アリーヌとクライドをその場に残し、アリーヌの部下2人と俺は少し離れた場所で待機していた。
とはいえ、この2人と俺は特に接点がある訳ではなく、話が弾む筈もない。
この2人も今の状況では何かを話すといったことはしておらず、結果として皆が沈黙する事になった。
そんな中、俺は空間倉庫からフライドポテトを取り出す。
それも、ただのフライドポテトではない。
ナデシコ世界に存在するファーストフード店で購入したフライドポテトだ。
ハンバーガー屋なのに、ハンバーガーよりもフライドポテトの方が圧倒的に有名で、売り上げの大半もフライドポテトという、そんな店で購入したフライドポテト。
正直どうやってこのフライドポテトを作っているのか、そのレシピが知りたいくらいだ。
俺が知ってるフライドポテトというのは、それこそジャガイモを細長く切って油で揚げるだけだった。
四葉に言わせると、揚げる前に水の中に入れたり、お湯で茹でてから揚げるといった方法もあるらしいが、このフライドポテトの美味さはそれだけでは説明出来ないらしい。
実際、ホワイトスターに幾つも存在する食堂やレストラン喫茶店……それらの店の中でもトップクラスの売り上げを誇り、料理の技量という点でも間違いなく超一流の四葉ですら、どこをどうすればこのようなフライドポテトを作れるのか分からないらしい。
何らかの魔法でも使っているのではないか、もしくは本来使ってはいけない調味料を使っているのではないか。
そんな疑問すら浮かぶ。
だが、ナデシコ世界に魔法などというものは存在しないし、何らかの危険な調味料が使われてないという事も技術班の分析によって明らかになっている。
つまり、このフライドポテトは何らかの隠し味や秘密の調理法といったもので、ここまで美味くなっているのだろう。
「美味っ! 何だ、これ……」
アリーヌの部下の1人が、俺の差し出したフライドポテトを食べると、そんな声を出す。
もう1人の方も、そんな声に釣られるようにフライドポテトを口に運び、その美味さに動きを止める。
こうして、大の大人3人が――現在の俺は10代半ばの姿だが――誰もいない場所でフライドポテトを食べるという、何と表現したらいいのか分からない状況になっていた。
そのまま時間が流れ、30分程が経過し……やがて、こちらに近づいてくる足音が聞こえてくる。
そちらに視線を向けると、姿を現したのはアリーヌとクライドの2人。
クライドが殺されるかどうかというのは、正直五分五分だったが……どうやら、死ぬ事は免れたらしい。
「話し合いは終わったのか? クライドを連れているのを見る限りでは、和解って結論になったようだが」
「ええ。……正直、今になって考えれば、色々と不審なところがあった。なのに、何でクライドを殺そうという事しか考えられなかったのか、少し疑問だわ」
クライドと和解した影響からか、心なしアリーヌの言葉遣いが女らしいものになっているように思える。
見せ掛けだけという訳ではなく、本当に和解したと考えてもいいのだろう。
とはいえ、何故アリーヌがそこまでクライドを殺す事に拘っていたのか、か。
普通に考えれば、思い込みとか、捕らえられた事で自分を追い詰めていったというのが影響しているのだろう。
だが、普通ではない考えも思いつく。
そう、刈り取る者が攻撃した相手。
声から恐らくは女だと思うが、その女が何らかの超常的な現象……いわゆるファンタジー的な方法で、アリーヌの憎しみを増幅させていた可能性もある。
その憎しみを抱いていた本人だからだろう。
こうして見る限りでは、アリーヌもその辺についてなにか思うところはあるように見える。
とはいえ、それが自分でちょっかいをだしてもどうにもならない事だと理解しているからか、その件で何かを言う様子はない。
「そうか。まぁ、その件はそれでいいとして……事情を聞いてもいいのか? 勿論、無理にとは言わないが」
ジオンに亡命する為に恋人を裏切った。
それが真実なら、それこそアリーヌがそう簡単に許すとは思えない。
あの妙な声の主の一件を抜きにしても、自分を裏切った相手をそのままにするという選択肢は存在しない。
そうなると、クライドがジオンに亡命したのは何か理由があったからという事になる。
勿論、その理由を話したくないのなら、それはそれで構わない。
ただ、理由が分からない以上、こちらとしては最低限の手伝いしか出来なくなるが。
個人的には、クライドも技術士官という事だし、妙な事情がない限りはアリーヌと一緒に月に来て欲しいところだ。
クライドが技術者としてどれだけの技量を持っているのかは分からないが、ジオン軍の中でもそこまで数が多くはないダブデのブリッジにいたのを思えば、有能な人物と見なされていたのは間違いない。
……もっとも、それが技術者として有能だと判断されたからかと言われれば、素直に頷く事も出来ないのだが。
連邦軍から亡命してきたという事で、攻めて来た連邦軍について何かを知っているかとか、そういう事のアドバイザーとしてブリッジにいたという可能性も決して否定出来ないのだから。
ともあれ、無能ではないと思う。
そんな思いでクライドに視線を向けると、そんなクライドを庇うようにしてアリーヌが口を開く。
「彼は、軍の命令でジオン軍に亡命したのよ。スパイとして活動する為にね」
「……その割には、色々とチグハグだが? アリーヌが捕らえられたのは、クライドの一件に真実味を持たせる為だと考えれば納得出来るが、その場合でもクライドの一件をアリーヌに話しておいてもいいんじゃないか?」
そう、アリーヌから話を聞いた俺が最初に抱いた疑問がそれだった。
クライドにとって、恋人のアリーヌは大事な存在なのは間違いない。
そんな恋人に事情を説明せず、本当に罪人であるかのように扱い……また、これは俺にとっては幸運だったが、その罪人を陸戦強襲型ガンタンクに乗せて戦場に出すなどといった真似をしていると知れば、普通は怒る。
実際にもしクライドが前もってそれを知っていれば、連邦軍に偽の情報を流すといった真似をした可能性も十分にあるのだ。
そう考えれば、もしかして連邦軍はクライドを最初から捨て駒にするつもりだったのか?
その辺の事情は俺にはちょっと分からないが、取りあえずクライドが不満を持っているのは間違いない。
実際にこうして見ている限りでは、そんな様子も見る事が出来るし。
「その辺は分かりません。ですが、アリーヌから話を聞いた限りでは……」
首を横に振るクライド。
取りあえず、連邦軍に戻るつもりはないんだろう。
かといって、ジオン軍に向かうというのも、今の状況では危険だ。
そうなると、一体どうすればいいのか……少し迷い、アリーヌに声を掛ける。
「取りあえず契約は果たされたって事でいいんだな?」
「ええ」
クライドを見つけたら殺さないという契約。
それを踏まえて、俺はアリーヌの前に生きているクライドを連れて来た。
結果として、アリーヌは刈り取る者の活躍もあってか、クラウドを殺さずに済んだ。
そういう意味では、アリーヌにとって最善の……もしくは、それ以上の結果がここにはあった。
アリーヌもそれを理解しているからこそ、俺の言葉に対してすぐに頷いたのだろう。
「なら、これからどうする? クライドが一緒だと、連邦軍に戻るのは無理だ。……俺が出来る選択肢としては、クライドや、望むのならお前の部下達と一緒に俺が匿い、隙を見て月まで連れていくという事くらいだが」
「いいんですか?」
俺の言葉に、クライドが目を見開いてそう尋ねてくる。
普通なら、ここでクライドとアリーヌを連邦軍に差し出して点数を稼ぐといった真似をしてもおかしくはないのだから当然だろう。
とはいえ、俺の場合はそこまで連邦軍に気を遣う必要はない。
それこそ、何かあったら連邦軍の方が俺達に気を遣う事になる筈だろうし。
「ああ。勿論その場合は、クライドにも月に来てアリーヌと一緒に技術者として働いて貰う事になる。知ってるかどうかは分からないが、現在月にはディアナというルナ・ジオンの兵器メーカーが存在しているから、そこで働いて貰う事になる。当然のように、家とかそういうのはきちんとこっちで用意する」
とはいえ、それを用意するのは俺じゃなくてルナ・ジオンの人間なのだが。
ディアナの技術者は皆が現在の境遇に満足している様子だったので、移住環境とかはそこまで気にしなくてもいい筈だ。
「取りあえず、これからどうするのかは後で決めるとして、今はこれからどうするか、だな」
連れていく場所としては、やはりハワイか。
……ただ、ハワイだからってガルマと一緒に暮らさせる訳にもいかないから、別の場所に家を用意する必要がある。
その辺は、ハワイを治めているゲラートに任せておけば、適当にやってくれるだろう。
ゲラートには何かを言われるだろうし、この場合に何よりも大きいのは、アリーヌ達を勝手に連れていった事になるだろうが。
ミケーレから、間違いなく連邦軍に今回の件は報告される筈だ。
いっそミケーレを買収するか?
そう考えないでもなかったが、ミケーレの性格を考えると、買収された振りをして俺から何らかの金品を受け取った後で連邦軍にも連絡をして、そちらでも評価されるようにするといったような事をしかねない。
それ以前の話ではあるが、ミケーレ以外の者が今回の一件を上に報告しないという可能性も否定は出来ない。
その辺りを考えると、ミケーレを買収という考えはなしだな。
「俺がお前達に提案出来るとすれば、ハワイに隠れ家を用意する事だ。……ああ、もしすぐにでも地球を離れてもいいのなら、ハワイの打ち上げ場を使ってHLVで月に向かうという方法もあるけど」
そう言えば、少し前は戦火を逃れて第3勢力となった月に移住を希望する者達がかなりハワイに集まってきていたけど、今その辺りはどうなってるんだろうな。
そろそろ人数が減ってもいいと思うんだけど。
ただ、宇宙に行くのは気が進まないけど、戦争に巻き込まれたくないって奴はハワイに留まったりしてるって話だからな。
何だかんだと、ハワイの人口はかなり増えているらしい。
……ゲラートには、頑張って貰うとしよう。
「ハワイに? それと月……アリーヌ、どうする?」
「そう言われてもね。クライドはどう思ってるのさ?」
2人で相談をしてる様子だったが、やがてすぐに話は纏まったのか、クライドが口を開く。
この2人の場合、性格から考えてアリーヌが主導権を持ってると思っていたんだけど。実はアリーヌは男を立てる性格だったりするのか?
意外ではある。
ただ、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、クライドへの復讐をしようと考えていた時は、気を張っていたのかもしれないな。
実際に同じ囚人の部下2人を従えていたのを考えると、余計にそんな風に思ってしまう。
「月に行きます。ハワイにいるのも魅力的ですが、やはり現在この世界で一番安全な場所は月でしょうし」
それは、連邦軍とジオン軍の双方について知っているからこその、言葉なのだろう。
クライドにしてみれば、連邦軍もジオン軍も月と戦って負けているのは理解しているだけに、今の状況を考えると月にいた方が安全だと、そう思えたのだろう。
実際にそれは間違っていない。
グラナダでの戦闘や、連邦軍のタカ派が攻めて来た件、ジオン軍と連邦軍が戦いながら近づいてきた時に、ルナ・ジオンは勝利している。
まぁ、グラナダでの戦闘は実際には俺がニーズヘッグで戦ったのだが。
それ以外にも、サイド6でのフラナガン機関の研究所の戦いだったり、ルナツー攻略作戦だったりと、純粋に戦いの結果として見れば、ルナ・ジオン軍は連戦連勝と言ってもいい。
それだけに、クライドはルナ・ジオンの戦力に強い信頼を置いているのだろう。
また、クライドがそこまで知ってるかどうかは分からないが、クレイドルを含めた月面都市にはコバッタや量産型Wが治安を守っている。
もし連邦軍やジオン軍がクライドやアリーヌ、その部下達をどうにかしようとして秘密裏に諜報部隊の人員といった者達を送り込んでも、それは間違いなく捕らえられてクレイドルで農作業をさせられるという結末になるだろう。
そういう意味でも、クライド達が即座に月に行きたいというのは、決して悪い選択ではない。
「分かった。……お前達もアリーヌ達と一緒でいいんだな? 何なら、お前達だけでもハワイに残る事は出来るが」
そう告げるが、アリーヌの部下達は揃って首を横に振り、月への移動を希望する。
アリーヌも久しぶりに恋人と再会したかと思えば、こうして部下の面倒も見る事になり……正直、微妙に可哀想な気がしないでもなかったが、ともあれそういう事に決まるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:735
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1531