何で向こうは俺の名前を知っている?
俺がホワイトベース隊に協力しているのは、それこそ連邦軍でも知っている奴が……いや、大佐のイーサンが知っていたんだから、それを知っている奴は結構いると考えてもいいのか。
そしてジオン軍にしてみれば、連邦軍にスパイを送るなり、連邦軍の軍人を裏切らせるなりするのは当然か。
納得した俺に対し、イフリート改のヒートサーベルが素早く振るわれる。
その切っ先は、EXAMシステムを起動している為なのか、かなりの速度と鋭さを持っていた。
……とはいえ、EXAMシステムそのものがブルーディスティニーに搭載されているよりも旧式のせいか、ブルーディスティニーがアムロに攻撃していた時に比べると若干劣るが。
考えてみれば当然なのだが、EXAMシステムがジオン軍で十分に満足出来る物が作れるのなら、わざわざ連邦軍に亡命してきて同様のEXAMシステム搭載機を作る必要はない。
まぁ、ぶっちゃけた話、ジオン公国にいれば俺達の……ルナ・ジオンの手が伸びるかもしれないから、連邦軍に亡命してきたって可能性もない訳ではないんだろうが。
ともあれ、ジオン軍時代のEXAMシステムがブルーディスティニーよりも旧式だというのは、間違いのない事実だ。
コックピット目掛けて振り下ろされるヒートサーベルを、ギリギリの間合いで回避しつつ、こちらも反撃にビームダガーの一撃を放つ。
しかし、イフリート改はヒートサーベルを使ってその一撃を防ぐ。
両手にそれぞれ1本ずつ持ったヒートサーベル。
ビームダガーをそれぞれ持っているピクシーと、まるで鏡合わせのようにも思える。
ニムバスと名乗った男は、俺に対抗する為にヒートサーベルの2刀流にしたのか?
にしても、ニムバス……どこかで聞いた名前だが、どこだったか。
ヒートサーベルとビームダガーで攻撃しつつも、そんな事を考える。
戦いながら考えられるだけ余裕があるのは、ブルーディスティニーのEXAMシステムを直接見た事があるからだろう。
もしこれが初見なら、意表を突かれていた可能性がある。
……とはいえ、俺が見たEXAMシステムはブルーディスティニーを暴走させ、ヤザンではないが野生の獣と表現すべき行動を取らせていた。
それに比べると、イフリート改のEXAMシステムは機体性能そのものを上げはしているが、きちんとニムバスによって制御されている。
その分、こちらの意表を突く動きはあまり出来ていないのだが。
「っと!」
だが、本能的ではないからこそ、戦術を考える事も出来る。
ビームダガーとヒートサーベルで斬り合った瞬間、普通のイフリートには存在していない、足についているミサイルポッドからミサイルが発射される。
スラスターを噴射させて回避するが、ニムバスがそれを見逃す筈もない。
こちらの回避先を読んだかのように、ヒートサーベルを振るう。
ニムバスがパイロットとして非凡なのは、この辺だろう。
普通ならMSに向かって武器を振るうところなのだが、ニムバスの場合はこちらの回避先を読み、その回避先に向かって武器を振るうのだ。
ジオン軍の中でもEXAMシステム搭載機を受領するだけあって、実力は高い。
だが、こちらの行動を先読みしてそこに武器を振るってくるのなら、単純にこっちもそれを読んだ上で別の行動をすればいいだけでもある。
ヒートサーベルの一撃を回避しつつ、その手首を切断するべくビームダガーを振るう。
イフリート改は、そんな一撃をもう片方のヒートサーベルで何とか防ぐ事に成功するも、今のやり取りで危険を察したのか後方に跳躍する。
『貴様、一体何をした! その機体もEXAMシステムを搭載しているのか!』
オープンチャンネルで叫ぶニムバス。
どうやら、自分の行動の更に上を読まれ、その上で反撃までされたのが理解出来なかったらしい。
とはいえ、その気持ちも分からないではない。
ニムバスにとって、このような対応をされた事はないのだろうから。
……あるいは、ジオン軍の中でも異名持ちのパイロットであれば、そんな真似が出来たかもしれないが。
だが、今の状況で異名持ちがいるとなれば、ジオン軍以外ではルナ・ジオン軍だけだ。
そしてジオン公国とルナ・ジオン軍は表向きには敵対していても、その裏では資源の売買もしており、友好的な関係がない訳でもない。
あ、思い出した。
そうか、ニムバス。グラナダを攻める時に遭遇した敵だな。
だとすれば、月の大魔王という異名持ちの俺とは戦っていたことになるのか。
「さて、どうだろうな。もしかしたら搭載しているかもしれないし、搭載していないかもしれない。その辺り、わざわざ敵に情報を与える必要もないと思うが?」
『おのれっ!』
俺の言葉におちょくるようなニュアンスでも感じたのか、ニムバスはイフリート改を一気にこちらに向けて突っ込んでくる。
それでいながら、振るわれるヒートサーベルの太刀筋に隙がないのは、さすがといったところか。
本人は頭に血が上りやすいようだが、攻撃にその動揺を見せないというのは、歴戦のパイロットだけはある。
「とはいえ、こっちもそっちに付き合ってる暇はあまりないしな。そろそろ倒させて貰うぞ」
出来れば、EXAMシステム搭載機ということでイフリート改はこちらで確保したい。
ブルーディスティニーの事を考えれば、EXAMシステムで必要なのは頭部だ。
だとすれば、手足を切断して胴体と頭部だけを残せばいいだろう。
そう判断して行動に移そうとした瞬間……不意に、こちらに接近してくる存在に気が付く。
何だ? まだ敵がいたのか?
一瞬そう思ったが、レーダーを確認するとそこにはあるのは友軍信号。
それも、識別からするとホワイトベース隊のMSで……なるほど、イフリート改がここにいる以上は当然か。
そう判断し、イフリートがヒートサーベルを振るうのを回避するように後方に跳躍する。
同時に、そんな俺と入れ替わるように姿を現したのは……蒼いMS、ブルーディスティニー。
恐らくは、同じEXAMシステム搭載機ということで、共鳴か何かがあったという事か。
となると、俺がここで手を出すのは危険だな。
共鳴中に、下手にここで手を出した場合はイフリート改はともかくとして、ブルーディスティニーのEXAMシステムにも悪影響を与えかねない。
最悪の場合はイフリート改とブルーディスティニーの両方が一気に俺に攻撃する可能性がある。
それで負けるとは言わないが、ホワイトベース隊の中でもエース級のユウに怪我をさせたり、ブルーディスティニーを破壊するとなると、このラサ基地の件はともかく、オデッサを考えると避けたい。
「ユウ、聞こえているか? システムの暴走という訳ではないな?」
もしEXAMシステムが暴走していれば、それこそここにいないアムロを探して突撃していてもおかしくはない。
だが、そのような様子がない事を考えると、EXAMシステムの暴走はないのだろう。
それでも念の為にという事で通信を入れてみたのだが……
『こちらユウ。問題はない』
いつものように、無愛想な様子の言葉が返ってくる。
何も知らない奴が聞けば、それこそ喧嘩を売ってるのか? と思ってもおかしくはないユウの態度だが、ある程度の付き合いがある身としては、ユウが元からこういう態度なのだと知っている。
だからこそ、俺は安堵しながら口を開く。
「EXAMシステムの方の問題じゃないとすると、俺もあのイフリート改に攻撃をした方がいいのか?」
『いや、ここは俺に任せてくれ。システムがそう言っている』
システムがそう言ってる、か。
まるでシステムに意志があるかのような表現だったが、ユウにもそういう表現が出来るんだな。
ともあれ、ユウの様子を見る限りでは俺がここで手を出さない方がいいのは間違いないらしい。
「分かった。なら、ここは任せる。……ただし、俺がこのまま戦っていれば勝てたのに、戦いを譲るんだ。負けるような事は許さないぞ」
『了解した』
短く告げると、ブルーディスティニーはビームサーベルを構えながらイフリート改に向かって突っ込んでいく。
イフリート改の方も、敵を俺からブルーディスティニーに変更したのか、こちらには既に全く構った様子もなく、ヒートサーベルを構えていた。
やはり同じEXAMシステム同士という事で、共鳴してるんだろう。
『おい、アクセル。いいのか?』
ヤザンの言葉には、若干不満そうな色がある。
自分が戦っていたけど勝てないで俺に任せたのに、その俺はユウに任せた……というのが、面白くなかったのだろうが。
「いい。というか、この場合はEXAMシステム同士だけに、こっちが下手に手を出す方が危険だ」
『……分かったよ』
自分を無理矢理納得させているといった様子の、ヤザンの言葉。
自分の中にある怒りや悔しさといった感情のコントロールが出来るのは、ヤザンにとって大きな利益となるだろう。
MSに乗り始めた今この時にその辺を上手くコントロールする術を見つけられなかった場合……もしくは見つけようともしなかった場合、そんな状況のままMSパイロットとして成長していき、最終的にはそれが大きな欠点ともなりかねない。
その辺の事情を考えると、ここでイフリート改と遭遇して負けたのは、長期的に見た場合はヤザンにとっても決して不幸だった訳ではないのだろう。
「今はユウの戦いを見ていろ。シミュレータでは見られなかった戦いを見る事が出来るぞ」
シミュレータには、ブルーディスティニーのデータは入っていてもEXAMシステムのデータは入っておらず、シミュレータでユウはブルーディスティニーの全てを使って戦うといった事は出来ない。
……逆に言えば、そのような状況でもユウはホワイトベース隊でもトップクラスの勝率なのだから、ユウ個人の実力が決してEXAMシステム頼りではないという事を示していた。
そんな俺の言葉に、ヤザンは完全に納得した訳ではないようだったが、それでも沈黙する。
というか、ダンケルとラムサスは救助しなくてもいいのか?
連邦軍のMSも、ジオン軍のザクを鹵獲して設計された為か、脱出ポッドとかそういうのはないんだよな。
いやまぁ、単純に脱出ポッドを採用するとコストが高くなって、ジムを製造出来る数に影響してくる……って事かもしれないが。
ただ、MSのパイロットってのは育てるのに時間が掛かるのだから、その辺もしっかりと考えた方がいいと思うけどな。
ディアナでも、ヅダの後継機ではその辺をしっかりと考えるって話だったが。
ともあれ、俺が脱出ポッドについて考えている間にも緊張感が高まり……双方共にEXAMシステムを起動し、一気に前に出た。
その動きは、とてもではないがUC世界のMSを動かしているとは思えない程に素早く、鋭い。
アムロならともかく、ヤザンがこの戦いに介入するのは、まず不可能だろうと思えるくらいには。
ビームサーベルとヒートサーベルが、連続してぶつかり合う。
一瞬の隙を突いて頭部バルカンや胸部バルカンがブルーディスティニーから撃たれるが、イフリート改もそれを承知しているかのように回避する。
また、イフリート改も一方的にやられている訳ではなく、足に装備されているミサイルを発射したりといった感じで反撃はしている。
だが、結局のところ双方にとって最大の攻撃手段はビームサーベルとヒートサーベルであり、そちらの警戒を最優先にする必要があった。
『すげえ』
小さく呟かれた、ヤザンの声。
MSのパイロットとして優秀な成績で、鳴り物入り――ヤザンの性格を考えると、若干厄介者を押しつける的な意味もあったのかもしれないが――でホワイトベースにやって来たが、シミュレータを使った模擬戦では勝てる相手が殆どおらず、伸びていた鼻っ柱をこれでもかと叩き折られた。
そんなヤザンにしてみれば、現在目の前で広がっている光景は目を奪われて当然のものだったのだろう。
とはいえ、いつまでもこのままという訳にはいかない。
EXAMシステムは、MSに通常以上の動きをさせる事が出来るシステムではあるが、同時にそれはMSにかなりの無理をさせているという事でもある。
……ぶっちゃければ、俺がMSの限界を超えた機動を行うのを、システム的に行っているようなものだ。
つまり、何が言いたいのかと言えば……EXAMシステムを多用したり長期間使用した場合、MSのパーツにその疲労が蓄積する訳だ。
つまり、このまま戦い続けた場合……
「あ」
そんな呟きが俺の口から漏れる。
当然だろう。イフリート改とブルーディスティニーが、ほぼ同時にその動きを止めたのだから。
それも、ただ動きを止めただけではなく、機体の各所から黒い煙が上がっていたり、火花が散っていたりと、見るからに機体内部に損傷がある。
危惧した通り、EXAMシステムによって機体を限界性能以上に使った結果が出たのだろう。
……これが、もし陸戦型ガンダムや陸戦型ジムではなく、アムロの乗っているガンダムなら、パーツの精度的にもう少し保ったかもしれないが。
いや、そういう意味では、イフリート改がブルーディスティニーと同程度まで保ったという事の方が驚きなのか?
ともあれ、どうするべきかと迷っていると……不意に、イフリート改はその場から距離を取るべく後方に跳躍する。
ブルーディスティニーはそれを追うような事はなく……結果として、そのままイフリート改はその場から立ち去ってしまう。
追った方がいいのかとも思ったが、ブルーディスティニーの事を考えると放っておく訳にもいかない。
ヤザンにブルーディスティニーを任せるかとも考えたが、結局俺がブルーディスティニーをホワイトベースまで連れていく事にする。
ヤザンはダンケルとラムサスの面倒も見る必要があるしな。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:590
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1502