翌日、ホワイトベースはやはりと言うべきか、予想通りにと言うべきか、昨日と同じく火消し部隊として戦場を回っていた。
補給部品の件はブライトから上層部に連絡して、今日出撃する前にある程度は用意して貰ったが……
「そっちに行ったぞ、ヤザン!」
『分かってる!』
俺の言葉に、ヤザンから素早く返事が来る。
この戦場から逃げようとしていたジオン軍のMS隊だったが、残念なことにザクではどうしても機動力は落ちる。
これがドムなら無事に俺達から逃げる事も出来たのかもしれないが、ザクでは走って移動することしか出来ず、敵の撤退する方向に回り込んでいたヤザン達に対処出来る筈もない。
必死にここから逃げようとしていたザク達は、ヤザン達によってあっさりと撃破される。
逃げようとしている相手だからあっさりと倒すことが出来たのも事実だが、それでもヤザン達の技量が以前よりも上がったからというのも大きい。
また、昨日と比べてドムの数が少なくなっているのも、こちらが有利に戦えている理由だろう。
この辺は、昨日の戦いの中でドムをそれなりに撃破したというのが、効いてるのかもしれない。
とはいえ、出来れば早いところギニアス達を連れて来てアプサラスⅢで一気に敵を撃破する……という風にしたいところだが、それは今のところちょっと難しいんだよな。
ブライト経由でレビルから聞いた話によると、上層部にいるスパイがまだ捕まっていない以上、アプサラスⅢを連れてくるのは危険だという判断らしい。
まぁ、その気持ちも分からないではない。
上層部にスパイがいる以上、ここで迂闊にアプサラスⅢを運用しようとしても、当然のように向こうはその弱点を突くだろう。
ラサ基地の一件でも大きな被害を受けているのだ。
それも、アプサラスⅢではなく、その1つ前のアプサラスⅡによって。
オデッサのような重要な場所でそのような凶悪なMAを使われるような事になれば、それは大きな……非常に大きなダメージとなる。
そうなれば、オデッサの陥落は確実となってしまう。
だからこそアプサラスⅢをこの戦場に持ってくるような事があれば、何としてもそれを奪取するなり、破壊するなりと考える筈だ。
ルナ・チタニウムで製造されたアプサラスⅢだが、それでヒートホークやザクバズーカ、ジャイアントバズといったような攻撃であれば破壊が可能なのは既にガンダムとかで証明されている。
そうである事を考えれば、実際に使う時まで出したくはないというレビルの考えも理解出来る。
スパイとしては、出来るだけ早くアプサラスⅢを出して欲しいとは思っているのだろうが、それを口にすれば怪しまれるだけに、現在行われているのは狐と狸の化かし合いといったところか。
……それが具体的にどうなるのかは、俺にも分からない。分からないが……それでも、現在の連邦軍の上層部が伏魔殿と呼ぶに相応しい光景になっているのは、間違いない。
『アクセル、全機倒したぞ』
ヤザンからの通信で我に返る。
そうだった。今はアプサラスⅢの事を考えている場合じゃなかったな。
「分かった。なら、ここでの戦いも終了したから、ホワイトベースに戻るぞ」
『分かった。……ん? おい、アクセル!』
ヤザンが驚きの声と共にそう告げてくる。
何だ? と思ったのだが、ピクシーのレーダーにもすぐに反応があった。
6機の敵が、急速にこちらに近づいてくるのだ。
それも、この速度はザクやグフのように歩いて来るのではない。
ドムか?
いや、それにしては反応が……
ピクシーのデータベースが相手の反応からどのような敵が来たのかを確認し……
「ドダイに乗ったグフ?」
そう、登録されていたデータから表示されたのは、ドダイに乗ったグフというものだった。
ドダイというのは、正式にはドダイYSといって、ジオン軍で運用されている爆撃機だ。
だが、戦闘機の類のデータ蓄積のないジオン軍が作ったからか、爆撃機であるにも関わらず、上部にMSを乗せる事が出来るだけの性能があった。
ジオン軍がどこから爆撃機にMSを乗せるという事を考えてたのかは、分からない。
個人的にはシャドウミラーで運用しているダラニを見て、そのような運用方法を考えたのでは? という思いもあったが。
ともあれ、ジオン軍ではドダイに乗せてMSを運ぶという手段がある程度知られるようになっていった。
とはいえ、ジオン軍では爆撃機というのはあまり運用されていない。
ドップなら大量に製造されているのだが。
そんな訳で、そのように運用されているというのは知っていても、実際に見るのは初めてだった。
……個人的には、ドダイに乗せるよりもグフ・フライトタイプを量産した方がいいと思うんだが。
いやまぁ、グフ・フライトタイプの方は操縦するのに相当の技量を必要とする以上、ドダイの方が使いやすいのかもしれないが。
ただし、このドダイ。非常に防御力が弱いという欠点も持つ。
その点ではダラニと同じようなものだ。
……とはいえ、ダラニは元々戦場まで移動した後は敵にぶつけて爆発させるといった使い方を想定しているので、壊れやすくなっているのは意図的なものなのだが。
「ホワイトベース、新たな敵が接近中。恐らく俺達が倒した敵の増援としてやって来たと思われる。このまま迎撃するって事でいいのか?」
現在複数の場所から一斉に援軍を要請された事もあって、ホワイトベース隊のMSは幾らかに纏まってそれぞれ別の戦場に向かっている。
俺がヤザン達の小隊と行動を共にしているのは、ヤザン個人はともかく、小隊として見た場合はやはりヤザン達の小隊が戦力的に劣っている為だ。
それでいてホワイトベースが俺達と行動を共にしているのは、この戦場が他の向かった連中のMS隊から見て中央付近にある場所だから。
つまり、何かあった時、すぐに他の戦場に駆けつける事が出来る。
『こちらでも確認している。迎撃してくれ。……敵の援軍としてやって来たのなら、ザクが倒された事でここに突入してくるとは思わなかったのだがな』
「だろうな。ドダイに乗りながら戦闘をするのは、相当の技量が必要らしいし」
グフ以外にもザクを乗せたりも出来るらしいが、ともあれドダイに乗りながらの戦闘というのは、まだジオン軍としても試行錯誤している影響からか、相応に難易度が高いらしい。
それでも、グフ・フライトタイプに乗るよりはマシなようだが。
ともあれ、ブライトからの指示もある以上、こちらに近づいてくる敵は撃破するという事で話は決まる。
「ヤザン、聞いていたな? 敵はドダイに乗ったグフだ。空を飛んでいるが、ドダイそのものはかなり脆いから、攻撃を当てる事が出来ればすぐに対処出来る筈だ」
『了解した。そんな脆い敵、すぐに俺が倒してやるよ』
自信満々に告げるヤザンだったが、ダンケルとラムサスの2人はヤザンよりも技量が低いんだよな。
さて、その辺が一体どうなるか。
そんな風に思っている間に、ドダイに乗ったグフがしっかりと視認出来るようになり……
「ん?」
映像モニタに表示されたグフの姿に違和感を覚え、小さく言葉を漏らす。
その理由としては、ドダイに乗っているグフの色だ。
基本的にグフというのは青い。
グフ・フライトタイプは灰色に近い色だが、映像モニタに表示されたのは、そのどちらとも違った。
黒に近い色。
そして色だけではなく、シルエットそのものも通常のグフとは色々と違うように思えた。
……全体的に見ればやはりグフなのだが、それでもあの機体をグフと判断したコンピュータは、正直どうかと思う。
「気をつけろ。敵はグフ系のMSだが、普通のグフじゃない」
ヤザンにそう通信を入れておく。
そうしながら、敵の様子を確認していると……やがてドダイに乗ってこちらとの間合いを詰めてきた3機のグフは、両手の指をこちらに向ける。
あの指、明らかに普通のグフよりも巨大だ。
つまりそれは、フィンガーバルカンをより強力にしたグフということなのだろう。
……正直なところを言わせて貰えば、近接戦闘を得意とするグフにそのような真似をしても意味があるのか? と思わないでもない。
ともあれ、十本の指をこちらに向けてきたグフは、フィンガーバルカンを撃つ。
ぶっちゃけた話、ザクバズーカやジャイアントバズのような高火力の武器ならまだしも、フィンガーバルカン程度の攻撃でルナ・チタニウム製の装甲を持つピクシーにダメージを与えられるとは、到底思えない。
とはいえ、それはあくまでもピクシーならばの話だ。
ヤザン達が乗っているジムの装甲はルナ・チタニウムでない以上、命中すれば威力の増したフィンガーバルカンによって致命傷となってもおかしくはなかった。
もっとも、ドダイに乗って移動しながら撃つフィンガーバルカンで、そう簡単に命中するとも思えないのだが。
ヤザン達もそれが分かっているのか、地上を素早く移動して敵の攻撃を回避している。
どうやら、命中の心配はいらないらしい。
ただし、敵の攻撃が絶対に命中しないという訳ではない。
上空から一方的に攻撃をしてくるといった真似をしている以上、当然の話だが位置的に向こうの方が有利なのだ。
そんな有利な状態で何度となくフィンガーバルカンを撃ち続け、その結果として流れ弾に命中するといったような事は、普通に有り得る。
ヤザン達は、当然のようにその辺も理解はしているのだろうが。
こちらに飛んでくるフィンガーバルカンの弾丸を回避しながら、相手のグフの事を考える。
恐らくだが、あの両手の指がフィンガーバルカンとなっているグフは、ドダイに乗って上空から攻撃をする為に開発された機体……だったりするのかもしれない。
何が驚くかって、まず第一に驚いたのはそのグフらしからぬ重装甲だ。
グフは外見で判断すれば、スマートな機体だと言ってもいい。
だが、ドダイに乗ってこっちにひたすらフィンガーバルカンを撃ってきているグフは明らかにずんぐりむっくりとしている。
それは、敵に攻撃をされた時に防ぐ為のものだろう。
敵の攻撃を防ぐ為のその厚い装甲は、ドダイに乗って敵の攻撃に命中した時に防ごうとするのを狙ってのものだろう。
とはいえ、ドダイが空を飛んでいる以上、その上側に乗っているグフの装甲を厚くしても意味がないような気がするんだが。
それこそ装甲を厚くするのであれば、上に乗っているグフではなく、グフを乗せているドダイの方が優先されると思う。
……ただし、ドダイが防御力を増す為に装甲を厚くすると、飛行にも悪影響は出て来かねない。
「ともあれ……まず、お前は邪魔だよ」
ピクシーは助走の後で地面を跳躍し、空高く舞い上がる。
当然のようにグフのパイロットはそんな状況になるとは全く想定していなかったのか、驚きで動きが鈍る。
グフの動きが鈍っても、ドダイに乗っている以上はあまり意味がないのだが。
それでも、フィンガーバルカンをこちらに向ける速度が遅くなったのは、俺にとって有利になったのは間違いない。
数秒の驚きの後、慌ててこちらにフィンガーバルカンを向けようとするグフ。
だが、既にその時には、俺が乗っているピクシーは相手との間合いを大分縮める事に成功していた。
ビームスプレーガンを収束モードで撃つ。
真っ直ぐに伸びたビームはグフの脚部を貫き、あらぬ方向に向かって飛んでいく。
これは俺が狙いをしくじった……訳ではなく、元からそこを狙っての一撃だった。
折角俺の知らないグフが出て来たんだから、出来れば捕らえたかったのだ。
月に戻るなり、ハワイに行くなりして、ジオニック社出身のメカニックに聞けば、もしかしたら情報は得られたかもしれない。
だがそれでも、やはり実機があるのとないのとでは色々と違う。
そんな訳で足を撃ったのだが、幸いにも……俺の予想通りに、グフはバランスを崩すとドダイから落ちる。
……てっきり命綱の類があるのかと思ったが、どうやらそれは違うらしい。ともあれ、これで1機撃破。……殺していないが。
残りの2機はと言えば、1機がドダイから黒煙を上げており、地上に向かって降下しているところだった。
残りもう1機は無傷だが、今の状況では勝ち目がないと判断したのか、戦場から脱出していく。
って、おい。仲間を助けるような様子を一切見せず、そのまま逃げるのかよ。
それって、ジオン軍的に問題ないのか?
自分の命が大事だというのは分かるのだが、だからといって仲間を見捨てるような真似は……その辺は俺が考える事ではないか。
ジオン軍の方で、今の行動が問題だと判断されれば、何らかの処罰が下るだろう。
今のジオン軍は少しでも戦力が欲しいので、パイロットを処罰するような真似をするかどうかは、俺にも分からないが。
「ブライト、こちらアクセル。敵のグフ……の派生機と思われる新型を倒した。今から鹵獲する」
地上に降下しながら、俺はホワイトベースのブライトにそう告げ、そのグフの所有権を主張するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:705
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1525