庫に入る。
すると、すぐにディアナの技術者達がやって来るが……重装フルアーマーガンダムが抱えているMS、胴体と頭部だが白く塗られているゲルググを見て、動きを止める。
ディアナというのは、月にやって来た技術者達を一纏めにして作った兵器メーカーだ。
だが、当然の話であはるが、そこにいるのはジオン公国の兵器メーカーの方が多い。
ジオニック社、ツィマッド社、MIP社。
それ以外にも、小さな兵器メーカーからやって来た者も含めれば……何だかんだで、ディアナの技術者の7割……いや、8割はジオン関係者となる。
そしてジオン関係者であれば、白のパーソナルカラーを持ち、白狼の異名を持つマツナガの事を知らない訳がない。
俺がコックピットから降りると、それに気がついたディアナの技術者の1人がこちらに近付いてくる。
「な、なぁ、アクセル。あれってもしかして……」
そんなディアナの技術者の言葉を遮るように、胴体と頭部だけのゲルググのコックピットが開き、そのパイロットが姿を現す。
そんなパイロットを見て、パイロットスーツ越しでも誰か分かったのだろう。
俺の側までやって来た技術者が呟く声が聞こえてきた。
「シン・マツナガ……」
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1190
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1617