「では、サラブレッド隊の方には監視をつけておきます」
「ああ。頼む。……とはいえ、多分妙な行動をするような奴はいないと思うけど。ただ、2隻のサラミスの乗員は、妙な真似をしないとも限らないから、注意してくれ」
サラブレッドに乗っている者達は、比較的俺やガトー、ノリスに対しても友好的だった。
ガンキャノン隊のカークのように、個人的に思うところがあるような奴はいたが、サラミスの方は全般的にこちらに対して敵意の類を抱いていたように思う。
そうである以上、寧ろ何らかの行動を起こすとすれば、それはサラミスの乗員の方だろう。
……とはいえ、サラブレッド隊という精鋭部隊に配属されてるような連中が、そんな馬鹿な真似をするとは思えないし、思いたくない。
だからこそ、出来れば妙な行動をして欲しくないと、そう思っているのだが……正直、どうなんだろうな。
ガトーやノリスに相談しようにも、自分の仕事を終わらせると真っ直ぐアイナに会いに行ったし。
「それと、アナハイムだな。サラブレッド隊と接触した影響で妙な真似をしないように注意しておいてくれ。考えすぎだとは思うが」
量産型Wは俺の言葉に敬礼する。
この世界の歴史を調べると、アナハイムはかなり急激に成長している会社だ。
それこそ、少し不自然に感じる程に。
恐らくではあるが、アナハイムと連邦軍……もしかしたら連邦政府の間には何らかの繋がりがある可能性があった。
勿論、何らかの証拠があって言ってる訳ではない以上、直接その件でどうにかする訳にいかないのも、また事実だったが。
「は!」
量産型Wが敬礼したのを見ると、改めて俺はこれからどうするべきかを考え……シムスとシャリアの件を思い出す。
「シムスとシャリアの2人はどうした?」
「既に政庁に向かっています」
どうやらもう連れて行ったらしい。
いや、俺が出来るだけ早く連れていくようにと言ったんだから、量産型Wとしては俺の命令に従っただけなのだろうが。
それだけ、シムスとシャリアという人物は早めにセイラが観察する必要があった。
これでシムスとシャリアがどのような結果になるのか……楽しみではある。
話した感じ、シャリアは特に問題ないように思えた。
だが、それはあくまでも俺がそう思っただけで、実際にどうなのかというのは、セイラに判断して貰う必要がある。
そして……シムス。
フラナガン機関の研究者として、一体どれだけの能力を持っているのかというのは、俺にも分からない。
フラナガン機関では落ちこぼれだったので実戦に回されたのか、それとも研究熱心だったからこそ、自分で前線に出て来たのか。
シムスと話した感じでは、自分から前線に出て来るといったような感じではないように思えたが……その辺、どうなんだろうな。
ともあれ、今の状況で俺がやるべき事は……シムスとシャリアはセイラに任せたんだから、その2人が乗っていたブラウ・ブロをどうにかする必要があるな。
「セイラに通信を繋いでくれ」
量産型Wに頼むと、すぐに通信が繋がる。
仕事の途中ではないのか? と思わないでもなかったのだが、特に嫌そうだったり、迷惑そうだったりはしていないのでよしとしておこう。
『アクセル? どうかして?』
「ああ。シムスとシャリアについての連絡はもう聞いてるよな?」
『ええ。もう少ししたら会う予定になってるわ』
「その2人の判断を頼む。どっちも、出来れば取り込みたい人材だ」
『構わないわ。けど……シムスの方は、どうなるか分からないわよ?』
「それで構わない。……それで、その2人が乗っていたブラウ・ブロはどうすればいい?」
今回の本題はこれだ。
だが、そんな俺の問いに、セイラはあっさりと口を開く。
『ディアナに持っていって貰える?』
「いいのか? これ、ニュータイプ用のMAだぞ? なら、ニュータイプ研究所に持っていった方が……」
『無理よ。人数が少ないもの。そのMA、ブラウ・ブロだったかしら。その解析にまでは手が回らないわ。なら、最初からディアナに持っていって解析して、ニュータイプが必要な場所に限って研究所から人を呼び寄せた方が効率的よ』
そう言われれば、俺も納得するしかない。
現在、クレイドルに存在するニュータイプ研究所は、正直なところ名前負けしているに等しい。
何故なら、ニュータイプ研究所にいる研究者は、俺達がサイド6のフラナガン機関の研究所を襲撃した時に捕らえた研究者のうち、子供達を虐待していなかったと……もしくは虐待するにしても、上からの命令で渋々といった研究者だけを使っているのだから。
ちなみに虐待していなかった研究者は本当に少数しかいなかったが、そのような者達は即採用。
上からの命令で渋々虐待していた者達も少数ではあったが、こちらは農場で強制労働をして短い刑期を終えた上で、研究者として採用という事になっている。
……ちなみに、本当にちなみにの話だが、農場で強制労働をした研究者達はもう農場で働きたくないと心の底から思っているらしい。
その気持ちは分からなくもない。
研究者というのは、その名の通り研究をする者で、肉体労働をするといった事は基本的にない。
そんな研究者が農作業を強制させられるのだから、最初は身体中が筋肉痛になり、ろくに動くことも出来なくなってもおかしくはない。
だが、強制労働が刑期である以上、コバッタや量産型Wは筋肉痛だからといって研究者を休ませたりはしない。
本当に怪我をして動けなくなれば別だが、全身が筋肉痛であっても、容赦はしないのだ。
筋肉痛が治るまでの数日、研究者達はまさに地獄を見ただろう。
不幸中の幸いと言うべきか、それとも不幸中の不幸と言うべきか、研究者達に出される食事は、当然のようにマブラヴ世界ですらもう使われていない合成食だ。
味という一点では最悪以外のなにものでもないが、栄養という点においてはしっかりとしている。
……だからこそ、犯罪者達の食事として合成食が使われているのだが。
そのような経験をした過去に比べ、現在は被検者を虐待してはいけないという枷があるものの、研究資金は豊富で、上からの催促もない。
まさに、地獄から天国へといったところだろう。
そんな研究者だから、当然のようにそのような環境を与えてくれたセイラには感謝し、それを行ってくれたルナ・ジオンという国になくなって欲しくないと思うのは当然だろう。
「分かった。ならブラウ・ブロはディアナの方に持っていくから、研究所の方から人を寄越してくれ。……そう言えば、シャリアは木星に行ってニュータイプに覚醒したって話なんだが、セイラはその辺はどう思う?」
『木星? 私はそのような場所に行ったことはないけど……』
「それは分かってる。クスコやマリオン、それに奇跡の子供達だって木星には行った事がないらしいしな。けど、それとは別に木星に行けばニュータイプに覚醒するというのはあると思うか?」
『そう言われても、正直分からないとしか言いようがないわね』
やはりセイラにとっても木星というのは特に分からなかったのか、不思議そうな表情を返される。
「やっぱりそうか。……ただ、もし木星が何らかの影響を及ぼしてニュータイプにするというのなら、何人か引き連れて木星に行ってみるのもいいと思わないか?」
『それは……やるというのならやってもいいと思うけど……木星に存在するコロニーに怪しまれるのではなくて?』
「え? コロニー……木星にあるのか?」
『当然じゃない』
セイラの言葉は、俺にとってもかなり驚きだった。
このUC世界にやって来てから数ヶ月が経つ。
それなりにこの世界の事について勉強したつもりだったが、木星の側にコロニーがあるというのは、完全に予想外だった。
いや、だが考えてみればそれも当然の話なのだろう。
この世界において、核融合炉を動かすにはヘリウム3が必須だ。
そしてヘリウム3が潤沢に存在しているのは、木星。
だとすれば、このUC世界において木星が重要拠点となるのは確実だろう。
シャリアが所属していたエネルギー船団も、恐らくはその船団が向こうに行って自分達でヘリウム3を取ってくるのではなく、木星に存在するコロニーからそのヘリウム3を買うか何かしているという事なのだろう。
木星が重要拠点であるが故に、そこに拠点となるコロニーを作るというのは納得出来る事だった。
「コロニーか。……けどそうなると、俺達がシステムXNで転移するなんて事をすれば、間違いなく怪しまれるな」
『でしょうね。現在の地球の情報がどこまで伝わっているのかは分からないけど、それでも間違いなく騒動になるのは決まってるわ。転移なんてしようものなら、それこそ宇宙人が攻めて来たと勘違いしてもおかしくはないと思うわ』
それは……と思わないでもなかったが、ある意味でその判断は間違っている訳でもないのだ。
だが、なるほど。木星にコロニーがあるとなると、それはある意味で美味しい存在だ。
このUC世界において非常に重要な資源を有するコロニー。
それでいて、木星という地球から遠く……それこそ片道数日や数ヶ月といった程度では到着出来ないような場所に存在するコロニー。
当然ながら、そんな過酷な環境ともなれば生活は苦しいだろう。
そして、月には……いや、ルナ・ジオンの後ろ盾となっているシャドウミラーには、転移技術がある。
何より、シャリアとの会話を考えると木星を見ればニュータイプとして覚醒する可能性のある者がいる。
様々な理由を考えれば、木星にあるコロニーと接触するというのは悪い話ではないように思えた。
「セイラ、木星にコロニーがあって、そこが資源的な意味でも重要な拠点なのは間違いないな?」
『え? ええ、それはそうだけど……アクセル、何か妙な事を考えていないわよね?』
映像モニタの向こう側で、セイラが疑惑の視線を向けてくる。
ニュータイプとしての能力で何かを感じたのか、それとも女の勘で何かを感じたのか。
その辺の詳細は分からなかったが、俺はそんなセイラに対して首を横に振る。
「別に変な事は考えていない。ただ、木星という場所にコロニーを建設しても、間違いなく生活は苦しい筈だ。連邦軍も、恐らく殆ど援助をしていなかっただろうし」
その辺は、連邦軍のコロニーに対する政策を見れば明らかだ。
俺が調べた限りでは、連邦政府はコロニーを棄民政策として扱っているのは間違いない。
そんな連邦政府が、木星に存在するコロニーに対して、潤沢な物資の類を渡すか?
そう言われれば、俺は当然のように首を横に振るし、UC世界で生まれ育った大半の者が俺と同意見だろう。
であれば、そんなコロニーに援助するというのはそんなに悪い話ではない。
まさに、WIN-WINだろう。
……まぁ、連邦政府にしてみれば、UC世界において非常に重要な資源のヘリウム3の生産地を月に抑えられてしまう訳だが、その辺は言ってみれば自業自得に近い。
どうしても奪われたくないのなら、それこそ棄民政策といったような真似をしないで、もっとしっかりと援助をすればよかったのだから。
『アクセルの考えている事は分かるけど、それは少し危険すぎるんじゃなくて? 下手をすれば、月以外の全てを敵に回すことになってしまうわよ?』
「敵に回したとしても……ヘリウム3なしで、どこまでやれると思う?」
実際には、俺達が木星のコロニーを確保したとしても、それで即座に地球にあるヘリウム3がなくなる訳ではない。
それこそ戦略物資である以上、何かあった時の為に一定量の貯蔵はあるだろうし。
だが……それでも貯蔵は貯蔵だ。
もしこちらに戦いを挑んでくるような事があった場合、当然のようにその戦いでヘリウム3は消費していくことになる。
だとすれば、最終的には資源を抑えている月が有利となるだろう。
とはいえ、それはあくまでも今俺が考えているのが上手く行けば……それも本当の意味で最上の結果を得られればの話だ。
正直なところ、そこまで上手く行くとは思っていない。
エザリアとかが出れば、もしかしたら上手く行くかもしれない。
だが、ルナ・ジオンの政治家というのは、どうしてもまだ技量的に未熟だ。……いや、俺に比べれば明らかに上なのは間違いないんだが。
『取りあえず、その件はこっちでも検討するから、まだアクセルは動かないでちょうだい。いい手なのは間違いないけど、ここで下手に動くと少し問題が大きくなりすぎてしまうわ』
「セイラがそう言うのなら、取りあえずこっちでは手を出さないが……月は何だかんだと、結構注目を浴びている。この戦争が終わった後で、連邦軍が妙な真似をしないとも限らない。その辺をしっかりと理解した上で判断してくれ」
俺の言葉に、セイラは真剣な表情で頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1060
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1591