「うう、惜しかったんですけどね」
シミュレータから出て来たアムロは、残念そうな、そして悔しそうな表情を浮かべて俺にそう言ってくる。
そんなアムロの様子を見れば分かる通り、結局模擬戦は俺の勝利で終わった。
アムロはそれなりに頑張ったのだが、それでも俺が勝った。
これは純粋に操縦技術の差というのもあるが、同時にMSの性能差もある。
アムロの乗っているガンダムは地上でも宇宙でも一定の能力を発揮出来る汎用機なのに対して、俺のピクシーは地上での戦闘に特化しているのだ。
だからこそ、今回の状況ではピクシーの方が有利だった。
また、アムロが策略とかそういうのを考えず、正面から戦いを挑んで来たのも大きい。
ガンダムが勝っている部分としては、やはりビームライフルの威力だろう。
にも関わらず、アムロはそのビームライフルを殆ど使わず、正面から攻撃してきたのだ。
そうなれば、こっちとしても対処をするのは難しい話ではないし、実際にその結果として、アムロが負けたのだ。
「どうせなら、もっとビームライフルを有効に使えばよかったのにな」
「それだと、回避されるだけじゃないですか。だから回避率を考えれば、ビームライフルよりもビームサーベルの方がいいと思ったんですよ」
それも一理ある。
ビームライフルは回避するのが難しいが、それでも絶対に不可能ではない。
いや、一定以上の実力の持ち主なら、それこそ回避するのは難しくはなかった。
それに比べると、ビームサーベルは本当の至近距離でしか使えないが、それでも攻撃の方向とかが分かりにくい分、どうしても回避はしにくい。
「その考えは間違っていないな。ただ、ビームライフルが有効な武器なのも間違いないんだから、それを捨てるような真似はしないで有効に使えばよかったんじゃないか?」
そんな風に会話をしながら、格納庫を出る。
俺とアムロの戦いを見物していた者達の多くは、まさに絶句といった様子を見せていた。
戦いの様子が、予想していたものと大きく違っていたのだろう。
その気持ちは分かる。分かるんだが……そこまで静まりかえらなくても、いいような気がする。
それだけ俺とアムロの戦いは凄かったという事の証明でもあるんだろうが。
とはいえ、俺もアムロも今回の戦いでは決して本気を出してはいない。
アムロはこれがシミュレータだからか、ニュータイプ能力を発揮出来なかった。
俺の方はもまた、ピクシーを操縦する上で、かなり手加減をして操縦している。
結果として、俺とアムロは双方共にそこまで本気ではない戦いをしたのだが、それでも模擬戦を見ていた者にしてみれば、驚くべき戦いだった……と、そういう事なのだろう。
「さて、俺は着替えたらちょっと腹も減ったし食堂に向かうけど、アムロはどうする?」
「少し用事があるから、遠慮しておきます」
そう言い、アムロは俺の前から立ち去る。
用事か。一体どんな用事なのやら。
ブライトに提出する報告書とか、そんな感じか?
ともあれ、忙しいらしいのでアムロと別れて食堂に向かう。
食堂は食事をする以外でも紅茶やコーヒーを飲んだりといった具合で、集まる場所としては悪くない。
そんな訳で、誰かいるか? と思ってやって来たのだが……予想外に誰の姿もなかった。
うーん、てっきり誰かが暇を潰しているのかと想ったんだけどな。
ともあれ、紅茶とケーキを頼んで少しゆっくりとする。
そうして10分程が経過し……ケーキの次にクッキーを食べていると、シローが食堂に姿を現す。
珍しい事に、1人だ。
いつもならサンダースとかキキが一緒にいるんだが。
「珍しいな?」
「そうか? ……まぁ、アクセル程に食堂を利用していないのは間違いないけどね」
俺の言葉に、シローがそう告げる。
実際に食堂でシローに会うことはあまりないので、シローが食堂をあまり利用していないというのは、間違いのない事実だったりする。
「そんなシローが、今日は何でまたここに?」
「いや、俺だってたまには1人でゆっくりしたいと思う事はあるんだよ」
「へぇ。1人でゆっくりね」
その言葉の意味する事は、キキの件だろう。
キキと一夜を共にした当初こそ、シローはキキの年齢の件もあってかなり葛藤していたが、それも今は何とか解決したらしい。
……出来れば、オデッサ作戦が始まるよりも前に、復活して欲しかったが。
キキとの一件で調子を落としていた影響で、シローが得意とするMSの指揮も振るわなかった。
最終的には復調したが……イーサンが期待した程の活躍をしたのかと言われれば、その答えは微妙なところだろう。
というか、ジャブローでシロー達が降りて東南アジア戦線に戻ったら、イーサンに叱られるんじゃないか?
何しろ肝心なところで色惚けして役に立たなかったと、そう思われても仕方がないのだから。
それでもオデッサ作戦の後半ではしっかりと活躍をしていたので、全く何の役にも立たなかったという訳ではないのだが。
そんな風に思いながら、俺はシローに座るように促す。
何だかんだと、ホワイトベースではシローとあまり話す機会がなかったので、降りる前に少し話しておこうと、そう思ったのだ。
一人でいたいと言っていたシローだったが、嫌そうな様子もみせずに俺の側に座る。
「俺もアクセルとは少し話しておきたかったから、丁度いいな」
「そういうものか? ……まぁ、シローがそう言うのなら、俺は構わないけど」
ここ最近は忙しく、シローと話す暇は殆どなかった。
それを思えば、たまにはこういう時間を取ってもいいだろうと判断し、シローと話をする。
とはいっても、別に何か重要な話をする訳ではない。
それこそ、世間話と呼ぶのが相応しいような、そんな話をするだけだ。
「やっぱりシローは日系だったんだな」
「ああ。ただ、俺みたいな奴は珍しくないけどな」
「リュウとかハヤトとかいるしな」
そう言い、そう言えばカイはどうなるんだ? と、ふと疑問に思う。
カイのフルネームは、カイ・シデン。
海・紫電? ……うわぁ、何か凄い名前だな。
うん、取りあえずカイはカイで覚えておいた方がいいか。
アムロは……安室・零?
こっちもアムロはアムロで覚えておいた方がいいな。
「ああ、あの二人も俺と同じ日系だな。他にも何人かいるようだけど、この世界だとそこまで珍しくはないんだよな」
「そういうものなのか? ……まぁ、そういうものなんだろうけど」
「何しろ、地球にいた人々の多くがコロニーに追いやられたからな。その辺の拘りとかは、特にないんだよ」
そう言われると、棄民政策と言われるコロニーの移住に関しても、悪い事だけではなかったのだろう。
勿論、悪い事の方が多かったのも事実なのだろう。
人種による差別というのがない……訳ではないのだろうが、それでもコロニーという場所に大勢を纏めて放り込んでしまえば、ある程度その手の差別がなくなってもおかしくはない。
「そう言えば、ホワイトベースはベルファストに一度停泊して、そこで補給とかを終えてから、ジャブローに向かうらしいぞ」
「……まぁ、その辺は当然だろな」
ベルファストというのは、アイルランドにある都市だ。
かなり巨大な都市で、そういう意味ではホワイトベースが寄るのに相応しい場所と言ってもいいだろう。
オデッサ作戦が終わり、ある程度の補給はされた。
だが損傷した場所もそれなりにあるし、弾薬とかの補給も完全とは言えない。
当然だろう。オデッサでは、かなりの数の連邦軍が集まってきていたのだ。
それを思えば、そちらへの補給を疎かにする訳にもいかないのだから。
だからこそ、ベルファストにある連邦軍の基地で補給や修理をし、それからジャブローに向かうということなのだろう。
「ジオン軍が動くと思うか?」
「……どうだろうな。普通に考えれば、オデッサ作戦のすぐ後ってことでジオン軍にもそんな余裕はないだろうけど」
ジオン軍としては、オデッサで何としても連邦軍の攻撃を防ぎたかった筈だ。
だからこそオデッサ周辺にある基地からも戦力を集め、更にはエルランという内通者まで作り上げた。
その辺の事情を考えれば、ベルファストに攻撃をしてくるような戦力はない。
……ないのだが、それはあくまでも普通に考えればの話だ。
ガルマの一件を含め、今回のオデッサ作戦でもホワイトベース隊はもの凄く活躍している。
エルランからの情報で、アプサラスⅢにも俺達が……いや、俺が関わっているというのは、向こうも十分に承知しているだろう。
その辺の事情を考えれば、もしベルファストにホワイトベースがいると知られれば、そこに攻撃を仕掛けてこないとも限らない。
そこまで考え、ふと気が付く。
「そう言えば、エルランってどうなったか知ってるか?」
連邦軍を裏切ってジオン軍に亡命したエルラン。
だが、そのエルランが捕まったという話や、殺したという話は聞いていない。
単純に、エルラン程の階級にある人物の不祥事なので、捕らえたり殺したりしても、まだ誰にも教えていないだけなのか。
それとも、エルランもまたオデッサから脱出したのか。
「いや、俺の方にもそういう情報は降りてきてないな。ただ、もし捕まったり殺したりしていれば、かなりの騒ぎになる筈だろうし……そう考えれば、オデッサから逃げたんだろうな」
逃げた、か。
色々と判断に困るところはあるが、ルウム戦役で捕らえられたレビルを救出したというのを考えると、エルランは決して無能という訳ではない。
……まぁ、オデッサでのあれこれを考えると、それが本当なのかどうかは、正直微妙な気持ちがない訳でもなかったが。
「そうか。連邦軍に詳しい人物がジオン軍にいるというのは、厄介だな」
連邦軍の事を深く知っているのだから、連邦軍が次にどのような作戦を行うのか、またその作戦に参加している人物がどのような性格なのかといった事を、かなり深く知っている筈だ。
そうなると、連邦軍としては非常にやりにくい相手なのは間違いない。
ある意味で、連邦軍がオデッサで真っ先に殺すべきなのは、エルランかもしれないな。
「まぁ、その、なんだ。……あくまでも、もし生きていれば厄介だけどな。ただ、死んでる可能性も高いんだよな」
意味ありげに俺の方を見てくるシロー。
その視線の意味は、俺にとってもすぐに理解出来た。
つまり、ニーズヘッグの攻撃で撃破した複数のダブデ。
その中に、エルランがいた可能性も否定は出来ないと、そういう事なのだろう。
実際、その辺で色々と厄介な事になってるのは、間違いないんだよな。
誰が死んで誰が生きてるのか。
そこでちょっと混乱しているところもあるらしいし。
水爆を搭載したミサイルを撃破する為とはいえ、少しやりすぎたという意見もあるらしい。
とはいえ、時間があったのならともかくとして、あの時は一刻を争う事態だった。
それこそああいう乱暴な方法ではない限り、水爆を搭載したミサイルを防ぐといった真似は難しかっただろう。
……せめて、どのダブデに水爆の搭載したミサイルがあるのか、分かっていればどうにかなったんだが。
「その辺は、正直なところどっちがいいんだ?」
「生きててくれた方がいいと思うよ」
「……そうなのか?」
てっきり死んでいた方がいいと、そう言われるのだと思っていただけに、シローの口から出た言葉は、俺にとってもかなり予想外だった。
「エルランが生きてジオン軍にいるとなると、ずっと連邦軍の情報が流れるって事にならないか? それなら、死んでいた方がいいと思うんだが」
そう尋ねるが、シローは俺の言葉に首を横に振る。
「その問題もあるけど、エルランという人物をしっかりとした理由で捕らえて裁くという流れを作った方が、結果的にはいいと思う」
「そういうものか?」
俺には分からないが、連邦軍……もしくは、シローの考えではその方がいいのだろう。
一長一短といったところか。
俺から見れば、ここでエルランが死んでいた方が圧倒的に連邦軍にとっては大きいと思うんだが。
とはいえ、それはあくまでも俺の考えてる事であって、シローを含めた連邦軍にしてみれば違うと言われれば、それに納得せざるをえない。
「ともあれ、今はベルファストに到着するのが先か」
「ベルファストでは、何もないといいんだけど」
俺の言葉にシローがそう言ってくるが、それって微妙にフラグじゃないか?
いやまぁ、ホワイトベースの現状を考えれば、そのフラグが見事に効果を発揮する可能性は、非常に高かったりするのだが。
とはいえ、出来ればそのフラグはへし折れて欲しいというのが、俺の正直なところだ。
「アイルランドか。名物って何かあるか? 美味いのがあれば、食べてみたいけど」
「アイルランドの名物か。羊肉を使ったアイリッシュシチューや、ボクスティというジャガイモのパンケーキが有名だな」
「……何でシローはそういうのを知ってるんだ? いやまぁ、助かるけど」
シローとそんな会話を交わしながら、俺は食堂でゆっくりとするのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:900
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1560