「サイド6に……?」
「ええ。重装フルアーマーガンダムの実戦テストをやりたいって言ってたでしょ?」
俺の言葉に、セイラはそんな風に返してくる。
確かに以前セイラに対し、そんな事を言った覚えはある。
あるのだが……それでも、まさかサイド6に行くカトンボに同乗しないかと言われたのは、少し驚きだった。
「言ってたけど、それで何でサイド6に? 護衛という意味なら、心配する必要はないだろ?」
ルナ・ジオン軍の兵士は精鋭揃い……とはちょっと言えない。
だが、それは新兵がかなり多いから平均してみればの話であって、シーマやラル、黒い三連星、それ以外にも様々なエース級のパイロットはいる。
特にルナ・ジオンを建国する時に協力してくれた者達は、その大半が腕の立つパイロットだ。
現在はそんなパイロット達が新兵に対して厳しく指導しており……将来的には、かなり腕の立つパイロットが揃えられる事になるだろう。
また、ルナ・ジオン軍ではメギロートやバッタも運用されている。
バッタはともかく、メギロートは純粋な性能だけで見れば、現在UC世界に存在する全てのMSよりも高い。
もっとも、だからといって絶対無敵かと言えば、そうでもないのだが。
AIはあくまでもAI。
一定以下の実力の持ち主に対しては無双出来るかもしれないが、逆に一定以上の……エース級と呼ばれる者達にしてみれば、メギロートを倒す事も不可能ではない。
バッタの方は……こっちは機体性能そのものがそこまで高くはないので、エース級でなくても、倒そうと思えば倒せる。
実際、バッタの出身世界のナデシコ世界は、車とかを使ってバッタを倒したといった話は結構知られているのだから。
「だから実戦テストよ。実は最近サイド6の近辺には海賊が出るらしいの」
「なるほど。その海賊が標的か。にしても、その海賊も度胸があるな」
半ば感心、半ば呆れと共にそう呟く。
サイド6は、連邦側でもジオン側でもない。
この戦争においては、中立の立場を取っている。
それだけに、サイド6の周辺ではジオン軍、連邦軍共に派手な行動を取る事は出来ない。
そんな真似をすれば、サイド6は相手に対して配慮するようになるのだから。
……もっとも、フラナガン機関の研究所が置かれていたりしたのを考えると、結局のところ中立というのは、あくまでも表向きの一面が強いのだろうが。
ともあれ、そんな複雑な場所だけに海賊として活動するという点で有利なのは間違いない。間違いないのだが……それこそ下手をすれば連邦とジオンの両方から追われる事にもなりかねない。
そうなれば、よっぽどの実力や後ろ盾の類がない限り、どうしようもないのは間違いなかった。
「そうね。だからサイド6に交渉に行くついでにアクセルが海賊狩りをしてみたら? と思ったんだけど。……どうかしら?」
セイラのその言葉に、少し考える。
実際、重装フルアーマーガンダムのテストをするのなら、別に海賊を相手にする必要はない。
極論、メギロートやバッタを相手にしてもいいのだ。
……シャドウミラーの主力という事であれば、シャドウを敵にしてもいいんだが、シャドウの生産コストを考えれば、それは不味い。
いや、実際にシャドウミラーならそのくらいのことは何とでも出来る。出来るんだが……その場合、政治班から色々と注意されるのは確実だった。
幾らキブツのおかげで資源の心配がないとはいえ、無駄遣い――今回この表現が相応しいかどうかは微妙だが――をするのはどうかと、そんな風に。
とはいえ、それを言うならメギロートやバッタだって資源を使って生産されているんだが。
ただ、メギロートやバッタとシャドウでは、その製造コストに大きな違いがある。
それこそ、シャドウはPTの中でもカスタム機に匹敵するだけの高性能な機体で、製造コストも当然のようにそれに準ずるのだ。
その辺の事情を考えると、やはり軽々しく標的に出来ないのは当然だろう。
そういう訳で、どうせ実戦テストをするのなら、シャドウミラーや月とは関係のない存在……海賊をと、そう考えるのはおかしな話ではない。
本来のセイラなら、人が死ぬのを厭うんだろうが……この辺は女王としての自覚が出てきたのか、それともホワイトスターでの勉強の成果か。
実際にはその内心で色々と思うところはあるのだろうが。
「そうだな。海賊……宇宙海賊か。サイド6付近で活動しているとなると、相当稼いでいる可能性があるな。……ちなみにMSは?」
「旧ザクやザクを使ってるらしいわ」
「それは……また……」
ザクはともかく、旧ザクを戦力にしてるとはな。
まぁ、旧ザクはともかく、ザクはかなりの数が生産されている。
ある意味で一番入手しやすいMSと言われれば、納得も出来た。
とはいえ、連邦軍ですら入手するのに色々と苦労していたのを思えば、海賊がそう簡単に入手出来るとは思えない。
考えられる可能性としては……ジオン軍が横流ししているのか、もしくはジオン軍の秘密部隊だという可能性もあるか?
少なくても、普通の海賊でどうにか出来る状況でないのは、間違いのない事実だ。
そうなると、やっぱり何らかの裏があると考えるのは当然だろう。
「MSを使ってるとなると、本拠地とかがあるのなら、ジオン軍の誰かと繋がっている証拠とかが置かれている可能性があるな。……それを入手出来れば、大きな交渉材料になるとは思わないか?」
「そうね。もっとも、そう簡単に手掛かりを残すような真似をするとは思えないけど」
「その辺は、出来ればといったところか。ともあれ、護衛の件は引き受けた。俺にとっても渡りに船だし」
海賊か。
当然のように、そのような連中が溜め込んだお宝の類があれば、それは倒した者が所有権を得られる筈だ。
まぁ、問題は海賊が溜め込んだお宝に一体どの程度の価値があるのかといった事だが……その辺は、実際に手に入れてみてからのお楽しみということにしておくとしよう。
「そう、助かるわ。じゃあアクセルにお願いするわね」
「ちなみに、他には誰が行くんだ? まさか、セイラが行くんじゃないよな?」
月の女王という立場にあるセイラだけに、簡単に他国に向かう訳にはいかない。
ましてや、現在は連邦にもジオンにも、どうにかしてセイラを殺したいと思っている者は、かなりの数がいるのだから。
セイラの場合は高いニュータイプ能力を持っているので、殺意を読んだりしてそう簡単に死ぬような事はない。
だが、幾ら何でも絶対に安全だという事は分からない以上、危険な場所に行かないのなら、それが最善なのは間違いなかった。
そして、当然のようにセイラは頷く。
「ええ。交渉をするのはハモンよ」
「ハモンか。……まぁ、妥当だろうな」
実際にはまだ若いハモンが交渉の担当者としてサイド6に向かえば、侮られる事もあるだろう。
とはいえ、ハモンの場合は外見とは裏腹に高い能力を持っている。
この辺はラルとの付き合いで得たものといったところか。
「分かった。ハモンならいざって時も心配はいらないだろ。……ちなみに、俺が海賊狩りをする以上、護衛の方は?」
「ラルが信頼する部下達に任せるらしいわ。……本来なら、ラルが自分で護衛をしたいのでしょうけど、今は色々と忙しいみたいだからそれも出来ないらしいわ」
「まぁ……忙しいのは確かだろうな」
ラルの階級は大尉という事になっているし、実際にそうなのは間違いない。
だが実際には、ラルのルナ・ジオン軍の中でも影響力は非常に強い。
シーマより若干落ちるくらい……といったところか。
それだけに、ラルが動いたとなると連邦やジオンでも派手に反応する可能性がある。
それだけではなく、ラルはMSの教導隊出身という事もあり、MSの操縦方法を教える教官役としてもかなりの凄腕だ。
教導隊出身という事なら、ガイア達黒い三連星もそうなんだが……黒い三連星の場合は、教え方があまり上手くないんだよな。
良くも悪くも、黒い三連星は3人で完結してしまっているのだ。
その点、ラルの場合はラル隊という部下を率いていた事もあって、教え方も上手い。……上手いからといって、優しい訳ではないのだが。
それこそスパルタと呼ぶのが相応しいらしい。
ラルにしても、自分の教え子にはこの戦争で生き残って欲しいと、そう思っているが故の行動なんだろうが。
ともあれ、俺とセイラは簡単な打ち合わせをし……数日後、俺の姿はサイド6に向かうカトンボの中にあった。
「アクセル代表、重装フルアーマーガンダム……凄いですね」
「そうだな。これを見れば連邦軍のMS開発技術が高いのも分かる」
護衛としてヅダと共に乗り込んできた男が、俺にそう話し掛けてくる。
ラルの信頼する部下って事だったから、てっきり俺と親しいコズン辺りでも来るのかと思ったが、やって来たのは初めて見る顔だった。
結局のところ、俺が知ってるラル隊の面々は中核にいる連中だけで、それ以外は知らないという事なのだろう。
それだけラルが下の者から慕われているといったところか。
そんな風に考えつつ、メカニック達が整備をしている重装フルアーマーガンダムに目を向ける。
今回カトンボに乗り込んでいるメカニックは、ディアナの技術者ではなくルナ・ジオン軍のメカニック達だ。
その中でも腕利きのメカニック達が選ばれたという事もあって、その作業は非常に手早い。
それはこうして遠くから見ているだけでも理解出来る。
「そっちはA型とE型か」
ラル隊のヅダを見ながら、そう告げる。
ディアナが改修したヅダは、簡単な換装作業でバリエーションが変わる。
A型は強襲型で、アサルトブースターという追加武装が目を引く。
E型は強行偵察型で、レドームによって高い索敵能力を持つ。
ハモンの護衛という事であれば、十分な戦力だろう。
狙撃型のSP型がいないのは気になるが……狙撃というだけあって、使いこなすのが結構難しいしな。
「はい。ヅダはいい機体ですよ。かなり暴れ馬ですが、それを乗りこなすだけの実力があれば、最高の相棒です」
しみじみと……心の底から言ってるのが分かる。
ヅダが採用されてから、そう時間が経っていない状況で俺はサイド7に行き、それからはずっとホワイトベースに乗っていた。
だからこそ、ルナ・ジオン軍の兵士にとってヅダがどこまで受け入れられているのかは分からなかったのだが……この様子を見る限りでは十分に受け入れられているらしい。
実際、性能という点ではヅダは元々かなりのポテンシャルを持っていた。
それどころか、そのポテンシャルが高すぎて機体が空中分解するといった有様だった。
だが、ツィマッド社の技術者やそれ以外の技術者達も協力して改修した事により、現在使われているヅダは非常に高い性能を持ったMSとなっている。……ビーム兵器は使用出来ないが。
そう考えると、ヅダはやっぱりまだ暫く主力機として使って、ギャンは指揮官やエース用の機体として改修した方がいいだろうな。
いわゆる、ハイローミックスって奴か。
「そうか。海賊が出て来たら、その実力を見せて貰おう……と思ってたんだが、残念ながら海賊が出て来る様子はないな」
「それはもう、カトンボですしね。この艦がどこの所属なのかというのは、一目瞭然です。今の状況で月を敵に回すなどといった真似は、普通はしませんよ」
「普通に考えればそうだけど、相手はサイド6周辺で海賊をしてる連中だしな。……それこそ、望んで月をここで行われている揉め事に引き込もうとしてきてもおかしくはない」
普通に考えれば、それは馬鹿な考えとしか思えない。
だが、今の状況を考えた場合、やはり可能性としては十分に有り得るのだ。
寧ろ海賊にしてみれば、俺達をここの問題に巻き込んだら連邦もジオンも動けないと、そう判断してくる可能性が高い、
だからこそ、今回の一件においては完全に安心出来るといった様子はない。
……勿論、それはあくまでも可能性の話であって、実際にはカトンボに攻撃を躊躇っている可能性も否定は出来ないが。
「とはいえ、海賊狩りに来たんだ。肝心の標的が出て来ないと、重装フルアーマーガンダムの実戦テストが出来ないってのは痛いな」
「うーん、だとするとサイド6に入ってから別の船に乗り換えて宇宙に出てみては? そうすれば、貨物船か何かと勘違いして、海賊が襲ってくる可能性はありますよ」
「……そういうものか」
なら、それを試してみるのも悪くはない。
そう判断し、サイド6のコロニーに入港するまで海賊が襲ってこない場合は、どこかの船に乗せて貰おうと考える。
ただし、問題なのは重装フルアーマーガンダムの大きさだろう。
それこそ、カトンボだからこうして普通に乗っているが、その辺の貨物船辺りではこの大きさのMSを乗せられるか? と考えると……素直に頷く事は出来なかった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1060
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1591