ソロモンに近付くにつれ、デブリ帯もそれなりに増える。
そんなデブリ帯にまぎれながら、サラブレッド隊はソロモンの戦力を少しでも減らすべく……そして誘き寄せるべく、行動を開始していた。
「へぇ、さすがにやるな」
ヤンマのブリッジにある映像モニタでは、高機動型ギャンの振るうビームランスにリックドムが貫かれ、爆発する様子が映し出されている。
他の場所でも、当然のようにサラブレッド隊のMSが活躍しているが……そんな中で俺が何もしていないのは、ぶっちゃけ重装フルアーマーガンダムではデブリ帯の中で戦闘が難しいからだ。
普通のMSでも、デブリ帯の中では油断をすると岩塊や……場合によっては戦闘によって生み出された軍艦の装甲板とかにぶつかってダメージを受ける。
そんな場所で、重装フルアーマーガンダムに乗っている俺としては……うん。まさか、そんな場所に突入出来る訳もない。
いや、やろうと思えば多分問題なくそんな真似も出来るのだろうが、もしそんな真似をした場合、間違いなく重装フルアーマーガンダムに大きなダメージを受ける。
装甲に傷が付くとかそういう程度ならまだしも、下手をすればメガビームキャノンの砲身とかに致命的なダメージを負いかねない。
……あるいは、こちらの戦力が足りなければ、セカンドアーマーを外して素の状態のままのガンダム7号機で出撃してもいいのだが、今のところ戦力不足という事は全くない。
であれば、ここで無理にセカンドアーマーを解除したりといったような真似は、特に必要ないだろう。
ソロモンからこちらの予想以上の戦力が出て来れば、また話は別だったが。
とはいえ、そのような真似をすると戦力の逐次投入ではなく、それこそ一気に大量の戦力を派遣してくるという可能性もあるので、痛し痒しといったところだが。
「アクセル代表、サラブレッドから通信が入っています」
「出せ」
量産型Wは俺の声に頷き、操作を行う。
次の瞬間、映像モニタにはサラブレッドの艦長であるキルスティンの姿が映し出される。
『アクセル殿、どうやら今回の作戦は成功のようですな』
「ああ。こうして見ている限りでは、こちらが圧倒的に有利だ。とはいえ……そろそろ戦闘は終わらせて、脱出した方がいいと思うが?」
そう告げると、キルスティンはすぐに頷く。
『こちらからも、それを提案するつもりでした。今日は初めての攻撃なので予定通りに上手くいきましたが、それで調子に乗ってしまうと……色々と危険ですから』
この場合の、色々というのは具体的にフォルドの事だろう。
フォルドの腕が立つのは間違いない。
だがその性格上、非常に調子に乗りやすいというのも、間違いのない事実なのだ。
今回の作戦が上手くいったからといって、フォルドが調子に乗るという可能性は否定出来ない。
それでも、ガトーやノリスとの模擬戦で負けたから、多少なりとも大人しくなってはいるものの……今回の戦いで勝利をすれば、また増長する可能性は否定出来なかった。
そうならない為には、こちらでも色々と手を打つ必要がある。
いっそ、今度は俺が模擬戦の相手をするか?
ただ、既にサラブレッド隊が作戦行動に入った以上、重装フルアーマーガンダムはあまり模擬戦とかには使いたくない。
……とはいえ、俺がこの作戦に参加しているのは、あくまでも重装フルアーマーガンダムの実戦テストの一面が強いのだから、出来ればデブリ帯ではない場所で敵を誘き寄せるといった真似をして欲しいところだ。
「なら、今日の作戦はそんなに時間が経過しないうちに、終わるな」
『はい。そうなると思います』
この時点になっても、完全に安堵するといったような真似はしないか。
その辺は、結構好感を持てる。
個人的には、出来るだけ早くチェンバロ作戦の本番を迎えて欲しいというのが、正直なところだが。
そして……その後、30分も経たずに敵の殲滅は完了し、サラブレッド隊はその宙域から離れるのだった。
「それで、どんな具合だった?」
最初の作戦が終わり、ソロモン近くの宙域から移動している最中、俺はヤンマの中でガトーとノリスに尋ねる。
現在俺達がいるのは、ヤンマの中でもブリーフィングルームとして使われている部屋だ。
とはいえ、基本的には無人艦として使われているヤンマなので、こういう部屋があるのは少し驚くが。
ただし、今の状況を考えればありがたい。
「そうですね。敵も守りを固めているというのが、強く印象に残りました。……ドズル中将も、次に連邦軍が狙うのはソロモンだと、そう理解しているのでしょう」
「うむ、ガトーの言う通りだと思います。向こうの士気も決して低くはありませんでしたな。ただ……士気はともかくとして、MSの操縦技術は高い者と低い者が揃っているように思えました」
ノリスの言葉に少し疑問を覚え……だが、すぐに納得する。
つまり、ソロモン……いや、ジオン軍では、兵士が枯渇してきているのでは? と、そう思ったのだ。
考えてみれば、ジオン軍はただでさえ国力が少ない状況で、ここまで連邦軍と戦ってきた。
その上で、オデッサを攻略され、オーストラリアも攻略されつつあり、北米も同様に攻撃を受けている。
その辺の事情を考えれば、ジオン軍のベテラン兵士は……全員が死んだとは限らないし、実際にハワイに逃げ込んでくるような者もいるが、それでもジオン軍の統制下にないというのは間違いない。
ましてや、ルナ・ジオンの建国と同時に、月に移住してきたジオン公国の人間も結構な数がいる。
そう考えれば、ツィマッド社が露骨に保身に走るのも、ある意味では当然といったところなのだろう。
……個人的に思うところがない訳でもないが、それでも兵器メーカーとして存在している以上、生き残るのに必死だというのは理解出来る。
また、それが月の利益になっているというのも、間違いのない事実なのだ。
そうである以上、俺としてはそれを責める事は出来ないし、寧ろそれを更に望んだ方がいい。
「つまり、新兵が多くなってるといったところか」
「はい。恐らくは繰り上げ卒業といった形で……場合によっては、学徒動員すら……」
繰り上げ卒業というのは、ある意味でホワイトベースの艦長をしていたブライトも似たようなものだろう。
軍艦の艦長とパイロットでは大きく違うが、それでもブライトがかなり苦労しているというのは、俺も知っている。
軍艦の艦長の方が、圧倒的にその難易度が高いというのは明らかだ。
だからといって、パイロットが楽かと言われれば、決してそんな事はないのだが。
「学徒動員。そうなってくると、ジオン軍としても末期症状だな」
学徒……つまり学生をパイロットとして派遣するというのは、繰り上げ卒業とは似て非なるものだ。
繰り上げ卒業の場合は、その名の通り既に大部分を修めた上での卒業だろう。
だが、それに対して学徒動員というのは……場合によっては、学生になったばかりの者すら戦争に参加させるという事に他ならない。
将来がなくなる可能性がある以上、そのような真似をするというのは理解出来る。
理解出来るが……それは、国にとって次の世代の多くが問題を抱えるという事を意味してもいる。
その辺の事情を考えれば、やはりジオン軍が末期症状に近くなっているというのも当然か。
また、当然のようにしっかりとMSの操縦訓練とかも出来なかった連中を無理矢理戦場に出すのだから、その技量は新兵にも劣る。
「そう、ですな。……正直、あまり気分のいいものではありません」
ガトーがそう告げる。
何だかんだと仲間思いのガトーだ。
ジオン軍の上層部に思うところはあるのだろうが、それ以外……特に自分と一緒に行動していた相手に対しては、色々と思うところがあってもおかしくはない。
「学徒動員……それを何とかする為にも、少しでも早くこの戦争を終わらせた方がいいだろうな。ガトーとノリスもそれは分かってるな?」
確認する意味も込めて尋ねた俺の言葉に、ガトーとノリスはそれぞれ頷く。
双方共に、現在のジオン軍に対して思うところはあるのだろう。
だが、それでも……ガトーもノリスも、自分の守るべき存在がいる以上、例え相手がジオン軍であったとしても、それで手を抜くといったような真似はする筈もなかった。
「ともあれ……」
そう言葉を続けようとした瞬間、不意に通信が入る。
タイミングが悪いな。
そう思いつつ映像モニタに映すと、当然のようにそこには艦長をしている量産型Wの姿があった。
「何があった?」
量産型Wがこうして連絡してきた以上、そこには当然のように何らかの理由があってのものだろう。
そうでなければ、量産型Wがわざわざ通信を送ってくるという事は有り得ない。
基本的に、量産型Wはある程度の事は自分で判断出来るように作られているのだから。
そんな状況でこうして通信を送ってきたとなると、量産型Wで判断出来ない事態が起きたのだろう。
……もっとも、俺を含めて上位の存在がいない場合は、自分で判断するようになっているのだが。
『サラブレッドのキルスティン艦長から連絡がありました。繋いでも構わないでしょうか?』
「キルスティンから?」
現在はソロモンから離れて移動中だ。
そんな状況でヤンマに通信を入れてきたとなると……恐らく、これからどうするのかといった事を相談する為か?
「分かった、繋いでくれ」
そう告げると、映像モニタにはサラブレッドのブリッジが映し出される。
『アクセル殿、突然の連絡をすまない。実は、先程ルナツーから新たな命令が来た。この任務は本来サラブレッド隊がやるべきものではないので、今回に限っては命令を拒否出来るが……どうだろう?』
「取りあえず、その命令を聞かせてくれ。それを聞かないと、判断のしようもない」
これからどのような事をするのも分からない現状で、その命令に従うかどうかを判断しろという方が無理だろう。
キルスティンもそれが分かっていたのか、少し困った様子を見せつつ口を開く。
『実は、ここからそう離れていない場所で亡霊が出た……らしい』
「は?」
最初、キルスティンが冗談を言ってるのかと思ったが、キルスティンの表情は極めて真面目だ。
だが……亡霊? それは本気で言ってるのか?
そもそも、このUC世界にファンタジー要素はニュータイプ以外には存在しない。
であれば、亡霊というのはニュータイプに何らかの関係があるのか?
そんな疑問を抱きつつ、俺は口を開く。
「それで、具体的にはどういう事だ? まさか、本当に幽霊が現れたとか、そういう事は言わないよな?」
『そのようにしか思えない現象が起きた、というのは間違いのない事実なのです。具体的には、周囲に敵機の反応がないのに、何故かいきなりMSや軍艦が撃破されるという事件が何件も起こっています』
ステルスか?
キルスティンの説明に、最初に思い浮かんだのはそれだった。
実際、サラブレッドも隠密行動を主体とする為に、宇宙では視認されにくいブルーグレーの塗装がされており、レーダー攪乱膜を発生させる為の特殊弾頭とかが装備されている。
ステルスと言われて思いつくのとは少し違うが。
俺の場合ステルスと言われて思い浮かぶのは、ASRSやミラージュコロイドといった感じだが……まさか、それがこのUC世界に存在する筈もない。
だとすれば、考えられるのはやっぱりニュータイプか何かに関係する事だろう。
このUC世界でもトップクラスのニュータイプを擁するルナ・ジオン軍の者――正確には俺は違うが――としては、その辺を放っておくような真似は出来ない。
それが一体どのようなニュータイプ技術なのかは分からないが、入手出来るのなら入手しておいた方がいい。
上手くいけば、もしかしたら移転したフラガナン機関の研究所がどこにあるのかが判明するかもしれないし。
サイド6での戦いでは、フラナガン機関の研究者達を多く捕まえたが、大物の類は逃してしまった。
中にはクルストのように、連邦軍に亡命して大きな騒動を引き起こしたような奴までいるのだから、それに対して思うところは色々とある。
とはいえ……現在はサラブレッド隊と一緒に行動している以上、こちらの思い通りになるか考えると、微妙なところだが。
「分かった。俺達も出撃しよう。ただし、鹵獲物に関しては俺達が倒した場合は所有権を主張させて貰うのでよければ、だが」
もしこれでキルスティンが断ったら、今回の作戦の間だけでも別行動を取らせて貰おう。
そのつもりで、そう言ったのだが……
『分かりました。それで構いません』
予想外な事に、キルスティンはあっさりとそう言ってくる。
てっきりもう少し何か言ってくるのかと思ったんだが、これはちょっと予想外だったな。
恐らく、俺達に断られるよりは、高機動型ギャン2機と重装フルアーマーガンダムの戦力を当てにしたいといったところだろう。
ともあれ、話は決まり……俺達は亡霊退治に向かうのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1060
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1591