結局刈り取る者を見て恐慌状態に陥った兵士達は、あっさりと捕らえる事に成功した。
刈り取る者という、この世界では見る事が出来ない死神をその目で見たというのは、この場合大きかったのだろう。
そんな訳で捕らえた連中を空間倉庫から取り出したロープで縛って先程遭遇したジムのパイロット……恐らく諜報部の者だろうと思っている相手を呼びだし、引き渡した。
引き渡した時に、何でこんなに怖がってるんだ? といった視線を向けられたが、その件については黙殺しておいた。
向こうもその件には特に触れず、捕らえた者達と共にこの場を立ち去っている。
ちなみにリジーナもしっかりと確保していったのは……まぁ、連邦軍の武器だと考えれば、そこまでおかしくはないか?
ただ、あの軍人達はどうにもジオン軍の可能性が高いらしい。
まだはっきりとした訳ではないが、こういう仕事についている者がそう言うのであれば、それは間違いないのだろう。
そうなると、次の問題はどこから連邦軍の軍服やら、リジーナという武器を手に入れたのかという事になるのだが……その件は、あの連中に頑張って貰うとしよう。
それよりも俺が気になるのは、刈り取る者の様子が少しおかしかった事だ。
どうも、何かを気にする様子を見せていた。
その気になるというのは捕らえた連中やリジーナではなく、これから俺が向かおうとしている戦場の方。
アリーヌ達が関わっている以上、出来ればクライドだったか? その元恋人を捕らえてアリーヌの前に連れていきたい。
そうなれば、アリーヌとその部下達が月に来た時の頑張り具合も違うだろうが。
クライドの一件で、陸戦強襲型ガンタンクを開発したメンバーの1人であるアリーヌが月に来るというのは既に決まっている。
だが、その辺が決まっているからとはいえ、モチベーションによってその能力を発揮するのは色々と違ってくるのは当然だろう。
そうして戦場に向かっていると、やがて遠くから戦闘音が聞こえ始めた。
どうやら、目的地が近づいてきたらしい。
そのまま十数分程も走り続けると、この戦場における連邦軍の陣地が見えてくる。
当然のようにそのような場所であれば護衛もついており、ジムがこちらの姿を見つけるとそれ以上進ませないようにと、前に出て来る。
そんなジムの姿に思うところがない訳でもなかったが、ジムにしてみれば見慣れないMSが近づいてきたんだから、止めてもおかしくはない。
……まぁ、模擬戦に参加していれば、ピクシーの姿を見た事があってもおかしくはなかったが。
この様子を見る限りでは、模擬戦には参加していなかった部隊という事か。
連邦軍の戦力のかなりの部分をオデッサに集めての戦闘ともなれば、合流地点だったワルシャワ基地に集まるにしても、MS部隊を全て集めるというのは難しい。
その辺の事情を考えれば、ワルシャワに来なかったMS部隊がいてもおかしくはないのか。
ただ、アリーヌ達と一緒に戦場にいるという事は、アリーヌ達と同じ部隊じゃないのか?
それとも、アリーヌ達は囚人という扱いだったのを考えると、ワルシャワ基地で見張られていたのか。
アリーヌの元恋人がジオン軍に亡命したというのを考えると、連邦軍としてもアリーヌをその辺に置いておく事は出来ないといった感じか。
アリーヌが技術者として高い才能を持っているのは、陸戦強襲型ガンタンクを見れば分かる。
そんな才能の持ち主がジオン軍に亡命するという事を考えると、どうしようもない、か。
どうしても不安ならアリーヌを殺してしまうという選択肢も連邦軍にはあったと思うんだが、殺すには惜しい才能の持ち主といったところだろう。
経験してきた感じからすると、そんな感じで間違っていない筈だ。
「こちらはホワイトベース隊所属のMSだ。援軍を求める要請があったから、俺が派遣された」
『援軍の派遣? MS1機だけか?』
どうやらこの連中は、世情とかにも疎いらしい。
少し情報に詳しければ、ピクシーがどれだけの戦果を挙げてきたのかというのは、分かる筈だ。
それが分からないという時点で、問題外だ。
……なるほど。だからこの戦域から援軍の要請があったのか。
「そうだ。一応これでもホワイトベース隊の中では1番強いという自負はある。とはいえ、援軍がいらないのならホワイトベースに戻ってもいいが?」
『分かった、案内する。MSから降りてくれ』
ジムからの通信に頷き、俺は指示された場所までピクシーを移動させると、コックピットから出る。
それにしても、護衛に回すのなら別にジムとかじゃなくてもいいと思うんだがな。それこそジムのようなMSは戦場に向かわせれば、戦いの中でも大きな活躍が出来ると思うんだが。
そんな風に思いながら俺はピクシーから降りて、兵士に案内される。
ただ、俺の前後左右に兵士がいる辺り、俺を案内するというよりは護送しているといった形のように思えてしまうのは、俺の気のせいか?
……ピクシーのような見慣れないMSに乗っているだけに、俺を信用出来ないのは理解出来ないでもないけど。
そうして移動した先には、1人の男がいた。
無精髭が生えているのは軍人らしいし、顔立ちも比較的整っている。
だが、それでも俺はその顔を見ただけで、俺とは合わない奴だと判断した。
「ミケーレ少佐、要請した援軍が来ました。ただし、部隊ではなくMSが1機だけです」
「何だと!?」
俺の案内した兵士の言葉に、ミケーレは俺を睨み付けてくる。
うん、少佐という立場の関係上しょうがないのかもしれないが、どうやら俺の事については知らされていないらしい。
「何だ貴様は!」
「何だって、援軍だよ。ホワイトベースからやって来た、アクセルだ。お前達がここを突破出来なくて、援軍を要請したんだろ?」
「何だその口の利き方は! 私は少佐だぞ!」
ミケーレが、俺の言葉遣いが気にくわなかったのかそんな風に叫んでくる。
援軍を要請してMSが1機だけしか来なかったのが面白くないのは分かるが、だからって俺に当たられても困るんだがな。
「そうか。残念ながら俺はホワイトベース所属だが、別に連邦軍の軍人じゃない。言わば、傭兵として雇われている身だ。残念ながら、そうである以上はお前を敬うつもりはない。もっとも、お前が敬うに足る人間なら、話は別だがな」
相手が高圧的で、しかも一目見た瞬間から俺とは合わないと分かっている為だろう。
俺の口調も自然と喧嘩腰になる。
「きっ、きっ、貴様……」
「何だ? 言っておくが、俺はお前に請われてここに来たんだぞ? その事を承知の上で態度を決めるんだな。ああ、ちなみに言うのは忘れていたが俺の雇い主はレビルとゴップだ」
そう言った瞬間、ミケーレの顔が盛大に引き攣る。
幾らこの部隊が世情に疎いとはいえ、レビルやゴップの名前は当然のように知っているのだろう。
……まぁ、それが分からなければ、軍人としてやっていく事は出来ないだろうけど。
「なっ、なっ、な……」
俺の口から出た2つの名前を信じられないのか、それとも単純に信じたくないのか。
その辺の理由は分からなかったが、ともあれミケーレは面白いように言葉に詰まる。
ミケーレの周囲にいた他の軍人達も、俺を見る視線が侮りや嘲笑といったものから驚愕に変わっていた。
取りあえず、これで向こうが妙な真似をしたりとかはしないと思う。
「それでお互いの事情が分かったところで状況を聞かせろ。敵の防衛線を突破出来ないという話を聞いたが、それは事実か?」
「そ、そうだ。……ジオン軍のダブデがいる」
俺の問いに少し戸惑った様子を見せたミケーレだったが、それでも今がどのような状態になっているのかを口にするのは腐っても少佐か。
それにしてもダブデか。
ダブデは、ジオン軍の所有している陸上戦艦のような代物だ。
連邦軍のビッグトレーと似たようなものか。
……とはいえ、ビッグトレーがホバー移動でその巨体に見合わない機動力を持っていたり、水上が移動出来たりするのだが、ダブデはキャタピラでの移動だ。
正直なところ、性能という意味ではその一点でビッグトレーの方が上だと思う。
勿論、ダブデも全く使えないという事はない。
実際にこの戦場では、ダブデの存在によって連邦軍が苦戦しているのだから。
そしてミケーレはそんなダブデが厄介で上に援軍を希望した訳だ。
「分かった。なら、そのダブデを倒せばいいんだな?」
「ああ。いや、違う」
どっちだよ。
ああと頷いたかと思えば、すぐにそれを否定するように首を横に振る。
朝令暮改どころの話じゃないぞ。
「見ろ。そうすれば分かる筈だ」
そう言い、戦場の方に視線を向ける。
その視線を追うと、61式戦車の群れがザクマシンガンによって次々と撃破されている光景が目に入ってくる。
うわぁ……というのが、正直なところだ。
とはいえ、連邦軍側も一方的にやられている訳ではない。
ジムがそれなりに活躍してるように見えるし、何より……
「さすがだな」
縦横無尽に走り回りながら、敵に向けて砲弾やミサイルを撃ち込んだり、火炎放射器でジオン軍の兵士を次々と燃やしている陸戦強襲型ガンタンクに目を向ける。
この戦場にアリーヌがいるのは分かっていたので、陸戦強襲型ガンタンクが実際にどれだけの性能を実戦で発揮するのかというのを楽しみにしていたのだが……こうして見た感じでは、俺の予想以上に活躍していた。
模擬戦の時に陸戦強襲型ガンタンクが高性能だというのは分かっていた。
分かっていたが、それでもやはりこうして直接見ると、その性能に感心してしまう。
「さすがだな、ではない!」
俺の呟きが気にくわなかったのか、ミケーレはこちらを睨み付けてくる。
ミケーレにしてみれば、現在の状況は決して許容出来ない事なのだろう。
とはいえ、こうしてみれば援軍が必要な程に押されているようには見えない。
そうなると、ダブデを突破出来ないのをどうにかする為に、俺が……正確には援軍が呼ばれたといったところか。
その辺はさっきミケーレも言ってたので、納得出来ない訳でもない。
「そうか? 陸戦強襲型ガンタンク、見た感じではパイロットの技量もあるが、かなり活躍していると思うが?」
そう告げるも、実際にはジオン軍のMSが陸戦強襲型ガンタンクという存在に慣れていないというのも、このような快進撃を行っている理由の1つだろう。
「あのような犯罪者の使っている機体が活躍して、何になる!」
「いや、そこで我が儘を言うなよ」
犯罪者だからって、活躍するなってのはおかしい。
この辺は、見栄とかそういうのも関係してるんだろうな。
個人的には、それはどうかと思わないでもないが。
「ともあれ、今の状況ではどうにもならん。お前のMSでこの状況を打開出来ると考えてもいいのだな?」
「そうだな。出来るか出来ないかで言えば、出来る」
それは決して大袈裟な話ではなく、純然たる事実だ。
とはいえ、今までミケーレがどうやってもこの防衛線を突破出来なかったのに、それを俺が突破してもミケーレの手柄にはならないと思うんだが。
それとも、単純にここの防衛線を抜ければそれでいいと考えているのか?
実際に防衛線を抜けたというのが、手柄になるのは間違いのない事実だ。
それを考えれば、ミケーレがそのように考えてもおかしくはない。
「なら、やってみせろ。傭兵としての実力を見せて貰おうか」
ああ、なるほど。
ミケーレの態度が最初に会った頃のように戻ったのは、俺をレビルやゴップと繋がりにある人物ではなく、純粋に傭兵として扱う事にしたからか。
その態度も、分からないではない。ないのだが……それでも、今の状況を考えると、少し迂闊なような気がするな。
もっとも、今はその事はいいか。
ダブデか。……そうなると、問題は……
「ん?」
ふと、影の中にいる刈り取る者が何らかの反応をしたように感じて地面を見るが、特に何もない。
一体、これは何がどうなっている?
連邦軍に変装していたと思われるジオン軍の兵士と遭遇した時もそうだったが、ここに来て余計に刈り取る者が何かを感じていた。
一体何がどうなってこうなったのか。
それが分からないが、ともあれ今は刈り取る者に関わるよりも、やるべき事があった。
「どうした? お前のMSでダブデをどうにか出来ないのか?」
「いや、出来る。ただ、少し考え事をしていただけだ。……なら、早速出撃する。何か前もって言っておきたい事は?」
「特にはない。だが、お前の活躍次第でこの戦場の勝敗がどうなるか決まるかもしれないんだ。それを承知の上で行動しろ。ああ、それと出来るだけ敵のMSは倒すように」
「機会があったらな」
ミケーレの様子を見る限りだと、俺がMSを倒してもその倒したMSは連邦軍が……いや、ミケーレ本人がどうにかして奪いそうだな。
そうなると、MSはなるべく倒さない方向で進めた方がいいか。
そう考えつつも表情に出さず、俺はピクシーで出撃するべく準備を進めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:705
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1525