荒野の迅雷、ヴィッシュ・ドナヒュー。
その名前は、以前誰かから聞いた覚えがあったような気がする。
何だかんだと、ジオン軍全体で考えても異名持ちというのは非常に少ない。
そんな中で、オーストラリアにいるジオン軍に異名持ちがいるというのは、非常に珍しい。
「異名持ちが合流するのなら、俺としては問題ないが。……いや、そもそもこれはルナ・ジオンの問題なんだし、俺がどうこう言う資格はないけど」
シャドウミラーがルナ・ジオンの後ろ盾となっているのは事実だが、だからといってシャドウミラーがルナ・ジオンに対してどうこうするようにといった事を命令したりは……ないとは言わないが、よっぽどの事がない限りは言わない。
オーストラリアにいるジオン軍を、それも異名持ちのパイロットを含めた者達を引き込むのは、俺にとっても反対する要素はない。
勿論向こうが何かを企んで……という可能性もあるので、その辺は慎重に判断して貰う必要があるが。
「ただ、何でそんな事になったんだ?」
「連邦軍がオデッサを取り戻したのが大きいだろうな。あの一件の後、地球全土において連邦軍がジオン軍に対して全面攻勢を仕掛けている」
「……なるほど」
連邦軍にとって、ジオン軍が地球侵攻作戦において最初に占領し……そして最大規模の基地となったオデッサを取り返したのだから、ここで他の場所に手を出さないという選択肢は存在しない。
そもそも、俺がこの後で協力する北米奪還作戦においてもその流れなのだから。
「何でも、オデッサから逃げ込んできた者達がいて、それを追っている連邦軍もいるらしい」
「は? オーストラリアだろ?」
ゲラートの言葉に、俺は意外な驚きを受ける。
オデッサがあるのはヨーロッパで、俺達に合流……いや、亡命したいと持ち掛けてきたのは、オーストラリアだ。
ヨーロッパとオーストラリアでは、かなり離れている。
何がどうなってそうなったのか。
オーストラリアでは、ジオン軍の影響力が強い。
ならジオン軍が逃げ込むにはオーストラリアというのは悪くない選択肢であると思える。
思えるのだが……それでもオーストラリアは遠い。
オーストラリアに逃亡するくらいなら、それこそアフリカの方が近いしジオン軍の影響力も強いのだから、最善の場所だと思うのだが。
あ、でも皆がそう考えるからこそ、敢えてオーストラリアに……と、そんな風に考えてもおかしくはない、のか?
「そうだ。そのおかげでオーストラリアにおける連邦軍の占領地も増え、結果として亡命を求めて来た訳だ」
「……一応聞くけど、ザビ家の派閥はいるのか?」
「いない。……とは言い切れない。何だかんだと、オーストラリアにいるジオン軍はそれなりの規模だ。その中にはザビ家と通じている者がいる可能性も否定は出来ない」
否定は出来ないと言ってるが、ゲラートの表情から考えるとほぼ確実にいると見た方がいいだろう。
「まぁ、コバッタや量産型Wがいるから、その辺の対処はそこまで難しくはないだろ」
秘密裏にジオン軍と……いや、ザビ家と連絡を取ろうとすれば、それこそこっちでどうとでも対処は出来る。
取りあえず、クレイドルで農業をやる奴が少ないので、そちらに回せばいいだろうし。
コバッタやバッタ、メギロート、量産型Wがいるから、ぶっちゃけ農業の人手というのは足りないという事はない。
だが、人としてやっぱりロボットが育てた野菜よりも、人が自分の手で育てた野菜という方が希少価値は高いらしく、クレイドルで捕らえられた者達が作ってる野菜は、何気に人気が高い。
高級ブランドといったようなものではないが……敢えて言うのなら、中級ブランドとでも呼ぶべき存在か?
ともあれ、人気のある商品となってるのは間違いない。
何でも以前聞いた話によると、野菜を作ってる人の写真や映像を撮って、それを使って顔の見える農業というのを試そうとしているとかいう噂を聞いた事があったが……ぶっちゃけた話、その野菜を作ってる者は月にとって犯罪者な訳で……個人的には止めた方がいいと思うんだけどな。
とはいえ、農作業に行事している全員が凶悪な顔という訳ではない。
中には、凶悪な顔ではない犯罪者もいるので、そういう連中の写真なら……
「アクセル、ならオーストラリアにこちらの部隊を派遣しても構わないんだな?」
「ああ、それは構わない。ただし、連邦軍との戦闘は可能な限り避けるようにな。今の状況で連邦軍と遭遇するのは出来るだけ避けたい」
現在の連邦軍は、一応月と協調姿勢を取っている。
今の状況で連邦軍と戦うのは、出来れば避けたかった。
現在戦って貰うのは、連邦軍とジオン軍で十分だ。
そこにルナ・ジオンも参戦させるのは出来るだけ避けたい。
「分かっている。その辺は徹底させる。……闇夜のフェンリル隊の本領を発揮させて貰うよ」
「……言っておくが、ゲラートは出撃するなよ」
ゲラートは目を怪我してMSの操縦が出来なくなっていた。
だが、シャドウミラーの技術のおかげで目は回復し、またMSに乗る事が出来るようになったのだが……現在のゲラートは、ハワイを治めている総責任者だ。
そんな人物が前線に出るというのは、普通なら考えられない。
取りあえず、俺の事は置いておくとして。
「ぐっ、わ、分かっている」
念を押すように言われた俺の言葉に、ゲラートは言葉に詰まる。
この様子を見る限りだと、恐らく俺が何も言わなければオーストラリアに行っていたな。
勿論、オーストラリアは別に前線という訳ではない。
地球全土で見た場合、本当の意味での最前線となれば……やはり北米だろう。
とはいえ、だからと言ってオーストラリアを取り戻したいと連邦軍が思うのも当然である以上、相応の戦力は用意してある筈だ。
闇夜のフェンリル隊は元々腕利きが揃っていたが、ルナ・ジオンに来てからの訓練で以前よりも操縦技術は上がっている。
そんな連中が向かうのなら、オーストラリアでも特に大きな騒動が起きるとは思えないが、それも絶対という訳ではない。
とはいえ、ゲラート程のMSパイロットを失うというのも、痛いんだよな。
……ただし、ルナ・ジオンには腕利きのMSパイロットはいるが、政治関係の人材は少ない。
いや、数だけなら数人しかいないシャドウミラーの政治班よりも圧倒的に多いのだが、シャドウミラーの政治班の場合はそれぞれが時の指輪を使って不老になった上で、魔法球という反則染みた代物もあるしな。
そんな訳で、政治に精通した者を死ぬ可能性のある場所に派遣する訳にはいかなかった。
「なら、いい。取りあえず俺は北米に向かうから、オーストラリアの件は頼んだ。異名持ちのパイロットをこちらに引き取る機会は絶対に見逃すなよ。後、MSとかは可能な限り持ってきてくれ」
「当然だ」
ゲラートが頷くのを確認してから、俺は影のゲートを展開し……
「アクセル!? 久しぶりだな。イセリナ、アクセルが来てくれたぞ!」
ガルマとイセリナの隠れ家――愛の巣――の側に姿を現した俺を見ると、庭に椅子とテーブルを用意して何かの本を読んでいたガルマが気が付き、家の中に声を掛ける。
今のガルマは、隠遁生活を送っているとは思えないくらいに生気に満ちていた。
イセリナと2人で実質的な新婚生活を送れるのが、それだけ嬉しいのだろう。
「いらっしゃいませ、アクセルさん」
ガルマの声に、家の中からイセリナが出て来ると頭を下げてくる。
こちらもまた、ガルマに負けないくらい明るい表情を浮かべていた。
「元気そうで何よりだ」
「それで? わざわざ私の顔を見にやって来た訳じゃないんだろう?」
「ああ。これから連邦軍が苦戦している北米を攻めに行く事になってな。ガルマにもその事は一応言っておこうと思って」
「……そうか」
俺の言葉を聞いたガルマは、特に反発をせずにそう返す。
ガルマにも情報を得る手段はある以上、現在のジオン軍がどのような状況になっているのかというのは、しっかりと分かっていたのだろう。
これでガルマが無能なら、もしかしたらその辺も分からなかったかもしれない。
だが、ガルマは有能な人材なのは間違いないのだ。
シャアとの関係のように、甘いところとはあるのだが。
「現在の北米の状況を考えると、どんなに抵抗しても最終的には連邦軍に呑み込まれる事になると思う。オデッサが占領されたのはともかく、ジャブローの攻撃を行ったのは失敗だったな」
「そうだな。何故あのような真似をしたのかは私には分からないが」
しみじみと呟くガルマ。
まぁ、シャアがジャブローの中に入る出入り口を見つけていたからこそ、あのような戦いが行われたのは間違いないのだろうが、その辺は公になってないしな。
今の状況で分かる事と言えば、オデッサを占領されて焦ったジオン軍が、ジャブローを攻略しようとして失敗したというだけだ。
実際、その一面が強いのも事実だから、全くの嘘という訳でもないのだが。
とはいえ、今のガルマは別にルナ・ジオン所属という訳でもないので、その辺りの事情について詳細に教える事は出来ない。
それどころか、俺としては将来的にガルマにはジオン公国のトップに立って貰いたいと思っているのだから。
「その辺はガルマが今更気にするような事でもないだろ。……取りあえず、北米は落とされると思ってくれ」
「分かっている。正直なところ、オデッサが奪われて、ジャブローの攻略が失敗した時点で、そうなる事は覚悟していた」
「なら、いい。ただ、これから戦場が宇宙になれば、お前とイセリナの新婚生活も終わりになる可能性が高い。残りが後どれだけあるのかは分からないが、今のうちにゆっくりと新婚生活を楽しんでおいてくれ」
「新婚生活だなんて、そんな……」
ガルマではなく、イセリナが照れたように……それでいて嬉しそうな様子を見せる。
とはいえ、イセリナにしてもガルマと一緒に平和な、そして充実した時間はもう残り少ないのは分かっているのか、少し無理をしているようにも思えたが。
「さて、取りあえず事情も話したし、俺はそろそろ行くぞ。ここにいれば、2人の甘い雰囲気で胸が一杯になりそうだしな」
そう告げ、俺はガルマとイセリナの2人に別れを告げ、影のゲートを使ってジャブローに戻る。
ホワイトベースのブリッジに向かっていると、ちょうど前からやって来たモーリンが話し掛けてくる。
「アクセルさん、準備の方は整ったと連絡がありましたよ。……気をつけて下さいね?」
「もう準備が終わったのか」
レビルは余裕を見てとか言っていたが、俺の方でも準備が整えばすぐにでも出撃出来るようにしていたという事か。
……つまり、それだけ北米での戦いで苦戦しているという事だろう。
もしくは、7号機の性能をしっかりと確認したいメカニック達が頑張ったか。
何となく後者のような気がするのは、俺がシャドウミラーの技術班という存在に毒されているからだったりするのだろうか。
そんな風に思いつつ、俺はモーリンに感謝の言葉を言って、ミデアの待機している場所を教えて貰うとそちらに向かう。
本当ならブライトにちょっと挨拶をしてから移動したかったのだが、ミデアで既に待っていると言われば、俺としてもそちらを優先せざるを得ない。
そうしてミデアのある場所まで移動すると、やはりそこには俺にとっても顔見知りの……セカンドロットを担当しているメカニック達の姿があった。
ただ、予想外の点が2つ。
1つは、北米奪還の為の援軍として向かうのは、俺……だけではなく、そこに顔見知りの姿があった事。
「アクセル、よろしく頼む」
「……いいのか?」
俺に向かってそう言ってくるエイガーにそう尋ねる。
エイガーがこうした事を言うとなると、ミデアのコンテナの中には7号機の他にマドロックもあるという事だろう。
マドロックもガンダムのセカンドロットの1機であり、その性能は高い。
当然のように、連邦軍にとっては貴重な戦力なのは事実なのだが……いや、だからこそか?
幾ら7号機の性能を確認する為とはいえ、連邦軍でも苦戦している場所に俺だけを送る訳にはいかない。
同じセカンドロットのマドロックを送るという事で一応の体裁を整えたのか。
ましてや、エイガーはシャアに負けたことによって強さに飢えている。
そんなエイガーにしてみれば、北米での戦闘は望むところだろう。
俺の予想の裏付けるようにエイガーは頷く。
連邦軍の上層部が許可をして、エイガー本人も望んでいるのなら、俺からはもう別に言うべき事はない。
そう判断し、エイガーと軽く言葉を交わしてから7号機の様子を見る為にコンテナの中に入ったのだが……
「これは……フルアーマーガンダム7号機か? 素の状態ではなくて」
前に見せて貰った図と比べると、高さの問題からだろう背中のビームキャノンは外されているが、素の状態に比べると装甲はFSWS計画によってかなり厚くなっていた。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:980
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1575