「へぇ……面白い」
映像モニタに映し出された光景に、我知らず笑みを浮かべる。
当然だろう。そこにはジオン軍……ではなく、連邦軍の姿があったのだから。
61式戦車やジムが、その砲塔や銃口をこちらに向けていた。
その時点で、相手がこちらを攻撃する気満々なのは間違いない事実だった。
正直なところ、一体何がどうなってこんな状況になっているのかは分からない。分からないが……それでも、こちらに敵意を向けているのは間違いない。
ご丁寧な事に、戦闘濃度以上の濃度でミノフスキー粒子を散布されてレビルやゴップとは連絡出来なくなっているし、俺達を攻撃しようとしている相手も問答無用といった形でブライトからの連絡は受け付けていないらしい。
ミノフスキー粒子で完全に通信の類を封鎖しているとなると、この一件は連邦軍の総意……ゴップやレビルの意思ではないと、そう思いたいところだ。
とはいえ、ホワイトベースの前にこうして連邦軍が姿を現し、半ば膠着状態に陥ってから、既に20分が経過している。
それだけの時間が経過しているからこそ、俺を含めてMS隊は全員が既に自分のコックピットに搭乗を完了している訳で……
『なぁ、アクセルはどう思う?』
カイからの通信。
いつもは皮肉屋というか、どこか斜に構えている様子のカイだったが、それでも今の状況には戸惑っているのが分かる。
「普通に考えれば、連邦軍が俺達を切り捨てたってところだろうが……」
『そんな馬鹿な!?』
俺が最後まで言うよりも前に、ダンケルがそう叫ぶ。
……ダンケルが俺の言葉に割り込んでくるのは珍しいな。
ヤザンは結構俺と話すけど、ダンケルとラムサスの2人は俺を恐れているのか、それとも関わるだけで危ないと判断しているのかは分からないが、俺に話し掛けてくる事は殆どない。
俺以外の連中とは、それなりに話しているのだが。
「だろうな。正直なところ、俺もその意見には賛成だ。現時点でホワイトベースは、間違いなく連邦軍最強の部隊と言ってもいい。それを切り捨てるような真似をする筈がない」
また、今は付け加えなかったが、シャドウミラーの代表たる俺がいるのを思えば、そんな状況でホワイトベースを切り捨て、俺を殺すような真似をした場合、連邦軍はジオン軍だけではなく月と……そして、シャドウミラーすら敵に回す事になる。
もっとも、この世界の武器には魔力も気も存在しないので、混沌精霊たる俺を殺す事は出来ないが。
……あ、でも刈り取る者が殺した奴がいたか。
刈り取る者が殺したあの存在は、ファンタジー要素が関係してくる奴だった筈だ。
そう考えると、スライムで吸収すれば面白い事になったかもしれないな。……残念。
今更の話だが。
『それに、ここまでの濃度でミノフスキー粒子を散布しているという事は、この件を他の誰にも知られたくないんだろう』
マットの言葉に、カイが納得したように頷く。
実際、今回の一件は誰が仕組んだのかは分からないが、かなり強引な代物だ。
よっぽど追い詰められて……追い詰められて?
「ああ、なるほど」
『どうした?』
俺の声が聞こえたのだろう。
映像モニタの向こうでヤザンが不思議そうな視線を向けてくる。
映像モニタの数は限定されているから、そこに映し出される顔は限られてるけど、通信そのものは全員で共通している。
その事に何となく面白いものを感じながら、口を開く。
「ここまでやるって事は、相手はそうしなければならない理由がある筈だ。つまり、相当に切羽詰まってる訳だな。それを考えれば、もしかして今回の一件の裏にいるのは以前からその存在が予想されていた上層部のスパイじゃないか? 実際、オデッサ作戦が始まってから、妙に連邦軍の作戦が読まれたりして、不利になっているのは知ってるだろ?」
そうして不利になった場所に派遣されるのが、俺達ホワイトベース隊だけに、その辺の事情は俺が言わなくても皆が理解していた。
「いや、ブルーディスティニーの後継機の運搬に関してもそうだとすれば、もっと前からその裏切り者は動いていた筈だ。そうなれば当然のように動きが派手になり、諜報部なり情報部なり、ともあれそんな感じの連中の目にとまりやすくなる。で、このままだと捕まってしまうからという事で、今回こうして大きな手に打って出たと。……あくまでも、俺の予想でしかないけどな」
そう断るが、このタイミングだったり、オデッサ作戦前後からの妙な騒動を考えれば、やはりここはその可能性が一番高いだろうと予想する。
『ちょっと待て。つまりそれは……裏切り者が、俺達の首を手土産にしてジオンに亡命するって事か!?』
リュウの言葉に、俺は頷く。
「恐らくな。ジオン軍にしてみれば、散々連邦軍の情報を流してくれた相手が、ジオン軍にとっても最も厄介な俺達を殺す……もしくは捕虜にしてジオン軍に連れて行くという事になれば、それは願ってもない事だろうし」
問題なのは、この程度の戦力で俺達を……俺達を倒す? この程度の戦力で?
いやまぁ、戦車の数は100台以上だし、MSの数も20機は超えている。
それだけを考えれば、普通なら1部隊を相手にするには十分な……いや、十分すぎる戦力だと言ってもいい。
だが、MS15機――実際にはシロー達の代わりにマット達がいるので、本当の意味の全力ではないのだが――もおり、その多くがエース級と呼べるだけの戦力を持つホワイトベース隊を相手にして、これだけの戦力でどうにか出来ると本当に思ってるのか?
今までの経験から、裏切り者の詰めが甘いのは十分に理解してる以上、もしかしたら本気でこの戦力でどうにか出来ると思ったのかもしれないが。
61式戦車が100台以上というのは大戦力ではあるが、ぶっちゃけ隠れた場所から狙撃するのならともかく、正面からMSと戦って勝つのは難しい。
連邦軍お得意の物量を活かした攻撃? と思わないでもなかったが、こちらの戦力を考えると戦車の100台程度でホワイトベース隊がどうにかなる筈もない。
そして何より、今回の件の黒幕がジオン軍に亡命をしようとしているとなると……仮説に仮説を重ねた、正直自分でも穴だらけだと思えるものではあったが……
「ジオン軍の援軍を待っている?」
自然と俺の口からそんな言葉が出る。
それを聞いた者の息を呑む音が聞こえてきた。
当然だろう。もしそうなれば、連邦軍とジオン軍が協力して俺達と戦うという事になる。
ある意味で、戦争の原因がなくなる……と、そう言ってもいいかもしれないような出来事だ。
とはいえ、今回の一件の裏を考えると、それはそこまで不思議な出来事ではない。
元々連邦軍を裏切ってジオン軍に情報を流していた相手であれば、これ以上連邦軍にいられないと判断してもおかしくはない。
そうなれば……いや、もしかしてジオン軍の方から持ち掛けたのか?
ホワイトベースは、レビル直轄の部隊だ。
そんな部隊を攻撃したとなれば、もう連邦軍に戻る事は不可能だ。
つまり、ジオン軍は連邦軍の裏切り者に踏み絵をさせている可能性もある。
ともあれ、その辺りの事情はまだよく分からない。
分からない以上、こちらとしては当然のように大人しくやられる訳にはいかず、すぐに相手に対応出来るようにする必要がある訳だ。
『敵軍、攻撃準備に入りました! MS隊はすぐに出撃して下さい!』
緊張したモーリンの声が格納庫内に響く。
モーリンも、相手がジオン軍であればここまで緊張する事はなかっただろう。
だが、相手は連邦軍だ。
まさか、ジオン軍ではなく連邦軍と……味方と戦う事になるとは、本気で思いも寄らなかったのだろう。
その上、恐らくこちらに攻撃をしようとしている連邦軍の兵士達は、別に全員が連邦軍を裏切っているという訳ではない筈だ。
今回の黒幕が連邦軍を裏切ったのは、それこそ派手に動きすぎて連邦軍にいられなくなったからという可能性が高い。
それ以外の普通の連邦軍の軍人にしてみれば、この状況で連邦軍を捨てようなどと思う者はまずいないだろう。
そもそもの話、こうして俺達と向かい合っている連邦軍人の中には、当然のように家族や恋人がいる者もいる。
そのような者を置いて、この場で自分だけがジオンに亡命するなどという真似が、出来る筈もない。
勿論、全員が全て裏切らないという訳ではない。
裏切り者と一緒に亡命しようと考えている者も、恐らくいるだろう。
ピクシーでカタパルトデッキを歩きながら、そう考える。
本来なら、ホワイトベースのMSはカタパルトデッキで射出されて出撃する。
だが、今回の場合は敵との間合いが近すぎた。
その上で、カタパルトデッキで射出されれば、敵に狙い撃ちにされる可能性もある。
であれば、普通にカタパルトデッキを歩いて移動するのが最善だろう。
……どこか不格好なのは、間違いのない事実だが。
ともあれ、そうしてカタパルトデッキから出ると、そのまま地面に着地する。
ホワイトベースは飛んでいるが、今はそこまで高い場所を飛んでいる訳ではなく、動きも止まっているので、飛び降りるくらいは何の問題もなく着地出来た。
そして……当然ながら、敵にしてみればホワイトベースからMSが出て来れば、それを警戒する。
結果として、61式戦車やジムの攻撃の矛先は、ホワイトベースからピクシーに移った。
「まぁ、そうやって攻撃をするのなら、こっちも相応の対処をするだけだけどな」
『出来れば、殺さないで無力化して欲しい』
俺の呟きを聞いたのか、ブライトからの通信が入る。
まぁ、ブライトの気持ちも分からない訳ではない。
ブライトにしてみれば、今回の敵はあくまでも連邦軍の裏切り者だ。
その裏切り者に騙されているか、もしくは命令で従わされているだけの兵士を殺したくはないのだろう。
それ以外にも、オデッサを守るジオン軍と戦う際に戦力が減るのが困るというのも理解は出来た。出来たが……だからといって、それに大人しく従う訳にいかないのも、また事実だ。
こっちは手加減をしても、向こうは手加減をせずに殺しに来るのだから。
「出来る限りはやってみるが、こっちが危なくなったら相手を殺すぞ」
『それで構わん』
結局相手は連邦軍。
どうしても、ホワイトベース隊のMS隊と比べると、その技量は劣る。
今回攻めて来た連中が、俺達と模擬戦をしたことのある連中なのかどうかというのは、正直分からない。
分からないが、恐らく違うのではないかという予想がある。
何しろ、俺達と模擬戦をしたことがあるのならお互いの練度に絶対的な……それこそ、この短時間ではどうする事も出来ないような、そんな差があるのは、知っているのだろうから。
模擬戦に参加していなければ、彼我の実力差に気が付く事もないだろうが、その場合は練度が俺達と模擬戦をしていないという時点で、かなり低い事になる。
……出来れば俺達と模擬戦をした部隊で、俺達とまともに戦っても勝ち目がないからといった理由で降伏してくれれば、こちらとしても助かるんだけどな。
そんな風に思いながら、俺はピクシーを1歩進ませる。
その1歩に反応して、向こうのジムはトリガーを引く。
俺が持っているビームスプレーガンではなく、実弾のマシンガン。
ピクシーを相手にした場合、実弾では威力がないのは向こうも知っていておかしくはないのだが、敵が持っているのは何故かビームスプレーガンではなく、実弾兵器のマシンガンだった。
あれは……確か、90mmマシンガンだったか?
そういう意味では、ピクシーの持つ90mmサブマシンガンと同じような武器か。
ピクシーを相手にするのに……いや、ホワイトベース隊に所属するMS隊を相手にするには、不向きな武器だ。
連邦軍の中でも精鋭が揃っているホワイトベース隊では、機種の多くがルナ・チタニウム製の装甲を持つMSとなっている。
違うのは、ヤザン達の小隊が使っている通常のジムくらいか。
とはいえ、ルナ・チタニウム製の装甲を持っているからとはいえ、実弾兵器が完全に無効化される訳ではない。
例えば、頭部のツインアイの部分や、頭部バルカンの発射口。
ビームライフルの銃口に命中させた場合も暴発によって破壊される可能性は十分にあった。
だからこそ、基本的には安全であっても完全に気を許すといった事は出来ないのだ。
……ただし、それはあくまでも命中させる事が出来ればの話だが。
MS部隊としては、連邦軍の中で最精鋭たるホワイトベース隊のMSに、そんな真似が出来る程の腕利きが、連邦軍にいるとは思えなかった。
いや、いるのかもしれないが、その人数はかなり少ない筈だ。
そのような人物が連邦軍の裏切り者に協力するかと言われれば……正直、微妙なところだろう。
そんな風に思いながら、俺は敵のパイロットをなるべく殺さずに無力化する方法を考えるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:750
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1534