「話には聞いてたけど……何というか、よくもまぁ、という感想しか出てこないな」
映像モニタに表示されたラサ基地を眺めつつ、そう呟く。
その言葉に、他の面々も同意したように頷く。
現在はまだ作戦前なので、格納庫で待機しつつ映像モニタに転送されてきたラサ基地の様子を見ていたのだが、それに対する俺の意見に反対するような者はいない。
前もって情報は貰っていた。貰っていたが……それでも、やはりこうやって直接ラサ基地の姿を見れば驚くなという方が無理だった。
基地ではあっても、俺達が使っていた連邦軍の基地とは違い、山の中にある基地なのだ。
山の表面に基地が設置されている訳ではなく、文字通りの意味で山の中だ。
正確には、山の中にある空洞に基地がある。
元々あった空洞を利用したのか、それともジオン軍が掘ったのかは分からないが。
……とはいえ、実はこの手の基地はこの世界ではそこまで珍しい訳ではない。
代表的なのは、連邦軍の本拠地たるジャブローだろう。
地下深くに広がっている洞窟を利用し、そこには基地どころか1つの都市が地下に存在している、という話を聞いている。
行った事がないので、実際にどんな基地なのかというのは俺にも正確には分からないが。
ともあれ、ジャブローという前例がある以上は山の中に基地を作っていてもおかしくはない。ただ、問題なのが……
「攻略には時間が掛かるだろうな」
カイの言葉に頷き……ふと、ジャブロー? と思いつく。
そう、この基地はジャブローに似ている。
山という大地をそのまま防壁とし、中に侵入出来る場所は非常に限られており、防衛しやすい。
だとすれば、ジャブローを攻略する為の方法が、そのまま使えるのではないか?
そう、元々ジャブロー攻略用に計画された、アプサラス。
まだ完成系と言えるⅢは完成していないが、今のⅡでも非常に強力なメガ粒子砲を放つ事が可能だ。
ジャブローの厚い岩盤を貫き、基地施設にダメージを与える事が可能なのだから、このラサ基地程度なら、それこそ外側から好き放題に攻撃出来る。
ただ……問題なのは、イーサンがこちらの提案を受けるかどうか、だな。
もしこの案でラサ基地を攻略した場合、普通に攻撃するよりは確実にイーサンの部下の被害は少なくなる。
だが、それは同時にこのラサ基地攻略の最大の手柄はアプサラスを操縦しているアイナ、そしてアイナが所属しているルナ・ジオンのものとなってしまう。
レビルに対抗心を抱いているイーサンにしてみれば、自分の手柄がなくなるというのは耐えられないだろう。
自分の手柄よりも部下を大事にするのなら、こちらからの提案を引き受けはするだろうが、その可能性は低い。
だが、俺はそれを承知の上でブライトに連絡する。
「ブライト、ちょっといいか?」
『何だ?』
「実は、ハワイにはあのラサ基地の山肌を貫いて内部にダメージを与えられるような兵器が存在する。もしイーサンが要望するのなら、それを使ってもいいけど、どうする?」
『それは……いや、だが、どうやって?』
「簡単に言えば、強力なメガ粒子砲を使ってだな。あの程度の山なら、場合によっては裏側まで貫くことも出来ると思う」
まさかジャブローを攻撃する為に計画が立案された、などと言う事も出来ないので、適当にそう誤魔化す。
もしジャブローを攻略する為にという話をすれば、それこそ連邦軍から危険な相手と判断されて、ルナ・ジオンを敵として認識しかねない。
レビルやゴップならそんな事は考えないだろうが、タカ派の軍人というのは決していなくなった訳ではない。
ましてや、本来なら連邦にとって重要な収入源だった月を奪われたという事は、決して愉快な思いではないだろう。
その辺の利権に関わっていた軍人や政治家にしてみれば、それこそルナ・ジオンをどうにかして敵に仕立て上げようとしてもおかしくはない。
……実際には、月と連邦軍が戦えば、シャドウミラーが後ろ盾になっている分、連邦軍に勝ち目はないのだが。
『メガ粒子砲……いや、だが、もう作戦開始までは時間がないぞ? 今からそれを用意しても……』
「忘れたのか? 俺には転移魔法がある。ハワイまで戻って秘密兵器を確保してここに戻ってくるまで、そう時間は掛からない。もっとも、向こうでその辺りの調整をしたりするから、1時間や2時間は掛かるかもしれないが、そのくらいなら待つ事は出来るだろうし、最悪先に作戦を開始して、攻撃をする時に射線上から退避させればいい。……どうだ? 可能だと思わないか?」
『可能かどうかと言われれば、可能だと思う。だが……イーサン大佐がそれを受け入れると思うか?』
やはりブライトも、イーサンのレビルへの対抗心を心配しているのだろう。
イーサンがMSを優先的に導入したのも、レビルへの対抗心から。
そうなると、ここで……東南アジアにおけるジオン軍の本拠地を叩くという手柄を上げる機会を失うのは、とてもではないがイーサンにとって許容出来ない筈だ。
「それでもだ。一応、もしかしたら、万が一にもこっちの要望を聞く可能性はあるだろ。それなら、聞いてみておいた方がいい」
実際には、これはあくまでも俺がイーサンに提案をしたという事実を残したいだけだ。
アプサラスという、連邦軍に被害を出さないでどうにか出来る方法があるというのに、イーサンは自分の手柄を欲してそれを無視した。
このような噂が広がれば、それはイーサンの出世の足を引っ張るのは確実だろう。
俺は別にイーサンを特別に嫌っている訳ではない。
しかし、イーサンは連邦軍の中で俺が親しく付き合っているレビルに強い対抗心を抱いている。
このままイーサンが順調に出世する事にでもなれば、レビルやゴップに敵対する相手が出来るという事になってしまう。
そうなれば、連邦軍と俺達の関係にも水を差されかねない。
そうしない為に、イーサンには出世コースから外れて貰う必要があった。
もしレビルやゴップよりも先にイーサンと会っていれば……いや、どうだろうな。強い相手、上の相手に強い対抗心を抱くとなると、もしゴップやレビルよりも前にイーサンと会っていても、友好関係を結ぶのはちょっと難しかったと思う。
ゴップやレビルは、連邦軍の為になる事なら非情な決断も出来る。
だが、イーサンはあくまでも自分の出世の為にその力を使うような奴だ。
だからこそ、こうして裏で動く必要があった。
『分かった。だが……さっきも言ったと思うが、恐らく難しいぞ?』
「それは承知の上だ。もしかしたらって事だしな」
最後に短く言葉を交わして通信が切れる。
さて、一体どうなんだろうな。
「アクセル、今の話って一体どういうことだ? お前達は何を持ってるんだ?」
「秘密兵器って奴だな」
そう返すが、ヤザンは納得した様子を見せない。
秘密兵器と言われれば、余計に気になるのは当然か。
「もっと詳しく教えてくれ」
ダンケルとラムサスという、ヤザンの部下の2人も……それ以外の面々も、興味深い視線を俺に向けている。
あの山の中にある基地にダメージを与えるようなメガ粒子砲を持っているというのだから、気になって仕方がないのだろう。
綾子は、どこか面白そうに俺の方を見ているが。
「秘密と言ったら秘密だ。この件は俺だけじゃなくて、ルナ・ジオンも関わっているからな。迂闊に軍事機密を漏らすような真似は出来ない。それは、軍人なら誰でも知ってるだろ?」
そう言われれば、軍人が多いだけに何も言えなくなる。
……いや、軍人はそこまで多くはないのか?
「その辺は、見てのお楽しみだな」
「いや、けど……イーサン大佐は、アクセルの提案を引き受けないんだろ?」
カイの言葉に何人もが頷く。
「そうだな。だから、イーサンがこっちの提案を引き受けるように……」
『アクセル、イーサン大佐に進言した』
まるでタイミングを図っていたかのように、ブライトからの通信が入る。
だが、ブライトの表情は戸惑っているようにも見える。
何でだ? イーサンが断るのは、ブライトも予想していた筈。
であれば、断られてもこんな表情を見せるという事はない。
そうなると……おい、ちょっと待て、もしかして……
「こっちの提案を引き受けたのか?」
『引き受けたというか……ある程度は、だな』
「どういう意味だ?」
『取りあえず、当初の予定を崩す事はないと言われた。だが、その作戦の最中にアクセルが言うメガ粒子砲を持つ兵器が間に合うのなら、それをアクセルの判断で使うのは止めないらしい』
「そう来たか」
あくまでも、メガ粒子砲……アプサラスの使用は俺が個人的に行った事だという建前が欲しいのだろう。
とはいえ、もしアプサラスの力でラサ基地の攻略に多大な貢献をした場合、結局イーサンではなく俺に……そしてハワイのルナ・ジオン軍に手柄をとられることになると思うんだが。
あるいはラサ基地攻略戦が始まるまでの時間に、そんな戦力を用意出来るとは思っていないのか。
……実際、ここからハワイまで転移するとなると、かなりの魔力を消費するのは事実だ。
だが、幸い……という言い方が合ってるのかどうかは分からないが、ピクシーの操縦に魔力を使ったりはしない。
精神コマンドを使う事はあるかもしれないが、精神コマンドで必要な分の魔力程度でなら、俺の場合はすぐに回復する。
「分かった。なら、俺はこれからすぐにハワイまで行って準備を整えてくる。……ホワイトベースは、なるべくラサ基地との戦いで被害を受けないように対応してくれ」
『分かった』
短く告げ、通信が切れる。
ブライトにしてみれば、例えイーサンが気にくわなくても、連邦軍の皆は仲間であるという認識が強い。
そうである以上、今回の戦いでは出来るだけイーサンの部下にも被害を出したくはなく、そういう意味では俺の提示した選択肢は決して悪いものではないのだろう。
「え? おい、アクセル?」
現在ホワイトベースにいる中で、俺の転移魔法を知らないヤザンやダンケル、ラムサスだけが戸惑ったような声を発するが、俺はそれに構わずに影のゲートを展開し、そこに身体を沈めていく。
唖然とした表情のヤザンといった珍しい光景を見ながら……次の瞬間、俺はハワイにあるアプサラスの研究所の中に姿を現していた。
「え? アクセル代表?」
その時、偶然というか必然というか、ともあれ、ちょうどアイナとノリス、それ以外にも何人かの研究者達が俺のすぐ側にあった。
アイナとノリスがいてガトーがいないのは……まぁ、仕事だしそういう事もあるんだろう。
そう判断し、口を開く。
「アイナ、ノリスも久しぶりだな。本来ならもう少しゆっくりと話をしたいと思っていたところだが、今はちょっと忙しい。ギニアスに取り次いでくれないか?」
「お兄様に、ですか?」
「ああ。アプサラスの実験に使えるかもしれない事態があってな」
俺は実質的にこのアプサラス計画のパトロンだ。
また、ホワイトベースがハワイにいる時に影のゲートを使ってサハラ砂漠やらオーストラリアやらといった場所に行き、メガ粒子砲を始めとする各種のテストに協力している事もあり、研究者や技術者達の受けはいい。
そんな俺が、アプサラスの実験に使えるかもしれないと言えば、皆が喜び……俺はすぐにギニアスのいる部屋に案内される。
「これは、アクセル代表。何でも実験に使えるかもしれない事態があるとか?」
「……お前は驚かないんだな。他の連中は、俺がこの研究所にいる事に驚いたのに」
「転移でしたか。あれを経験すれば、そうおかしな話ではありませんよ。……それで、早速本題に入っても? 忙しいと聞いてますが」
単刀直入に尋ねてくるギニアスの態度は、こういう時は非常にありがたい。
そんなギニアスに、俺は事情を説明する。
特に、山の中にある基地を攻略する為にアプサラスⅡのメガ粒子砲を使いたいというのには、興味を示した。
元々のアプサラスのコンセプトが、ジャブローの地面を貫いてその下にある基地施設に被害を与えるというものだ。
そういう意味では、俺が考えた通り今回の一件はアプサラス計画にとってはこれ以上ない実験の機会なのだ。
ただ……問題なのは、優しい性格をしているアイナが、ジオン軍に向かってトリガーを引けるかどうかだ。
とはいえ、今回撃つのはあくまでも山であって、ジオン軍の軍人を直接撃つ訳ではない以上、精神的な負担もそう多くはない……筈。
その辺は、ガトーに頑張って貰うとしよう。
「では、すぐに準備します。幸いにも現在はアプサラスⅢの最終調整の状態でしたので、アプサラスⅡは万全の状態で、すぐにでも動かせますから」
ギニアスはそう言うと、素早く通信を使って部下に指示を出していく。
この辺りの決断の早さは、さすがと言うべきだろう。
単純に、実戦におけるアプサラスのデータが欲しいだけなのかもしれないが。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1500