転生とらぶる1   作:青竹(移住)

2614 / 2848
2493話

 ゴッグを倒す為に出撃したドン・エスカルゴは、結局ゴッグを倒す事は出来なかった。

 とはいえ、ドン・エスカルゴもゴッグの攻撃で撃破されるといった事がなかったので、戦いの結果としては引き分けといったところか。

 ……いやまぁ、ゴッグがベルファスト基地の目と鼻の先に姿を現したのを思えば、連邦軍の方が受けたダメージは大きかったと思ってもいいのかもしれないが。

 ゴッグもドン・エスカルゴの危険性はよく知っていたのか、致命傷になる前に撤退していった。

 海中で爆発が起きなかった事から、ゴッグは撃破出来なかったというのが、多くの者の予想だ。

 ドン・エスカルゴはゴッグに対しては特に有利に戦闘を進められるというのを考えても、やはり連邦軍の判定負けといったような感じがしないでもないが。

 

「それにしても、結局ベルファスト基地の背後では何も起きなかったな。ゴッグの行動は陽動だと思ってたんだが」

 

 食堂で紅茶を飲みながら、一緒にいる面々にそう話し掛ける。

 あのゴッグとの戦いが終わってから数時間。

 最初はゴッグが撤退していった後も、何かあったらいけないとMSで待機していたのだが……結局何も起きなかった。

 

「アクセルが予想したように、新米パイロットを戦闘に慣れさせる為だったんじゃないか?」

 

 シローが呟くと、その隣で話を聞いていたサンダースも頷く。

 

「新兵というのは、まず実戦を経験させる必要がある。そして1度実戦を経験すれば、次からは戦いの空気に呑まれて死ぬといった可能性は少なくなる」

 

 不思議な事に、サンダースが言うと不思議な説得力があるよな。

 とはいえ、今回の一件にどんな意味があったのかというのは、今のところまだはっきりとは分からないのだが。

 

「それ以外の目的がないといいんだけどな」

 

 ふぅ、と呟き……ふと、カイが食堂に入ってきたのが目に入る。

 そう言えばちょっと前にも何か同じような事があったような。

 そんな風に考えつつ、カイに声を掛ける。

 

「カイ、こっちで一緒に一休みしないか?」

「アクセル!? ……いや、悪い。ちょっと用事があるんだよ」

 

 そう言い、そそくさと食堂から出て行く。

 結局食堂に入ってきたのに、何も食べず、飲まずに出て行ったな。

 一体、何をしにわざわざ食堂に来たんだ?

 

「女だな」

 

 ふと、そう呟いたのはこちらもまた俺達と一緒のテーブルで一休みをしていたフィリップ。

 女と言われて微妙にシローが反応した気がしたが……まぁ、キキの事は取りあえずおいておくとして。

 

「女?」

 

 フィリップのその言葉に、そう返し……微妙に嫌な予感を覚える。

 カイと女と言われて真っ先に思い出すのは、当然のようにカイがナンパしたミハルだ。

 勿論、カイが新たに別の女……具体的に言えばメカニックの女とかをナンパして成功し、ミハルの一件を知ってる俺にそれが知られるのを嫌がっているという可能性もある。

 だがそれとは別に思い出されるのは、ミハルがホワイトベースに乗りたがっていた事だ。

 そして何より、ミハルがジオン軍……もしかしたら別の勢力かもしれないが、そのような勢力と繋がっている可能性が高い事。

 その考えに連鎖するように、ゴッグの陽動としか思えない行動を思い出す。

 新兵に戦場の空気を経験させるか、もしくは陽動として動いている間にベルファスト基地に何らかの攻撃を別方向からするのではないか?

 俺は、そう思っていた。

 だが……もし、その陽動の意味が、ミハルをホワイトベースに侵入させる為だったとすれば?

 普通に考えれば、それは有り得ない選択だろう。

 何故わざわざ素人のミハルをホワイトベースに侵入させる為に、ゴッグを出撃させるような真似をするのか。

 それこそ、コストに見合わない。

 しかし、それでもそう思いついた俺の中では、かなり可能性が高いように思えた。

 あくまでも勘であって、念動力が教えているといったものではない。

 もしカイがハニートラップによって騙されているのだとすれば……これは、間違いなく危険だ。

 とはいえ、何か証拠がある訳ではない。

 これはあくまでも仮説に仮説を重ねた、想像に想像を重ねたような代物だ。

 そうである以上、自分の目で確認する必要があるのは間違いなかった。

 

「悪い、ちょっと用事を思い出した」

「え? アクセル?」

 

 シローが戸惑ったような様子を見せるが、俺はそれに構わずに食堂から出る。

 向かう先は……いや、考える必要もないか。

 カイの部屋以外にない。

 カイがミハルを匿うとすれば、匿える場所はカイの部屋だけだ。

 それ以外の場所では、それこそいつ誰が来るか分からず、ミハルもゆっくり出来ないだろう。

 そう判断し、ミハルが匿われているだろうカイの部屋に向かう。

 途中で何人かとすれ違うか、特にいつもと変わった様子はない。

 ミハルの件はまだ誰にも知られていないのは間違いなかった。

 ……とはいえ、こうしてミハルが侵入していると、そう考えて……実際にカイの部屋に行ってみたら、誰もいなかったとかなったら、少し洒落にならないな。

 その辺は、実際に行ってみればはっきりするだろう。

 そう考えながら通路を歩き続け……やがて、カイの部屋の前に到着する。

 さっき食堂から急いで出て行ったカイが、もう部屋に戻っているのか。

 それとも、そのまま部屋に戻ってくるのは危険だと考えて、別の場所にいるのか。

 そんな疑問を抱きつつ、カイの部屋の扉をノックする。

 瞬間、ガタガタガタといった音が部屋の中から聞こえてきた。

 気配で中に誰かがいるのは分かっていたが、この様子を見る限りでは俺の予想は間違っていないか?

 

『だ、誰だ?』

 

 扉を開けず、中から聞いてくるカイ。

 そんなカイの問い掛けに、平然と口を開く。

 

「アクセルだ」

『ア、アクセル!? な、何で……いや、何の要件だ?』

「それは言わなくても分かってると思うが? 俺がここに来た理由は、カイが一番よく知ってるんじゃないか?」

『何の話だよ!?』

 

 平然とした様子を見せようとしているカイだったが、その態度を見れば焦りを隠し切れてはいない。

 

「本当に分からないのか? もしそうなら、ブライトを連れて来てもいいんだが」

『待ってくれ!』

 

 ブライトを連れてこられるというのは、カイにしても許容出来なかったのだろう。

 慌てたように、そう言ってくる。

 なら、最初からそうしていればよかったものを。

 

「どうした? ブライトを連れて来られると困るのか? ……ミハルとか」

 

 その言葉が決定的だったのだろう。

 十秒程の沈黙の後、扉が開く。

 だが、カイがその扉から姿を現す様子はない。

 つまり、中に入って来いと、そう言ってるのだろう。

 ならばと、俺はカイの部屋に入っていく。

 一応誰かに見られないように、カイの部屋に入るとすぐに扉を閉める。

 そうして部屋の中を見回すと……そこにはカイと、予想通りにミハルの姿があった。

 少し違うのは、カイが背中で庇うようにしているミハルの服装が、連邦軍の軍服だった事か。

 考えてみれば当然なのだが、ベルファスト基地の中に入ってきて、更にはホワイトベースに侵入するとなれば、私服より軍服の方がいいのは間違いない。

 問題なのは、一体どうやってミハルが軍服を入手したのかといった事だろう。

 まぁ、ベルファストに住んでいる以上、連邦軍の軍人が色々な店に行ったりするのはおかしくはない。

 その辺の事情を考えれば、軍服を手に入れるのはそう難しい話でもない……のか?

 もしくは、ジオン軍やそれ以外の組織と繋がっている場合は、そちらに手を回して連邦軍の軍服を入手したのか。

 

「やっぱりな」

 

 連邦軍の軍服を着たミハルを見て、そう呟く。

 ミハルの一件は、予想していた。予想していたのだが……それでも、その予想が出来れば外れていて欲しいというのが、正直なところだった。

 

「……アクセル、どうするつもりだ?」

「どうするって言われてもな。正直どうしようか迷ってるところだ。ただ、その前に1つ聞きたい。ミハル、お前はどこの勢力の者だ? やっぱりジオンか? それともサイド6? あるいは連邦軍に反抗しているテロリストの一員か?」

 

 そんな俺の言葉に、カイが焦ったように何か言おうとする。

 だが、カイが何か言うよりも前に、ミハルが口を開く。

 

「ジオン軍よ。……ただし、私がジオン軍に所属している訳じゃなくて、このベルファストで知った情報をジオン軍に売っているというのが正しいんだけど」

 

 なるほど。

 そう言えば、どの世界での事だったのかは忘れたが、新聞でスパイを募集しているとか、そういう話を聞いた事があった気がする。

 ただし、この場合のスパイというのはいわゆる破壊工作員とかの類ではなく、その国で普通に知る事が出来る情報……例えば、新聞の記事とかについてを相手に知らせるといった感じのスパイだが。

 1人からその手の情報を貰っても、あまり役には立たない。

 だが、何人、何十人、何百人といった相手からそのような情報を得る事が出来れば、その情報を多角的に分析して色々と役に立てられるとか何とか。

 ミハルもその手のスパイだと、そう言いたいのだろう。

 だが……しかし……

 

「そういうスパイの事は知っている。けど、その手のスパイは敵の中に……それも軍艦の中に侵入したりといった真似はしないだろうし、何より侵入させる為にMSを出してきたりといった真似もしないと思うんだが?」

 

 そう、実際にミハルは現在こうしてホワイトベースの中に侵入してるのだ。

 とてもではないが、その手のスパイであるとは思えなかった。

 かといって、本当のスパイ……一般的にスパイと言われて思い浮かぶような、一種の破壊工作員の類でないのは、その身体の動かし方を見れば明らかだ。

 身体を動かす訓練をした場合、どうしてもその手の動きは身体に染みついてしまう。

 勿論、相応の技術があればその鍛えた身体の動き方を隠す事も出来るのだが……残念ながら、ミハルはとてもではないが、そのどちらにも見えない。

 だとすれば、やはり今回の一件は何か偶然に偶然が重なってこんな形になったというのが、一番可能性が高かった。

 で、問題なのはその偶然というのが一体どんな偶然なのかという事なんだが……

 

「まぁ、カイだろうな」

「え?」

 

 いきなり自分の名前を呼ばれた事に、戸惑う様子を見せるカイ。

 だが、ぶっちゃけた話、ミハルにこのイレギュラーな事態が回ってきた一番の理由として思い浮かぶのは、やはりカイだろう。

 ホワイトベースのMS隊に所属するカイと接触する事が出来た以上、それを取っ掛かりにしてホワイトベースの中に入り込めるかもしれないと、ジオン軍はそう考えたのだろう。

 実際にそれが成功している以上、それは間違いではなかった訳だし。

 その辺りの事情を説明すると、カイが目に見えて落ち込んでいく。

 まぁ、自分のせいでミハルが危険な事を……それこそ、場合によっては銃殺刑になってもおかしくないような真似をさせられたんだから、そこにショックを受けてもおかしくはないだろうが。

 

「あ、でもほら。そのおかげでカイと会えたんだし……」

 

 ミハルが何とかカイを励まそうとそう言うが、ぶっちゃけた話、それは追撃にしかなってないような気がする。

 逆に言えば、カイがミハルと会わなければ、ミハルがこうして危険な目に遭う事もなかったのだから。

 

「ともあれ、だ。……問題なのはどうするかだな。カイ、ショックを受けるのはその辺にしておけ。それよりも、現在の詳しい状況を教えてくれ」

「あ、ああ。……実はその、ミハルが……」

「ちょっと待って、カイ。そこは私が言うから」

 

 カイが何か言おうとしたのをミハルが止め、自分で口を開く。

 

「カイとホワイトベースの人が話しているのを聞いて、これからホワイトベースがジャブローに向かうというのを報告したよ」

「……それだけか?」

「え? あ、うん」

 

 何だ、てっきりジオン軍の指示でホワイトベースに爆弾を仕掛けたとか、食事に毒を盛ったとか、そういう破壊工作をしたのだとばかり思ってたんだが……どうやら、違うらしい。

 そうなると、個人的にはそこまで問題ではないような気がする。

 いや、寧ろ敵が確実にそこにいると知れば、こちらとしてはその敵に対する準備を進める事が出来るのだから、そう悪くはない。

 問題なのは……どうやってブライトにミハルの事を取りなすか、だな。

 いや、そもそもの話……

 

「ミハルはこの先、どうしたいんだ? 今のままジオン軍のスパイとして活動したいのか?」

「……ううん」

 

 少し悩んだ末に、ミハルは首を横に振る。

 

「ホワイトベースの中で動き回ってる時、子供達を見たんだ。小さい、本当に軍艦に乗ってるのがおかしい子達」

「カツ、レツ、キッカだな」

 

 ……もしかしたら、その中にキキが入ってる可能性もあるが、取りあえずそれは言わないようにしておこう。

 

「うん。カイから聞いた。あんな子達が乗ってるとなると……そんな軍艦の情報を売るような真似をしたら……」

 

 そこまで告げ、ミハルは涙を流すのを我慢しながらも言葉に詰まるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:905
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1561

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。